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審決分類 審判    K4
管理番号 1146469 
審判番号 無効2006-88002
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2006-12-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-01-27 
確定日 2006-10-17 
意匠に係る物品 トンネル式冷凍冷却機 
事件の表示 上記当事者間の登録第1138136号「トンネル式冷凍冷却機」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1138136号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 請求の趣旨
本件審判の請求の趣旨は、「意匠登録第1138136号の意匠(以下、「本件登録意匠」という。)の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。」というものである。
第2 本件登録意匠
本件登録意匠は、平成12(2000)年6月27日に意匠登録出願され、その後の平成14(2002)年2月15日に、意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1138136号の意匠であって、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「トンネル式冷凍冷却機」とし、形態は、願書の記載及び願書の添付図面に現されたとおりである。(本件審決書に添付の別掲第1参照)
第3 請求人の主張
請求人は、請求の理由として、概略次のとおり主張し、その証拠方法として、甲第1号証ないし甲第16号証(枝番を含む。)を提出した。
1 無効理由の要点
(1)本件登録意匠は、意匠登録出願前に頒布されたカタログ(甲第4号証)、新聞に掲載された写真(甲第8号証、甲第9号証)の各意匠に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることが出来ないものであるので、本件意匠登録は同法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
(2)本件登録意匠は、意匠登録出願前に当業者が、公知の甲第4号証のカタログ、甲第15号証のパンフレットに記載された形状に基づいて容易に意匠の創作をすることが出来たものであるから意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるので、本件意匠登録は同法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
2 前記無効理由の(1)について
(1)先行意匠が存在する事実及び証拠の説明
請求人は、本件登録意匠の出願日である平成12年6月27日より前にトンネルフリーザーの意匠を創作し、国際食品工業展に展示するため、平成12年3月23日に甲第2号証のトンネルフリーザーの図面を作成した。この図面に基づいてトンネルフリーザーを製造し、このトンネルフリーザーを前記国際食品工業展において、平成12年5月15日から18日まで展示した。
前記国際食品工業展において、国際食品工業展用に作成したカタログ(甲第4号証)3000部を一般に頒布した。
この国際食品工業展に請求人が出展していたことは、トンネルフリーザーを展示した写真(甲第3号証)、同カタログの陳述書(甲第5号証)、国際食品工業展出展申込書(甲第6号証の1)、国際食品工業展のご案内(甲第6号証の2)、国際食品工業展のパンフレット(甲第6号証の3、同4、同5)、出展会社名一覧(甲第6号証の6)、出展者名(甲第6号証の7)、平成12年5 月15 日付「冷凍食品新聞(甲第8号証)」及び平成12年5月16 日付「冷食タイムス(甲第9号証)」により裏付けられる。
また、国際食品工業展用に作成したカタログ(甲第4号証)及び各新聞(甲第8号証、甲第9号証)に掲載されたトンネルフリーザーの写真は何れも同じ写真を使用したものである。
請求人の引用意匠の図面(甲第1号証)は、国際食品工業展仕様機のトンネルフリーザーの図面(甲第2号証)に基づいて作成したものである。
(2)本件登録意匠と引用意匠との対比
本件登録意匠の意匠に係る物品は「トンネル式冷凍冷却機」であり、引用意匠(甲第1号証)の意匠に係る物品は「トンネルフリーザー」である。フリーザーは冷凍冷却機と同義である。従って、それぞれの意匠に係る物品の用途及び機能が共通しているので、両意匠の意匠に係る物品は共通する。
(ア)両意匠の共通点
両意匠は、形態の基本的構成態様において、(A) 胴長の中空状胴体部と、この胴体部両端に端部壁をもつトンネル式冷凍冷却機である、(B)胴体部の正面視は、直線状の両側壁と上下中央がそれぞれ外側に緩やかに膨らんだ頂板及び底板からなり、上下対称の形状である、(C)胴体部には開閉扉が設けられており、開閉扉は胴体部の一部を構成する、(D)胴体部の両端部壁には食品等の搬入出用の開口部が設けられており、開口部よりベルトコンベアの先端部が突出する点が共通する。
両意匠は、形態の具体的構成態様において、(I)開閉扉は胴体部の左右に2枚ずつ、合計4枚が左右両開きとなるように設けられている、(J)開閉扉は、頂板から始まる基部と、基部の終端から側壁下部まで連なる翼部とから形成され、翼部の断面はほぼL字状をなしている、(K)開閉扉を開くと、翼部の先端がほぼ水平方向に向いた状態となる点が共通する。
(イ)両意匠の相違点
両意匠は、形態の具体的構成態様において、(E)本件登録意匠では、正面視において頂板と両側壁及び底板と両側壁の連続部分は、曲率半径が大きく角が丸くなっているのに対し、引用意匠では、頂板と両側壁及び底板と両側壁の連続部分は曲率半径が小さく角が丸くなっている、(F)本件登録意匠は正面視において、端部壁の全体形状が略六角形で、直線状の両側壁と上下中央がそれぞれ外側に膨らんだ頂板と底板からなるのに対し、引用意匠では、正面視において、直線状の両側壁と上下中央からそれぞれ外側に膨らんだ穏やかな弧状の頂板と底板からなる、(G)本件登録意匠では、胴体部は、正面視において高さと幅の比率が約1.3:1.3であるのに対し、引用意匠では、正面視において高さと幅の比率は、約1.5:1.9である、(H)本件登録意匠では、正面視において幅と長さの比率が約1.3:6であるのに対し、引用意匠では、正面視において幅と長さの比率は、約1.9:8.4である、(L)本件登録意匠では、正面視において両端部壁の開口部は高さ方向の中心に位置するのに対し、引用意匠では、正面視において両端部壁の開口部は高さ方向の中心よりやや上方に位置する。
(3)本件登録意匠と引用意匠との類否
(ア)意匠の要部
トンネル式冷凍冷却機の意匠の要部は「正面視の形状」、「胴体部の長さ」、「開閉扉を開いた状態の形状」にあるといえる。
(イ)意匠の要部における共通点
トンネル式冷凍冷却機の正面視の形状について、胴体部は、正面視で直線状の両側壁と上下中央がそれぞれ外側に緩やかに膨らんだ頂板及び底板からなり、上下対称の形状であって、従来公知の意匠と比較すると独創的な意匠設計が施されており、共通している。
トンネル式冷凍冷却機の開閉扉を開いた状態については、開閉扉は胴体部の左右に開閉扉が両開きとなるように設けられており、開閉扉を開くと翼部の先端がほぼ水平方向に向いた状態となり、胴体部の長さも略同じで、従来公知の意匠と比較すると独創的な意匠設計が施されており、共通している。
(ウ)意匠の要部における相違点
(E)本件登録意匠と引用意匠とでは、曲率半径が大小の相違がある。
しかし、本件登録意匠は、正面視において端部壁の形状は略六角形で頂板と底板の連続部分の曲率半径が大きく角が丸くなっているので、直線状の両側壁とこれに連続する頂板と底板は外側に膨れて見え、その稜線は全体として弧状に湾曲して見える。
一方、引用意匠は連続部分の曲率半径が小さく角が丸くなっており、直線状の両側壁とこれに連続する頂板と底板は外側に膨れているため、それぞれ緩やかな弧状に湾曲して見える。
従って、曲率半径の大小に多少の相違があっても、両意匠の頂板と底板は弧状に湾曲して見えるが、両意匠の看者に起させる美感を左右するところまでには至らないから、意匠全体として総合的に観察すれば、この相違点はいずれも類似判断に与える影響は微弱である。
(G)本件登録意匠では、胴体部は、正面視において端部壁の高さと幅の比率が約1.3:1.3であるのに対し、引用意匠では、胴体部は、正面視において高さと幅の比率が約1.5:1.9である。
しかしながら、本件登録意匠と引用意匠とでは、その比率以上に端部壁の高さの相違は目立たず同じような形状に見える。
これは、両意匠の胴体部の端部壁の高さと幅の比率、頂板と底板の形状、頂板と両側壁及び底板と両側壁の連続部分の形状、胴体部の長さを、部分的に細かく見れば相違するが、両意匠はトンネル式冷凍冷却機で物品が大きく意匠全体から見れば、これらの相違は部分的微差の域を出ないものである。
(エ)まとめ
要するに、引用意匠は本件登録意匠の出願日以前に公知となった意匠であり、本件登録意匠は引用意匠の大部分の構成態様が共通し、相違点が発揮する意匠的効果は看者に格別異なった美感を起させる要因というには程遠く、これらの相違点を総合しても両意匠の前記共通点がもたらす共通感を凌駕するものとは認められないので、前記相違点はいずれも類否判断に与える影響は微弱であり、意匠全体として総合的に判断すれば、本件登録意匠と引用意匠とは、上下対称の頂板と底板の形状、胴体部の長さ、胴体部の開閉扉を開いた状態の形状が両者の美感を共通にして類似する意匠である。
第4 被請求人の主張
被請求人は、請求人の主張に対して、何も答弁していない。
第5 当審の判断
1 甲各号証
(1)甲第1号証
甲第1号証は、請求人が甲第2号証に基づいて作成したトンネルフリーザーの図面であると認められる。
(2)甲第2号証
甲第2号証は、平成12年3月23日に、請求人会社従業員の古川岳彦が作成した、展示会仕様のトンネルフリーザーの設計図面であると認められる。
(3)甲第3号証
甲第3号証は、2000年5月15日から18日まで開催された国際食品工業展において、請求人会社従業員の梁嶋丈照が、2000年5月15日に、同展示会場の東京ビッグサイトにて撮影した写真であり、請求人がトンネルフリーザーを展示したことが認められる。
(4)甲第4号証
甲第4号証は、請求人が作成したカタログであり、その第5枚目に、「ウイングフリーザー」と記載のトンネルフリーザー、および、第6枚目に、「アレンフリーザー」と記載のフリーザーが、写真版により現されていることが認められる。
(5)甲第5号証
甲第5号証は、請求人会社代表者の陳述書であり、前記国際食品工業展において、前記カタログが一般に頒布されたことが認められる。
(6)甲第6号証の1ないし同7
甲第6号証の1ないし同7は、前記国際食品工業展に関連するパンフレット等であり、請求人がトンネルフリーザーを出展したことが認められる。
(7)甲第8号証
甲第8号証は、平成12年5 月15 日付の「冷凍食品新聞」であり、その記事において、前記国際食品工業展に、「ウイングフリーザー」と記載のトンネルフリーザーが、写真版により現されていることと、出展する旨記載されていることが認められる。
(8)甲第9号証
甲第9号証は、平成12年5月16 日付の「冷食タイムス」であり、その記事において、前記国際食品工業展に、「ウイング」と記載のトンネルフリーザーが、写真版により現されていることと、出展している旨記載されていることが認められる。
2 甲号意匠
甲第1号証に現されたトンネルフリーザー(以下、「甲号意匠」という。)は、請求書の記載及び証拠の全体から、本件登録意匠の出願前の2000(平成12)年5 月15 日から18日まで、東京ビッグサイトにて開催された国際食品工業展において、一般に頒布されたカタログ、および、新聞によって、公然知られたところのトンネルフリーザーを図面化したものと認められる。(本件審決書に添付の別紙第2参照)
3 本件登録意匠と甲号意匠の対比
本件登録意匠と甲号意匠を意匠全体として対比すると、本件登録意匠はトンネル式冷凍冷却機であり、甲号意匠はトンネルフリーザーであって、何れも、食品や樹脂製品を連続的に冷凍若しくは冷却する業務用の冷凍冷却機であるから、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態について(両意匠とも、ベルトコンベア等の内部機構は省略して認定する。)は、主として、以下に示す共通点及び差異点がある。
(1)基本的構成態様の共通点
全体が、前後方向に長い筒体の前後面を閉塞したものであって、その筒体の上面から左右両側面まで、前後方向に長い開閉扉を複数枚設け、その開閉扉は上方に向けて左右両開きの翼状となるように形成したものである点。
(2)具体的態様の共通点
(A)筒体は、その前後面を垂直状に形成し、左右両側面を垂直状に形成し、上下面を外側に緩い膨出状に形成して、前方視略倒樽形状としたものである点。
(B)開閉扉は、上面の左右両側方寄りから、左右両側面の下方寄りまで、上面及び左右両側面と面一状に屈曲する略L字板状に形成して、筒体の前後及びその中央に余地を残し、左右対称に4枚設けたものである点。
(C)筒体の前後面には、略横長矩形状の開口部を設けたものである点。 (D)筒体の下面の左右両側方寄りには、筒体の長手方向に間隔を設けて、棒体状の脚を複数個設けたものである点。
(3)具体的態様の差異点、
(ア)筒体の上下縁中央部について、本件登録意匠は、前方視僅かに角張ったものとしているのに対して、甲号意匠は、角張ったものとしていない点。
(イ)筒体の上下左右の角部について、本件登録意匠は、前方視稍角丸としているのに対して、甲号意匠は、僅かに角丸としている点。
(ウ)筒体の上面中央の突起部の有無について、本件登録意匠は、その長手方向に細長い突起部を設けているのに対して、甲号意匠は、突起部を設けていない点。
(エ)筒体の前後面の開口部における蓋の有無について、本件登録意匠は、略横長矩形状の蓋を設けているのに対して、甲号意匠は、蓋を設けていない点。
(オ)筒体の上面のパワーシリンダーの有無について、甲号意匠は、パワーシリンダーを、開閉扉の長手方向の中間の短手方向に設けているのに対して、本件登録意匠は、パワーシリンダーを設けていない点。
4 両意匠の類否判断
両意匠の共通点及び差異点を総合して両意匠を全体観察し、その類否を以下に検討する。
(1)共通点の評価
両意匠に共通するとした基本的構成態様については、形態全体の基調を表象するものであって、並びに、具体的態様の共通点の(A)ないし(D)については、形態上の特徴を表出するものであり、これらの共通する態様が相俟って、両意匠の醸し出す形態全体の印象を同じにする程の著しい共通感を奏するものであるから、類否判断に影響を及ぼすといわざるを得ない。
(2)差異点の評価
(ア)筒体の上下縁中央部については、本件登録意匠が甲号意匠に比して、その部分を僅かに角張らせた程度にすぎず、また、筒体の上縁中央部を角張らせたものが、既に知られている(例えば、甲第4号証の第6枚目に現された冷凍冷却機)ことも勘案すると、格別看者の注意を引くとはいえず、その差異は、形態全体から観れば、共通するとした態様を翻して、別異の態様を表す程の印象を与えるとはいえないから、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎない。
(イ)筒体の上下左右の角部については、本件登録意匠が甲号意匠に比して、その部分を稍角丸にした程度にすぎず、また、筒体の上下左右の角部を稍角丸にしたものが、既に知られている(例えば、甲第15号証の第2〜3枚目に現された冷凍冷却機)ことも勘案すると、それ程看者の注意を引くとはいえず、その差異は、形態全体から観れば、共通点に包含される軽微な差異であって、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎない。
(ウ)筒体の上面中央の突起部の有無、および、(エ)筒体の前後面の開口部における蓋の有無については、その突起部及び蓋は、機能的にはともかく、付加的なものであり、格別特徴のない態様であって、格別看者の注意を引くとはいえず、それらの有無は、形態全体から観れば、共通するとした態様の共通感を凌駕するものとはいえないから、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎない。
(オ)筒体の上面のパワーシリンダーの有無については、技術的効果を旨とするものであり、単なる設計的事項にすぎず、意匠上は殊更評価できないものであって、それ程看者の注意を引くとはいえず、その差異は、形態全体から観れば、共通点に包含される軽微な差異にすぎず、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎない。
そうすると、前記の(ア)ないし(オ)の差異点は、何れも類否判断に及ぼす影響が微弱にすぎず、さらに、それらの差異点を纏めても、具体的態様の共通点が表出する特徴を凌駕して、両意匠の形態全体の印象を異にする程の格別な特徴を表出するとはいい難いから、類否判断に及ぼす影響がなお微弱の域を超えないというべきである。
(3)総合評価
両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態においても、差異点の類否判断に及ぼす影響が微弱の域に止まることを考慮すると、両意匠に共通するとした基本的構成態様、並びに、具体的態様の共通点が相俟って、両意匠の形態全体に著しい共通感を奏するものであるから、意匠全体として観察すると、類似するものというほかない。
5 むすび
本件登録意匠は、その意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠に類似し、意匠法第3条第1項第3号に該当するものであり、同法同条同項柱書の規定に違背して登録されたものであるから、その余の点について審理するまでもなく、その登録は、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2006-08-21 
結審通知日 2006-08-23 
審決日 2006-09-05 
出願番号 意願2000-17295(D2000-17295) 
審決分類 D 1 113・ 113- Z (K4)
最終処分 成立 
特許庁審判長 伊勢 孝俊
特許庁審判官 鍋田 和宣
上島 靖範
登録日 2002-02-15 
登録番号 意匠登録第1138136号(D1138136) 
代理人 石田 俊男 
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