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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) L2
管理番号 1130942 
判定請求番号 判定2005-60028
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2006-03-31 
種別 判定 
判定請求日 2005-04-20 
確定日 2006-01-24 
意匠に係る物品 浸透側溝用基礎版 
事件の表示 上記当事者間の登録第1051820号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「浸透側溝用基礎版」の意匠は、登録第1051820号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
1.請求人は、「イ号意匠は、登録第1051820号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める。」と申し立て、その理由として要旨以下のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
2.請求の理由
(1)本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
(1-1)本件登録意匠とイ号意匠とのかたちを比べると、長さが違っていることと本件登録意匠にあるような、開口部の梁がありません。
その他のかたちはほとんど一緒です。端面の凸形状の様子や平面からみて四角い開口部がある様子は本件登録意匠と一緒です。
図面で比べると細かな寸法などに違うところもありますが、このような土木の製品は美術品などとは違っていてじっくりと鑑賞することが目的のものではないのでその程度の違いを気にする人は誰もいません。
(1-2)イ号意匠と本件登録意匠を比べると相違点と共通点は、本件登録意匠とその類似第1号の間の相違点と共通点と同じようなところです。そして本件登録意匠とその類似第1号との類似の関係からすると、端面から見た凸形状の様子と平面から見た四角い開口部の組み合わせの様子が意匠の重要な部分であると思うので、その部分はイ号意匠も同じです。
そしてイ号意匠もロ号意匠も本件登録意匠も使われ方はまったく同じです。
効果や作用もまるで同じです。
(2)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明
(2-1)イ号意匠と本件登録意匠を比べると、相違点は長手方向の長さと開口部のところの梁の有無です。全体の長さが異なっている点については、このような製品や業界では、長さを状況に応じて変えることはいつも普通に行われているので長さが多少違っていても同じようなものです。
次に開口部の梁の有無は本件登録意匠とイ号意匠は異なっています。本件登録意匠とその類似第1号は開口部の梁の位置も設けられた本数も異なっていますが類似関係にあります。本件登録意匠とその類似意匠の共通するところが意匠の重要なポイントと思うのですが、イ号意匠のかたちもその重要なポイントが本件登録意匠と同じです。
それから、異なるところは全体の長さや梁の有無ですが、長さはこのような製品はいろいろなサイズもあるのでそのバリエーションでしかないと思います。それから梁の有無については強さを求める場合は増やしたり、それほど求めない場合は減らしたり無くしたりすることはいつもどこでも行われているような事柄ですので、重要なポイントから外れる小さい変更にあたると思います。そして類似の判断にあまり関係がないように思います。
(2-2)イ号意匠と本件登録意匠は使われ方が一緒です。かたちの違いで一番違うと思うところを挙げるとすれば、梁の有無だと思いますが、この部分がとても重要な特別な目的やデザイン状の特別な良い印象を持っているなら別ですが、結局は土の中に埋められたらまったく見えなくなる製品ですし、実際のその違いは購入目的とはまったく関係ないものですので大きな違いであるようには思えません。
購入する人たちもその程度の違いはまったくと言っていいほど気にしていないとしか思えません。そしてそのような違いを特別に気に入ってイ号意匠を購入したと思うこともできません。そのようなことからしてもやはりイ号意匠は本件登録意匠と類似しているとしか言いようがありません。このような違いで別とすると、少しの違いでどんどん別のものを作られてしまいせっかく意匠を出願した意味がなくなってしまいとても残念です。
以上のことからするとイ号意匠は本件登録意匠の類似範囲にあるとしか言いようがないので、請求の趣旨通りの判定を求めます。
第2.被請求人の主張
1.被請求人は、「イ号図面並びにその説明書に示す意匠は、登録1051820号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない、との判定を求める。」と答弁し、その理由として要旨以下のように主張し、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
2.答弁の理由
(1)本件登録意匠の手続の経緯の記載には、記載されていないが、甲第1号証は平成8年12月2日付けで特許庁発行の公開実用新案公報昭和54年実用新案出願公開第495号第1図bに表されたコンクリートブロックの意匠(以下公知例意匠)によって実体審査上共通点があるとみられ、拒絶された重要な事実がある。この公知例意匠は上記3項目((a)板のようなものであることと、(b)正面から見た凸形状の様子と、(c)平面上からみて一定の大きさの四角い開口部があるところであります。)の重要なポイントと同じ構成態様を有しており、請求人が重要ポイントであるとすれば、本件登録意匠がその重要ポイントにおいて公知意匠と同じになるという矛盾を生ずるものである。
(2)甲号証第1号及び甲号第2号証については、全体形状の縦横比が1対3及び1対4であり、かなりの横長長方形の比率であるのに対し、イ号意匠は同比が1対2(外形が乙第1号証と同じである)と正方形に近い長方形の比率をしており具体的構成態様が大きく相違している。
(3)甲第1号証及び甲第2号証については、開口部中央に1本及び長手方向をおおよそ3等分するところに2本あるのに対し、イ号意匠は全くないものであり、特に梁の有無は大きな相違感を看る者に与えるものである。
なお、一般に意匠は、甲第1号証と甲第2号証のように、例えば梁が1つと2つと増え、孔も2つと3つ比例して増えれば増えるほど(4つと5つ、さらに5つと6つ)お互いに、全体観察上、両意匠の類似間の距離は狭まっていくものと思慮される。
イ号意匠と甲第1号証のように孔が1つと2つで梁が0と1つの相違は類似範囲上、重要な意味を持つものである。両意匠の非類似の距離は大きく、この相違は大きな非類似要素として判断されるべきである。
被請求人は、イ号意匠と同じ意匠に係る物品として、乙1号証および乙2号証を意匠出願した。その2つの意匠は類似ではなくそれぞれ独立の意匠として、実体審査を経て登録されている。
全体観察上、たとえイ号意匠を乙第1号証に、甲第1号証を乙2号証にあてはめて考えたとしても、イ号意匠と甲第1号証は非類似な意匠であることは一目瞭然である。
(4)内孔の幅は甲第1号証が両側部平坦面と同じ幅のものであるのに対し、公知例意匠は両側部平坦両部の2倍程度の幅を有していて、幅広い開口部である。
この点に関しては、イ号意匠は甲号1号証よりは、むしろ公知例意匠の比率構造(g>f)に近く、甲第1号証の比率構成(g=f)とは相違する。
(5)砕石詰め孔の側面の傾斜の重要性を強調している。
この傾斜については、イ号意匠の内孔のテーパー(h)が甲第1号証とは逆のテーパーであり全く相違するものである。
甲第1号証とイ号意匠との具体的構成態様の大きな相違点の一つは、公知例意匠及び甲第1号証が、型から1工程で一気に抜き取ることができるのに対し、イ号意匠はまず内枠にて孔の型を抜き、次に本体の型を抜き取る2工程で抜き取る為、敢えて逆テーパーにしているものである。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠公報、意匠登録原簿、出願書類によれば、平成5年12月28日の出願に係り、平成11年7月9日に意匠権の設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「浸透側溝用基礎版」とし、その形態は、次のとおりとしたものである。(別紙第1参照)
すなわち、その基本的構成態様は、全体を断面略凸形状の長方形板体とし、その凸部の上面の周縁に余地部を残し、底部にまで貫通する長方形開口部を設けたものである。
その具体的な態様は、(ア)長方形板体の縦横比を約1対3とし、(イ)凸部上面の周縁に前後左右にほぼ同一の細幅の余地部を残し、(ウ)開口部の中央に余地部とほぼ同幅の梁を1本配して、開口部を2つ設け、(エ)その開口部の内側面は、底部に向かってわずかに窄まる傾斜面となっている。
2.イ号意匠
イ号意匠は、請求人が提出した写真によれば、意匠に係る物品は、側溝用の基礎底版で、その形態については、次のとおりとしたものである(別紙第2参照)
すなわち、その基本的構成態様は、全体を断面略凸形状の長方形板体とし、その凸部の上面の周縁に余地部を残し、底部にまで貫通する長方形開口部を設けたものである。
その具体的な態様は、(ア)長方形状板体の縦横比を約1対2とし、(イ)凸部上面の周縁に、左右が細幅で、前後が太幅の余地部を残し、(ウ)長方形開口部を1つ設けたもので、(エ)その開口部の内側面は、底部に向かってわずかに広がる傾斜面となっている。
3.本件登録意匠とイ号意匠との比較検討
(1)意匠に係る物品については、両意匠ともに自由勾配側溝を載せて雨水を地下に染み込ませることができる側溝用基礎版であるから、共通する。
(2)形態については、両意匠の基本的構成態様、すなわち、全体が断面略凸形状の長方形板体とし、その凸部の上面の周縁に余地部を残し、底部にまで貫通する長方形開口部を設けた点が共通するものと認められる。
一方、具体的な態様において、以下の点に差異が認められる。
(ア)長方形板体の縦横比について、本件登録願意匠は、約1対3であるのに対して、イ号意匠は、約1対2である点。
(イ)凸部上面の周縁の余地部について、本件登録意匠は、前後左右ほぼ同一の細幅としているのに対して、イ号意匠は、左右が細幅で、前後を太幅としている点。
(ウ)開口部について、本件登録意匠は、中央に周縁の余地部とほぼ同幅の梁を1本配して、開口部を2つ設けているのに対して、イ号意匠は、開口部には梁がなく、開口部を1つ設けている点。
(エ)開口部の内側面について、本件登録意匠は、底部に向かってわずかに窄まる傾斜面となっているのに対し、イ号意匠は、底部に向かってわずかに広がる傾斜面となっている点。
(3)そこで、本件登録意匠とイ号意匠を全体として観察し、共通点及び差異点の類否判断に与える影響について、総合的に考察する。
まず、両意匠ともに自由勾配側溝を載せて雨水を地下に染み込ませることができる浸透側溝用基礎版であるから、板体上面の開口部は機能上不可欠なものであり、看者が最も着目するところである。
そうすると、その開口部の形状、大きさ、数、周縁の幅等は、意匠の類似判断において、重要な要素と認められる。
これを前提に考察するに、両意匠において共通するとした基本的構成態様は、両意匠の骨格をなすものであるが、この種物品分野においては、本件登録意匠の出願前に他に見受けられる態様であるから(例えば、公開特許公報記載の特許出願公開平3-233034号の第2図(B)の勾配底板の意匠(別紙第3参照)、公開特許公報記載の特許出願公開平2-13624号の第34図の凸蓋の意匠(別紙第4参照))、格別高く評価することができないものであり、類否判断に及ぼす影響は小さいものと認められる。
一方、差異点(ア)については、この差異は、本体の長方形状板体の縦横比の差であるが、この種物品分野において、長さを適宜調節することは、ごく普通に行われているところであり、両意匠とも格別特徴があるとはいえず、この差異は、類否判断を左右する要素としては、微弱なものというほかない。
差異点(イ)について、この差異は、凸部上面の周縁の余地部の幅の違いであるが、当該部位は、施工時上方に位置し、看者の注意を引くところであり、本件登録意匠が、前後左右ほぼ同一の細幅であるのに対して、イ号意匠は、左右は細幅で前後が約6倍の太幅であることから、両意匠は、看者に異なる印象を与えるものであり、この差異は、大きいものといわざるを得ない。
差異点(ウ)について、この差異は、開口部中央の梁の有無であるが、前記「差異(イ)について」においての述べたように、両意匠は、開口部周縁の幅が異なるため、イ号意匠は、単に本件登録意匠の梁を除いたもの、あるいは、単に中央で分割したものともいえないこと、また、本件登録意匠のように中央に梁を設けて開口部を分割した態様は、全体を断面凸形状の長方形板体とした、比較的単純な形態の中では、梁の有無は目立つものであることから、両意匠は、看者に異なる印象を与えるものと認められる。そうすると、この差異は、大きいものといわざるを得ない。
差異点(エ)について、この差異は、この点のみ子細に観察すればともかく、意匠全体としてみれば、共通するとした態様に包摂される程度の部分的かつ、微細なものといわざるを得ない。
そして、これらを総合し、意匠全体として観察した場合、差異点(イ)の開口部周縁の余地部の幅の具体的態様の差異と、差異点(ウ)開口部の梁の有無の差異は、大きいものであって、これらの差異が相俟って表出する両意匠の印象の差異は、前記共通点を凌駕して、両意匠が看者に別異の印象を与えるものであり、両意匠の類否判断を左右するところと認められる。
以上のとおり、イ号意匠と本件登録意匠は、意匠に係る物品が共通するが、形態については、共通点があっても、類否判断を左右する差異点があるから、イ号意匠は、本件登録意匠に類似しているものということができない。
第4. むすび
よって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないものであるから、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2006-01-11 
出願番号 意願平5-39655 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (L2)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高野 善民下村 圭子 
特許庁審判長 藤 正明
特許庁審判官 上島 靖範
西本 幸男
登録日 1999-07-09 
登録番号 意匠登録第1051820号(D1051820) 
代理人 小川 勝男 

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