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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属さない(申立成立) K0 |
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管理番号 | 1163858 |
判定請求番号 | 判定2006-60060 |
総通号数 | 94 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2007-10-26 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2006-11-13 |
確定日 | 2007-08-16 |
意匠に係る物品 | 廃棄物焼却炉用ロストル |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1270834号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「廃棄物焼却炉用火格子板」の意匠は、登録第1270834号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求人の申立及び理由 1.請求人は、「イ号意匠並びにその説明書に示す意匠(以下、「イ号意匠」という。)は、登録第1270834号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属しない、との判定を求める。」と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証を提出したものである。 2.本件登録意匠の説明 本件登録意匠は、意匠に係る物品を「廃棄物焼却炉用ロストル」とし、その形態の要旨は次のとおりである。 1)物品全体が物品の長手方向中央を基準にシンメトリックに構成されており、 2)長方形の厚みのある板材を略階段状に折り曲げたような態様であり、具体的には、板材の長手方向略中央で板厚分の段差部が形成され、その段差の低い方の一端には裏面側へ約65度程度で板厚の5倍程度の高さで垂下するようにし、かつ板厚をやや増して垂下部が形成され、段差の高い方の他端は、裏面側へ約20度程度で折り曲げされた折り曲げ部が形成された、焼却物搬送板状部(以下「板状部」という)と、 3)垂下部の先端部に形成された通風切り欠きと、 4)板状部の折り曲げ部中央の焼却物搬送上流側(以下「上流側」という)に板状部の幅の約16%の直径で貫通して形成された丸穴と、 5)板状部の上流側端部に形成された切り欠きと、 6)板状部裏面の折り曲げ部中央の焼却物搬送下流側(以下「下流側」という)より垂下して3段の略踏み台状に形成された中央火格子台係合部と、 7)中央火格子台係合部から垂下部先端にかけて板状部より垂下して、中央火格子台係合部よりもやや薄い板厚で形成された中央リブと、 8)板状部裏面の段差部より下流側に板状部の幅方向両側略端面に沿って垂下し、その先端下流側に凹状の切り欠きを有する一対の両側火格子台係合部と、 9)両側火格子台係合部の外側面と面一になるように、両側火格子台係合部よりもやや薄い肉厚で両側火格子台係合部と垂下部先端にかけて中央リブと同じ高さで板状部より垂下して形成された一対の下流側両側リブと、 10)両側火格子台係合部の外側面と面一になるように、両側火格子台係合部よりもやや薄い肉厚で、火格子板裏面の段差部と中央火格子台係合部の下流側基部との略中央の位置から両側火格子台係合部の先端にかけて垂下して形成された一対の上流側両側リブと、 を有する「廃棄物焼却炉用ロストル」である。 3.イ号意匠の説明 イ号意匠は、意匠に係る物品を「廃棄物焼却炉用火格子板」とし、その形態の要旨は次のとおりである。 1’)物品全体が物品の長手方向中央を基準にシンメトリックに構成され ており、 2’)長方形の厚みのある板材を略階段状に折り曲げたような態様であり、 具体的には、板材の長手方向略中央で板厚分の段差部が形成され、その段差の低い方の一端には裏面側へ約65度程度で板厚の5倍程度の高さで垂下するようにし、かつ板厚をやや増して形成された垂下部が形成され、段差の高い方の他端は、裏面側へ約20度程度で折り曲げされた折り曲げ部が形成された、板状部と、 3’)垂下部の先端部に形成された通風切り欠きと、 4’)板状部裏面の折り曲げ部中央の下流側より垂下して2段の略踏み台状に形成された中央火格子台係合部と、 5’)中央火格子台係合部から垂下部先端にかけて板状部より垂下して、中央火格子台係合部よりもやや薄い板厚で形成された中央リブと、 6’)板状部裏面の段差部より下流側に、板状部の幅方向端面と中央リブの間を2分割するように中央リブと平行に垂下し、その先端下流側に凹状の切り欠きを有する一対の両側火格子台係合部と、 7’)両側火格子台係合部と肉厚中心を同一にしてやや薄い肉厚で両側火格子台係合部と垂下部先端にかけて中央リブと同じ高さで板状部より垂下して形成された下流側両側リブと、 8’)両側火格子台係合部と肉厚中心を同一にしてやや薄い肉厚で火格子板裏面の段差部から両側火格子台係合部の先端にかけて垂下して形成された上流側両側リブと、 を有する「廃棄物焼却炉用火格子板」である。 4.本件登録意匠とイ号意匠との比較説明 (1)両意匠の共通点 両意匠は、用途と機能は同一であり、物品性としては一致する。 形態においては、 a) 1)及び1’)の点 b) 2)及び2’)を有している点 c) 3)及び3’)を備えている点 d)板状部裏面の折り曲げ部中央の下流側より垂下して略踏み台状に 形成された中央火格子台係合部を備えている点 e ) 7)及び5’)を備えている点 f )板状部裏面の段差部より下流側に、中央リブと平行に垂下して、その先端下流側に凹状の切り欠きを有する一対の両側火格子台係合部を備えている点 g)両側火格子台係合部よりもやや薄い肉厚で両側火格子台係合部と垂下部先端にかけて中央リブと同じ高さで板状部より垂下して形成された下流側両側リブを備えている点 h)両側火格子台係合部よりもやや薄い肉厚で両側火格子台係合部よりも上流側に火格子板裏面から両側火格子台係合部の先端にかけて垂下して形成された上流側両側リブを備えている点 で両意匠は共通する。 (2)両意匠の差異点 a)本件登録意匠は、4)を有する。イ号意匠は、これを有さない。 b)本件登録意匠は、5)を有する。イ号意匠は、これを有さない。 c)本件登録意匠の中央火格子台係合部は、3段の略踏み台状である。 これに対し、イ号意匠は、2段の略踏み台状である。 d)本件登録意匠の両側火格子台係合部は、上流側両側リブ及び下流側両側リブと共に、板状部の幅方向両側略端面に沿って垂下して形成されている。これに対し、イ号意匠は、板状部の幅方向端面と中央リブの間を2分割するように垂下して形成されている。 e)本件登録意匠の上流側両側リブ及び下流側両側リブは、両側火格子台係合部の外側面と面一になるように、両側火格子台係合部よりもやや薄い肉厚で形成されているので、正面及び背面側から見た時に、両側火格子台係合部は、両側リブ上に同じ厚みで形成されているように見える。これに対し、イ号意匠の上流側両側リブ及び下流側両側リブは、両側火格子台係合部と肉厚中心を同一にしてやや薄い肉厚で形成されているので、正面及び背面側から見た時に、両側火格子台係合部と上流側両側リブ及び下流側両側リブとの境目がはっきりと視認できる。 f )本件登録意匠の上流側両側リブは、火格子板裏面の段差部と中央火格子台係合部の下流側基部との略中央の位置から両側火格子台係合部の先端にかけて垂下して形成されている。これに対し、イ号意匠の上流側両側リブは、火格子板裏面の段差部から両側火格子台係合部の先端にかけて垂下して形成されている。 5.本件登録意匠とイ号意匠、及びこれに類似する意匠の範囲に属さない理由の説明 (1)本件登録意匠に関する先行周辺意匠 本件登録意匠には、甲第3号証?甲第8号証に表された先行周辺意匠がある。 (2)本件登録意匠の要部 前記先行周辺意匠から、本件登録意匠の略階段状に形成された板状部に火格子台係合部やリブを垂下させた態様は、この種物品の基調を成して特徴を表す部分ではあるが、従来より基本的な形態に大きな変化がみられないことからも明らかなように、この種物品の最低限の機能を果たす必然的な形態であって、本件登録意匠の要部をなす部分とは言えない。 特に板状部の基本的構成態様については先行周辺意匠から明らかなように、ほぼ同じ形態を有しているし、板状部裏面の具体的態様については、強度等によって設計者が意図的に選択できる代替余地のある部分であるが、同先行周辺意匠に見られる態様から選択的に組み合わせできる程度のもので要部をなす程に特徴的な部分はない。 その中で、本件登録意匠の4)は、従来にみられない新規な態様であり、当該物品の交換作業の際に丸穴に指を挿入して持ち上げ容易に取り外しできる機能美が今まで大きな変化の見られなかった板状部に表れており、かつ当該物品が単体で通常置かれる状態やロストル台上に取り付けした際において容易に視認できる部分に形成されているので、需要者の視覚に強く訴え注意を惹く。この種物品が消耗品であり、ロストルの定期的な交換作業が行なわれる特性上、交換作業を容易にする機能は需要者にとって非常に注意を惹く所であり、本件登録意匠の最も特徴的な部分であって要部をなす部分と言える。 それにともなって、丸穴の近傍の従来に見られない態様の5)が目に止まり、当該切り欠きは丸穴と同じくシンメトリックな物品の対称中心に位置し、あたかも近傍の丸穴と関連づけられた様に形成されており、丸穴の特徴的な態様と相俟って需要者の注意を惹きつける。したがって、本件登録意匠の特徴的な部分であって要部をなす部分といえる。 (3)本件登録意匠とイ号意匠との類否判断 本件登録意匠とイ号意匠との共通点は、先行周辺意匠より、この種物品において従来から見られる態様であって、両意匠の類否判断に与える影響は微弱といえる。 本件登録意匠とイ号意匠との差異点において、本件登録意匠が有する板状部に形成された丸穴と板状部の上流側端部の切り欠きは、従来のこの種物品に見られない新規な態様であり、本件登録意匠の要部をなす部分にあたり、類否判断に与える影響は大きいと言える。その他の差異点については、従来この種物品に見られる態様を踏襲しただけの態様であり、類否判断に与える影響は微弱である。 したがって、需要者の視覚に強く訴え注意を惹く要部を有する本件登録意匠と、本件登録意匠の要部にあたる所に共通する点がなく、従来この種物品に見られる態様を踏襲しただけであるイ号意匠とを需要者は混同しない。 第2 被請求人の答弁 1.被請求人は、「イ号意匠は、登録第1270834号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。判定請求人の本件登録意匠の要部認定に誤認がある。」と答弁し、その理由として、要旨以下のとおり主張し、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証を提出したものである。 2.本件登録意匠に関する先行周辺意匠について 請求人は、「本件登録意匠の火格子台係合部やリブは、この種物品の必然的な形態であって、本件登録意匠の要部をなす部分とは言えない」と主張している。 しかしながら、先行周辺意匠に共通する主要な構成態様が、板状部と、その板状部の下部に突設された単数または複数のリブとであることが認められる。そして先行周辺意匠中に、板状部がほぼ共通した形状であるにもかかわらず、リブの形状の相違により互いに独立した登録意匠として登録されているものが認められる。さらに、本件登録意匠を含め先行周辺意匠には、底面側を表した斜視図がそれぞれ添付されている。これらを総合して勘案すると、この種のロストルの意匠において、リブの形状が十分に重要視されていることが明らかに看て取れることから、この種物品において、リブの形状が意匠としての要部をなす部分といえる。 3.本件登録意匠の要部 請求人は、「板状部」の「丸穴」と「切欠き」が要部であると主張している。 被請求人は、特にリブの形態を重要視して新たな創作を行っているが、請求人はこれを見逃して本件登録意匠の要部を認定している。 すなわち被請求人は、a)「両側リブ」の配置、b)「両側火格子台係合部」の形態、c)「上流側両側リブ」の形態、にそれぞれ重点をおいて独自の美感を創出しており、イ号意匠とは顕著な差異が認められる。 a)「両側リブ」の配置について、 本件登録意匠では、2本の両側リブが板状部の側辺に浅い段差ができる程度に接近して外側に配置されているのに対して、イ号意匠では、両側リブが中央リブと板状部側辺の中間位置でやや側辺寄りに近接して配置されている点で相違している。 これにより、本件登録意匠では、板状部の底面で両側リブと中央リブとで2つの幅広の凹部空間を形成し、ゆったりとした安定感のある美感を創出している。一方、イ号意匠は、両側リブの側辺側にもそれぞれ凹部空間が形成され、板状部の底面に4つの凹部空間が見て取れ、両側リブと中央リブとが互いに接近することで、メカニックで活動的な美感を創出している。 これら本件登録意匠の2つの凹部空間とイ号意匠の4つの凹部空間 は、底面視はもとより 底面側の斜視において顕著に表出され、需要者に視覚を通じて与える美感への影響が極めて大きい。 b)「両側火格子台係合部」の形態について、 本件登録意匠では、両側リブの上流側寄りに設けられた両側火格子台係合部の肉厚部分が中央側にのみ膨出され、正面視及び背面視では両側火格子台係合部が平坦で肉厚部分が認められないのに対し、イ号意匠では、両側火格子台係合部の肉厚部分が中央側と外側とにそれぞれ膨出されて、正面視及び背面視において明瞭に認められる点で相違している。 本件登録意匠の両側火格子台係合部の厚肉部分が、正面視及び背面視で認められず平坦面に表されることで、リブ全体にシンプルで洗練された美感を与えている。これに対してイ号意匠の両側火格子台係合部の厚肉部分が、平面視以外の多くの角度から見て取れることにより、リブ全体にメカニック感、凝縮感を付与し、両側リブと中央リブの狭い間隔も相挨って、需要者により活動的な印象を与えている。 c)「上流側両側リブ」の形態について、 本件登録意匠の上流側両側リブは、両側火格子台係合部の上流側下端位置から上流側上方に緩い勾配で傾斜し、段差部を越えて板状部底面に合流されるのに対し、イ号意匠の上流側両側リブは両側火格子台係合部の上流側下端位置から上流側上方に急勾配で傾斜して段差部の手前の板状部の底面に合流されている点で相違する。 本件登録意匠では、上流側両側リブに板状部底面の上流側に至る長さと緩い傾斜勾配に表されることにより、両側リブに板状部底面の下流側から上流側にわたる十分な横長の形態を印象付け、需要者にバランスのよい安定した外観を提供している。一方、イ号意匠では上流側両側リブが板状部の下流側にのみ配置されることで、両側リブが板状部の下流側にのみに偏り、視覚的に不安定な印象を与えている。 d)板状部の「丸穴」と、その上流端辺の「切欠き」について、 請求人が要部であると認定した「丸穴」及び「切欠き」は、新規な構成ではあるが、全体的な外観視に占める面積が小さく、需要者に視覚を通じて訴える美感が微小であり、類否判断を左右するほど重要視されるものではない。 e)まとめ 本件登録意匠は、a)「両側リブ」の配置、b)「両側火格子台係合部」の形態、c)「上流側両側リブ」の形態が本件登録意匠の要部であり、これら要部a)ないしc)により、視覚を通じて需要者にゆったりとした安定感とシンプルな美感を付与し、全体視においても、板状部の形態と共に要部a)ないしc)の形態が視覚を通じて需要者に与える印象が十分に大きいものである。さらに本件登録意匠の両側リブにより視覚を通じて需要者に与える美感は、イ号意匠の両側リブにより視覚を通じて需要者に与えるメカニック的で活動的な美感とは明瞭な差異を有している。 4.結論 イ号意匠と本件登録意匠とは、需要者に視覚を通じて与える美感が相違すると言うべきで、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 また、請求人が本件登録意匠の要部を板状部の「丸穴」と「切欠き」としたのは誤認であり、本件登録意匠の要部は、「両側リブ」と「両側火格子台係合部」と「上流側両側リブ」の形態にある。 第3 当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成17年8月26日に出願され(意願2005-024617)、平成18年3月24日に意匠権設定の登録がなされた意匠登録第1270834号であり、願書の記載及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品を「廃棄物焼却炉用ロストル」とした意匠であって、その形態を、別紙第1に示すとおりとするものである。 2.本件登録意匠の形態 本件登録意匠の基本的構成態様は以下のとおりである。 (あ)長方形の板材を長手方向の略中央で略階段状に折り曲げ、段差の低い方の端部に垂下部を、段差の高い方の他端に折り曲げ部を設け、焼却物搬送板状部(以下「板状部」という)としたものであって、略階段状の下側段部を搬送の「下流側」、同上側段部を「上流側」とし、垂下部の端縁には凸形状の通風用切欠きを設けている。 (い)板状部の裏面には、上流側板状部を起点部とし、下流側板状部を経て垂下部に至る中央リブと、この中央リブを挟んで、上流側板状部の段差部近傍を起点部とし下流側板状部を経て垂下部に至る一対の両側リブを、板状部に垂下させて設けている。 (う)各リブには、リブ幅より太幅に膨出してなる火格子台係合部を、中央リブには、上流側端部に1カ所、両側リブには、それぞれ段差部から少し下流側へ下った位置に1カ所ずつ設けている。 (え)長手方向中央を中心に各リブ及び各火格子台係合部を左右対称状に配置構成している。 具体的構成態様は以下のとおりである。 (ア)折り曲げにより形成された段差部は板厚分で、垂下部は、下流側板状部から裏面側へ板厚の5倍程度の長さ及び約65度程度の角度で垂下し、かつ板厚をやや増して形成し、折り曲げ部は、上流側端部を裏面側へ約20度程度で折り曲げ形成し、この折り曲げ部上の中央上流側に板状部幅約16%の直径で貫通丸穴を、さらに端縁部に通風切欠きを設けている。 (イ)リブについて、一対の両側リブの配置位置は、それぞれ、板状部の側辺に極めて接近し、上流側起点部は、段差部寄りの上流側段部からとし、側面視緩い勾配で傾斜を形成し、中央リブの起点部は、上流側端部の折り曲げ部との際であって、側面視形状を中央火格子台係合部と同形状としている。 (ウ)係合部について、リブからの膨出を、両側火格子台係合部は両側リブの中央側(両側リブの内側)のみとし、中央火格子台係合部は中央リブの両側とし、側面視形状は、両側火格子台係合部はそれぞれ略鉤状とし、中央火格子台係合部は略3段の踏み台状としている。 3.イ号意匠 イ号意匠は、「イ号意匠の図面および説明書」(甲第1号証)に示された、「廃棄物焼却炉用火格子板」の意匠であって、その形態を別紙第2に示すとおりとするものである。 4.イ号意匠の形態 イ号意匠は、基本的構成態様を本件登録意匠と同じとするものである。 具体的構成態様は以下の点を除き、本件登録意匠と同じとするものである。 (ア’)折り曲げ部に、貫通丸穴と通風切欠きを形成していない。 (イ’)リブについて、一対の両側リブの配置位置は、それぞれ、中央リブと板状部の側辺の略中間位置であり、上流側起点部は、段差部であって、側面視急勾配で傾斜を形成し、中央リブ起点部の側面視形状は、略2段の踏み台状としている。 (ウ’)係合部について、両側火格子台係合部の膨出を、両側リブの両側とし、中央火格子台係合部の側面視形状は、略2段の踏み台状としている。 5.本件登録意匠とイ号意匠の比較検討 (1)意匠に係る物品については、両意匠は、ともに火格子式廃棄物焼却炉の炉床部に設置され、ロストル台上に取り付けて使用される「廃棄物焼却炉用ロストル」と「廃棄物焼却炉用火格子板」であるから一致している。 (2)形態については、主として以下の共通点及び差異点がある。 まず、共通点として、基本的構成態様について共通とし、具体的構成態様においては、差異点として、(A)板状体の折り曲げ部について、本件登録意匠は、貫通丸穴と通風切欠きを設けているのに対し、イ号意匠はそのどちらも形成していない点、(B)リブについて、(B-1)両側リブの配置につき、本件登録意匠は板状部の側辺に接近した位置であるのに対し、イ号意匠は中央リブと板状部の側辺の略中間位置であり、(B-2)両側リブの起点部の態様につき、本件登録意匠は、段差部寄りの上流段部であって、側面視の傾斜を緩い勾配としているのに対し、イ号意匠は、段差部からであって、側面視の傾斜を急勾配とし、(C)係合部について、(C-1)両側火格子台係合部の両側リブからの膨出を、本件登録意匠は、中央側にのみとし、外側面は面一状としたのに対し、イ号意匠は、両側とし、外側からも膨出を視認できるものとし、(C-2)中央火格子台係合部の側面視略踏み台形状を、本件登録意匠は、3段としているのに対し、イ号意匠は2段としている点があり、その他の具体的構成態様を共通としている。 (3)そこで、本件登録意匠とイ号意匠を全体として観察し、共通点と差異点の類否判断に与える影響について、先行公知意匠も勘案し、総合的に考察するに、共通するとした板状部の態様については、従来から普通に行われてきた態様であるため、それのみでは両意匠の類否を決するまでの特徴とはなり得ず、共通するとした板状部裏面に垂設されるリブとリブ上に形成される係合部の点も、その機能的な面から必然的に導かれる態様であり、その他の具体的構成態様における共通点も同様であるから類否判断に然したる影響を及ぼすものではない。したがって、具体的構成態様における各差異点の、意匠全体に及ぼす影響が、上記のように判断される共通点を越えるものであるか否かを検討しなければならない。 そこで検討すると、折り曲げ部の差異点(A)につき、請求人は、丸穴と折り曲げ部端縁の切欠き部について、需要者の視覚に強く訴え注意を惹くため、特徴的な部分であって要部をなす、と主張するが、丸穴については、占める面積が小さく、切り欠きについても、端縁部の丸味を平坦状とした程度であって極めて小さいとともに、炉床部に施工した際、階段状に互いに一部が重なり合って配列される部分(垂下部)に両意匠共通の切欠きがあるため、本件登録意匠の切欠きはそちらの大きな切欠きに埋没してしまうもので、したがって、ほとんど目立たない位置に形成されたものであり、いずれも軽微な差異と言わざるを得ず、本件登録意匠の特徴の一部を成すにしても、要部と言うほどではなく、類否判断を左右する程のものではない。次に、その他の差異点(B)及び(C)は、両側リブの配置及び両側火格子台係合部の態様を具体的に表すところであるが、これらの点は、前記のとおり、共通する態様、さらには、これらの相俟った態様に格別の特徴の認められない両意匠にあっては、裏面とはいえ、施工時に看者に看取される火格子板の取り付け部分で、注意を惹く部位というべきであり、しかも、側面側からも視認可能な部分であるから、外観上の主要な部分に係るところであるといえる。すなわち差異点(B)、(C)によれば、本件登録意匠は、一対の両側リブをそれぞれ板状部の側辺に接近配置し、両側火格子台係合部を中央側にのみ膨出し、両側リブ起点部を側面視緩い勾配で傾斜を形成したので、両側リブ部は、肉厚部分のない平坦で緩やかな傾斜で始まる幅広のものが、板状部側辺のわずかに内側部分に垂設されているとの印象を看者に与えるものといえ、一方、イ号意匠は、一対の両側リブを、本件登録意匠よりもかなり内側に垂設し、リブの起点部近傍の両側火格子台係合部の膨出を外側にも形成したので、起点部の側面視急勾配の傾斜の差異と相俟って、両側リブ部は本件登録意匠のものよりも奥まった位置に形成された狭小のもので、しかも膨出状の係合部が目立つとの印象を看者に与えるものといえ、上面側から看取される板状部の態様やリブを垂設させること自体は、この種物品においてはほとんど従来よりありふれた態様とせざるを得ない状況にあっては、両側リブ部の配置の差異及び両側係合部の外側への膨出の有無による印象は大きく異なり、両意匠を別異の基調のものと看者に印象付けるに十分なものとなっているから、差異点(B)及び(C)は、両意匠の類否判断に決定的ともいえる大きな影響を及ぼすものというほかない。 従って、両意匠の形態についての共通点は、前記のとおり、両意匠の類否判断に及ぼす影響はさほど大きいものとはいえないのに対して、差異点について、特に差異点の(B)及び(C)は、両意匠の基調の形成に大きく係り、類否判断に決定的ともいえる大きな影響を及ぼすものであるから、差異点が共通点を凌駕するものであることは明らかであり、意匠全体として、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものとすることはできない。 4.結び したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2007-08-02 |
出願番号 | 意願2005-24617(D2005-24617) |
審決分類 |
D
1
2・
1-
ZA
(K0)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 坂田 麻智、早川 治子 |
特許庁審判長 |
日比野 香 |
特許庁審判官 |
前畑 さおり 樋田 敏恵 |
登録日 | 2006-03-24 |
登録番号 | 意匠登録第1270834号(D1270834) |
代理人 | 笹原 敏司 |
代理人 | 板垣 孝夫 |
代理人 | 榎本 一郎 |
代理人 | 森本 義弘 |
代理人 | 原田 洋平 |