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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) B6
管理番号 1124385 
判定請求番号 判定2005-60037
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2005-11-25 
種別 判定 
判定請求日 2005-05-27 
確定日 2005-09-27 
意匠に係る物品 ガス点火器 
事件の表示 上記当事者間の登録第0994597号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「ガス点火器」の意匠は、登録第0994597号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、イ号意匠は、登録第994597号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、本件登録意匠の意匠公報、本件登録意匠の登録原簿謄本、本件登録意匠の各部名称、イ号意匠、先行意匠1ないし先行意匠8、本件登録意匠の類似3号に関する各添付書類を提出した。
添付した先行意匠に基づいて本件登録意匠の要部について考察すると、本件登録意匠の要部は、点火部と把持部の間にあって傾きをもって区切られた、先行意匠の接続部よりも長い接続部が、把持部の点火部側の端縁と流れるように連続し、これによって全体的に流れるような曲線的雰囲気を醸し出している点にあると認められる。
また、イ号意匠の把持部下部が波形であることについては、一般に握ったときの滑り止めとして把持部の片側を波形に形成することは極ありふれたことであり、ライターの分野においても、例えば先行意匠7、先行意匠8等にみられるように、本件登録意匠の出願前からよく知られていたものであって、その点に差異があるからといって、それが意匠の要部に大きく影響するものとはなり得ない。 さらに、イ号意匠の点火部の先端付近に設けられた円筒状フードは、本件登録意匠には存在しないが、本件登録意匠の類似意匠として登録を受けている意匠登録第994597号の類似3号には同様の円筒状フードが設けられている。
イ号意匠と本件登録意匠を比較すると、イ号意匠と本件登録意匠の全体的印象は相違点を考慮しても極めて類似しており、ユーザーが購入するに際して、外観から混同する可能性が極めて高いことが容易に想像できる。
以上のとおりであって、イ号意匠は本件登録意匠に類似するものであるから、イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
第2.被請求人の答弁及び理由
当審において、請求書の副本を平成17年3月24日に被請求人に送達し、30日以内の期間を指定して答弁書を提出する機会を与える旨通知したが、被請求人からは答弁書その他の提出はなかった。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成7年9月28日に意匠登録出願をし、平成9年6月27日に意匠権の設定の登録がなされた登録第994597号意匠であり、その意匠は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「ガス点火器」とし、形態を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとするものである(別紙第1参照)。
すなわち、基本的な構成態様は、(1)全体が銃形状を呈し、正面視において、左側の点火部と右側の把持部から構成されるものであり、点火部は細長い円筒であり、把持部は横長で手のひらサイズに納まり、魚の胴体を思わせる胴体形状を主にしたものであり、その点火部側には引き金とそれを囲むフレーム等から成る点火操作部があり、そのフレームの上端位置あたり(首部)が左右全長の略中心に当たり、その他に点火部と把持部の境には円筒状接続部位があり、その反対の尾部にはヒモなどを取り付ける三角形の開口枠を突設したものであって、各部の具体的な構成態様は、(2)点火部については、銃口様の点火口がある普通に見られる細長い円筒であり、(3)把持部全体については、正面視において、背側(上縁側)は点火部から略水平状に伸びるが、腹側(下縁側)はフレームを首部から右斜め下に傾斜させ、胴体の胸部あたりで緩やかに湾曲させ、そしてそこから、腹部、尾部にかけては魚体ラインを思わせるような緩やかな弧状曲線が現れ、尾部は垂直状であり、背面側の尾部寄りには燃料確認用の細い横長窓があり、平面視には点火部の2倍ほどの太さ(幅)の胴体形状が現れ、尾部側からの側面視が角丸縦長矩形に現れるものであり、(4)点火操作部については、銃の引き金操作部の様相を呈し、正面視において、フレームは胴体に面一致状に滑らかに連続し(イ号意匠のような不連続変曲部位はない。)、フレーム等で囲まれた開口部は上縁側が平らで横長な変形倒卵形で、引き金は三日月形の上半分の形をしており、(5)円筒状接続部位は、正面視において、その左端と右端の境目線が平行に現れる右傾斜線である点が認められる。
2.イ号意匠
イ号意匠は、意匠に係る物品がガス点火器であり、その形態は判定請求書に添付のイ号写真により現されたとおりのものである(別紙第2参照)。
すなわち、基本的な構成態様は、(1)全体が銃形状を呈し、正面視において、左側の点火部と右側の把持部から構成されるものであり、点火部は細長い円筒であり、把持部は横長で手のひらサイズに納まり、腹側に指掛け凹凸波形が現れる胴体形状を主にしたものであり、その点火部側には引き金とそれを囲むフレーム等から成る点火操作部があり、そのフレームの上端位置あたり(首部)が左右全長の略中心に当たり、その他に点火部と把持部の境には円筒状接続部位があるものであって、各部の具体的な構成態様は、(2)点火部については、銃口様の点火口付近に円筒状フードを設けた点以外は普通に見られる細長い円筒であり、(3)把持部全体については、正面視において、背側(上縁側)は点火部から略水平状に伸びるが、腹側(下縁側)はフレームを首部から右斜め下に傾斜させ、胴体の胸部あたりで一こぶ状に現れる大円弧に丸め、一こぶが超えた部位あたりから、腹部、尾部にかけては中指、薬指、小指が当接する凹凸波状曲線(下方に3つの波頭)が現れ、尾部は右斜切状であり、正面側の尾部寄りには燃料確認用の細い横長窓(イ号写真参照)があり、平面視には点火部の2倍ほどの太さ(幅)の胴体形状が現れ、尾部側からの側面視が角丸縦長矩形に現れるものであり、(4)点火操作部については、銃の引き金操作部の様相を呈し、正面視において、フレームは一こぶが超えた部位を不連続な変局部位とし、それから胴体に連続するものであり、フレーム等で囲まれた開口部は上縁側が平らで横長な変形倒卵形(本件登録意匠よりも下方に丸くせり出し、眼鏡フレーム様である。)、引き金は三日月形の上半分の形をしており、(5)円筒状接続部位は、正面視において、その左端と右端の境目線が平行に現れる右傾斜線である点が認められる。
3.本件登録意匠とイ号意匠の対比検討
本件登録意匠とイ号意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態については主として以下の共通点及び差異点がある。
(共通点)
まず、基本的な構成態様における共通点として、(1)全体が銃形状を呈し、正面視において左側の点火部と右側の把持部から構成されるものであり、点火部は細長い円筒であり、把持部は横長な手のひらサイズに納まり、その点火部側には引き金とそれを囲むフレーム等から成る点火操作部があり、そのフレームの上端位置あたり(首部)が左右全長の略中心に当たり、その他に点火部と把持部の境には円筒状接続部位がある点、各部の具体的な構成態様における共通点として、(2)点火部について、銃口様の点火口がある普通に見られる細長い円筒である点(イ号意匠には点火口付近に円筒状フードがある点を除く。)、(3)把持部全体について、正面視において、背側(上縁側)は点火部から略水平状に伸び、腹側(下縁側)はフレームを首部から右斜め下に傾斜させ、燃料確認用の細い横長窓があり、平面視には点火部の2倍ほどの太さ(幅)の胴体形状が現れ、尾部側からの側面視が角丸縦長矩形に現れる点、(4)点火操作部については、全体は銃の引き金操作部の様相を呈し、正面視において、フレーム等で囲まれた開口部は上縁側が平らで横長な変形倒卵形で、引き金は三日月形の上半分の形をしている点、(5)円筒状接続部位は、正面視において、その左端と右端の境目線が平行に現れる右傾斜線である点が認められる。
(差異点)
一方、差異点として、(イ)把持部の基本的な構成態様につき、本件登録意匠は、魚の胴体を思わせる横長胴体形状を主にしたものであるのに対し、イ号意匠は、腹側に指掛け凹凸波形が現れる横長胴体形状を主にしたものであり、本件登録意匠にある尾部に突設したヒモなどを取り付ける三角形の開口枠がイ号意匠にはない点、
(ロ)点火部の具体的な構成態様につき、銃口様の点火口付近に設けた円筒状フードがイ号意匠にはあるが、本件登録意匠にはない点、(ハ)把持部全体の具体的な構成態様につき、正面視において、本件登録意匠は、腹側(下縁側)は首部から右斜め下に傾斜させたフレームを胴体の胸部あたりで緩やかに湾曲させ、そこから腹部、尾部にかけては魚体ラインを思わせるような緩やかな弧状曲線が現れるものであり、尾部は垂直状であり、燃料確認用の細い横長窓が背面側の尾部寄りにあるのに対し、イ号意匠は、腹側(下縁側)は首部から右斜め下に傾斜させたフレームを胴体の胸部あたりで一こぶ状に現れる大円弧に丸め、一こぶが超えた部位あたりから、腹部、尾部にかけては中指、薬指、小指が当接する凹凸波状曲線(下方に3つの波頭)が現れるものであり、尾部は斜切状であり、燃料確認用の細い横長窓が正面側の尾部寄りにある点、(ニ)点火操作部の具体的な構成態様につき、正面視において、本件登録意匠は、フレームは胴体に面一致に滑らかに連続する(イ号意匠のような不連続部位はない。)のに対し、イ号意匠は、フレームは一こぶが超えた部位を不連続な変局部位とし、それから胴体に連続するものであり、フレーム等で囲まれた開口部の上縁側が平らな変形倒卵形がイ号意匠の方が本件登録意匠よりも下方に丸くせり出している点、また、(ホ)上記差異点が織りなす印象において、本件登録意匠は、柔和な印象を与えるのに対し、イ号意匠は、荒々しい印象を与える点、その他イ号意匠は2色調子である点が認められる。
(比較検討)
次に、上記の共通点と差異点について意匠全体として総合的に検討する。
まず、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲についての検討に際し、ガス点火器の属する意匠分野における本件登録意匠の出願前の先行意匠、中でも、請求人が判定請求書に添付した先行意匠5(意匠登録第939537号の意匠公報所載の点火棒の意匠)等を参考とする。
先行意匠5等が存在するにもかかわらず、これに類似せず新規性があるとして本件登録意匠が意匠登録を受けたことに鑑みれば、本件登録意匠の特徴は、就中、把持部の基本的な構成態様につき、本件登録意匠は、魚の胴体を思わせる胴体形状を主にしたものであり、把持部全体の具体的な構成態様につき、正面視において、腹側(下縁側)は首部から右斜め下に傾斜させたフレームを胴体の胸部あたりで緩やかに湾曲させ、そこから腹部、尾部にかけては魚体ラインを思わせるような緩やかな弧状曲線が現れるものであり、点火操作部の具体的な構成態様につき、正面視において、フレームは胴体に面一致に滑らかに連続する(先行意匠5のように、フレームが下方に大きくせり出したようなものでなく、不連続な変局部位を設けてから胴体に連続するものでない。)点、これらと円筒状接続部位があり、それが正面視において、その左端と右端の境目線が平行な右傾斜線に現れる基本的及び具体的な構成態様にあるといえ、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲については当該特徴に限定して解すべきものと思料される。なお、請求人は、本件登録意匠の要部は点火部と把持部の間にあって傾きをもって区切られた円筒状接続部位の流れるような曲線的雰囲気を出している点にあると主張するが、これは本件登録意匠の特徴の一部にすぎない。
そうだとすると、共通点(1)ないし(5)において本件登録意匠が備える特徴として評価すべき共通点は、基本的な構成態様における共通点(1)の点火部と把持部の境には円筒状接続部位がある点、各部の具体的な構成態様における共通点(3)の把持部のフレームを首部から右斜め下の腹側(下縁側)に傾斜させた点、共通点(4)の円筒状接続部位の境目線が正面視において平行に現れる右傾斜線である点にあるが、これらは本件登録意匠の特徴の一部でしかなく、そうして、共通点(1)ないし(5)が相俟った効果を考慮してもなお、共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を決するものであるとまではいいきれない。
そこで、一方の差異点が共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響において共通点に優るかどうかについて更に検討する。
差異点(ロ)の円筒状フードの有無等請求人の主張に首肯できる点があるにしても、とりわけ、差異点(イ)の把持部の基本的な構成態様が、魚の胴体を思わせる横長胴体形状を主にしたものであるか、腹側に指掛け凹凸波形が現れる横長胴体形状を主にしたものであるかの点、差異点(ハ)の把持部全体の具体的な構成態様が、腹側(下縁側)は首部から右斜め下に傾斜させたフレームを胴体の胸部あたりで緩やかに湾曲させ、そこから腹部、尾部にかけては魚体ラインを思わせるような緩やかな弧状曲線が現れ、尾部は垂直状であるか、腹側(下縁側)は首部から右斜め下に傾斜させたフレームを胴体の胸部あたりで一こぶ状に現れる大円弧に丸め、一こぶが超えた部位あたりから、腹部、尾部にかけては中指、薬指、小指が当接する凹凸波状曲線(下方に3つの波頭)が現れるものであり、尾部は斜切状であるかの点、差異点(ニ)の点火操作部の具体的な構成態様が、フレームが胴体に面一致に滑らかに連続する(イ号意匠のような不連続部位はない。)か、フレームが一こぶが超えた部位を不連続な変局部位としてから胴体に連続するものであるかの点において、請求人は先行意匠7及び8を示し胴体腹側指掛け凹凸波形には特徴がないと主張するが、示された先行意匠はライターに係るものであって、この種銃形状のガス点火器についてまでいい得るものではなく、そうとすると、本件登録意匠の特徴が見出せないイ号意匠と本件登録意匠とは別なる基調に拠っていると一応いえるものであり、さらに、印象における差異点(ホ)の本件登録意匠は柔和な印象を与えるか、荒々しい印象を与えるかの点、付加的ではあるが本件登録意匠にある尾部に三角形の開口枠があるかどうかの点等を加えた差異点(イ)ないし(ホ)が相俟った視覚効果は、両者の別なる特徴をよく表出し、看者に別異の印象を抱かせるに十分であるから、差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響において共通点に優るものといえ、イ号意匠は本件登録意匠に類似しないと帰結せざるを得ない。
以上のとおりであって、本件登録意匠出願前の先行意匠例を参考として本件登録意匠の特徴を認定し、当該特徴に限定して本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲を解釈し、本件登録意匠とイ号意匠を意匠全体として比較すると、結局のところ、イ号意匠は本件登録意匠に類似しないとするのが相当である。
4.結び
以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲

判定日 2005-09-14 
出願番号 意願平7-28762 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (B6)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 親司 
特許庁審判長 森 則雄
特許庁審判官 伊藤 敦
市村 節子
登録日 1997-06-27 
登録番号 意匠登録第994597号(D994597) 
代理人 佐久間 剛 
代理人 柳田 征史 

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