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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) F5
管理番号 1175777 
判定請求番号 判定2007-600082
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2008-05-30 
種別 判定 
判定請求日 2007-10-26 
確定日 2008-03-27 
意匠に係る物品 測量地点記憶タグ収容座金 
事件の表示 上記当事者間の登録第1284564号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠書面及びイ号意匠説明書に示す「測量地点記憶タグ収容座金」の意匠は、登録第1284564号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
請求人は、「イ号意匠書面及びイ号意匠説明書に示す意匠は登録第1284564号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める。」と申し立て、その理由を判定請求書の記載のとおり主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証(意匠公報、カタログ及び回答書の写し)を提出した。その主張の要点は、以下のとおりである。
1.判定請求の必要性
請求人は、登録第1284564号意匠(甲第1号証、以下、「本件登録意匠」という。別紙第1参照。)の意匠権者であって、被請求人が現在販売しているイ号意匠に係る測量地点記憶タグ収容座金について、本件登録意匠の意匠権を侵害する旨警告したが、被請求人は、「侵害しない旨」回答したので、特許庁に判定を求めた。
2.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「測量地点記憶タグ収容座金」とし、その形態を、願書に記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとするものである。
3.イ号意匠
イ号意匠は、イ号意匠書面(別紙第2参照)及びイ号意匠説明書(別紙第3参照)の写真に現わされたICタグを除いた金属製座金の意匠である。その形態は、イ号意匠書面及びイ号意匠説明書の写真に現わされたとおりである。
4.本件登録意匠とイ号意匠との対比
(1)共通点
1) 両者は、用途及び機能の点において同一であり、意匠に係る物品が一致する。
2)基本的構成態様は、全体が短い円柱形状をなし、中央がくり抜かれたICタグ(RFIDタグ)の収容部が形成されている。
3)具体的構成態様は、円柱の胴部のやや下よりの外周に2mm幅の溝が周回して設けられ、収容部は底面から平面を貫通して、収容部の上面は段差によって底面の径に比較して縮径している。そして、収容部の一端に外側に通じる細い溝状の切れ込みが形成される。
(2)差異点
1)イ号意匠の外周の溝はやや下よりに形成されているのに対して、本件登録意匠はやや上よりに形成されている。
5.イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由
(1)本件登録意匠の要部
ICタグを座金に使用して保護及び取付け性を確保するという発想自体が従来存在するものでなく、本件登録意匠は外周に溝を形成した金属性の円柱の中心部分をくり抜いてICタグの収容部を形成し、その収容部に切れ込みを形成しているという創作的価値を備え、そこに本件登録意匠の要部がある。
(2)本件登録意匠とイ号意匠との類否判断
1)両意匠の共通点は、基本的構成態様と具体的構成態様に及び、特に、外周に溝を形成した金属性の円柱の中心部分をくり抜いてICタグの収容部を形成し、その収容部に切れ込みを形成しているという創作的価値が共通して、両意匠の類否判断に大きな影響を与える。
2)両意匠の差異点は、外周の溝の位置を上よりにするか、下よりにするかは、ありふれた手法により変更したに過ぎない意匠、あるいは実施にあたって適宜選択できる事項であるので、この点において特段顕著な相違ということはできず、類否判断に与える影響は微弱である。
3)以上、両意匠を全体的に考察すると、両意匠の差異点は、類否判断に与える影響は微弱なものであって、共通点を凌駕しているものとはいえず、それらがまとまっても両意匠の類否に及ぼす影響は、その結論を左右するまでに至らない。
6.むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するので、請求の趣旨の通りの判定を求める。
第2.被請求人の答弁
被請求人は、「イ号意匠書面及びイ号意匠説明書に示す意匠は登録第1284564号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない、との判定を求める。」と申し立て、その理由を答弁書の理由の記載のとおり主張し、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証(カタログ及び公開特許公報の写し)を提出した。その理由の要点は、以下のとおりである。
1.イ号意匠と本件登録意匠との対比
(1)共通点
1)イ号意匠は測量地点に設置している測量地点明示プレートに隣接したところに設置する金属標座金である。用途及び機能においては同一である。但しICタグが入る円筒型の収容部とその周辺部と側面の溝部はその通りでない。
2)基本的構成態様は、全体が円柱状の平板材からなり、円柱の中心部が没落してICタグの収容部が形成され、円柱胴部の底面に近いところの外周に数mm幅の溝が周回している。
(2)差異点
1)イ号意匠の具体的構成態様は、円柱状の中央に頭部外径の2/3以下の直径の円筒型の収容部が形成され、その収容部は底面から平面を貫通して、収容部の上面はほんの少しの段差によって底面の径よりもほんの少し縮径しているがほとんど差は感じない程度である。円柱胴部の底面に近いところの外周に数mm幅の溝が周回している。収容部の上面の穴径は底面の穴径に対し80?85%の比率で形成され、本件登録意匠は40?45%程度の比率で形成され非常に小さい穴となっている。
2.イ号意匠と本件登録意匠との類否判断
1)収容部分や収容部の外縁の外側に通じる細い溝状の切れ込みの形成については、ICタグを扱っているものなら従来より考えられている手法である(乙第2号証と乙第3号証)。(別紙第4参照)
2)収容部(本体の底面から平面を貫通しており、収容部の上面は段差によって底面の径よりも縮径)についてもすでに創作されていた(乙第4号証)。(別紙第5参照)
3)金属標を埋設した時にあらわれる上面(他の部分は道路等に埋もれてしまい見えない部分になる)については、特にICタグ収納部だけをとらえると両意匠の識別を考えた時に没落した穴の大きさの比率は十分識別可能なもので、両意匠の類否判断に大きな影響を与える。
4)以上のことから両意匠を全般に考えると、両意匠の差異点は、類否判断に与える影響は大きなものであって、共通点を凌駕している。
3.むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さないので、答弁の趣旨の通りの判定を求める。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、本意匠を意匠登録第1284421号とする、平成18年(2006年)2月6日の意匠登録出願に係り、平成18年9月8日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1284564号の意匠であって、願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「測量地点記憶タグ収容座金」とし、その形態を、願書に記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとするものである。
2.イ号意匠
イ号意匠は、イ号意匠書面の図面に記載され及びイ号意匠説明書の写真に現わされた金属標の意匠(ICタグを除く)であり、その形態は、同書面の図面に記載され及び同説明書の写真に現わされたとおりである(なお、イ号意匠書面の図面に記載された意匠とイ号意匠説明書の写真に現わされた意匠との、略円柱状の高さと直径との構成比率等相互に一致しない点については、イ号意匠説明書がイ号意匠書面で明らかでない部分を詳細にするために添付した説明書であるから、イ号意匠書面に基づいて判断する。また、イ号意匠書面の図面の左側の図《寸法を付した図》において、寸法の数値による高さと直径との構成比率が、図の構成比率と一致しない点については、寸法数値を明記していることから、数値に基づいて判断する。)。
3.本件登録意匠とイ号意匠との対比
(1)意匠に係る物品
両意匠とも、測量地点に設置してその位置情報を明示するための金属標の記憶タグ収容座金として使用されるものであり、用途及び機能が共通し、意匠に係る物品は一致する。
(2)形態
両意匠の形態について、以下に示すように、共通点及び相違点がある。
1)共通点
両意匠は、(A)全体を、略短円柱状とし、(B)その上下面の中央を貫通して略円筒状にくり抜かれたICタグの収容孔を形成し、さらに、その収容孔の一端から略短円柱状の外側面へと通じる垂直状の細幅の切り込み部を形成して、ICタグ収容部とし、(C)略短円柱状の外側面に、略コ字状に凹む細溝を水平状に周回させ、(D)収容孔は、上面の口径を短くし、その下側に段差を形成した点において共通する。
2)差異点
両意匠は、(ア)略短円柱状の高さと直径との比率を、本件登録意匠は、約1:1.6としたのに対して、イ号意匠は、約1:1.9とした点、(イ)収容孔の構成比率について、(イ-1)上面側の収容孔の直径と略短円柱状の直径との比率を、本件登録意匠は、約0.33:1としたのに対して、イ号意匠は、約0.43:1とし、(イ-2)底面側の収容孔の直径と上面側の収容孔の直径との構成比率を、本件登録意匠は、約0.47:1としたのに対して、イ号意匠は、約0.73:1とした点、(ウ)外側面の細溝を、本件登録意匠は、上下方向の中央よりやや上方に形成したのに対して、イ号意匠は、下方寄りに形成した点に差異が認められる。
5.本件登録意匠とイ号意匠の類否判断
意匠の類否判断に当たっては、両意匠の意匠に係る物品の用途、機能、さらには公知資料にない新規な創作部分の存否を参酌して、需要者の注意を惹く部分を意匠の要部として把握し、両意匠を意匠全体として総合的に観察して、需要者に対して共通する美感を起こさせるか否かを判断する。
この種測量記憶タグ収容座金は、測量地点に設置してその位置情報を明示するための金属標に使用されるものであり、その金属標を設置する業者等が需要者である。需要者は、測量地点記憶タグ収容座金の設置された場合の表示状態や設置する場合の記憶タグのデータの読み取り等を考慮するものであり、この種記憶タグ収容座金の意匠においては、通常斜視状態を中心としつつ意匠全体が観察されるものと認められる。
そこで、両意匠の共通点及び差異点を総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。
まず、両意匠の共通点について、(A)の態様は、略短円柱状だけを捉えれば、周知の態様であるが、全体の骨格的な構成態様で、全体にわたる態様であり、かつ、本願登録意匠の出願前にこの種測量地点記憶タグ収容座金の分野において見られない態様であるから、需要者の注意を惹くものである。(B)の態様は、単純な略短円柱状の構成の中にあって、特に、上下面の中央を貫通して略円筒状にくり抜かれた収容孔と、その収容孔から外側面へと通じる細幅の切り込み部とを合わせ持った態様は、斜視状態で上面から外側面にかけて視認され、視覚的に目立ち、かつ、本願登録意匠の出願前にこの種測量地点記憶タグ収容座金の分野において従来見られない特徴的な態様であるから、需要者の格別の注意を惹くものである。なお、被請求人が提出した乙第3号証の図面並びに乙第2号証及び乙第4号証の写真のいずれにも、特徴的な態様である上下面の中央を貫通して略円筒状にくり抜かれた収容孔と、その収容孔から外側面へと通じる細幅の切り込み部とを合わせ持った態様は、表現されていない。(C)の態様は、外側面の湾曲面上の中にあって、凹部を形成する細溝を水平状に周回させ、視覚的に目立ち、かつ、本願登録意匠の出願前にこの種測量地点記憶タグ収容座金の分野において従来見られない特徴的な態様であるから、需要者の格別の注意を惹くものである。(D)の態様は、全体から観て部分的な箇所で、かつ、上面と底面とを対比するか、限られた方向から観てようやく視認できる程度のもので、需要者の格別の注意を惹くものではないが、他の共通点と相まって、両意匠の共通感をより強める。
したがって、(B)及び(C)の態様を中心とする、両意匠の共通する態様の相まって奏する視覚的効果は、意匠全体として、両意匠に強く共通した美感を起こさせるものである。
一方、両意匠の差異点は、微弱であり、両意匠の共通する美感を変更するものではない。
すなわち、(ア)の比率の差異は、イ号意匠が本願登録意匠よりやや縦長としても、略短円柱状の中での僅かな相違に過ぎず、共通点(A)の態様に希釈され、需要者の注意を惹くものではない。(イ)収容孔の構成比率について、(イ-1)の比率の差異は、略短円柱状の直径に対する収容孔の直径の大小が識別できるとしても、略円筒状にくり抜かれた収容孔と細幅の切り込み部との合わせ持った態様は、明確に視認できるものであり、かつ、その合わせ持った態様が、特徴的な態様であり、むしろ、共通点(B)の態様に希釈されて、(イ-1)の比率の差異は、需要者の注意を惹くものではない。(イ-2)の比率の差異は、上面と底面との対比によって成り立ち、容易に視認し難いもので、むしろ、共通点(D)の態様を踏まえて、斜視状態から観れば、(イ-1)の比率の差異に収斂されてくるもので、その差異については、上記したとおりであるから、(イ-2)の比率の差異は、需要者の注意を惹くものではない。(ウ)の態様の差異は、細溝の上下方向の位置が僅かに相違するだけで、外側面の湾曲面上の中にあって、細溝を水平状に周回させる態様に格別異なる印象を与えず、共通点(C)の態様に希釈され、需要者の注意を惹くものではない。
そして、これらの差異点の相まって奏する視覚的効果を勘案しても、両意匠に共通する美感を変更するものではない。
以上のとおりであり、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態についても、共通点が差異点を凌駕しており、意匠全体として美感が共通し、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものである。
5.むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2008-03-17 
出願番号 意願2006-2535(D2006-2535) 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (F5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 真珠 
特許庁審判長 梅澤 修
特許庁審判官 杉山 太一
鍋田 和宣
登録日 2006-09-08 
登録番号 意匠登録第1284564号(D1284564) 
代理人 綾田 正道 

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