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審決分類 |
審判 C4 |
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管理番号 | 1168841 |
審判番号 | 無効2007-880009 |
総通号数 | 97 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2008-01-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2007-06-05 |
確定日 | 2007-11-08 |
意匠に係る物品 | 美顔用スチーマ |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1235118号「美顔用スチーマ」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1235118号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.請求人の申し立て及び理由 請求人は,「意匠登録第1235118号の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」と申し立て,その理由として要旨以下のように主張し,証拠方法として,甲第1号証の1ないし甲第3号証の書証を提出している。 1.無効理由の要点 意匠登録第1235118号に係る意匠(以下,「本件登録意匠」という。)は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第2号証に記載された意匠(以下、「甲号意匠」という。)であり、意匠法第3条第1項第2号に規定する意匠に該当し、また、甲号意匠に類似するものであり、同条同項第3号に規定する意匠に該当し、更に、本件登録意匠の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が甲号意匠に基づいて容易に創作をすることができたものであり、同条第2項に規定する意匠に該当し、本件意匠登録は,意匠法第3条の規定に違反してされたものであり,同法第48条第1項第1号の規定に該当し、無効とすべきである。 2.本件登録意匠 本件登録意匠は、その意匠公報(甲第1号証)に記載のとおり、意匠に係る物品を「美顔用スチーマ」とし、その形態は、基本的構成態様が、本体の前面上部にノズルを形成すると共に側面に取り付け部を支点として上方に回動自在な取っ手が設けられているものである。 また、具体的構成態様は、(a)本体前面(正面図側)に、上方から下方に向かって、ノズル、電源スイッチ、小スイッチ、ランプが縦一列に配置され、(b)小スイッチの左右に円形物が配置され、(c)本体の前面側に二段の段部が形成され、その最下段の段部は、前面上部から電源スイッチ、小スイッチ、ランプを囲む形状に形成され、(d)本体の形状は、側面視すると、その外周が曲面に形成された略横長台形状であり、前面側の段部との境界線が右から左下方に傾斜した曲線に形成され、(e)本体及び取っ手がそれぞれ白色、ノズル及び底面部に位置する排水受け皿がそれぞれ水色、そして電源スイッチが灰色である。(別紙第1参照) 3.甲号意匠 甲号意匠は、本件登録意匠の出願前、2004年(平成16年)2月11日に頒布された中華人民共和国意匠公報ZL03355522.2(甲第2号証)に記載された意匠である。 甲号意匠は、「イオン美肌器」に係る意匠で、その形態は、基本的構成態様が、本体の前面上部にノズルを形成すると共に側面に取り付け部を支点として上方に回動自在な取っ手が設けられているものである。 また、具体的構成態様は、(イ)本体前面(正面図側)に、上方から下方に向かって、ノズル、電源スイッチ、小スイッチ、ランプが縦一列に配置され、(ロ)本体の前面側に二段の段部が形成され、その最下段の段部は、前面上部から電源スイッチ、小スイッチ、ランプを囲む形状に形成され、(ハ)本体の形状は、側面視すると、その外周が曲面に形成された略横長台形状であり、前面側の段部との境界線が右から左下方に傾斜した曲線に形成され、(ニ)本体及び取っ手がそれぞれ白色、ノズル及び底面部に位置する排水受け皿がそれぞれ水色、そして電源スイッチが灰色である。(別紙第2参照) 4.本件登録意匠と甲号意匠との対比 両意匠は、イオンスチーマを顔等に当てて肌に潤いを与えるもので、用途及び機能が同一であって同一物品である。 また、両意匠の形態については、以下の共通点と差異点が認められる。 (1)両意匠の共通点 (A)基本的構成態様につき、本体の前面上部にノズルを形成すると共に側面に取り付け部を支点として上方に回動自在な取っ手が設けられている点 各部の具体的構成態様につき、(B)本体前面(正面図側)に、上方から下方に向かって、ノズル、電源スイッチ、小スイッチ、ランプが縦一列に配置されている点、(C)本体の前面側に二段の段部が形成され、その最下段の段部は、前面上部から電源スイッチ、小スイッチ、ランプを囲む形状に形成されている点、(D)本体の形状は、側面視すると、その外周が曲面に形成された略横長台形状であり、前面側の段部との境界線が右から左下方に傾斜した曲線に形成されている点、(E)本体及び取っ手がそれぞれ白色、ノズル及び底面部に位置する排水受け皿がそれぞれ水色、そして電源スイッチが灰色である点において共通する。 (2)両意匠の差異点 (F)本件登録意匠の小スイッチの左右に円形物が配置されているのに対して、甲号意匠の小スイッチの左右にはこのような円形物が配置されていない点で両意匠は相違する。 5.本件登録意匠と甲号意匠との類否 両意匠は、その使用に際して、使用者がスチーマの前面に座り、ノズルから吹き出されるスチームを顔に当てるものであるから、両意匠の前面及び側面からの形態が意匠の要部を構成するものであり、両意匠は、(B)本体前面(正面図側)に、上方から下方に向かって、ノズル、電源スイッチ、小スイッチ、ランプが縦一列に配置されている点、(C)本体の前面側に二段の段部が形成され、その最下段の段部は、前面上部から電源スイッチ、小スイッチ、ランプを囲む形状に形成されている点、そして、(D)本体の形状は、側面視すると、その外周が曲面に形成された略横長台形状であり、前面側の段部との境界線が右から左下方に傾斜した曲線に形成されている点が共通しており、両意匠の類否の判断に大きな影響を与えるものである。 これに加えて、両意匠は、(E)本体及び取っ手がそれぞれ白色、ノズル及び底面部に位置する排水受け皿がそれぞれ水色、そして電源スイッチが灰色である点で共通しており、このような配色も両意匠の類否の判断に大きな影響を与えるものである。 一方、両意匠の差異点である、小スイッチの左右に円形物は、ノズルや電源スイッチに比べて小さいことから、特段顕著な相違とは言えず、両意匠の類否の判断に与える影響は微弱である。 以上の認定、判断を前提として両意匠を全体的に考察すると、両意匠の差異点は、類否の判断に与える影響は微弱であって、共通点を凌駕しているものとはいえず、本件登録意匠は、実質的に甲号意匠であり、また、甲号意匠に類似するものであり、更に、本件登録意匠の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が甲号意匠に基づいて容易に創作をすることができたものである。 6.結び 以上のとおり、本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第2号に規定する意匠に該当し、また、同条同項第3号に規定する意匠に該当し、更に、同条第2項に規定する意匠に該当し、本件意匠登録は,意匠法第3条の規定に違反してされたものであり,同法第48条第1項第1号の規定に該当し、無効とすべきである。 第2.被請求人の答弁及び理由 被請求人は、要旨以下のように主張する。 すなわち、本件登録意匠と甲号意匠とは、その基本的構成態様及び具体的構成態様が全く相違するので、両者は同一の意匠ではないし、又、類似する意匠でもない。又、本件登録意匠は、甲号意匠の形状等からいわゆる当業者が容易に意匠の創作をすることができたものでもない。 したがって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項及び第2項の規定に違反して登録されたものではないので、本件審判請求は不適法である。 よって、本件審判請求は理由がないとの審決を求める。 第3.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成16年3月5日に意匠登録出願され平成17年2月18日に設定の登録がされた登録第1235118号意匠で、その意匠登録出願の願書の記載及び添付された図面代用写真によれば、意匠に係る物品が「美顔用スチーマ」で、その形態が、添付された図面代用写真に現わされたとおりのものである。(別紙第1参照) 2.甲号意匠 甲号意匠は、本件登録意匠の出願前、2004年(平成16年)2月11日に頒布された中華人民共和国意匠公報ZL03355522.2(特許番号)(甲第2号証)に記載された意匠であり、意匠に係る物品が「イオン美肌器」で、その形態が、同公報所載の写真に現わされたとおりのものである。(別紙第2参照) 3.本件登録意匠と甲号意匠との対比 両意匠は、スチーマを顔等に当てて肌に潤いを与えるもので、用途及び機能が同一であって同一物品である。 また、両意匠の形態については、以下の共通点と差異点が認められる。 (1)両意匠の共通点 (A)両意匠は、本体全体を略楕円柱状として上部を丸面状に底面を平面状に形成し、その本体の前面上部に略円筒形状ノズルを形成し、両側面の取り付け部を支点として上方に本体後面と同曲率形状の取っ手を設けた基本的構成態様において共通する。 また、各部の具体的構成態様につき、(B)本体前面(正面図側)に、上方から下方に向かって、ノズル、大円形の電源スイッチ、小スイッチ、ランプが縦一列に配置されている点、(C)本体の前面側に三段の曲線状段部が形成され、その最内側の段部(凸面部)は、前面中央部の電源スイッチ、小スイッチ、ランプを囲む縦長楕円形状に形成されている点、(D)本体の形状は、側面視すると、その底辺を除く外周が曲面に形成され、上部が前から後に向かってやや下り傾斜状の略横長台形状であり、前面側の段部との境界線が下方に従い前側に傾斜した曲線に形成されている点、(E)本体及び取っ手がそれぞれ白色、ノズル及び底面部に位置する排水受け皿がそれぞれ水色、そして電源スイッチが灰色である点において両意匠は共通する。 (2)両意匠の差異点 (F)本件登録意匠の小スイッチの左右に円形物が配置されているのに対して、甲号意匠の小スイッチの左右にはこのような円形物が配置されていない点で両意匠は相違する。 4.本件登録意匠と甲号意匠との類否 意匠の類否を判断するに当たっては,意匠全体として類否判断するが,そのためには,共通点及び差異点について,意匠全体に占める割合、物品特性、及び公知意匠を参酌して、看者の注意を引く部分か否かを評価し,意匠全体として両意匠の共通点及び差異点を総合的に観察した場合に、需要者に対して異なる美感を起こさせるか否かを判断する。 本件登録意匠及び甲号意匠は、テーブル等に置かれて全体が視認されるとともに、その使用に際して、使用者がスチーマの前面に座り、ノズルから吹き出されるスチームを顔に当てるものであるから、両意匠の全体的形状、そして特に前面及び側面からの形態が看者の注意を引く意匠の要部と認められる。 そうすると、両意匠は、(A)全体の基本的構成態様において共通するとともに、(B)本体前面(正面図側)に、上方から下方に向かって、ノズル、大円形の電源スイッチ、小スイッチ、ランプが縦一列に配置されている点、(C)本体の前面側に三段の曲線状段部が形成され、その最内側の段部(凸面部)は、前面中央部の電源スイッチ、小スイッチ、ランプを囲む縦長楕円形状に形成されている点、(D)本体の形状は、側面視すると、その底辺を除く外周が曲面に形成され、上部が前から後に向かってやや下り傾斜状の略横長台形状であり、前面側の段部との境界線が下方に従い前側に傾斜した曲線に形成されている点が共通しており、看者の注意を引く意匠の要部においてほとんど全ての構成態様が同一と言うほどに酷似し、また、この全体的な構成態様は、これまでに見られない特徴的な構成態様であり、格別看者の注意を引き、両意匠は美感が共通する。これに加えて、両意匠は、(E)本体及び取っ手がそれぞれ白色、ノズル及び底面部に位置する排水受け皿がそれぞれ水色、そして電源スイッチが灰色である点で共通しており、このような配色等の細部の具体的構成態様においても、全く同一であり、両意匠は美感が共通し、実質的に同一の意匠といえるものである。 これに対して、両意匠の差異点である、(F)小スイッチの左右に円形物の有無は、本件登録意匠の円形物が、ノズルや電源スイッチに比べて小さく、かつ、格別特徴的な態様のものではなく、そして、意匠全体の中で占める割合は全く微細なものであるから、ほとんど看者の注意を引かないものであり、到底両意匠の共通する美感を変更するような異なる美感を起こさせるものではない。 したがって、両意匠の共通点及び差異点を総合的に観察した場合、両意匠は全体として美感が一致し、同一の意匠である。 5.むすび 以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第2号に該当し、その他の無効理由について検討するまでもなく、本件意匠登録は,意匠法第3条の規定に違反してされたものであり、意匠法第48条第1項第1号に該当する。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2007-09-10 |
結審通知日 | 2007-09-13 |
審決日 | 2007-09-26 |
出願番号 | 意願2004-10188(D2004-10188) |
審決分類 |
D
1
113・
113-
Z
(C4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 斉藤 孝恵、渡邊 久美、小林 佑二 |
特許庁審判長 |
梅澤 修 |
特許庁審判官 |
杉山 太一 鍋田 和宣 |
登録日 | 2005-02-18 |
登録番号 | 意匠登録第1235118号(D1235118) |
代理人 | 田邊 俊 |
代理人 | 平田 義則 |
代理人 | 有吉 修一朗 |