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審決分類 審判    F4
管理番号 1174166 
審判番号 無効2007-880007
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-05-31 
確定日 2008-02-12 
意匠に係る物品 包装用袋 
事件の表示 上記当事者間の登録第1295508号「包装用袋」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、登録第1295508号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める、と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。

1.意匠登録無効の理由の要点
本件登録意匠は、意匠登録第1261345号の意匠と類似であり、意匠法第9条第1項の規定に該当し意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号の規定により、無効とすべきである。

2.本件登録意匠を無効とすべき理由
(1)本件登録意匠
本件登録意匠(甲第1号証)は、まち無しのピロー型包装用袋の態様に関するものである。その基本的形態は、長方形状の袋の上部で溶着位置に切り欠き部が2ヶ所形成されていて、この両切り欠き部の外側突出部を注出口とするものである。中心位置で、二ヶ所の切り欠き部間の突出部には吊り下げ用の穴が設けられている。
具体的な構成としては、上部の溶着部分に細めでU字形をした同形の切り欠き部が二ヶ所、左右方向で非線対称の位置に垂直に設けられている。上記の溶着部では、非溶着部との境目の線が円弧状のコーナー部を除き水平と垂直線で形成されている。

(2)意匠登録第1261345号意匠(甲第2号証)
甲第2号証の意匠は、まち無しのピロー型包装用袋の態様に関し、基本的構成態様は縦長長方形袋で上部の溶着位置にニケ所の切り欠き部を形成したものであり、この切り欠きの外側突出部を注出口としたものである。切り欠き部間にある突出部には中心位置に吊り下げ用の関口を設けた構成となっている。
具体的構成態様は上部の溶着部で太めで角形の切り欠き部(「太めのU字形」と言えなくもないが)が二ヶ所で左右方向に線対称の位置で設けられ、突出部と切り欠き部の幅が略同じ間隔で形成されている。また切り欠き部の底部に位置する溶着部と非溶着部の境目となる線は中心部から左右へ上りの傾斜に形成されている。

(3)本件登録意匠と甲第2号証意匠の対比
両意匠は、以下の三点において共通する。
イ.本件登録意匠と甲第2号証の意匠は共に背面側が合掌するピロー型の袋体である。
ロ.上緑部で二ヶ所の切り込み間の突出部には吊り下げ部が設けられている。
ハ.中心線を挟んで左右に一ヶづつ同じ形状の切り欠きを設け、その切り欠きの外側を注出口部とし、左右二ヶ所の注出口を有する袋体である。
このうちイ、ロにおいてはここで説明するまでもなく、従来から広く知られた構成である。ハは、両意匠の要部であり全体の基調をなすと共に類似判断に大きな影響を及ぼすところである。
本件登録意匠は上端のシール部において細めでU字形の切り欠き部を二ヶ所で垂直に形成し、この切り欠きをわずかに非線対称となるよう一方に片寄り形成させたものとなっている。そのため、切り欠きの外側に設けた注出口は互いに異なった大きさに形成される。
そして本件登録意は上緑の切り欠き部を「非線対称としていることが大きな特徴」と主張しているようだが、その形態がこの程度の片寄り状態では看者の注目度は低く、非線対称に形成されていることを視覚的に強く印象付けるには、ややインパクトに欠け、物足りない構成といえる。たしかに、じっと注視していればこの非線対称の構成は認識できると思われるが、何気なく視線を向けただけでは線対称との区別が付けにくいことは明らかである。もし非線対称を大きな特徴とするのであれば視線を向けた時、瞬時に認識できる形態であることが重要ではないかと思われる。
甲第2号証の意匠は、上端のシール部からやや太幅で角形の切り欠き部を二ヶ所で左右方向に線対称の位置に設けられたものである。また、左右両端側に設けられている注出口となる突出部及び吊り下げ穴のある中央の突出部と切り欠き部の幅はほぼ等しい寸法となって、全体が規則的な構成を印象付けている。
しかしこれらの具体的な構成は意匠全体として見た場合、あまり大きな特徴とは言えないものである。
特にこの種の物品は、上緑部での限られた範囲のみが意匠の要部となり、両意匠は上部の二ヶ所に切り込みを設けたこと自体が意匠全体の基本形態であって、この構成においては美感が共通していると言える。
従って、両意匠の相違点であるところの
イ.二ヶの切り欠きの幅、長さ、形状の相違。
ロ.二ヶの切り欠き部の線対称と非線対称の相違、シール部の境目形状の相違。
等は、具体的構成においてある程度相違する点ではあるが、それらは部分的な相違の範囲内であって、共通性の中に埋もれる程度の軽微な相違であると言え、両意匠の類似判断に与える影響は微弱である。
以上のように、上端部の二ヶ所に切り欠きを設けた基本的構成態様は両者共通するものであり、この共通する態様は全体の基調をなすものであるから両意は類似すると言わざるを得ない。
本件登録意匠と甲第2号意匠と同様に線対称と非線対称でありながら「類似意匠」として登録されている事例として、甲第3号証ないし甲第10号証が挙げられる。
これらの理由から本件登録意匠と甲第2号意匠の類似判断は上部に二ヶ所の切り欠きを設けたこと、更に両意匠は切り欠きの形状、大きさ、位置が比較的近似していることから当然類似であると判断されるべきである。

第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、要旨以下のとおり主張し、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。

(1)本件登録意匠の無効理由について
本件登録意匠は、甲第2号証と非類似であり、意匠法第9条1項の規定に該当しない。

(2)無効理由に対する反論
請求人の主張の要点は、「具体的構成においてある程度相違する点はあるが、それらは部分的な相違の範囲内であって、共通性の中に埋もれる程度の軽微な相違であると言え、両意匠の類似判断に与える影響は微弱であるとして、上端部の二ヶ所に切り欠きを設けた基本的構成態様は両者共通するものであり、この共通する態様は全体の基調をなすものであるから両意匠は類似すると言わざるを得ない」という点にある。
しかし、乙第1号証は、甲第2号証意匠との関係では、関連意匠としてではなく「非類似」の独立の意匠として登録されている。このことは、二つの包装用袋の意匠が袋上部に二カ所の切り欠き部を設けた基本的構成態様において共通しているという理由だけで、二つの意匠が必ず類似していることにはならないことを示している。すなわち、包装用袋の中心線を挟んで左右に一ヶづつ同じ形状の切り欠き部を設け、その切り欠き部の外側を注出口部とした、左右二ヶ所の注出口を有する袋体であるという基本的構成態様が共通している本件登録意匠と甲第2号証意匠が、具体的構成態様の相違によって非類似になることもあり得ることを示唆しているのである。
次に、本件登録意匠と甲第2号証意匠における具体的構成態様の共通点および相違点を明らかにして、本件登録意匠と甲第2号証との類否について述べる。

a.具体的構成態様の共通点および相違点
(共通点)
(a-1)左右二ヶ所に設けられている切り欠き部の形状・寸法が同一であり、縦壁が垂直壁である点は共通する。
(a-2)吊り下げ用の穴が包装用袋の幅方向中間点に設けられている点は共通する。
(a-3)左右の突出部が注出口を構成している点は共通する。
(相違点)
(あ)甲第2号証意匠はニケ所の切り欠き部、三ケ所の突出部それぞれの幅がほぼ同一であるのに対し、本件登録意匠はニケ所の切り欠き部の幅は同一であるが、中央の突出部の幅よりも明らかに小さく、約1/2の幅であり(甲第2号証意匠の切り欠き部の幅の約1/2であり)、三ケ所の突出部のうち、中央の突出部の幅と右側の突出部の幅はほぼ同一で、左側の突出部の幅は右側の突出部の幅よりも明らかに大きく、約1.5倍の大きさになっている点で相違する。
(い)甲第2号証意匠は切り欠き部の底部が水平になっているのに対し、本件登録意匠は切り欠きの底部が半円状になっている点で相違する。
(う)甲第2号証意匠は吊り下げ用の穴を挟んで左右対称になっているのに対し、本件登録意匠は吊り下げ用の穴を挟んで左右非対称になっている点で相違する。
(え)甲第2号証意匠は、中央の突出部の幅方向中間点に吊り下げ用の穴が設けられているのに対し、本件登録意匠は、中央の突出部の幅方向左側に吊り下げ用の穴が大きく片寄って設けられている点で相違する。具体的には、本件登録意匠では、吊り下げ用の穴から左側切り欠き部までの左側領域の幅が、吊り下げ用の穴から右側切り欠き部までの右側領域の幅の約1/4となっている。
(お)甲第2号証意匠は中央の突出部の下の溶着境界が下方に向かって突出した逆山形形状になっているのに対し、本件登録意匠は中央の突出部の下の溶着境界が水平形状である点で相違する。
(か)甲第2号証意匠は中央の突出部の下の溶着境界の両端部の角が面取り程度の小さな円弧で形成されているのに対し、本件登録意匠は中央の突出部の下の溶着境界の両端部が切り欠き部の半円状の底と相似形の大きな円弧で形成されている点で相違する。

b.本件登録意匠と甲第2号証意匠との類否
先ず、請求人は本件登録意匠と甲第2号証意匠との類否に関して、「何気なく視線を向けただけでは線対称との区別が付けにくいことは明らかである。・・・・瞬時に認識できる形態であることが重要ではないかと思われる。」と述べている。
この考え方から本件登録意匠をみると、特に、(相違点)(あ)の「切り欠き部の幅が甲第2号証意匠の切り欠き部の幅の約半分である」、(相違点)(い)の「切り欠き部の底が半円状である」、(相違点)(え)の「吊り下げ用の穴が中央の突出部の左方向に大きく片寄っている」には形態上大きな相違があり、看者はこれらの相違を瞬時に認識できるものと認められる。そして、これら(相違点)(あ)、(い)、(え)は、特に(相違点)(え)は、後の説明から分かるようこ、これが契機になって看者が非線対称性に気づくのであるから、請求人が言う「瞬時に認識できる形態であることが重要ではないかと思われる。」という要件を本件登録意匠は十分に具備しているのである。
次に、これらの具体的構成態様の相違から受ける両意匠の印象について具体的に述べる。本件登録意匠と甲第2号証意匠とは、第一に、(相違点)(あ)から切り欠き部の存在感の相違が著しく異なり、甲第2号証意匠では「切り欠き部の幅が突出部の幅とほぼ等しい」ことによって切り欠き部の存在感が大きいのに対して、本件登録意匠では「切り欠き部の幅が甲第2号証意匠の切り欠き部の幅の約半分である」ことによって切り欠き部の存在感が小さい。第二に、(相違点)(う)として挙げたように、甲第2号証意匠は左右線対称であるのに対して、本件登録意匠は左右非線対称であり、この非対称性は(相違点)(え)の「吊り下げ用の穴が中央の突出部の左方向に大きく片寄っている」意外性によって強調されて、看者に瞬時に認識されるほどのアンバランス性を有しており、看者は本件登録意匠の包装用袋をこのまま吊り下げれば右側に傾いてしまうと錯覚してしまうと不安定な錯覚に捕われる。第三に、甲第2号証意匠の(相違点)(あ)の「左右の側部突出部と左右の切り欠き部と中央突出部が同じ幅」及び(相違点)(い)の「切り欠き部の底が水平である」によって力強く且つ規則的であるのに対して、本件登録意匠は、「左側突出部の幅が右側突出部の約1.5倍であり」、「幅狭な左右の切り欠き部の存在」、「切り欠き部の底が半円状である」によって、甲第2号証意匠とは全く異なる不規則な印象を看者に与える。すなわち、甲第2号証意匠は、看者に力強く且つ規則的な印象を与えるのに対して、本件登録意匠は、看者に左右非線対称で且つ不規則な独特の印象を与える。
また、本件登録意匠と甲第2号証意匠に係る物品は、請求人も認めているように、上端部に注出口を備えた「詰め替え容器」である。この「詰め替え容器」にあっては、需要者が商品を購入する際に、詰め替えの際の使い勝手をイメージしながら、注出口を備えた上端部の具体的構成態様を注意深く観察するという「物品の特性」を有している。(相違点)(あ)から甲第2号証意匠は、前述した力強くかつ規則的な形態によって、甲第2号証意匠に係る物品では看者にどちらの注出口も同様に使うことができる単純さ・線対称性を視覚を通じて訴える。これに対し、本件登録意匠に係る物品は、一方の注出口の大きさをもう一方の注出口の大きさよりも大きくすることによって、大きな口の容器に詰め替える場合と小さな口の容器に詰め替える場合の使い分けができるように形成されている。本件登録意匠に係る物品の使い分け機能は、甲第2号証意匠に係る物品には見られない新たな機能である。この新たな機能は、吊り下げ用の穴が中央の突出部の左方向に大きく片寄っているアンバランス性及び意外性が契機となって看者が気づく左右の突出部の幅の相違を通じて、看者は異なった大きさの注出口に注目するであろうし、新たな使い分け機能による便利さを直ちに感じ取ることができる。
また、それ以外の(相違点)(お)および(か)についても、本件登録意匠は、非線対称であり、曲線を利用して柔らかさが表れているのに対し、甲第2号証意匠は線対称で直線を使用した堅い印象を与えるもので、双方の相違は明らかである。
さらに、共通点(a-1)左右二ヶ所に設けられている切り欠き部の形状・寸法が同一であり、縦壁が垂直壁である点も、非線対称性の瞬時の認識を容易にしている。すなわち、本件登録意匠においては(相違点)(う)で述べたように;線対称・非線対称の対称中心になる吊り下げ用の穴を設けている。仮に、非線対称位置に設けられた一方の切り欠き部が三角形であり、他方の切り欠き部が四角形であると、看者は三角形と四角形の差違に気を取られ、それらの位置の非線対称性を見逃してしまう恐れがある。これに対し、本件登録意匠のように切り欠き部の形状・寸法が同一であると、看者は何も惑わされることなく切り欠きの位置の認識すなわち非線対称性の認識を容易に行うことができるのである。
このように、本件登録意匠は、規則性が強調された線対称の甲第2号証意匠に対し、(相違点)(あ)の「切り欠き部の幅が甲第2号証意匠の切り欠き部の幅の約半分である」、(相違点)(い)の「切欠き部の底が半円状である」、(相違点)(え)の「吊り下げ用の穴が中央の突出部の左方向に大きく片寄っている」ことが看者に瞬時に認識されると共に、これらによって甲第2号証意匠とは基調がまったく異なる左右非線対称で且つ不規則な独特の印象を与え、さらに、詰め替え容器という物品の特性から左右の突出部つまり左右の注出口の幅の相違に需要者の関心が注がれる蓋然性を有していることから、看者は非対称性によって視覚的に強調された使い分けという新たな機能に注目する。このように、本件登録匠は甲2号意匠とは顕著なしかも多くの決定的な相違があり、本件登録意匠は甲2号意匠とは異なる独自の視覚的認識を形成する非類似のものである。
請求人は、本件登録意匠と甲第2号意匠と同様に線対称と非線対称でありながら「類似意匠」として登録されている事例として、甲第3号証ないし甲第10号証を挙げている。しかし、これは線対称意匠と非線対称意匠であっても、その線対称・非線対称の態様によって、類似である場合も非類似である場合もあるという事実を見過ごした主張であり、否定されるべきである。
本件登録意匠と甲第2号証意匠とは、非線対称性か線対称性かの
違いの他に、各切り欠きの大きさや形状、溶着部領域の形状にも差異があり、甲第3号証ないし甲第10号証の各組の意匠とは同列に論じることはできない。

c.まとめ
以上述べたように、請求人の主張はすべて否定されるべきであり、被請求人の主張のとおり、本件登録意匠は甲第2号証と非類似であり、意匠法第9条第1項に規定に該当せず、答弁の趣旨のとおりの審決を求める次第である。

第3.当審の判断
1.本件登録意匠(甲第1号証)
本件登録意匠は、平成17年5月24日に意匠登録出願をし、平成19年2月2日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1295508号意匠であり、意匠に係る物品を「包装用袋」とし、その形態を、願書及び願書に添付の図面の記載に示すとおりとするものである(別紙1参照)。
すなわち、その形態は(願書添付図面の正面図右側を上部とする。)、まち無しのピロー型包装用袋であり、略縦長長方形状の袋の上下部は熱溶着され、上縁の熱溶着部のやや右寄りに略U字状の切り欠き部が2ヶ所形成され、切り欠き部外側の突出部を注出口とし、切り欠き部間の突出部を吊り下げ部とし、その吊り下げ部の左寄りに吊り下げ用穴が形成され、上端部全体として非対称に形成されている。また、上縁の熱溶着部は、一定幅で上縁に沿って形成されているが、2ヶ所の略U字状切り欠き部分ではこれを跨ぐように、コーナー部を円弧状とした太幅の略U字状に形成されている。

2.請求人が無効の理由として引用した意匠(甲第2号証)
甲第2号証に現された意匠は、平成17年4月28日に意匠登録出願をし、平成17年12月9日に意匠権の設定の登録がなされ、平成18年1月30日に意匠公報が発行された登録第1261345号意匠であり、意匠に係る物品を「包装用袋」とし、その形態を、願書及び願書に添付の図面の記載に示すとおりとするものである(別紙2参照)。
すなわち、その形態は、まち無しのピロー型包装用袋であり、略縦長長方形状の袋の上下部は熱溶着され、上縁の熱溶着部に隅丸矩形状の切り欠き部が左右対称位置に2ヶ所形成され、切り欠き部外側の突出部を注出口とし、切り欠き部間の突出部を吊り下げ部とし、その中央に吊り下げ用穴が形成され、切り欠き部と突出部とが略同幅で形成され、上端部全体として対称形に形成されている。また、上縁の熱溶着部は2ヶ所の切り欠き部の下部中央でやや下方に傾斜し船底状に形成されている。

3.本件登録意匠と甲第2号証との対比
そこで、本件登録意匠と甲第2号証とを比較すると、両意匠ともに意匠に係る物品は「包装用袋」であり一致する。また、その形態については、主として下記のとおりの共通点と差異点がある。

(A)共通点
先ず、共通点として、全体が、まち無しのピロー型袋であって、略縦長長方形状の上下部は熱溶着され、上縁の熱溶着部に2ヶ所の同形の切り欠き部が形成され、切り欠き部間の突出部を吊り下げ部とし、これに吊り下げ用穴が形成された基本的な構成態様である点があげられる。

(B)差異点
一方、差異点として(ア)対称性について、本件登録意匠は吊り下げ用穴を挟んで左右非対称であるのに対し、甲第2号証の意匠は左右対称である点(イ)上端部の突出部の幅について、本件登録意匠の突出部は、中央と右側の突出部の幅ははぼ同一であり、左側の突出部はこれらの約1.5倍の幅であるのに対し、甲第2号証の意匠の突出部の幅は、3ヶ所の突出部の幅はほぼ同一である点(ウ)切り欠き部の幅について、本件登録意匠の切り欠き部の幅は、中央の突出部の幅より狭く約1/2であるのに対し、甲第2号証の意匠の切り欠き部の幅は、中央の突出部の幅とほぼ同一である点(エ)切り欠き部の形状について、本件登録意匠の切り欠き部の底部は、半円状であるのに対し、甲第2号証の意匠の切り欠き部の底部は、水平である点(オ)吊り下げ用穴の位置について、本件登録意匠は中央の突出部の左端部に片寄って設けられているのに対し、甲第2号証の意匠は中央に設けられている点(カ)熱溶着部について、本件登録意匠は、中央の突出部の下の溶着部が水平状であり、その両端部は切り欠き部の半円状の底と相似形の大きな円弧で形成されているのに対し、甲第2号証の意匠は、下方に向かって傾斜した船底形状であり、その両端部の角は小さな円弧で形成されている点がある。

4.本件登録意匠と甲第2号証との類否判断
そこで、本件登録意匠と甲第2号証とを全体として観察し、共通点および差異点の類否判断に与える影響について総合的に検討するに、共通するとした点は、全体の骨格をなす基本的な構成態様ではあるものの、この種の物品分野では従来から知られている態様であって、格別顕著な特徴とまでは言えないから、類否判断に与える影響は小さい。
一方、相違点としてあげられた点は、包装用袋の上端部に関するものであるが、袋本体部に特段の特徴がないこの種の物品においては、上端部の態様に着目するものであり、上端部の相違が類否判断に大きな影響を及ぼすものであるということができる。すなわち、相違するとした(イ)の上端部の突出部の幅(ウ)の切り欠き部の幅(エ)の切り欠き部の形状(オ)の吊り下げ用穴の位置における差異点は、それぞれ本件登録意匠が、左右非対称であることから生ずる差異であって、これらが相俟って本件登録意匠が従来にない特徴を有することとなり、結局(ア)の対称性における差異を強く認識させる視覚的効果を有することになっているので、これらの差異点は、類否判断に大きな影響を及ぼしているといわざるを得ない。
したがって、差異点が共通点を凌駕しているので、本件登録意匠と甲第2号証とは類似しないというほかない。

5.結び
以上のとおりであって、請求人の提出した証拠及び主張によっては、意匠法第9条第1項の規定に違反して登録されたものとして、本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2007-12-05 
結審通知日 2007-12-12 
審決日 2007-12-28 
出願番号 意願2005-14875(D2005-14875) 
審決分類 D 1 113・ 4- Y (F4)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 智加 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 木本 直美
岩井 芳紀
登録日 2007-02-02 
登録番号 意匠登録第1295508号(D1295508) 
代理人 井野 砂里 
代理人 村社 厚夫 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 秋元 輝雄 
代理人 宍戸 嘉一 
代理人 弟子丸 健 
代理人 大塚 文昭 

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