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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) K9
管理番号 1130943 
判定請求番号 判定2005-60034
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2006-03-31 
種別 判定 
判定請求日 2005-05-24 
確定日 2006-02-14 
意匠に係る物品 摺動テーブル付きエアーシリンダー 
事件の表示 上記当事者間の登録第1189225号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「エアースライドテーブル」の意匠は、登録第1189225号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号図面及びその説明書に示す「エアースライドテーブル」が、登録第1189225号意匠およびこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求めるものである。
第2 本件登録意匠
本件登録意匠は、平成14(2002)年3月28日に意匠登録出願され、その後平成15(2003)年9月12日に、意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1189225号の意匠であって、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「摺動テーブル付きエアーシリンダー」とし、形態は、願書の記載及びその添附図面に表されたとおりである。(本件判定に添付の別掲第1参照)
すなわち、その形態は、概略以下のとおりである。
1 基本的構成態様
全体が、テーブルとその下方のシリンダー本体を略横長直方体状に現して、そのシリンダー本体の正面側に略横長板状のスイッチレールを設けて成るものであって、テーブルは、平面が略長方形状を呈する略倒L字板状に形成して、その底面中央部に右側面視凹部を設けたものとし、シリンダー本体は、略長方形板状に形成して、その平面中央部に右側面視凸状のガイドレール部を設けたものとし、そうして、テーブルとシリンダー本体は、その凹部とガイドレール部を嵌合すると共に、ピストンロッドにより連結して、テーブルを長手方向に摺動自在としたものである。
2 具体的態様
(1)テーブルは、その左側面部の左右上部を切り欠いて取り付けたボルトにより、左側面部と平面部を結合して略一体のものとしたものであって、テーブル平面部の正面寄りと背面寄りのそれぞれ4箇所に、短手方向に対称な略円孔を設けると共に、左方から1箇所目と3箇所目の短手方向の中間にそれぞれ略円孔を設け、テーブル正面部の右半部に略凸板状のマグネットホルダーを取り付け、テーブル左側面部の中央下部を略逆U字状に切り欠いて円形ナットを取り付け、その左右両側に円孔を設け、テーブル右側面部の中央部に略倒コ字状の保持プレートを取り付け、テーブル背面部の左半部に円孔を2個設けたものである。
(2)シリンダー本体は、その右側面部の中央部に円形シリンダーキャップを嵌め込み、シリンダー本体背面部に円孔を4個長手方向に略直列状に設け、その背面上部に長方形区画を2箇所設け、シリンダー本体底面部の正面寄りと背面寄りのそれぞれ3箇所に、短手方向に対称な略円孔を設け、その底面略中央部に幅広の極浅い帯状凹溝を1本長手方向に設けたものである。
(3)スイッチレールは、平面視略倒コ字状の右側面視略L字状に形成して、その正面部の上下部に、右側面視略倒U字状を呈する溝を長手方向に設けたものである。
なお、被請求人は、本件登録意匠の要部について、本件判定請求書における主張が、請求人の審査における意見書(乙第3号証)の主張と反しているから、包袋禁反言の法理に照らし許されない旨主張しているが、当審の認定は前記のとおりである。
第3 イ号意匠
被請求人は、イ号意匠について、製造も販売もしていないと述べつつも、イ号意匠は本件登録意匠およびこれに類似する意匠の範囲に属しないとして争い、答弁しているものであるから、このまま進める。
イ号意匠は、判定請求書の記載によれば、意匠に係る物品を「エアースライドテーブル」とし、形態は、判定請求書に添付のイ号図面(甲第2号証の1)及びその説明書に表されたとおりである。(本件判定に添付の別掲第2参照)
すなわち、その形態は、概略以下のとおりである。
1 基本的構成態様
全体が、テーブルとその下方のシリンダー本体を略横長直方体状に現して、そのシリンダー本体の正面側に略横長板状のスイッチレールを設けて成るものであって、テーブルは、平面が略長方形状を呈する略倒L字板状に形成して、その底面中央部に右側面視凹部を設けたものとし、シリンダー本体は、略長方形板状に形成して、その平面中央部に右側面視凸状のガイドレール部を設けたものとし、そうして、テーブルとシリンダー本体は、その凹部とガイドレール部を嵌合すると共に、ピストンロッドにより連結して、テーブルを長手方向に摺動自在としたものである。
2 具体的態様
(1)テーブルは、その全体を一体のものとし、テーブル平面部の正面寄りと背面寄りのそれぞれ4箇所に、短手方向に対称な略円孔を設けると共に、左方から1箇所目と3箇所目の短手方向の中間にそれぞれ略円孔を設け、その平面中央部に幅広の極浅い帯状凹溝を1本長手方向に設け、テーブル左側面部の中央下部を略逆U字状に切り欠いて円形ナットを取り付け、その左右両側に円孔を設け、テーブル右側面部の中央部を僅かに凹嵌して略倒コ字状の保持プレートを取り付け、その正面側に円孔を1箇所設け、テーブル背面部の左半部に円孔を2個設けたものである。
(2)シリンダー本体は、その正面部の右半部に略凸板状のマグネットホルダーを取り付け、シリンダー本体右側面部の中央部に円形シリンダーキャップを嵌め込み、その左右両側に円孔を設け、シリンダー本体背面部に円孔を4個長手方向に略直列状に設け、その背面上部に長方形区画を2箇所設け、シリンダー本体底面部の正面寄りと背面寄りのそれぞれ3箇所に、短手方向に対称な略円孔を設け、その底面略中央部に幅狭の極浅い帯状凹溝を2本長手方向に設けたものである。
(3)スイッチレールは、平面視略倒コ字状の右側面視略L字状に形成して、その正面部の上下部に、右側面視略倒U字状を呈する溝を長手方向に設けたものである。
なお、請求人は、スイッチレール付きのMXJ4、MXJ6、MXJ8の意匠(甲第2号証の3)も、イ号意匠であるかのような主張をしているが、当審の認定は前記のとおりである。
第4 請求人の申し立て及び理由
請求人は、イ号意匠は本件登録意匠およびこれに類似する意匠の範囲に属するとの判定を求め、その理由として判定請求書に記載のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証(枝番を含む)を提出した。
すなわち、その主張は、概略以下のとおりである。
1 イ号意匠が本件登録意匠およびこれに類似する意匠の範囲に属する理由
意匠の類否観察は意匠全体で比較観察されている。すなわち、本件登録意匠とイ号意匠とを比較すると、本件登録意匠とイ号意匠には、相違点に比して基本的なそして多くの主要な共通点を有している。確かに、イ号意匠は本件登録意匠と相違してテーブルと連結プレートとが一体に形成され、テーブルの表面には凹部が形成されているが、これらの2つの相違点は、共通点の多さからすると、ほんの僅かな差異に過ぎず、本件登録意匠に係る物品を取り扱う当業者は、おびただしい同一点ないし共通点の存在によって、当業者はイ号意匠を本件登録意匠と同一の創作物と誤解し、本件登録意匠とイ号意匠とを混同することになる。
2 先行周辺意匠
本件登録意匠が意匠登録第1000616号の類似1号(甲第6号証)の意匠とは非類似であるとされた根拠である要旨をイ号意匠は共通点として具備しており、たとえ相違点があるとしても、意匠全体で観察すると、イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属することになる。
第5 被請求人の答弁及び理由
被請求人は、イ号意匠は本件登録意匠およびこれに類似する意匠の範囲に属しないと答弁し、その理由として判定答弁書に記載のとおり主張し、証拠方法として乙第1号証ないし乙第7号証(枝番を含む)を提出した。
すなわち、その主張は、概略以下のとおりである。
1 イ号意匠が本件登録意匠およびこれに類似する意匠の範囲に属しない理由
(1)共通の形態
請求人が主張する共通点は、請求人自らの恣意的な選択において、特定した形態に基づくものであり、構成上の共通点を掲げているに過ぎない。言うまでもなく、意匠の本質は全体的な美観である。従って、ある構成要素の配置位置や、その形状等についても、事実として存在する以上、全てに言及した上で「共通点」、「相違点」として、掲げるべきであろう。
(2)形態の相違点
本件登録意匠とイ号意匠とでは、連結プレートの形態が相違し、スイッチレールの形態も明らかに相違している。そして、テーブルの形態自体もねじ孔や貫通孔の配置位置が異なることから相違点として掲げられるべきである。
結局、請求人の主張は登録意匠とイ号意匠とが客観的にどのような相違点を有するかについて検討することなく、自らの利益になるようにこの相違点を列記したに過ぎない。
2 先行周辺意匠
請求人は、本件の出願時に引用された甲第6号証の意匠との関係を纏々説明し、特に、引用された甲第6号証の意匠と本件登録意匠は、シリンダー本体の形態、連結プレートの形態において異なっていると主張している。これらのシリンダー本体の特徴ある形態及び摺動テーブルの特徴ある形態に関する請求人の主張には当然に包袋禁反言が適用される要件となろう。
(1)乙第4号証は米国特許公報第4854563号である。この図3から明らかなとおり、テーブル上面はフラットな形状であり、また、シリンダー本体両側面は長手方向全体にわたり略均一な厚みになっている形態が示されている。
(2)乙第5号証は、登録第858349号意匠公報である。この乙第5号証には、テーブルがプレートと一体構造となっている形態、そして、逆U字溝がプレートの幅方向、略中央部に形成されている形態、そして、テーブル上面がフラットな形態が示されている。
(3)乙第6号証は、登録第847999号意匠公報である。この乙第6号証によれば、テーブルはプレートと一体的なL型構造を呈している。
(4)乙第7号証は、被請求人が権利者である登録第926798号意匠公報である。この乙第7号証によれば、テーブルは連結プレートとともに、L型になっている形態が示されている。
以上のことからすれば、本件登録意匠に関連して請求人が主張するように、全体として扁平薄型形態、均一厚み形態、逆U字溝付き形態、表面フラットの形態、L型テーブル形態については明らかにこれら乙第4号証~乙第7号証に明示されている。従って、請求人の認識にも関わらず、これらの形態は必ずしも本件登録意匠の要部たり得るものではない。寧ろ、乙第3号証で示されるように、すなわち、甲第6号証に関連して拒絶理由を回避するために特定されたシリンダー本体、摺動テーブルの形態が本件登録意匠の要部と言えよう。そして、イ号意匠はそれらの要部を有するものではない。
第6 本件登録意匠とイ号意匠の対比
本件登録意匠とイ号意匠を意匠全体として対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態については、主として、以下に示す共通点及び差異点がある。
1 基本的構成態様の共通点
全体が、テーブルとその下方のシリンダー本体を略横長直方体状に現して、そのシリンダー本体の正面側に略横長板状のスイッチレールを設けて成るものであって、テーブルは、平面が略長方形状を呈する略倒L字板状に形成して、その底面中央部に右側面視凹部を設けたものとし、シリンダー本体は、略長方形板状に形成して、その平面中央部に右側面視凸状のガイドレール部を設けたものとし、そうして、テーブルとシリンダー本体は、その凹部とガイドレール部を嵌合すると共に、ピストンロッドにより連結して、テーブルを長手方向に摺動自在としたものである。
2 具体的態様の共通点
(A)テーブルは、その平面部の正面寄りと背面寄りのそれぞれ4箇所に、短手方向に対称な略円孔を設けると共に、左方から1箇所目と3箇所目の短手方向の中間にそれぞれ略円孔を設け、テーブル左側面部の中央下部を略逆U字状に切り欠いて円形ナットを取り付け、その左右両側に円孔を設け、テーブル右側面部の中央部に略倒コ字状の保持プレートを取り付け、テーブル背面部の左半部に円孔を2個設けたものである点。
(B)シリンダー本体は、その右側面部の中央部に円形シリンダーキャップを嵌め込み、シリンダー本体背面部に円孔を4個長手方向へ略直列状に設け、その背面上部に長方形区画を2箇所設け、シリンダー本体底面部の正面寄りと背面寄りのそれぞれ3箇所に、短手方向に対称な略円孔を設け、その底面略中央部に極浅い帯状凹溝を長手方向に設けたものである点。
(C)スイッチレールは、平面視略倒コ字状の右側面視略L字状に形成して、その正面部の上下部に、右側面視略倒U字状を呈する溝を長手方向に設けたものである点。
3 具体的態様の差異点
(ア)テーブルの態様について、本件登録意匠は、テーブルの左側面部と平面部を結合して略一体のものとしているのに対して、イ号意匠は、テーブル全体を一体のものとしている点。
(イ)テーブルの平面中央部の帯状凹溝の有無について、イ号意匠は、テーブル平面中央部に幅広の帯状凹溝を1本設けているのに対して、本件登録意匠は、その帯状凹溝を設けていない点。
(ウ)テーブルの右側面部の凹嵌部と円孔の有無について、イ号意匠は、テーブルの右側面部の中央部に僅かに凹嵌する凹嵌部を設け、その正面側に円孔を1箇所設けているのに対して、本件登録意匠は、その凹嵌部も円孔も設けていない点。
(エ)シリンダー本体の右側面部の円孔の有無について、イ号意匠は、シリンダー本体の右側面部の円形シリンダーキャップの左右両側に円孔を設けているのに対して、本件登録意匠は、その円孔を設けていない点。
(オ)シリンダー本体の底面略中央部の帯状凹溝について、本件登録意匠は、幅広の帯状凹溝を1本設けているのに対して、イ号意匠は、幅狭の帯状凹溝を2本設けている点。
(カ)スイッチレールの背面側上部の態様について、本件登録意匠は、側面視略弧状に切り欠いているのに対して、イ号意匠は、側面視略斜めの傾斜状に切り欠いている点。
第7 両意匠の類否判断
両意匠の共通点及び差異点を総合して両意匠を全体観察し、その類否を以下に検討する。
1 基本的な構成態様の共通点の評価
両意匠に共通するとした基本的構成態様は、形態の主要な構成の概観を呈し、形態全体の基調を表象するものであるが、その構成態様は、この種物品の属する分野において、既に一般化しているところであり、両意匠独自の構成態様とは言い難い。
しかしながら、両意匠の差異点が、以下に示すように、微弱の域に止まることを鑑みると、その構成態様は、類否判断に影響を及ぼすといわざるを得ない。
2 具体的態様の共通点の評価
(A)テーブルついては、テーブル左側面部の中央下部を略逆U字状に切り欠いて円形ナットを取り付け、その左右両側に円孔を設けたものは、乙第5号証に、また、テーブル右側面部の中央部に略倒コ字状の保持プレートを取り付け、テーブル背面部の左半部に円孔を2個設けたものは、甲第6号証により、既に知られているところである。
しかしながら、テーブル平面部の正面寄りと背面寄りのそれぞれ4箇所に、短手方向に対称な略円孔を設けると共に、左方から1箇所目と3箇所目の短手方向の中間にそれぞれ略円孔を設けて成る点は、 この種物品の属する分野において、本件登録意匠の出願前に、見受けられないものであり、また、この種物品の一際目立つ部分における態様であることも勘案すれば、形態上の構成要素として評価すべきものであり、前記の共通点と相俟って、看者の注意を際立って引くものであるから、類否判断に影響を及ぼすといわざるを得ない。
(B)シリンダー本体について、シリンダー本体の右側面部の中央部に円形シリンダーキャップを嵌め込み、シリンダー本体背面部に円孔を4個長手方向へ略直列状に設けたものは、甲第6号証に、また、シリンダー本体の背面上部に長方形区画を2箇所設けたものは、意匠登録第1051181号に、さらに、シリンダー本体底面部の正面寄りと背面寄りのそれぞれ3箇所に、短手方向に対称な略円孔を設けたものは、乙第7号証に、さらにまた、シリンダー本体の底面略中央部に極浅い帯状凹溝を設けたものは、意匠登録第1051181号により、既に知られているところである。
しかしながら、シリンダー本体は、この種物品において大きな割合を占める部分であること、また、両意匠の差異点が微弱の域に止まることを鑑みると、前記の共通点が既に知られているとしても、その共通点は、類否判断に影響を及ぼすものとなり得るものである。
(C)スイッチレールについて、平面視略倒コ字状の右側面視略L字状に形成して、その正面部の上下部に、右側面視略倒U字状を呈する溝を長手方向に設けたものである点は、この種物品の属する分野において、本件登録意匠の出願前に、見受けられないものであり、また、この種物品の目立つ部分における態様であることも勘案すれば、形態上の構成要素として評価すべきものであり、看者の注意を十分に引くものであるから、類否判断に影響を及ぼすといわざるを得ない。
そうすると、前記の共通点のうち、(A)及び(C)の点については、形態各部の醸し出す印象を同じにするものであり、その余の共通点と相俟って、両意匠の形態全体の特徴を表出するものであるから、類否判断を左右するというべきである。
3 具体的態様の差異点の評価
(ア)テーブルの態様については、両意匠のその態様に若干の差異があるとしても、専ら構造に起因する技術的相違にすぎないものであり、異質の造形感を生じるとはいい難いものであって、また、テーブル全体を一体のものとしているもの(乙第4号証)、或いは、テーブルの左側面部と平面部を結合して略一体のものとしているもの(甲第6号証)が、既に知られているところであり、機能的にはともかく、意匠上は殊更評価できないものであって、格別看者の注意を引くとはいえず、その差異は、形態全体から観れば、共通するとした態様を翻して、別異の態様を表す程の印象を与えるとはいえないから、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎない。
(イ)テーブルの平面中央部の帯状凹溝の有無については、イ号意匠が幅広の帯状凹溝を設けているとしても極浅いものであり、また、帯状凹溝を設けたものは、甲第6号証及び乙第7号証により、既に知られているところであって、格別看者の注意を引くとはいえず、その差異は、形態全体から観れば、共通するとした態様の共通感を凌駕するものとはいえないから、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎない。
(ウ)テーブルの右側面部の凹嵌部と円孔の有無については、イ号意匠が凹嵌部と円孔を設けているとしても、テーブルの一部を僅かに凹嵌した程度であり、また、円孔を設けたものも、乙第5号証により、既に知られているところであって、(エ)シリンダー本体の右側面部の円孔の有無については、イ号意匠が円形シリンダーキャップの左右両側に円孔を設けているとしても、その部分を注視して気付く程度にすぎないものであって、それ程看者の注意を引くとはいえず、その差異は、形態全体から観れば、部分的で軽微な差異であって、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎない。
(オ)シリンダー本体の底面略中央部の帯状凹溝については、イ号意匠が帯状凹溝を2本設けているとしても、それぞれ幅狭の極浅いものであり、また、帯状凹溝を2本設けているものは、乙第3号証、乙第5号証、乙第7号証により、既に知られているところであって、(カ)スイッチレールの背面側上部の態様については、その部分を注視して気付く程度にすぎないものであって、看者の注意を引くとはいえず、その差異は、形態全体から観れば、共通点に包含される軽微な差異であって、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎない。
そうすると、前記の(ア)ないし(カ)の差異点は、何れも類否判断に及ぼす影響が微弱にすぎず、さらに、それらの差異点を纏めても、具体的態様の共通点が表出する特徴を凌駕して、両意匠の形態全体の印象を異にする程の格別な特徴を表出するとはいい難いから、類否判断に及ぼす影響がなお微弱の域を超えないというべきである。
3 まとめ
両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態においても、差異点の類否判断に及ぼす影響が微弱の域に止まることを考慮すると、両意匠に共通するとした基本的構成態様、並びに、具体的態様の共通点が相俟って、両意匠の形態全体に著しい共通感を奏するものであるから、意匠全体として観察すると、類似するものというほかない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2006-02-02 
出願番号 意願2002-8275(D2002-8275) 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (K9)
最終処分 成立  
前審関与審査官 本田 憲一 
特許庁審判長 伊勢 孝俊
特許庁審判官 小林 裕和
鍋田 和宣
登録日 2003-09-12 
登録番号 意匠登録第1189225号(D1189225) 
代理人 筒井 大和 
代理人 小塚 善高 
代理人 宮寺 利幸 
代理人 千葉 剛宏 

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