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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) L1
管理番号 1151760 
判定請求番号 判定2006-60063
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2007-03-30 
種別 判定 
判定請求日 2006-11-20 
確定日 2007-01-16 
意匠に係る物品 鉄筋用スペーサー 
事件の表示 上記当事者間の登録第1215778号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「鉄筋用スペーサー」の意匠は、登録第1215778号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、イ号意匠並びにその説明書に示す意匠(以下、「イ号意匠」という。)は、登録第1215778号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める、と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証を提出した。
1.両意匠の共通点
(A)両意匠は意匠に係る物品を「鉄筋用スペーサー」とする点で、その物品の機能と用途が一致する。
(B)基本的な形態として、コンクリート又はモルタルの接地ブロックが四角形の上面を備えた下細り角柱状に造形されており、一枚物の金属バネ材から正・背面視のほぼ倒立Ω型に折り曲げられた鉄筋受け止めクリップの根元部が、その接地ブロックにおける四角形な上面の中央部に埋め込み一体化されている。
(C)具体的な形態として、鉄筋受け止めクリップはその最も狭い上端入口部から正・背面視のほぼ倒立ハ字型に切り起された向かい合う一対の鉄筋用抜け止め爪を備えている。
2.両意匠の相違点
(a)本件登録意匠では、接地ブロックが全体的にはほぼ倒立截頭四角錐型として、その下面が平坦面であり、正・背面から見ると、下細りの倒立台形を呈し、左・右側面から見ると、上下方向に若干細長い長方形をなしている。
これに対して、イ号意匠では、接地ブロックが全体的にはほぼ倒立カマボコ型として、その下面が円弧凸曲面であり、正・背面から見ると、上下方向に長い長方形状を呈し、左・右側面から見ると、下細りのU字形をなしている。
(b)本件登録意匠では接地ブロックと鉄筋受け止めクリップとの全体的な背丈が低く、その鉄板受け止めクリップの内径が狭小であるに比して、イ号意匠では接地ブロックと鉄筋受け止めクリップとの全体的な背丈が高く、その鉄筋受け止めクリップの内径が広大である。
3.本件登録意匠とイ号意匠との類否
そこで、本件登録意匠とイ号意匠との類否を検討すると、次のとおりである。
(イ)両意匠が鉄筋受け止めクリップの基本的な形態のみならず、具体的な形態としても、最も狭い上端入口部から正・背面視のほぼ倒立ハ字形に切り起された向かい合う一対の鉄筋用抜け止め爪を備えており、その上端入口部から強制的に押し込まれた鉄筋を、両抜け止め爪により拘束した状態として、安定良く抱持し得るようになっている点で、実質的に同一であると言っても過言ではない。
(ロ)両意匠の相違点a.については、イ号意匠の接地ブロックも基本的な形態としては下細りの角柱状をなすため、その平面から見たときには勿論のこと、底面から見ても四角形を呈する点で、本件登録意匠と根本的に相違しない。
又、正・背面から見たとき、本件登録意匠の接地ブロックが倒立台形を呈するに比して、イ号意匠の接地ブロックは長方形状をなすが、これも根本的な相違ではなく、両意匠の類否に重大な影響を及ぼすものとは考えられない。
(ハ)但し、左・右側面から見たときには、本件登録意匠の接地ブロックが長方形として、その下面が平坦面をなすに比し、イ号意匠の接地ブロックは下細りのU字形として、その下面は円弧状曲面を呈する。
(ニ)本件登録意匠の接地ブロックが据え立て状態として接地させることができるに比し、イ号意匠の接地ブロックは据え立て接地使用することができない。しかし、これはコンクリート建造物を建物のスラブとして成形硬化する場合に限っての話であり、鉄筋用スペサーの接地ブロックとしては、その壁面と平行な縦筋や横筋へ後付けとして押し込み使用されるため、その転倒を考慮する必要がない。従い、据え立て接地使用の可否については、本件登録意匠とイ号意匠との類否に重大な影響を及ぼさないものと考えられる。
(ホ)相違点(b)については、本件登録意匠の寸法表(甲第1号証)から例示されるように、この種鉄筋用スペーサーの場合、鉄筋の太さ寸法が同一であっても、その鉄筋のコンクリートかぶり厚さ寸法が異なる多品種として製造・販売されているのが常態である。相違点(b)は、対象とする鉄筋の太さと鉄筋のコンクリートかぶり厚さとが、本件登録意匠とイ号意匠とでは異なることによる差異であって、対象とする鉄筋の太さと鉄筋のコンクリートかぶり厚さとが、本件登録意匠とイ号意匠とが同一として類否判断する必要があり、そうすれば、上記相違点(a)以外に相違する部分はない。
4.結び
両意匠を全体的に考察すると、その一枚物の金属板バネ材から成る鉄筋受け止めクリップは、基本的な形態のみならず具体的な形態としても、互いに実質上同一である。他方、コンクリート又はモルタルから成る接地ブロックの上記相違点は、左・右側面から見たときだけに表れるに過ぎず、その上面の四角形をなす下細り角柱状であるという基本的な形態は失われていない。そのため、上記相違点が全体的な類否判断に与えるウェイトは小さく、その結論を左右するまでには至らないものと思料する。
依って、イ号意匠は本件登録意匠およびこれに類似する意匠の範囲に属するものとして、請求の趣旨どおりの判定を求める次第である。

第2.本件は、請求人が現在実施している本件登録意匠と、かつて自らが実施し在庫もあるイ号意匠との関係を求めるとする、被請求人の存在しない判定請求であり、被請求人の反論を反映させることができない。

第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成14年11月13日に意匠登録出願をし、平成16年7月16日に意匠権の設定の登録がなされた登録意匠第1215778号の意匠であり、願書の記載及び願書に添付の図面代用写真写真に現されたところによれば、意匠に係る物品を「鉄筋用スペーサー」とし、その形態を、別紙第1に示すとおりとするものである。
2.イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書に添付の、写真版により現されたイ号意匠(別紙第2)並びにその説明書により示されたものであり、意匠に係る物品が「鉄筋用スペーサー」と認められ、その形態を、別紙第2に示すとおりとするものである。
3.本件登録意匠とイ号意匠の対比検討
本件登録意匠とイ号意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態については主として以下の共通点及び差異点がある。
先ず、共通点として、(1)全体を、接地ブロックと鉄筋受け止めクリップから構成し、(2)接地ブロックについては、接地ブロックの2面のみを傾斜面とする下細り四角柱状とし、この接地ブロックの上面中央に鉄筋受け止めクリップを埋め込んだ点(3)鉄筋受け止めクリップについては、金属板バネ材を略倒立Ω型に折り曲げて形成した点がある。
一方、差異点として、(イ)接地ブロックの形状につき、本件登録意匠は、底面が平坦面であり一種の倒立四角錐台であるのに対して、イ号意匠は、略倒立U字状であり側面が徐々に拡開する一種のかまぼこ型である点、(ロ)全体の縦横比率につき、本件登録意匠は、縦横の長さが接近しているのに対して、イ号意匠は、横幅よりも明らかに縦の長さが長く縦長である点がある。
そこで、上記の共通点と差異点について総合的に検討するに、共通点のうち、(1)の点は、格別特徴的なものではなく接地ブロック型の鉄筋用スペーサーは、鉄筋を保持するために鉄筋受け止めクリップを形成することは必然的ともいうべきことであって、この点が共通するからといて、両意匠の類否を決するまでの特徴とはなり得ず、この点を類否判断上大きく評価することはできない。(2)の点は、傾斜面を有する程度では格別特異なものといえるほどの特徴ではなく、類否判断に及ぼす影響は小さい。(3)の点は、従来態様に照らし特徴といえるほどのものではなく(例えば、請求人が提出した公知資料1,公知資料2,公知資料3、即ち、登録意匠第1116917号、登録意匠第1103130号、登録意匠第1102877号)、類否判断に及ぼす影響は小さい。そして、意匠全体として、これら共通点が相俟ったとしても、その相俟った点が両意匠の類否を決するまでの特徴とはなり得ないというべきであり、その類否判断に及ぼす影響は、さほど大きいものとはいえない。
一方、差異点につき、(イ)の点について、接地ブロックの態様を具体的に表すところであり、この種のタイプの鉄筋用スペーサーとして最も大きな部分を占める部位における顕著な差異であって、この点は、形態上の主要な部分に係るところであり、前記のとおり、共通する態様、さらには、これらの相俟った態様に格別の特徴の認められない両意匠にあっては、形態上の主要な部分に係る部分を具体的にあらわすところについても、他と相関連して全体のまとまりを形成し、両意匠の基調をなすところに強く係わるとせざるを得ない。
さらに、本件登録意匠は、底面部を平坦面としたことにより略直方体状で据え置き状態として使用するとの認識を看者に与えるものといえ、一方、イ号意匠は、底面部を略U字状曲面としたことにより建物の壁面に使用するとの認識を看者に与えるものといえ、その結果、使用態様は一見して認識可能であって、この点が形態の差異として顕著に表れているということができることから、その差異は大きいものといわざるを得ない。
以上によれば、(イ)の点は、両意匠を別異の基調のものと看者に認識させるのに十分なものであって、鉄筋用スペーサーとしての形態上の基調をなすところに強く係わるものであって、両意匠の類否判断に決定的ともいえる大きな影響を及ぼすものというほかない。
(ロ)の点については、(イ)の点と比較した場合には、それほど大きな差異点ではないとしても、一定程度は認識できる差異といえる。
従って、両意匠の形態についての共通点は、前記のとおり、両意匠の類否判断に及ぼす影響はさほど大きいものとはいえないのに対して、差異点については、とりわけ、(イ)の点は、両意匠の類否判断に決定的ともいえる大きな影響を及ぼすものであり、他にも、(ロ)の点の差異が認められるところでもあって、差異点が共通点を凌駕するものであることは明らかであり、意匠全体として、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものとはいえない。
4.結び
以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2007-01-04 
出願番号 意願2002-31244(D2002-31244) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (L1)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 治子早瀬 ふみ 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 上島 靖範
市村 節子
登録日 2004-07-16 
登録番号 意匠登録第1215778号(D1215778) 
代理人 山下 賢二 

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