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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属さない(申立不成立) H2 |
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管理番号 | 1179124 |
判定請求番号 | 判定2007-600091 |
総通号数 | 103 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2008-07-25 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2007-11-22 |
確定日 | 2008-06-05 |
意匠に係る物品 | 充電器 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1300630号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「充電器」の意匠は、登録第1300630号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 |
理由 |
第1.請求人の申立及び理由 請求人は、イ号意匠並びにその説明書に示す意匠(以下、「イ号意匠」という。)は、登録第1300630号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める、と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。 1.本件登録意匠とイ号意匠との比較説明 1.1.共通点 本件登録意匠もイ号意匠も、形状、並びに、その形状に伴う機能が、次の点で共通している。 (1)携帯電話機やデジタルカメラなど、携帯して使用される小型電気製品の充電器に関するものである。 (2)正面、背面、平面、底面は、ほぼ平らであり、正面及び背面が最も広く縦長の略直方体状である。 (3)背面視で明白なように、通常は、コンセントプラグが充電器本体の内側に没入し、携帯しやすく構成されている。コンセントプラグを使用する際には、それを90°回動させて突出させる。 (4)平面視で明白なように、充電器からの出力は、上部にあるコネクタに配線を接続して行なう。 (5)平面視で明白なように、上部にあるボタンを押す操作で、充電器からの出力を制御する。内部には充放電自在な2次電池が内蔵されている。 (6)その出力制御状態は、正面にあるランプで表示される。そのランプは、2個配置され、on/offを示すランプと、内蔵電池へ充電中か否かを示すランプとで構成される。使用時には、この2つのランプの状態で、充電器の状態を一目で認知できるようになっている。 以上のとおり、本件登録意匠もイ号意匠も、形状、並びに、その形状に伴う機能が、ほぼ一致している。しかも、全体のサイズも、ほぼ一致している。 1.2.相違点とその評価(イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明) 敢えて細部の相違を見出すと、次の点が挙げられ、それぞれ次の通りに思料される。 (7)左右側面の形状について 本件登録意匠では、略半円の円弧の曲面であり、イ号意匠では、若干丸味を帯びるものの、ほぼ平らであるが、平面視で注意しなければ気付かない微差であり、非類似の根拠とは言えない。 (8)不使用時におけるコンセントプラグの収容部について 本件登録意匠では、コンセントプラグを収容する凹部に伴う切り欠けが、背面底部と左側面底部にあり、イ号意匠では、背面底部と底面にあるが、いずれも目立たない隅の背部であり、非類似の根拠とは言えない。 (9)上下に連設される 2個のランプの位置について 本件登録意匠では、ランプは、正面の上部左寄りにあり、イ号意匠では、ランプは、正面の上部中央にあるが、その左右のずれは、僅か1cm度であり、非類似の根拠とは言えない。 (10)ランプに付設される模様について 本件登録意匠では、2個のランプは、長円の小さな模様に囲まれ、Li-ionとON/BATの符号がそれぞれ付記され、イ号意匠では、2個のランプは、長円の小さな模様には囲まれず、INとOUTの符号がそれぞれ付記されているが、本件登録意匠で2個のランプを囲う長円模様は微小であり、使用者はランプの点灯状態を注視するので目立つものではない。また、ランプの右脇に付記される文字は異なるが、各ランプの点灯機能は同じであり、使用者はそのランプの点灯状態を注視し、使用初期以外は文字を注視しないので、非類似の根拠とは言えない。 (11)充電器を制御するボタンの位置について 本件登録意匠では、ボタンは、上面の中央にあり、イ号意匠では、ボタンは、上面の中央より若干左寄りにあるが、その左右のずれは、僅か1cm度であり、非類似の根拠とは言えない。 (12)出力配線を接続するコネクタ端子の位置について 本件登録意匠では、コネクタ端子は、上面の右寄りにあり、イ号意匠では、コネクタ端子は、上面の左寄りにあるが、単なる設計上の徴差であるので、非類似の根拠とは言えない。 (13)ボタン及びコネクタ端子の周辺形状について 本件登録意匠では、ボタン及びコネクタ端子は、平らな上面に若干突出して設けられ、イ号意匠では、ボタン及びコネクタ端子は、上面の中央に備わる凹部に設けられているが、その凹部は僅かな深さであるので、非類似の根拠とは言えない。 このように、本件登録意匠とイ号意匠との間の細かな相違点は、いずれも、非類似の根拠とは言えない。反面、本件登録意匠とイ号意匠とは、前述のように、形状も、その形状に伴う機能も、ほぼ一致し、両意匠は類似と見なさざるを得ない。 したがって、イ号意匠は、登録第1300630号意匠の範囲に属する。 第2.被請求人の答弁及び理由 被請求人は、請求人が示す意匠(「イ号図面並びに説明書」に示す意匠)は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない、との判定を求めると答弁し、その理由として、要旨以下のとおり主張し、乙第1号証および参乙第1号証を提出した。 1.請求人が示す意匠(イ号意匠並びにその説明書に示す意匠)と本件登録意匠について 本件登録意匠は、乙第1号証に示す公報掲載の意匠である。その具体的な形態は該意匠公報に掲載されている正面図・背面図・平面図・右側面図・左側面図・底面図を有するものである。 これに対してイ号意匠に関して、請求人の該イ号意匠の特定は、被請求人の販売する商品名「エコトーク」「エコウォーク」のインターネット上の販売ページに示す斜視状からの写真及び該販売用のホームページ上の説明によって特定しているものと解される。 本来意匠は物品の外観であって、布地等の特殊な意匠を除き、一面のみ或いは二面程度のみからみた形態のみでその具体的形態が特定できるものではない。 然るに請求人はこの様な外観を特定することなく、単なる斜視状からの写真のみを明示してイ号意匠の特定に代えているものであり、本来イ号意匠の特定ができないことからそもそも権利範囲に属するか否かの対比は行なえないものであり、判定の判断をする基礎を示していない請求に他ならない。 更に、請求人は被請求人の「エコトーク」「エコウォーク」の二機種を一の判定請求により請求しているようにみえる。 即ち両者の関係や形状への影響が明示されていないものである。 従って、一の判定請求に対象物を複数有する特定とも見えるものであり、そもそもイ号意匠の特定はできないものである。 以上、本来判定請求として体をなしていないが、被請求人によるイ号意匠の特定によって、被請求人の請求の趣旨の通りの判定を得るために「エコトーク」「エコウォーク」の商品の現物を被請求人が提出することによって、特定の便宜を図り審理の円滑な促進を図るため、ここに、被請求人は、参乙第1号証(イ号物件現物)を提出するものである。 尚、該外観を有するものが請求人の主張するイ号意匠と推測して、被請求人は提出するものである。 2.両意匠の対比 次に、被請求人は、請求人がイ号意匠と称すると解される現物である参乙第1号証(以下、「イ号物品」という。)と本件登録意匠とを対比する。 (1)両者の正面図同士を対比すると、本件登録意匠は上部の中央部にやや小さい突起を有し、その右隣に幅広の前記小さい突起と同様の突出量を有する突起を有する形態である。 また、正面左上部に二つの円形形状とその二つを取り囲む楕円形状の円とを有し、その円形形状の夫々の右部には、「Li- ion」と「ON/OFF」表示がなされているものである。更に左側下部側面には凹部を有するものである。 これに対してイ号物品には上部には視認できる突起はないと共に側面の凹部の存在もない。更に円形のランプ部をその中央部に有するものであるがその横にはそれぞれ「IN」「OUT」の表示がなされている。 又中央部には緑色の地に「eco」の表示がなされているものであり、商品名のロゴ化表示を行なっているものである。更に本体正面下部には「CENTURY」の表示が視認できる。 両者を対比すればそもそも四角形状の電源は甲第1号証乃至甲第5号証に示すように極めて一般的であることから、両者の構成は全く異なるものである。 尚、ランプ部が二つあることを共通点として請求人が主張するが、そもそも電気機器に作動状態を示すランプがついているのは当然であり、電源ランプと共に作動状態を示すランプを合わせて二つ有することも多用されているものでしかない。 この場合、ランプ部の配設位置も異なるものであることから両者は全く異なるものである。 更にイ号意匠には被請求人の商品であることを示す各種の意匠が施されているものである。 (2)次に背面図を対比すると、下部右側面には切り込み部からなる凹部と共にその本体奥方向に回転可能に支持されたコンセント部を有するものである。 これに対してイ号物品は、下部の右側に回転可能に支持されたコンセント部を有する。コンセント部は、本体の側部の切れ込みに繋がっているものではなく、底部方向に指で掛けやすくするための凹部を連接するものである。 この場合、甲第1号証乃至甲第5号証に示すように回転自在のコンセントを有することと、指掛け用の凹部は従来から多用されており、一般的に多用されている構成において両者一致するものであるが、特にその配置位置と形状が異なることから両者は全く異なるものである。 (3)更に平面図においては、本件登録意匠は楕円形状よりなり、イ号物品は略四角形状よりなるものである。 両者の基本形態を対比するとイ号物品は甲第1号証乃至甲第5号証に示一般的なパッケージ形状よりなるのに対して本件登録意匠は薄くかつ円形を基調とする形状よりなる。 従って基本形態で両者は全く異なる。 次に平面部である機器上部のアダプタに関しては係る位置へアダプタを設けるのは一般的であり、このことは甲第5号証においても同様である。更に突起状のスイッチについても、邪魔にならない位置である平面部の機器上部に配置するのは多用されている構成でしかない。 特に、イ号物品は平面部へ凹みを設けて構成し、側面視何らへこみや凸部のない四角の箱に見えるように構成したものであって極めて斬新なデザインを有するものである。 従って、両者を対比すればその形状は異なるものである。 (4)このことは夫々右側面と左側面にも当てはまるものである。 本件登録意匠においては右側面図上部の突起を有し、左側面上コンセント用の凹み及びコンセント部分が視認できる形状である。 これに対して、イ号物品は左右両側面図ともに単なる長方形形状よりなるものでしかない。更に、両者は、その厚み自体も相違するものである。 しかして、両側面においても本件登録意匠とイ号物品は相違するものである。 (5)次に底面図において対比すると本件登録意匠は楕円形状よりなり、イ号物品は略四角形状よりなるものである。 前記の平面図と同様に両者の基本形態を対比するとイ号物品は甲第1号証乃至甲第5号証に示す一般的なパッケージ形状よりなるのに対して本件登録意匠は薄くかつ円形を基調とする形状よりなる。 従って両者はその基本形態が相違する。 更に本件登録意匠はその表面に何らの意匠も施されているものではないが、イ号物品にはその長手側辺部分に凹み部を有し、コンセントの一部が視認できるものである。 従って両者はその形状をまったく異にするものである。 (6)以上、意匠を構成する計六面図を対比すれば、両者は全く異なる形状であり、そもそも両者から生ずる美観は全く異なるものである。 従って、請求人の主張は全て誤りであり、請求人が示す意匠(「イ号図面並びに説明書」)は、意匠登録第1300630号意匠及びこれに類似する意匠の範囲には属さないものですので、請求の趣旨の通りの判定を求める。 第3.請求人の弁駁 これに対して、請求人は、被請求人の答弁に対して、弁駁書を提出し、要旨以下のとおりの主張をした。 1.本判定請求の成立性について 被請求人の指摘通り、イ号意匠として6面図は示さず、また、被請求人の2商品である「エコトーク」「エコウォーク」の2つ対象物に対して1件の判定請求をしたとの誤解を与えた。 しかし、被請求人の指摘通り、「エコトーク」「エコウォーク」の現物を提出され、「エコトーク」「エコウォーク」は、その両者とも同じであって、同梱する接続コネクターケーブルの形状が相違するので、「エコトーク」「エコウォーク」の本体は同じであり形状も明確になり、イ号意匠は特定された。 2.本件登録意匠とイ号意匠との類似性について 本件登録意匠とイ号意匠とは、敢えて捜せば挙げられる微差があるのは確かであるが、通常の使用においては、気づかないかまたは無意味な程度の微細であり、物品としての機能や用途や使用形態をはじめ、全体の形状、大きさ、重量、外部接続されるコネクタとの関係、制御ボタン及びコネクタ端子の機能及び配置、ランプの機能及び配置、コンセントプラグの機能及び配置など、ほぼ一致している要素が多く、極めて類似している。 第4.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成18年9月26日に意匠登録出願をし、平成19年4月6日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1300630号意匠であり、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたところによれば、意匠に係る物品を「充電器」とし、その形態を、別紙第1に示すとおりとするものである。 2.イ号意匠 イ号意匠は、判定請求書に添付の、インターネット上の販売ページに現された写真をプリントアウトした意匠並びにその説明書により示されたものであり、意匠に係る物品が「充電器」と認められ、その形態を、別紙第2に示すとおりとするものである。 3.本件登録意匠とイ号意匠について 本件登録意匠は、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものであり、その形態は明確なものであるが、イ号意匠については、インターネット上の販売ページに現された写真をプリントアウトしたものをコピーしたものであると思われ、極めて不鮮明であり、その不鮮明さを補うために、請求人が実線を書き込んだような形跡があり、正確な形状については、ほとんど特定できないものである。加えて、「イ号図面並びに説明書」と称する添付書類には、「エコトーク」と「エコウォーク」の2つの物品が掲載されており、イ号意匠として1の意匠を特定できないものである。 したがって、本来、イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するか否か判断はできないというべきであるが、「エコトーク」と「エコウォーク」という商品を特定できる具体的な商品名が提示されていること、また、両商品は、同梱される接続コネクタケーブルが異なるだけであり、実質上同一物であることが添付された「イ号図面並びに説明書」から読み取ることができること、また、当審のインターネット検索により、イ号意匠とは異なる画像ではあるものの、「エコトーク」を検索することができ、その形状がほぼ推定できること(別紙第3)、被請求人はイ号意匠が不特定と主張しつつ、審理の円滑な促進のためイ号意匠に相当するとして参乙第1号証(イ号物品)を提出していること、これらを総合的に判断すると、イ号意匠が特定したものとして扱っても、請求人と被請求人にとってそれほど不合理ではないということができる。 4.本件登録意匠とイ号意匠との対比 本件登録意匠と、請求人がイ号意匠と称するものと実質的に同一であるとして被請求人が提出した参乙第1号証物品(以下、「イ号意匠」という。)を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態については主として以下の共通点及び相違点がある。 4.1.共通点 先ず、共通点として、(1)全体が、扁平縦長直方体形状である点、(2)コンセント用プラグが下部に形成されている点、(3)コンセント用プラグは、通常は本体の内側に没入されているが、充電時には90°回動することにより突出されるよう形成されている点、(4)充電時に、コネクタケーブルを接続するよう上面に出力コネクタが形成されている点、(5)充電器の出力制御用に上面にボタンが形成されている点、(6)出力制御状態を表示する2個のランプが正面に配置され、ON/OFFランプと内蔵電池への充電状態を表示するランプとから構成される点、がある。 4.2.相違点 一方、相違点として、(ア)平面視の形状について、本件登録意匠は両側部が略半円弧状の曲面であるのに対して、イ号意匠はほぼ平面であるが、正面側の両側部に細幅のテーパー面が形成されている点、(イ)コンセントプラグの収容部について、本件登録意匠は、コンセントプラグ収納用の凹陥部が背面の下部に横向きに形成され、この凹陥部は本体の略中央まで達し、正面側からはその開放端部が縦長コ字状に形成されているのに対し、イ号意匠は、背面の下部ではあるが、側部に開放端部はなく、側部からやや内側に位置する部位に横向きの凹陥部が、本体の略3分の2程度の幅まで形成され、下面側(背面視左側)にプラグ取り出し用の半円形状の切欠部が形成されている点、(ウ)正面のランプについて、本件登録意匠は正面の上部左寄りに設けられているのに対して、イ号意匠は正面の上部中央に設けられている点、(エ)正面中央部の飾り部について、本件登録意匠は正面中央部に飾り部は形成されていないが、イ号意匠は、正面中央部に薄緑色で縦長の細幅長楕円状の飾り部が嵌め込むように形成され、この飾り部がわずかに突出している点、(オ)上面の態様について、本件登録意匠は、上面が平坦面であるのに対して、イ号意匠は、縁部を残してわずかに凹んだ面がやや背面寄りに形成されている点、(カ)上面のボタンについて、本件登録意匠は上面の中央に長方形状のボタンが、上面より突出して形成されているのに対して、イ号意匠は円柱状のボタンが上面の左寄りに形成され、上面には突出していない点、(キ)上面のコネクタ端子について、本件登録意匠は、上面の右寄りに突出して形成されているのに対して、イ号意匠は、右寄りに形成されているが、上面に突出しないように形成されている点、がある。 5.類否判断 そこで、上記の共通点と差異点について総合的に検討するに、共通点としてあげた、(1)の点は、甲第1号証に、(2)の点は、甲第2号証に、(3)の点は、甲第3号証に、(4)の点は、甲第5号証にみられるように、携帯可能な小型の充電器に共通する点であり、一般的に行われている造形であって、格別注意を惹くほどのものではないというべきである。また、(5)および(6)も小さなボタンとパイロットランプに関するものであるから、それほど目立つものではなく、かつ、小型の電子機器に普通にみられる態様であるから、格別特徴的であるとはいえない。したがって、(1)?(6)の点が共通するから類似するということはできず、各部の態様を子細に検討する必要がある。 そこで、以下、各部の具体的態様とりわけ相違点について検討する。まず、(ア)の平面視の形状の相違については、本件登録意の両側部が半円弧状である点は、一般的形状が直方体形状であることから比べると、かなり特徴的であるといえる。さらに、イ号意匠が、正面両側に細幅とはいえテーパー面が形成されている点も、ある程度評価できる点といえる。これらの相違は、基本的な全体形状に関わる点であるから、類否判断に大きな影響を与えるものといえる。(イ)コンセントプラグの収容部の相違については、回動可能なプラグの収納部であっても多様な収納部の態様があり、収容部を具体的にどのように形成しているかによって類否判断すべき場合があり、本件登録意匠が、プラグ収納用の凹陥部が背面の下部に横向きに形成され、この凹陥部が本体の略中央まで達し、正面側からはその開放端部が縦長コ字状に観察される点は、評価すべき特徴を有しており、イ号意匠が、側部に開放端部はなく、側部からやや内側に位置する部位に横向きの凹陥部が、本体の略3分の2程度の幅まで形成され、下面側(背面視左側)にプラグ取り出し用の半円形状の切欠部が形成されている点は、本件登録意匠とは別の特徴を有している点であり、この相違も類否判断に大きな影響を及ぼすものといえる。(ウ)正面のランプの位置の相違については、小さなものであることから、類否判断にそれほど大きな影響は与えないものの、作動状態を確認するために注視するものであるので、その位置の相違は、類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。(エ)正面中央部の飾り部の有無については、充電器の機能には無関係なものであるが、ある程度の大きさで本体中央に設けられ、また、単純な外形状を有する本体の一種のアクセントになっているので、類否判断に一定程度の影響は及ぼすものということができる。(オ)上面の態様の相違については、本体上面のみに形成された平坦面と凹部とでは、格別な顕著な特徴を有しているとはいえないが、小さいとはいえ操作部がある面であるので、類否判断に一定程度の影響は及ぼすものということができる。(カ)上面のボタンの位置および形状の相違、および、(キ)上面のコネクタ端子の位置の相違については、ボタンやコネクタ端子に格別の特徴がなく、また、これらはもっぱら技術的な観点から配置されたものであるので、意匠の創作という観点からは類否判断に与える影響は極めて少ないということができる。 以上のとおり、類否判断に大きな影響を及ぼす要素である(ア)および(イ)の点に加えて、類否判断に一定程度の影響を及ぼす要素である(エ)および(オ)の点、さらに(ウ)の点が相俟った効果を考慮すると、両意匠を別異の基調のものと看者に印象付けるに十分なものであって、両意匠の類否判断に決定的ともいえる大きな影響を及ぼすものというほかない。 従って、両意匠の態様についての共通点は、前記のとおり、両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものとはいえないのに対して、相違点である、(ア)?(オ)の点は、両意匠の類否判断に決定的ともいえる大きな影響を及ぼすものであり、相違点が共通点を凌駕するものであることは明らかであり、意匠全体として、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものとはいえない。 6.結び 以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2008-05-26 |
出願番号 | 意願2006-25753(D2006-25753) |
審決分類 |
D
1
2・
1-
ZB
(H2)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 江塚 尚弘 |
特許庁審判長 |
関口 剛 |
特許庁審判官 |
岩井 芳紀 宮田 莊平 |
登録日 | 2007-04-06 |
登録番号 | 意匠登録第1300630号(D1300630) |
代理人 | 新保 斎 |
代理人 | 旦 武尚 |