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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) J7
管理番号 1125932 
判定請求番号 判定2005-60043
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2005-12-22 
種別 判定 
判定請求日 2005-07-11 
確定日 2005-10-26 
意匠に係る物品 貼り薬 
事件の表示 上記当事者間の登録第0980089号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「貼り薬」の意匠は、登録第0980089号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、イ号図面及びその説明書に示す意匠(以下、「イ号意匠」という。)は登録第980089号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証ないし第6号証を提出した。
本件登録意匠とイ号意匠の類否を検討すると、イ号意匠と本件登録意匠は、本件登録意匠の特徴である横長方形のシート状貼り薬において、その剥離シートの中央部に上下を縦断する直線上の切断線部を形成し、剥離シートを二分割し、剥離シートの表面全面にエンボス加工によって正面視斜め格子状の連続する凹凸を形成した基本的構成態様、さらに、剥離シート表面全面にエンボス加工によって形成された格子状凹凸面が二重線によって構成された斜め格子である具体的構成態様において共通にするものである。
これに対して、両意匠には、具体的構成態様において、切断線部に連結部が形成されているか否かの違いがあるが、本件登録意匠に連結部があること自体よほど注意深く目視しない限りは視認されないものであり、また、剥離シート表面に形成された斜め格子状凹凸の格子の一単位が本件登録意匠は正方形であり、イ号意匠はやや扁平した菱形であるという差異があるが、イ号意匠のやや扁平した菱形は注意深く見なければ気付かない程度のものでしかない。
してみれば、イ号意匠は本件登録意匠の基本的構成態様、具体的構成態様の大部分を共通にし、かつ、本件登録意匠の特徴をそのまま備えているのに対して、その差異は外観上無視し得る程度の微差でしかないから、両意匠を全体として観察したときには、その全体的印象は酷似しており、したがって、イ号意匠は本件登録意匠に類似するものである。
以上のとおりであるから、イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものである。
第2.被請求人について
本件判定請求は被請求人が存在しないものであり、請求人は、その理由として、請求人自身が実施(ライセンスを含む。)を準備しているイ号意匠が本件登録意匠の類似の範囲に含まれることを確認するために判定請求するものである、と述べている。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成6年10月18日に意匠登録出願をし、平成9年2月10日に意匠権の設定の登録がなされた登録第980089号意匠であり、その意匠は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「貼り薬」とし、形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとするものである(別紙第1参照)。
すなわち、基本的な構成態様は、(1)正面視において横長方形の薄いシート体であって、そのシート体は、支持シートと、支持シートの片方の面の全面に展着された膏薬層と、膏薬層の全面に被着された剥離シートの三層から成り、剥離シートには、表面全面に斜め格子状に現れるエンボス加工の凹凸面が形成され、左右中央部に剥離シートを左右に二分割する上下方向に縦断する直線状切断線部が形成されており、各部の具体的な構成態様は、(2)剥離シート表面全面の斜め格子状エンボス加工凹凸面については、凹部が目地、目地で囲まれた凸部が四半(正方形)の四半目地の格子状態様であって、その格子目は密であり、(3)剥離シート左右中央部の直線状切断線部については、A-B部拡大図において、四半(正方形)凸部の対角線上を上下方向に縦断した切れ目と連結部(切れていない部位)から成るもの(切れ目と連結部の長さの比については、意匠の説明において、連結部が1に対し切れ目が5から25の割合であることが説明されている。)であり、(4)膏薬層については、CーC断面図において、剥離シートとの接面に何らかの凹凸面が形成されている態様が見て取れるものの、剥離シートを剥離した状態における膏薬層表面全面の態様がどのようであるかは図面上明示されていない点、その他使用状態を示す参考図に表されたとおりの使用状態が認められる。
2.イ号意匠
イ号意匠は、甲第3号証のイ号意匠説明書及び甲第4号証のイ号意匠図面に示されたものであって、意匠に係る物品が「貼り薬」であり、その形態はイ号意匠説明書及びイ号意匠図面に示されたとおりのものである(別紙第2参照)。
すなわち、基本的な構成態様は、(1)正面視において横長方形の薄いシート体であって、そのシート体は、支持シートと、支持シートの片方の面の全面に展着された膏薬層と、膏薬層の全面に被着された剥離シートの三層から成り、剥離シートには、表面全面に斜め格子状に現れるエンボス加工の凹凸面が形成され、左右中央部に剥離シートを左右に二分割する上下方向に縦断する直線状切断線部が形成されており、各部の具体的な構成態様は、(2)剥離シート表面全面の斜め格子状エンボス加工凹凸面については、凹部が目地、目地で囲まれた凸部が菱形の菱形目地の格子状態様であって、その格子目は本件登録意匠よりも粗いものであり、(3)剥離シート左右中央部の直線状切断線部については、A-A,BーB部拡大図において菱形凸部の対角線上を僅かに外した部位を上下方向に縦断した切れ目を入れたもの(その切れ目は、剥離シートの厚みに対しては略半分の切り込みを施したものであることが甲第4号証のイ号意匠図面のC-C断面図、D-D部分拡大図、E-E部分拡大図から認められる。)であり、(4)膏薬層については、C-C断面図において、剥離シートとの接面に何らかの凹凸面が形成されている態様が見て取れるものの、剥離シートを剥離した状態における膏薬層表面全面の態様がどのようであるかは図面上明示されていない点が認められる。
3.本件登録意匠とイ号意匠の比較検討
本件登録意匠とイ号意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態については主として以下の共通点及び差異点がある。
(共通点)
両意匠には、基本的な構成態様において、(1)正面視横長方形の薄いシート体であって、そのシート体は、支持シートと、支持シートの片方の面の全面に展着された膏薬層と、膏薬層の全面に被着された剥離シートの三層から成り、剥離シートには、表面全面に斜め格子状に現れるエンボス加工の凹凸面が形成され、左右中央部に剥離シートを左右に二分割する上下方向に縦断する直線状切断線部が形成されている点、各部の具体的な構成態様において、(2)剥離シート表面全面の斜め格子状エンボス加工凹凸面につき、凹部が目地、目地で囲まれた凸部が矩形の矩形目地の格子状態様であって、その格子目は比較的細かいものである点、(3)剥離シート左右中央部の直線状切断線部に上下方向に縦断した切れ目を入れたもの(差異点(ロ)を除く。)である点、(4)膏薬層については、CーC断面図において、剥離シートとの接面に何らかの凹凸面が形成されている態様が見て取れる点に共通点が認められる。
(差異点)
一方、両意匠には、具体的な構成態様において、(イ)剥離シート表面全面の斜め格子状エンボス加工凹凸面につき、本件登録意匠は、四半目地の格子状態様であって、その格子目は密であるのに対し、イ号意匠は、菱形目地の格子状態様であって、その格子目は本件登録意匠よりも粗いものである点、(ロ)剥離シート左右中央部の直線状切断線部につき、本件登録意匠は、四半凸部の対角線上を上下方向に縦断した切れ目と連結部から成るもの(切れ目と連結部の長さの比については、連結部が1に対し切れ目が5から25の割合)であるのに対し、イ号意匠は、菱形凸部の対角線上を僅かに外した部位上を上下方向に縦断した切れ目を入れたもの(剥離シートの厚みに対しては略半分の切り込みを施したもの)である点での差異及び剥離シートを剥離した状態における膏薬層表面全面の態様がどのようであるかは図面上明示されていない点が認められる。
(比較検討)
本件登録意匠に関し、請求人が提出した甲第5号証に示された意匠の他にも本件登録意匠に類似するとして類似意匠の意匠登録を受けた意匠(類似1ないし類似6)が存在することは当審において職務上顕著な事実である。この本件登録意匠と当該類似意匠との関係を考察するに、当該類似意匠の中に、本件登録意匠(本意匠)にのみ類似するとすることの妥当性を欠いていると考えられるものが含まれているところであるが、この点の判断はここでは保留する。この点の判断を保留したとしても、本件判定請求は被請求人が存在しないものであり、請求人自身が実施を準備しているイ号意匠が本件登録意匠の類似の範囲に含まれることを確認する限りの理由において、イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める請求趣旨が損なわれることはないと思料される。
これらを踏まえて、本件登録意匠とイ号意匠の上記の共通点と差異点について、意匠全体として総合的に審案する。
まず、共通点についてみるに、基本的な構成態様における共通点(1)の長方形の薄いシート体であって三層を成すもの、各部の具体的な構成態様における共通点(2)のエンボス加工凹凸面が矩形目地の格子状態様であるもの、共通点(3)の中央部に上下方向切断切れ目を入れたもの、共通点(4)の膏薬層に何らかの凹凸面が形成されているものは、貼り薬に係る物品の性格による制約があるところではあるが、いずれもの点もデザイン創作における造形的要素としては格別優れた要素とはいえず、かかる共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響はいずれもそれ単独では弱いというほかない。
しかしながら、格別優れた要素とはいえないものであっても、それらを調和させて看者に一つのまとまりあり印象を抱かせることもデザインの創作であって、こうした観点を加味して、基本的な構成態様における共通点(1)、各部の具体的な構成態様における共通点(2)ないし共通点(4)が相俟った効果をみると、それぞれが相乗し合って一つのまとまり感を醸成し、看者に印象の共通感を想起させ、両意匠の特徴をよく表出しているところであるから、共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さくないといえる。
これに対し、一方の具体的構成態様のうちの差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響において共通点に優るかどうかを検討するに、差異点(イ)の剥離シート表面全面の斜め格子状エンボス加工凹凸面につき、本件登録意匠は、四半目地の格子状態様であるのに対し、イ号意匠は、菱形目地の格子状態様である点については、本件登録意匠のA-B部拡大図とイ号意匠のA-A,B-B部分拡大図において比較してもさほど顕著なものとはいえないこと、格子目の粗密については、四半であるか菱形であるかの差異に起因しているともいえ、両意匠の正面図同士を比較しても全く別異の印象を抱かせるというほどの差異ではないから、差異点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は弱いものでしかない。
差異点(ロ)の剥離シート左右中央部の直線状切断線部につき、本件登録意匠は、切れ目と連結部から成るものであるのに対し、イ号意匠は、剥離シートの厚みに対しては略半分の切り込みを施した切れ目を入れたものである点での差異については、本件登録意匠の連結部を残しているものと、イ号意匠の剥離シートの厚みに対して略半分の切り込みしかないものとの物性上の意味合い(膏薬層に対する剥離シートの被着強度や剥離のし易さなどといった意味合い)については別途の評価があるとしても、意匠の視覚上の効果としては拡大図で表すことで確認できる程度の差異にすぎないものであること、また、切断線につき、本件登録意匠は、四半凸部の対角線上にあるのに対し、イ号意匠は、菱形凸部の対角線を僅かに外した部位上にある点についても、意匠の視覚上の効果としては拡大図で確認できる程度の差異にすぎないものであって、両意匠の正面図同士の比較では大差無ことから、差異点(ロ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎない。
そして、差異点(イ)(ロ)及びその他の剥離シートを剥離した状態における膏薬層表面全面の態様がどのようであるかは図面上明示されていない点の相俟った効果を考慮してもなお、それらは、共通点が相乗し合って一つのまとまり感を醸成し、看者に印象の共通感を想起させ、両意匠の特徴をよく表出しているところの奏する効果を凌ぐほどのものではないから、両意匠の類否判断に及ぼす影響において差異点が共通点に優っているとはいえず、両意匠は類似するものであって、結局のところ、イ号意匠は本件登録意匠に類似するものであるとするのが相当である。
4.結び
以上のとおりであって、イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2005-10-13 
出願番号 意願平6-31679 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 公明 
特許庁審判長 森 則雄
特許庁審判官 市村 節子
伊藤 敦
登録日 1997-02-10 
登録番号 意匠登録第980089号(D980089) 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 佐藤 英二 

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