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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) H1
管理番号 1124386 
判定請求番号 判定2005-60029
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2005-11-25 
種別 判定 
判定請求日 2005-04-26 
確定日 2005-09-29 
意匠に係る物品 水道凍結防止ヒータ用節電器 
事件の表示 上記当事者間の登録第1110770号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「水道凍結防止ヒータ用節電器」の意匠は、登録第1110770号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 1.請求人の主張
請求人は、イ号図面並びにその説明書に示す意匠は、登録第1110770号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求めると申し立て、その理由として要旨以下のとおり主張し、証拠方法として下記の甲第1号証ないし甲第3号証(枝番を含む)を提出した。
甲第1号証:本件登録意匠の意匠公報写し及び実施意匠
甲第2号証の1:イ号意匠掲載のパンフレット
甲第2号証の2:上記パンフレット中の説明図の一部拡大図
甲第3号証:警告書
(1)判定請求の必要性
本件判定請求人(株式会社ワーク、テムコ株式会社)は、本件判定請求に係る登録意匠「水道凍結防止ヒーター用節電器」(甲第1号証、以下「本件登録意匠」という。)の意匠権者である。本件判定被請求人(有限会社大伸製作所)が現在販売しているイ号意匠(甲第2号証)の「水道凍結防止ヒーター用節電器」は、本件登録意匠の意匠権を侵害するものであるので、本件判定請求人は、平成15年9月29日付でその旨の警告状(甲第3号証)を本件判定被請求人に送付した。
これに対して、本件判定被請求人は、「イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない」旨主張するので、特許庁による判定を求める。
(2)本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「水道凍結防止ヒーター用節電器」とし、その形態の要旨を、次の通りとする。
a)基本的な構成態様は、全体が本体とプラグとコネクターの3物体2コード連結の中央本体を中心とする「上下対称形状」から成り、本体は、略長方形状で、その上端部にコードを介してプラグを固着し、下端部にコードを介してコネクターを固着し、全体が、本体とプラグとコネクターの3物体2コード連結の中央本体を中心とする「上下対称形状」の印象を醸すものである。
b)具体的な構成態様は、略長方形の本体の下端部にLED表示ランプを配し略長方形の本体の上端部にコードを介してプラグを設けてなり、略長方形の本体の下端部にコードを介してコネクターを設けてなる。
(3)本件登録意匠とイ号意匠の対比
〔両意匠の共通点〕
a)両意匠は、意匠に係る物品が「水道凍結防止ヒーター用節電器」で一致している。
b)基本的な構成態様において、全体が本体とプラグとコネクターの3物体2コード連結の中央本体を中心とする「上下対称形状」を成し、本体は略長方形状で、その上端部にコードを介してプラグを固着し、下端部にコードを介してコネクターを固着し、全体が本体とプラグとコネクターの3物体2コード連結の中央本体を中心とする「上下対称形状」の印象を醸している。
c)具体的な構成態様において、略長方形の本体の下端部にLED表示ランプを配し、略長方形の本体の上端部にコードを介してプラグを設けて成り、略長方形の本体の下端部にコードを介してコネクターを設けている。
〔両意匠の差異点〕
a)コネクターの形状が本件登録意匠は扁平型であるのに対して、イ号意匠は丸型に現している。
b)略長方形の本体部の上端部及び下端部に固着したコードの長さは、本件登録意匠の長さに対しイ号意匠は多少長めに現している。
(4)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由
a)本件登録意匠の先行周辺意匠
公知先行周辺意匠は無い。
b)本件登録意匠の要部
この種物品における意匠上の創作の主たる対象は、全体が本体とプラグとコネクターの3物体2コード連結の中央本体を中心とする「上下対称形状」を成し、本体は略長方形で、その上端部にコードを介してプラグを固着し、下端部にコードを介してコネクターを固着し、全体が本体とプラグとコネクターの3物体2コード連結の中央本体を中心とする「上下対称形状」の構成態様にあることは明らかで、他に全く見られない態様であり、本件登録意匠全体の基調を表出している。
c)本件登録意匠とイ号意匠との類否
そこで、本件登録意匠とイ号登録意匠の共通点及び差異点を比較検討するに、両意匠の共通点は、基本的な構成態様に係るものであり、特に、本件登録意匠の要部である3物体2コード連結の中央本体を中心とする「上下対称形状」の態様が共通しており、両意匠の類否の判断に大きな影響を与えるものである。
一方、両意匠の差異点のa)については、イ号意匠のコネクターが丸型で現されているが、3物体2コード連結の中央本体を中心とする「上下対称形状」と認識されることから、特段顕著な相違といえず、本件登録意匠の要部ではないことから、類否の判断に与える影響は微弱である。
両意匠の差異点のb)については、イ号意匠のコードが多少長めに現されているが、3物体2コード連結の中央本体を中心とする「上下対称形状」と認識されることから、特段顕著な相違と言えず、本件意匠の要部ではないことから、類否の判断に与える影響は微弱である。
以上の認定、判断を前提として両意匠を全体的に考察すると、両意匠の差異点は、頬否の判断に与える影響はいずれも微弱なものであって、共通点を凌駕しているものとはいえず、それらが纏わっても両意匠の類否の判断に及ぼす影響は、その結論を左右するまでには至らないものである。
d)むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
2.被請求人の答弁
被請求人は、イ号図面並びにその説明書に示す意匠は、登録第1110770号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない、との判定を求めると申し立て、その理由として要旨以下のとおり主張し、証拠方法として下記の乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
乙第1号証:イ号意匠掲載のパンフレット
乙第2号証:上記パンフレット中の説明図の一部拡大図
乙第3号証:被請求人実施の意匠
乙第4号証:本件登録意匠
(1)イ号意匠について
判定対象のイ号意匠は、判定被請求人が実施している意匠(実施意匠)ではない。
判定請求人は、判定対象の意匠を、甲第2号証の1および2により特定している。甲第2号証の1は、判定被請求人の製造販売に係る水道凍結防止帯についてのパンフレットの写しであり、ここには、下部右側の写真によって特定される意匠と、その隣に描かれている説明図によって特定される意匠とがある。判定請求人は、甲第2号証の1における下部右側の写真ではなく、その左側に描かれている説明図によって特定される意匠を判定対象のイ号意匠として選択している。
判定被請求人は、甲第2号証の1における写真に写っている判定被請求人の実施意匠の四面を表す写真を、乙第3号証として添付する。実施意匠では、中央の本体の上下の端から延びているコードの長さが格段に長く、判定対象のイ号意匠とは各部の長さの比率が相違している。
水道凍結防止帯では、電源と凍結防止用のヒータの間に、サーモスタットなどの節電用スイッチなどを含む回路が内蔵された本体が接続されるのが一般的である。したがって、本体の両側からコードが伸び、一方のコードの先に電源プラグが取り付けられ、他方のコードの先にヒータ側に接続するコネクタが取り付けられた形態は、本件登録意匠に係る物品における一般的な基本形態である。
このように、本件登録意匠に係る物品においては、その機能上、基本形態が同一となるので、本体の長さと上下に延びているコードの長さとの比率、それらの先に取り付けられているプラグ、コネクタの形状、大きさ、向きなどが、意匠の類否を判断するにあたって大きな比重を占めることになる。
イ号意匠はコードの長さなどが実施意匠とは大幅に異なり、別意匠である。よって、本件判定請求の対象であるイ号意匠についての類否判断は、実施意匠と本件登録意匠の類否判断には適用できない。
(2)本件登録意匠とイ号意匠の対比
〔共通点〕
a)判定対象のイ号意匠は、判定被請求人の製造販売に係る水道凍結防止帯に関するパンフレットの下部中央に記載の説明図、および当該図面を拡大して示す拡大図面に示す通りのものである。本件登録意匠は、登録意匠公報の図面に示す通りのものである。
b)イ号意匠と本件登録意匠は、共に基本的な構成態様が、直方体形状の本体と、この本体から上方に延びた第1のコードと、その上端に構成されたプラグと、本体から下方に延びた第2のコードと、その下端に構成されたコネクタとからなる。
c)イ号意匠と本件登録意匠の具体的構成態様において、第1のコードは、本体およびプラグの長さ寸法よりもかなり短く、第2のコードも本体およびコネクタの長さ寸法よりもかなり短い。このため、第1のコードおよびプラグは、本体の縦寸法と略同一の長さ寸法をもって上方に延び、第2のコードおよびコネクタは、本体の縦寸法と略同一の長さ寸法をもって下方に延びている。
〔相違点〕
a)本件登録意匠において、プラグとコネクタは、いずれも一般的な家電製品に使われているようなフラットな端子に対応する同一タイプのものであり、摘み部分の態様およびサイズが略同一である。これに対して、イ号意匠において、プラグは一般的な家電製品に使われているようなものであるが、コネクタは丸いピンが差し込まれるD形のものであるため、プラグとコネクタは、摘み部分の態様およびサイズが異なる。
b)本件登録意匠では、本体1Cの表面に穴、ランプあるいはボタンと思われる黒丸が4つ、縦に一列に並んでいる。最も上の黒丸と、下2つの黒丸はほぼ同一径であるが、上から2番目の黒丸は、それらに比べて明確に分かるような小径のものである。これに対して、イ号意匠では、本体1の表面には、その下半部にチェックボタンを表す丸と、チェックランプの開口である丸の2つが縦に並んでいるのみである。
(3)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない理由
a)全体的から受ける印象が相違する点
イ号意匠と本件登録意匠を全体的に観察すると、看者に与える印象が明らかに相違している。
本件登録意匠では、本体1Cの長さと、上側のコードおよびプラグの全長と、下側のコードおよびプラグの全長とが略同一であり、上下の端に位置しているプラグおよびコネクタがほぼ同様な先広がりの台形状を呈した同一形状および大きさのものであり、しかも、それらの向きも見る方向によって相違することの無い様に同一に揃えられている。このように上下の対称性が得られるように意匠上の創作が施されており、この結果、上下の対称性が明確に表出され、また、上下のバランスが保たれた印象を受ける。
これに対して、イ号意匠では、上端側には台形状に広がった質量感のあるプラグがあり、下端側にはこれに比べて質量感に乏しく、しかも形状の異なる円柱状のコネクタがある。上下の端の形状および大きさが異なっているので上下の対称性が明確でなく、全体として上側に重心のあるアンバランスな印象を受け、上下の対称性が得られるような意匠上の創作は見て取れない。
b)両意匠の要部の形態が相違する点
この種の物品において、第1のコード、プラグ、第2のコードコネクタは、極めてありふれた部材であり、本体の形状もありふれた直方体形状をしている。したがって、看者は、これらの部材よりも、本体の表面の形態に注目することは至極当然であり、本体の表面にあしらった形態が、両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼす要部の一つを構成している。
イ号意匠と本件登録意匠では、かかる本体の表面の形態が大きく相違する。イ号意匠では、本体の下半部にほぼ同一の大きさの2つの丸が形成されているのに対して、本件登録意匠では、本体の表面にほぼ等しい間隔で縦方向に4つの丸が形成されており、しかも、下2つの丸および最も上の丸がほぼ同一径であるのに対して、上から2番日の丸はこれらよりも格段に小さな径の丸である。
よって、看者は、両意匠において最も目に付く本体の表面にあしらわれる形態が明らかに異なるものであると認識することは明らかなので、両意匠を明確に区別できる。
c)結論
以上要するに、イ号意匠は、本件登録意匠に比べて、全体から受ける印象が相違しており、また、意匠の要部である本体の表面にあしらわれている形態が明らかに相違している。よって、イ号意匠は、本件の本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない。
3.当審の判断
(1)本件登録意匠
本件登録意匠は、登録原簿及び意匠公報の記載によれば、平成11年7月9日の出願に係り、平成13年4月6日に登録第1110770号として設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「水道凍結防止ヒータ用節電器」とし、その形態を願書添付の図面に示すとおりとしたものである(別紙第1参照)。
(2)イ号意匠
イ号意匠は、請求人の主張によれば、判定被請求人(有限会社大伸製作所)販売の「水道凍結防止ヒータ用節電器」であり、その形状は、甲第2号証の1(被請求人制作の「水道凍結防止帯」のパンフレット)及び甲第2号証の2(前記パンフレット中の説明図の一部拡大図)に示されたとおりのものである。
しかしながら、甲第2号証の2の「水道凍結防止ヒータ用節電器」は、甲第2号証の1に掲載されている写真版の「水道凍結防止帯」を説明するための模式的な図面の一部を拡大したものであり、被請求人も答弁書において、実施している意匠の形態は、同説明図の形態ではなく、写真版の「水道凍結防止帯」の形態であると主張している。
上記図面及び写真は、実体的には同じ意匠を指しているものと認められるものの、両者は、プラグの形状やコードの長さにおいて若干の差異があることから、前者の説明図によって表された意匠を「イ号意匠1」(別紙第2参照)とし、写真版によって現された意匠を「イ号意匠2」(別紙第3参照)として、それぞれ本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するか否かを判断することとする。
(3)本件登録意匠とイ号意匠1との対比
イ号意匠1は、意匠に係る物品を「水道凍結防止ヒータ用節電器」とし、その形態を別紙第2に示すとおりとしたものである。
両意匠は、意匠に係る物品が一致し、その形態については以下の共通点及び差異点が認められる。
〔共通点〕
(ア)全体は、角丸縦長直方体状の本体部の両端にコードの付いたプラグ及びコードの付いたジャック部を結合したものであって、本体部は、正面視縦辺対横辺対厚みを略6:20:7とし、8個ある角部にアールを形成し、正面視隅丸縦長長方形表面の下半部に2個の小円形部を間隔をあけて縦一列に配設し、上下のコードは同じ長さの比較的短いものとし、プラグ及びジャック部はいずれもごく一般的な態様のものであり、これらを一直線状に連結した態様において共通している。
〔差異点〕
一方、差異点として、
(イ)本体部の態様について、本件登録意匠においては、正面視隅丸縦長長方形表面上方に2個のごく小さい小円形部が形成され、合計4個の小円形部が縦一列に配列されているのに対し、イ号意匠1においては、上方にはラベルが貼られ、下半部に2個の小円形部が形成されている点。
(ウ)プラグ及びジャック部の態様について、本件登録意匠のプラグは、輪郭が丸みを帯びており、首部の形状がイ号意匠1とやや異なっており、ジャック部については、本件登録意匠は、平板状端子に対応したプラグと同タイプのものであるのに対し、イ号意匠1においては、丸いピンが差し込まれるD形のものである点。
(4)本件登録意匠とイ号意匠1との類否
そこで、上記差異点及び共通点が類否判断に及ぼす影響について検討すると、両意匠の共通点(ア)は、両意匠の形態全体を特徴づける態様であって、この分野で両意匠の以外に類似の態様のものが余り見られないことから(例えば、意匠登録第967292号、意匠登録第1045553号各意匠参照。いずれも本件登録意匠及びイ号意匠1とは、本体部の形状及びジャック部の数等が異なる。)、両意匠に極めて強い類似感をもたらしているものと認められる。これに対し、差異点は類否判断上はいずれも微弱なものにとどまる。
すなわち、差異点(イ)は、全体から見ればごく部分的でわずかな変更にとどまるものであり、その差異は共通点(1)に吸収されて目立たないものであるから、類否判断を左右する程のものではない。差異点(ウ)は、共に普通に見られる公知の態様のものから適宜選択しただけのものに過ぎないから、その差異は類否判断に特に影響を及ぼす程のものではない。
結局、上記差異点は、いずれも類否判断上は微弱なものにとどまり、それらが相まって奏する効果を検討しても、上記共通点の及ぼす影響を凌駕して両意匠を別異のものとする程のものとは認められない。したがって、両意匠は類似する。
(5)本件登録意匠とイ号意匠2との類否
イ号意匠2とイ号意匠1とは、プラグの形状及びコードの長さにおいて若干異なる以外は、その他の態様において共通するものである。
したがって、本件登録意匠とイ号意匠2との類否判断における本体部の態様についての差異、プラグ及びジャック部についての差異については、意匠1と同様に類否判断に及ぼす影響はわずかであり、また、コードの長さの長短についても常套的改変に過ぎず、これらの差異は両意匠の共通点に吸収されてしまうものであるから、結局上記したとおり、差異点の及ぼす影響が共通点の及ぼす影響を凌駕しない両意匠は類似すると言わざるを得ない。
(6)結び
したがって、イ号意匠1及びイ号意匠2は、いずれも本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属すると認められる。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2005-09-16 
出願番号 意願平11-18380 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 楽 勝広 
特許庁審判長 藤木 和雄
特許庁審判官 山崎 裕造
岩井 芳紀
登録日 2001-04-06 
登録番号 意匠登録第1110770号(D1110770) 

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