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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属する(申立成立) L5 |
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管理番号 | 1129052 |
判定請求番号 | 判定2005-60050 |
総通号数 | 74 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2006-02-24 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2005-07-29 |
確定日 | 2005-12-16 |
意匠に係る物品 | 室内壁取付け用給気口 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第0963658号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号物件及びその説明書に示す「室内壁取付け用給気口」の意匠は、登録第0963658号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。 |
理由 |
1.請求の趣旨 本件請求は、イ号意匠が意匠登録第963658号意匠(以下、本件登録意匠という)およびこれに類似する意匠の範囲に属するとの判定を求めるものである。 2.請求人の主張 請求人は、イ号意匠について概ね次のとおり主張し、甲第1〜6号証を提出している。 (1)本件登録意匠は、意匠に係る物品がイ号意匠と一致する。 (2)両意匠は、基本的構成態様において、A〜Eの点が共通する。 A.全体構成を、壁面に装着する矩形のベース板部と、ベース板部の前面に、ベース板との間に通気間隙を設けて配置した前板部と、ベース板の背面に突出して家屋壁孔に装着する円筒部とで構成している点。 B.全体構成の側面視における構成比率について、前板部とベース板部と円筒部の上部における幅を、幅小・幅中・幅大の構成としている。 C.通気開口箇所の全体態様として、前板部とベース板部の通気間隙を上辺部分と左右辺上部に形成し、前板部とベース板部とを下部で連結している。 D.前板部とベース板部との通気間隙の上部に、ベース板部と前板部とを連結する連結部を設けている。 E.前板部の態様として、前板部の前面を平面形状とし、正面視において前板部をベース板部と一致する形状としている。 (3)両意匠は、具体的な構成態様において、V〜Yの点に差異がある。 V.ベース板部と前板部の上部連結箇所において、本件登録意匠は、連結部を板状部材で構成し、ベース部の上端中央1箇所に配置しているのに対し、イ号意匠は、棒状部材で構成し、ベース部の上端左右2箇所に配置している。 W.ベース板部と前板部の下部連結箇所において、本件登録意匠は、左側面視において、L字状のベース板部に前板部を連結しているのに対して、イ号意匠は、右側面視において、L字状の前板部をベース板部に連結している。 X.通気開閉機構において、本件登録意匠は、開閉レバーが無いのに対して、イ号意匠は、開閉レバーを有し、開閉レバーを前板部とベース板部との間に配置している。 Y.背面視の態様において、本件登録意匠は、円筒部内にヒンジ部が視認できるのに対して、イ号意匠は、円筒部内に放射花びら形状の通気口が視認できる。 (4)両意匠の共通点は、本件登録意匠の基本的構成態様に係るものであり、特に、本件登録意匠の要部である「前面を平面形状とし、正面視において前板部をベース板部と一致する形状とした」前板部の形態がイ号意匠と共通しており、両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものである。 (5)両意匠の差異点については、Vの差異は、イ号意匠の態様が本件登録類似意匠と同様の態様であって、類否判断に与える影響は微弱であり、W及びXの差異は、類否判断に対しての影響力が小さく微細なものであり、Yの差異は、使用時に看者にとってほとんど視認できない箇所であることから、意匠上の要部となり得ない点は明らかであり、類否判断における影響力が小さい箇所である。 (6)したがって、イ号意匠は、本件登録意匠の類似範囲に属することは明らかである。 3.被請求人の主張 これに対して、被請求人は平成17年9月20日付で答弁書を提出し、イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないものであるとして、概ね次のとおり主張している。 (1)ベース板部と、ベース板部前面に通気間隙を設けて配置した前面板部と、背面に突出して家屋壁孔に装着する円筒部とを備えている全体構成は、本物品の機能発揮上必然の構成というべきであり、類否判断の意匠的評価は低い。 (2)前面板部の厚さが通気間隙の幅より薄い形態、並びに上辺部及び左右辺に通気間隙が形成されている態様は、物品全体の厚みを薄くするためのもので、甲第5号証の意匠も備えている構成態様であり、意匠的評価は低い。 (3)本件登録意匠は、前面板部の前面が真平らであることが特徴であって、着目される箇所であるが、イ号意匠の当該箇所は湾曲しており、近似形態ではあるが、着目箇所であればあるほど、微妙な相違も意匠の評価において考慮されるべきであって、この相違は、類比判断に大きな影響を与える。 (4)全体構成について、本件登録意匠は、器具全体が一体構成であり、そのまま壁孔に装着されるが、イ号意匠は、壁面固定部と本体部の二部材で構成されており、取引者(設計者や建築業者)が確実に注目する箇所である。また、分離された本体部においては、裏面に得意形状(放射状花弁形状)の通気開閉機構が一見して認められることから、この相違は、意匠の類否判断に大きな影響を与える。 (5)正面視全体比率について、本件登録意匠とイ号意匠は縦横比が大きく相違し、この相違は、意匠の類比に大きな影響を与える。 (6)通気間隙の比率について、本件登録意匠は、ベース板部の厚みよりも通気間隙が広く、イ号意匠は、通気間隙よりもベース板部の幅が広い。室内露出部分の扁平且つ単純な形態においては、通気間隙の比率の大小は、その印象を異にする。 (7)円筒部の突出量について、本件登録意匠の円筒部は、本体部の厚みより短く(60:40)、イ号意匠は長い(45:55)。円筒部は、壁孔に対する挿入長さであり、器具の安定装着の点から取引者は当然に着目する形態である。 (8)連結部の構成について、本件登録意匠は、ベース板部の下方に連結部を内側が角となるように突設し、イ号意匠は、前面板部の下方を後方にR状にして突設している。連結部の構成態様は意匠的評価の高いところである。 (9)上方連結部の形態について、本件登録意匠の上方連結部は、平面視中央に設けた板上部で、イ号意匠は左右隅部に設けた棒状体である。当該箇所は外観的に目に付き易い箇所の形態で、必ずしも意匠的評価が低いとはいえない。 (10)開閉機構について、本件登録意匠は自動開閉であるのに対して、イ号意匠は手動開閉で、操作レバーを所定の位置に設けている。開閉構造は取引者が充分注意を持って観察するところであり、イ号意匠においては重要構成態様である。 (11)器具の壁面装着構造に伴う態様について、イ号意匠は、固定部材を取り付けた後に本体部材を着脱可能に装着するもので、そのための形態として、背面視で認められる四隅のビス孔、ベース板部の底面の取り外し用突起等を備えている。これらの形態は、二部材を分離しない状態でも外観から視認することができ、取引者は当然に着目する形態で、意匠的に評価される箇所である。 4.当審の判断 4.1本件登録意匠とイ号意匠の対比 本件登録意匠は、平成6年11月4日に出願され、平成8年6月24日に意匠登録を受けたものであり、願書及び願書添付の図面によれば、その意匠は、意匠に係る物品「室内壁取付け用給気口」の形状に関する創作物であって、その形状を同図面記載のとおりとしたものである(別紙1参照)。 一方、請求人提出の甲第3、6号証及び被請求人提出の答弁書によれば、イ号意匠は、意匠に係る物品が「室内壁取付け用給気口」であり、その形状は甲第3号証(別紙2参照)として提出された現物に現されたとおりのものである。 両意匠を対比すると、意匠に係る物品については、両者一致し、その形状については、次に示す共通点と相違点が認められる。 [共通点] (1)正面視矩形状のベース板部正面に周側面を面一に揃えた前面板を装着して両者を扁平な箱状にまとめ、ベース板部背面に円筒形の通気ダクトを突出させ、前面板とベース板部の間に上面から左右両側面の下端付近にかけて一定間隔のスリット状通気間隙を設けた全体の基本構成。 (2)前面板とベース板部の連結形態について、ベース板部の下辺付近を正面側に突出させて前面板の下方連結部を設けるとともに上面から一段奥まった部位に上方連結部を設け、上下の連結部によって前面板をベース板部に嵌合固定している点。 (3)前面板自体の形態について、周縁部を背面側に曲げて小幅な周側壁を形成し、正面を平滑面として周縁の角部を丸めている点。 (4)背面形態について、ベース板周側壁の端部に縁取られるように通気ダクトを突出させた背面パネルを配置している点。 [相違点] (1)前面板とベース板部の下方連結部における側面視形態について、本件登録意匠においては、ベース板部両側面の下方を通気間隙幅で側面視略L字形に拡幅するとともに、該拡幅部先端を垂直面に揃えて前面板に対する突き当て面を形成することによって、両者の外周面をベース板部側から前面板に向かって面一に架橋し、さらに拡幅部の入り隅を円弧状に丸めているのに対し、イ号意匠においては、前面板周側壁の下方を通気間隙幅で側面視略L字形に拡幅するとともに、該拡幅部先端を垂直面に揃えてベース板に対する突き当て面を形成し、ベース板部側の連結部を?状に形成して前面板の拡幅部内に嵌め込むことによって、両者の外周面を前面板側からベース板部に向かって面一に架橋し、さらに拡幅部の入り隅を円弧状に丸めている点。 (2)前面板とベース板部の上方連結部の形態について、本件登録意匠においては、該部を小幅な単板状に形成して正面中央に配置しているのに対し、イ号意匠においては、該部を細棒状に形成して左右両隅部に一本ずつ配置している点。 (3)前面板の形態について、本件登録意匠においては、前面板正面を垂直平面状として周側壁を一定幅に形成しているのに対し、イ号意匠においては、前面板正面を平面視円弧状の直立する円柱面状に湾曲させ、周側壁の下方を前記相違点(1)に示すように側面視L字形に拡幅している点。 (4)全体的な寸法比率について、本件登録意匠においては、正面視縦横比を略1:1.4程度とし、通気間隙をベース板中央部の厚み(通気ダクトを除く)よりも多少大きくしているのに対し、イ号意匠においては、正面視縦横比を略1:1とし、通気間隙をベース板中央部の厚み(通気ダクトを除く)よりも多少小さくしている点。 (5)シャッター開閉機構について、本件登録意匠においては、自動開閉機構を採用し、手動操作レバーを設けていないのに対し、イ号意匠においては、手動開閉機構を採用し、下面中央に操作レバーを突出させている点。 (6)通気ダクトの突出幅について、本件登録意匠においては、奥行き全体の1/2弱としているのに対し、イ号意匠においては、奥行き全体の1/2強としている点。 (7)背面パネル及びシャッター板の形態について、本件登録意匠においては、通気ダクトを除いた部分を単なる平板状とし、通気ダクトの内奥にヒンジ部を横一線に設けた平板状シャッター板を配置しているのに対し、イ号意匠においては、通気ダクトを除いた部分を平板状として四隅に細長いビス孔を設け、通気ダクトの内奥に回動式の花弁型シャッター板を配置している点。 4.2 類否判断 これらの共通点及び相違点について検討すると、共通点(1)に示す全体の基本構成は、意匠全体の骨格を成すものであるとともに、共通点(2)に示す前面板とベース板部の連結形態及び共通点(3)に示す前面板自体の形態を併合することによって、両意匠の支配的な基調が形成され、観察者に共通の美感を起こさせるとともに、両意匠間に強い類似性をもたらしているものと認められる。 これに対し、相違点(1)の前面板とベース板部の下方連結部における側面視形態の差異については、それが周側面における通気間隙下端部の形状若しくは、拡幅部の架橋方向の違いに帰着するものであるが、両意匠の周側面の大部分の形態に前記共通点(1)に示す共通性が認められ、しかもイ号意匠の前面板からベース板部に向かって架橋する態様、若しくは下方を拡幅した前面板の形態が、甲第5号証として提示された先行公知意匠である意匠登録第1083996号の類似意匠登録第1号意匠(別紙3参照)にも見られるものであって、イ号意匠の特徴とは成し得ないものである点を考慮すれば、その差異は局所的微差に止まり、前記共通点に基づく類似性を凌ぐものではない。 つぎに、相違点(2)の前面板とベース板部の上方連結部の形態の差異については、イ号意匠の上方連結部の形態が従来より公然知られたもの(別紙3参照)であるとともに、該連結部が周側面から一段奥まった通気間隙内の目立たない箇所に設けられていることから、全体的に見ればその差異は微弱であり、前記共通点に基づく類似性を凌ぐものではない。 つぎに、相違点(3)の前面板の形態の差異については、イ号意匠の前面板正面の湾曲の程度が略平面に近い極めて緩やかなものであり、周側壁下方を拡幅している点についても、相違点(1)に係る差異として前述したとおり、イ号意匠の特徴とは成し得ないものであるであることから、全体的に見ればその差異は微弱であり、前記共通点に基づく類似性を凌ぐものではない。 つぎに、相違点(4)の全体的な寸法比率及び相違点(6)の通気ダクトの突出幅の差異については、正面視縦横比を略1:1としたイ号意匠の寸法比率がありふれたものであり、通気間隙の比率及び通気ダクトの突出幅についても、意匠の構成要素として特筆すべきものはないことから、その差異はいずれも微弱であり、前記共通点に基づく類似性を凌ぐものではない。 つぎに、相違点(5)のシャッター開閉機構の差異については、その差異は内部機構の差異に止まるものであり、イ号意匠の下面に設けられた操作レバーも微細且つ月並みなものであることから、その差異は微弱であり、前記共通点に基づく類似性を凌ぐものではない。 また、相違点(7)の背面パネル及びシャッター板の形態の差異については、イ号意匠の背面パネルにおけるビス孔の形態が月並みなものであり、シャッター板の形態については、内部機構に属するものであって、意匠の構成要素として格別評価すべきものはなく、しかも使用時にはいずれも隠れてしまう部位であることを考慮すれば、その差異は両意匠の類否を左右するものとは成し得ないものである。 さらに、これらの相違点に係るイ号意匠の形態が相俟って表出する視覚効果を勘案しても、上記共通点からもたらされる両意匠の類似性を凌ぐほどの差異を認めることはできない。 すなわち、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものと認められる。 5.むすび したがって、イ号意匠は、本件意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものと認められる。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2005-12-05 |
出願番号 | 意願平6-33712 |
審決分類 |
D
1
2・
1-
YA
(L5)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 杉山 太一 |
特許庁審判長 |
日比野 香 |
特許庁審判官 |
岩井 芳紀 山崎 裕造 |
登録日 | 1996-06-24 |
登録番号 | 意匠登録第963658号(D963658) |
代理人 | 永野 大介 |
代理人 | 内藤 浩樹 |
代理人 | 近藤 彰 |
代理人 | 岩橋 文雄 |