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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K1 |
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管理番号 | 1136217 |
審判番号 | 不服2005-9831 |
総通号数 | 78 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2006-06-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-04-22 |
確定日 | 2006-03-29 |
意匠に係る物品 | 配管化粧カバー切断器 |
事件の表示 | 意願2003- 37382「配管化粧カバー切断器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は、平成15年(2003)12月18日の意匠登録出願であって、その意匠(以下、「本願意匠」という。)は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「配管化粧カバー切断器」とし、その形態は、願書に添付した図面に記載されたとおりのものである(別紙第一参照)。 第2 引用意匠 本願意匠が類似するとして原審が拒絶の理由に引用した意匠(以下、「引用意匠」という。)は、本願の出願の日前、平成12(2000)年5月8日に発行された意匠公報に掲載された意匠登録第1068681号の「ダクトカバー切断器」の意匠であって、その形態は、上記意匠公報に記載されたとおりのものである(別紙第二参照)。 第3 両意匠の対比 本願意匠と引用意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、両意匠の形態(本願意匠の方向に倣って、引用意匠の方向を認定する。)については、主として以下の共通点と差異点が認められる。 基本的構成態様の共通点は以下のとおりである。 (1)全体が、正面から見て、左側のダクト受け部と右側の上部ハンドルから成る本体部に、ダクト受け部に当接する切断刃と、上部ハンドルに対向する下部ハンドルを、それぞれ回動自在に取り付けて一体としたものである。 具体的構成態様の共通点は以下のとおりである。 (2)本体部は、正面から見て、ダクト受け部の右方に切断刃を支持する回動軸が略円形状に表れ、ダクト受け部の下方には本体部中央下方に向かってやや傾斜した略平坦な底部が形成されている。 (3)切断刃は、正面から見て、下端に刃先部を有して左端にいくにつれて上下幅が細くなり、右端には波状部が形成されている。 (4)ダクト受け部は、略矩形状でその上部に複数の凹凸が形成された櫛刃状に表され、本体寄り2番目の凸部が幅広であり、その余の凸部が細幅である。 (5)下部ハンドルは、正面から見て、下端に緩やかな弧状の凹部が波状に二つ形成され、右端寄りには上部ハンドルとの係止部が設けられている。 一方、具体的構成態様の差異点は以下のとおりである。 (イ)本体部の形状について、正面から見て、引用意匠では、回動軸右上方の上端が上方に略へ字状に隆起し、その隆起部の右側上面に小突起部が設けられているが、本願意匠では、緩やかな弧状に隆起し、小突起部は見られない。また、引用意匠では、回動軸右方に略扁平楕円形状のレバー状部が前方に突設され、それを囲うように本体の下縁が鋭く屈曲し、その屈曲部から底部に連続する縁が右傾き状になって長く形成されているが、本願意匠では、レバー状部も鋭い屈曲部もなく、レバー状部に相当する部分に余地部が設けられ、その下縁が緩やかに左下に傾斜していって下方に屈曲し、その屈曲部から底部に連続する縁が左傾き状に短く形成されている。 (ロ)下部ハンドルの形状について、正面から見て、引用意匠では、左端寄りの上下幅が大きくなり、面積が大きく表れているのに対し、本願意匠のその部分の形状は、引用意匠に比べて上下幅が小さく、面積も小さく表れている。 (ハ)ダクト受け部の形状について、本願意匠では、正面視左下方に傾斜しており、凸部が五つ形成されているのに対して、引用意匠では、傾斜はなく略水平であって、凸部は四つ形成されている。 (ニ)本体部表面の態様について、本願意匠には、本体部底部に正面視略倒L字状に面取りされた部分が形成され、本体部の回動軸右方にも、略L字状に面取りされて右側面視段状になるように形成されているが、引用意匠には、そのような面取りは施されていない。 第4 両意匠の類否の判断 両意匠の共通点及び差異点を総合して、両意匠を全体として考察すると、前記共通するとした、(1)の基本的構成態様、及び具体的構成態様の共通点(2)及び(3)は、本件登録意匠の出願前にこの種物品の属する分野において、他にも見受けられる態様であって(例えば、意匠登録第942700号。)、格別看者の注意を惹くものとはいい難いから、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎず、また、共通点(4)については、ダクト受け部の上部に凹凸を形成することは用途に応じて適宜選択され得るものであるから看者に顕著な美感を呈する程のものとはいい難く、共通点(5)についても、本件登録意匠の出願前にこの種物品分野においてありふれている(例えば、意匠登録第1188438号。)ので類否判断に及ぼす影響は微弱にとどまり、さらに、それらの共通点をまとめても、特段際立った特徴を奏するとはいい難いので、類否判断に及ぼす影響はなお微弱の域を超えるものではない。 これに対して、具体的構成態様の差異点については、以下のように、類否判断を左右する要素であるといわざるを得ない。 (イ)の本体部の形状の差異については、いずれも視覚的に目立つ部位に関するものであり、両意匠の視覚的印象を左右する要素であるところ、回動軸右上方の上端形状の相違や、レバー状部と余地部の相違は、看者の視覚的印象を異にするものであり、また、両意匠の屈曲部の位置及び態様は明らかに異なっており、屈曲部から底部に連続する縁の傾き方向と長さも大きく異なっているから、両意匠の視覚的印象を別異のものとしているので、本体部の形状の差異は類否判断に影響を及ぼすものといえる。 (ロ)の下部ハンドルの形状の差異についても、本願意匠の形状は引用意匠に比べて細く、形状も異なっているので、看者に異なる視覚的効果を与えていることから、類否判断に影響を及ぼすものといえる。 (ハ)のダクト受け部の形状、及び(ニ)の本体部表面の態様の差異についても、両意匠の正面視及び側面視等において、その差異がはっきりと看取されるものであり、両意匠の形状や態様を特徴づけていることから、これらの差異は、両意匠の視覚的印象に変化を与えるものであり、両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱とはいえない。 そうすると、前記(イ)ないし(ニ)の差異点は、いずれも両意匠に共通するとした構成態様を翻す程の印象を看者に与えるものであり、それらの差異点が相俟って、両意匠の形態全体の印象を異にする程の差異感を与えるものであるから、類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品が共通しているが、形態において、差異点が両意匠の共通点を凌駕して類否判断を左右するという外ないから、本願意匠は、引用意匠に類似する意匠とはいえない。 第5 むすび 本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当せず、原査定の拒絶の理由によっては、拒絶すべきものとすることはできない。 また、本願意匠について、他に拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2006-03-07 |
出願番号 | 意願2003-37382(D2003-37382) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(K1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 温品 博康 |
特許庁審判長 |
伊勢 孝俊 |
特許庁審判官 |
小林 裕和 鍋田 和宣 |
登録日 | 2006-05-19 |
登録番号 | 意匠登録第1275416号(D1275416) |