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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) H4
管理番号 1124381 
判定請求番号 判定2005-60007
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2005-11-25 
種別 判定 
判定請求日 2005-02-18 
確定日 2005-09-15 
意匠に係る物品 メディアカードホルダー 
事件の表示 上記当事者間の登録第1231901号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「メディアカードホルダー」の意匠は、登録第1231901号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立及び請求の理由
1.請求の趣旨
請求人は、イ号図面に示す「メディアカード入れ」の意匠は、登録第1231901号の意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するとの判定を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、立証として甲第1号証(枝番号あり)ないし甲第4号証を提出した。
2.請求の理由
(1)本件登録意匠の要部
先行周辺意匠をもとに、本件登録意匠の創作の要点について述べれば、この種物品における意匠上の創作の主たる対象は、後本体の上辺中央部に上方に突出した舌片と、前本体であるポケットの上端部とポケット下部の切り欠き部である。
(2)本件登録意匠とイ号意匠の比較
共通点は、両意匠の意匠に係る物品が「メディアカードホルダー」で一致している点、基本的構成態様において、後本体と前本体からなる平板状であり、全体の外径が矩形である点、後本体の上辺中央部に上方に舌片を突出して設け、該舌片の内部に紐を通す円形の孔が設けられている点、前本体は、上部において左辺より右辺に向かって水平にのび、右端付近で斜め下方に曲折して右辺に達するポケットを形成している点、ポケット下部は(下辺中央)に切り欠き部を備えている点、本件意匠のすべての構成をイ号意匠も同一の位置に設けている点である。
差異点は、後本体の上辺中央部に上方に舌片の形状が多少異なる点、前本体で構成するポケットの上端の形状が多少異なる点、ポケット下部の(下辺中央)に切り欠き部の形状が多少異なる点である。
(4)本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察
公知資料1から判断しても明白なように、舌片の位置は、左端でも右端でもよいのに、本件登録意匠と同一の上端中央に設けていること。 また、ポケット上端の形状も、公知資料館に示すように、本件登録意匠と同様に左側から水平にのび、右側に進むと多少、形状の異なる緩いカーブで下方に曲げ、また、水平にポケットを形成している。さらに、切り欠き部も、公知資料1のように、本件登録意匠と同一の下端中央に設け、多少形状は異なるものの、切り欠きを形成しており、これらの点からして、基本的にはイ号意匠は本件意匠を模倣した構成であり、各構成を多少変化させたものに過ぎず、類似の範囲であり、両者は、美感において共通性があり、本件登録意匠とイ号意匠とは類似するものと確信する。
3.従って、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するので、請求の趣旨どおりの判定を求める。
第2.被請求人の答弁及びその理由
1.請求の趣旨
被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由として、要旨以下のとおり主張し、立証として乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。
2.答弁の理由
(1)イ号意匠につき意匠登録が認められている事実について
被請求人は、イ号意匠と同じ意匠について意匠登録出願を行い、既に意匠登録が認められている(乙第1号証、乙第2号証)。本件登録意匠は、被請求人の出願に係る意匠の先順に該当する意匠であるから、この事実からも、イ号意匠は、本件登録意匠と非類似の意匠と判断されるべきである
(2)本件登録意匠とイ号意匠の比較
共通点は、全体が、略矩形状の後本体と、この後本体と横幅を同一に、縦幅をやや短く形成され、上辺を除く周縁を後本体と接合されてポケットを形成する前本体とからなり、後本体には、紐などを通すための円孔を備える舌片が上辺中央に設けられ、前本体は、上辺の右端が下方に下がって右辺に達するとともに、下辺中央に切り欠きが形成されている、基本的な構成態様のものである。
差異点は、後本体の縦幅(舌片を除く):後本体の横幅:前本体の縦幅が、本件登録意匠では、約100:77:83であるのに対し、イ号意匠では、約100:88:88である点、前本体の上辺が、本件登録意匠では、左辺から右辺に向けて約67/100の位置まで水平に伸び、そこから下方に約45°の急傾角に曲折し、そのまま斜線で右辺の上から約2/5の位置に達していて、急斜面形を呈しているのに対し、イ号意匠では、左辺から右辺に向けて約59/100の位置まで水平に伸び、そこから下方に向けて僅かに上向き凸の円弧状に曲がり、左辺から約85/100の位置で再び滑らかに水平の直線となって、そのまま右辺の上から約1/5の位置に達していて、なだらかな坂道形を呈している点、前本体の下辺中央に形成された切り欠きが、本件登録意匠では、下辺の直線部分との境界が滑らかな円弧状に形成された、幅対高さが約1:1で、且つ、幅が後本体の横幅の約1/3、高さが後本体の縦幅(舌片を除く)の約1/4の、全体として高さの高い山高帽子形をしているのに対し、イ号意匠では、幅対高さが約10:3で、且つ、幅が後本体の横幅の約1/2、高さが後本体の縦幅(舌片を除く)の約1/9の、横に細長の上隅丸長方形である点、後本体の上辺中央に設けられた舌片が、本件登録意匠では、上辺の直線部分との境界が滑らかな円弧状に形成され、左右の辺が後本体の上辺に対して約45°に傾斜しており、頂部が円弧を呈している、幅対高さが約100:40の、全体として裾広がりのなだらかな山形であるのに対し、イ号意匠では、上辺の直線部分との境界が直角に形成され、左右の辺が上辺に対して直角方向に平行で、頂部が半円形を呈している、幅対高さが約100:68の、全体として釣鐘形である点がある。
(3)請求人の主張に対する反論
(3-1)本件登録意匠の要部について
請求人は、本件登録意匠の要部について、「・・・本件登録意匠の要部について述べれば、この種物品における意匠上の創作の主たる対象は、後本体の上辺中央部に上方に突出した舌片と、前本体であるポケットの上端部とポケット下部の切り欠き部である。」と主張をしている。
しかしながら、これらの構成は、この種物品について従来から広く一般的に採用されている、ごくありふれた構成に過ぎない(乙第3号証〜乙第5号証)。
(3-2)本件登録意匠とイ号意匠の差異点の評価について
(3-2-1)舌片について、請求人は、「…舌片の位置は、左端でも右端でもよいのに、わざわざ、舌片の位置を、本件登録意匠と同一の上端中央に設けている」と主張している。
しかしながら、舌片の位置を上辺の中央に設けることは、最も一般的に採用されている、ごくありふれた構成に過ぎず(乙第3号証参照)、その構成が共通したとしても類否判断に与える影響はほとんどないと評価すべきである。
(3-2-1)ポケット上端の形状(前本体の上辺)について
請求人は、「ポケット上端の形状も、公知意匠1に示すように、別の形状を考えることはできるが、敢えて、本件登録意匠と同様に左側から水平にのび、右側に進むと多少、形状の異なる緩いカーブで下方に曲げ、また、水平にポケットを形成している。」と主張している。
しかしながら、両意匠の前本体の上辺の態様は、前記差異点で示した通り、その形状も、下方へ下がる度合いも、大きく相違し、看者が一瞥のみで容易に把握できるほどの大きな差異であり、類否判断に与える影響は極めて大きいと解するべきである。
(3-2-3)切り欠き部について
請求人は、「切り欠き部も、公知資料1のように、下端の中央でなく、また、種々の切り欠き形状が考えられるが、本件登録意匠と同一の下端中央に設け、多少形状は異なるものの、切り欠きを形成しており、…」と主張している。
しかしながら、前本体の下辺中央に形成された切り欠きの態様は、前記差異点で示したとおり、その大きさも、形状も、看者が一瞥のみで容易に把握できるほど大きく異なっており、該差異が類否判断に与える影響は極めて大きいと解すべきである。
また、「前本体の下辺中央に切り欠きが形成されている点」についても、カード状の収納物の取り出し作業を容易にする等のために、この種物品において、広く一般的に採用されている、ごくありふれた構成に過ぎず、本件登録意匠独自の特徴点ではない(乙第4号証、乙第5号証参照)。
以上の通り、請求人の主張はいずれも、本件登録意匠の具体的形態から乖離してなされたもので、極めて抽象的且つ広範なものであり、明らかに失当である。
したがって、イ号意匠は本件登録意匠と美感を異にする非類似の意匠であるから、答弁の趣旨の通りの判定を求める。
第3.当審判の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成16年(2004年)5月24 日に意匠登録出願をし、同17年1月21日に意匠原簿に登録された登録第1231901号の意匠であって、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「メディアカードホルダー」とし、その形態は、願書の添付図面に記載したとおりのものである。
(本件審決書に添付した別紙第1参照)
2.イ号意匠
イ号意匠は、意匠に係る物品が「メディアカード入れ」であると認められ、その形態は、請求人の提出した甲第2号証の図面に記載したとおりのものである。(本件審決書に添付した別紙第2参照)
なお、被請求人が、本件登録意匠の出願の後に、イ号意匠と同じ意匠であると主張する意匠を出願し、意匠公報に記載されたとする登録第1239201号の意匠(乙第1号証、乙第2号証)は、同公報の記載全体によれば、意匠に係る物品は一致しているが、形態全体として、イ号意匠の形態と同一性の範囲を超えるものであって、互いに要旨が異なるものであるから、イ号意匠と同一の意匠としては採用できない。
3.本件登録意匠とイ号意匠の比較
本件登録意匠は、メディアカードホルダーに係り、イ号意匠は、メディアカード入れとするものに係るが、いずれも同種の物品に係るものであるから係るものであるから、意匠に係る物品が共通している。
しかしながら、両意匠の形態については、以下のとおりの共通点および差異点が認められる。
先ず、共通点として、全体は、正面視やや縦長角丸矩形状であって扁平であり、前後両側がそれぞれ薄い板状部分(以下順に、「前板部」、「後板部」という。)からなるポケット状に構成した態様のものである点、
各部の態様について、前板部は、後板部よりも上辺がやや下方であって、その左方を水平状とし、やや右端寄りから右方を切り欠き(以下、「上辺切欠き部」という。)、下辺の中央に切り欠き(以下、「下辺切欠き部」という。)を形成している点、後板部は、上辺中央の上方へ舌片状に突出した部分(以下、「舌片部」という。)の略中央に小円孔を設けている点、そして、前板部の上辺および下辺の切り欠き部は、後板部との間を開口してこのほかの辺を閉じている点が認められる。
一方、差異点として、(1)上辺切欠き部の縁について、本件登録意匠は、斜め約45°で直線状の下り傾斜に形成しているのに対し、イ号意匠は、該切欠き部の中程まで緩やかな弧状の下り傾斜とし、これより右方を水平状に形成している点、(2)下辺切欠き部の縁について、本件登録意匠は、略放物線状であって左右の下端を角丸状である左右対称状に形成しているのに対し、イ号意匠は、左右両端の上部が角丸の横長矩形状である点、(3)舌片部の縁について、本件登録意匠は、上部の弧状部分から左右両辺にそれぞれ斜め下方へ直線状としてその左右の下端を角丸状とした左右対称状に形成しているのに対し、イ号意匠は、略半円弧状である点が認められる。
4.本件登録意匠とイ号意匠の類似認否
以上の共通点および差異点を総合し、意匠全体として本件登録意匠とイ号意匠が類似するか否かについて考察する。
先ず、形態の全体について共通しているとした態様は、矩形状のカードのホルダーの形態の構成態様として一般的なものであり、両意匠にのみ共通する点とは言えないから、両意匠の類似認否についての判断に影響を与える要素としてはそれほど評価できない。
次に、前板部についての前記共通点は、両意匠のように扁平なポケット状のホルダーからカード類の出し入れを容易にするために、前板部を後板部よりも上辺をやや下方とすること、その左方を水平状として右端寄りから右方を切り欠くこと、さらに、下辺の中央に切り欠きを設けることは、いずれも普通に行われ、格別新規のものとは言えず、両意匠にのみ共通する点とは言い難いから、両意匠の類似認否についての判断に与える影響は微弱である。後板部についての前記共通点は、この種物品に限らず、ホルダーを吊り下げるためにその略中央に小円孔を設けた舌片部を形成すること自体一般的であり、両意匠にのみ格別のものではないから、両意匠の類似認否についての判断に影響を与えるほどの要素として評価できない。
したがって、共通点はいずれも両意匠の類似認否についての判断に与える影響が微弱であるから、これら共通点に係る態様を総合した場合に生じる意匠的な効果を考慮したとしても、両意匠の類似認否についての判断を左右するほどのものとは成り得ない。
一方、前記各差異点について検討すると、差異点(1)については、本件登録意匠の上辺切欠き部の縁は、斜め直線状の下り傾斜に形成しているのに対し、イ号意匠の当該部分は、中程まで緩やかな弧状の下り傾斜としてその右方を水平状とし、本件登録意匠とは異なるラインの組み合わせにより形成しているものであり、両意匠の前板部の上辺をそれぞれ特徴づける要素であり、また、カード類を出し入れする際に注視することが多い部位についての差異である点を勘案すると、その差異は、両意匠の類似認否についての判断に与える影響が大きいと言える。差異点(2)については、前記のとおり、本件登録意匠の下辺切欠き部の縁が略放物線状であって左右の下端を角丸状に形成しているのに対し、イ号意匠の当該部分は左右両端の上部が角丸の横長矩形状であり、両意匠は、下辺切欠き部の縁の形状が全く異なっているから、その差異は、両意匠の類似認否についての判断に与える影響が大きいと言える。差異点(3)については、舌片部のみを対比した場合は、それほど大きな差異とは言えないが、本件登録意匠は、左右の下端を左右対称状に角丸状とし、下辺切欠き部の縁についても略放物線状であって左右の下端が左右対称状に角丸状であり、いずれも前板部の上下両辺のそれぞれ中央部位に形成している点と相まって、舌片部と下辺切欠き部の角丸状の部分が相似している態様が形態全体を特徴づける要素となっている点を考慮すると、その差異は、両意匠の類似認否についての判断に影響を与える要素であると言える。そうすると、差異点の(1)および(2)はいずれも両意匠の類似認否についての判断に与える影響が大きいものであり、差異点に係る態様を総合して生じる意匠的な効果は、両意匠の類似認否についての判断を左右するほどの影響を与えていると言うべきである。
そうすると、本件登録意匠とイ号意匠は、意匠に係る物品が共通しているが、形態については、共通点が両意匠の類似認否に与える影響よりも差異点に係る態様を総合して生じる意匠的な効果のほうが、両意匠の類似認否についての判断を左右するほどの影響を与えているから、両意匠は、意匠全体として類似しないもの言わざるを得ない。
5.むすび
以上のとおりであるから、イ号意匠は、本件登録意匠およびこれに類似する意匠に属さないものと認める。
よって、結論のとおり判定する。
別掲

判定日 2005-09-05 
出願番号 意願2004-15171(D2004-15171) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (H4)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奥家 勝治 
特許庁審判長 伊勢 孝俊
特許庁審判官 鍋田 和宣
小林 裕和
登録日 2005-01-21 
登録番号 意匠登録第1231901号(D1231901) 
代理人 福島 三雄 
代理人 小山 方宜 
代理人 向江 正幸 
代理人 三原 靖雄 
代理人 面谷 和範 

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