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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) F4
管理番号 1180928 
判定請求番号 判定2007-600089
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2008-08-29 
種別 判定 
判定請求日 2007-11-05 
確定日 2008-07-14 
意匠に係る物品 包装用緩衝具 
事件の表示 上記当事者間の登録第1106700号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号意匠は、登録第1106700号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第一 請求の趣旨及びその理由
請求人は、甲第2号証に示す意匠(以下「イ号意匠」という。)は、意匠登録第1106700号意匠(以下「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求めると申し立て、その理由として判定請求書の請求の理由に記載の通りの主張をし、添付書類として甲第1号証乃至甲第3号証及び資料1乃至資料3の書証を提出した。
その主張の要点は、以下の通りである。
1 判定請求の必要性
請求人は、本件判定請求に係る登録意匠「包装用緩衝具」(甲第1号証(1)、甲第1号証(2)に記載された意匠。以下、「本件登録意匠」という。)の意匠権者である。被請求人によるイ号意匠に係る包装用緩衝具(イ号物件)を販売する行為は、本件登録意匠の意匠権を侵害するものであるので、請求人の代理人は、平成19年7月 20日付でその旨の警告状(甲第3号証(1)、甲第3号証(2)、甲第3号証(3))を被請求人らに送付した。
これに対して、被請求人らは、「イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない」旨主張するので、特許庁による判定を求める。
2 本件登録意匠の手続の経緯
出願 平成12年1月 27日(意願2000-1054)
登録 平成13年2月16日(登録第1106700号)
3 本件登録意匠の説明
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「包装用緩衝具」とし、その形態の要旨を、次の通りとする。
基本的な構成様態は甲第1号証(1)及び甲第1号証(2)の通り、この包装用緩衝具は瓶に入ったお酒などを運ぶ際に、瓶首の横揺れ防止と瓶が横に倒れた場合の破損防止(パットがVの字に開き衝撃を緩和する)する為に設けられたものであり、この登録意匠は2本用のものである。段ボールに瓶の瓶首に通す2ヶの穴と指穴用の2ヶの穴が段ボールの折り返し溝を基点として、左右対称に設けられている。実際の使用は甲第1号証(2)のように、「包装用緩衝具」は「Vの字」ように自然に広がり瓶首を固定し、意匠登録1106700の使用状態参考図のように、段ボールの折り返し溝を基点として、その先端が交わる事はない。意匠公報では特に右側面図では先端が交わった状態で描かれているが実際はこのようにはならない。(段ボールの弾性の限界の法則。)資料1の斜視図の本件登録意匠及び拒絶査定意匠のように口が「Vの字」に開いた状態になる。しかし、正面図、平面図、右側面図、背面図は全て口が閉じているが、これは全て、写真撮影の為、口が開かないようにセロテープで固定している為である。また、意匠公報の使用状態参考図でも口が閉じられた状態で描かれているが、これもイラストミスである。
4 イ号意匠の説明(資料1及び甲第2号証参照。)
基本的な構成様態は甲第2号証の通り、本件登録意匠と同様に瓶首を押さえる為のものであり、瓶1本には1ケ、瓶2本には2ケ同じものを使用する。
5 本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
i )両意匠の共通点
a)段ボールに左右対称の上面板と下面板が設けられている。
b)瓶を瓶首に通す穴と指を入れる穴が上下板にそれぞれ設けられている。
ii)両意匠の差異点
a)本件登録意匠の上面板と下面板は長辺と短辺との対比が違う長方形であるが、イ号意匠の上面板と下面板は正方形である。
b)本件登録意匠には瓶を通す穴が左右に2ヶと、指を入れる穴2ヶが短辺に平行に設けられているが、イ号意匠には瓶を通す穴が中央に1ヶ、対角線上に2ヶ指を入れる穴が設けられている。
6 イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明
i)本件登録意匠に関する意匠法第17条の規定による拒絶査定通知
a)拒絶査定を受けた。(意願2005-031258・平成18年7月14日)資料2参照。
b)拒絶査定を受けた。(意願2005-031259・平成18年7月14日)資料3参照。
ii)本件登録意匠の要部
上記拒絶査定をもとに、本件登録意匠の創作の要点について述べれば、割れやすい瓶の発送に際し、上面板と下面板の対称なる2枚に折り曲げた段ボールにそれぞれ瓶首押さえ用の穴と、指を入れる為の穴を空け、瓶の横揺れを防止させる為の「包装用緩衝具」である。
iii) 本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察
a)両意匠の共通点は、段ボールに左右対称の上面板と下面板が設けられている点と瓶を瓶首に通す穴と指を入れる穴が上下板にそれぞれ設けられている点であり、この目的は何れも瓶の横揺れを防止させる為のものである。
b)両意匠の差異点については、本件登録意匠の上面板と下面板の長辺と短辺との対比が違う長方形であるが、イ号意匠の上面板と下面板は正方形である。しかし、資料2の通り、本件登録意匠に類似との理由で、既に拒絶査定を受けており、このイ号意匠は資料2の拒絶査定意匠と全く同一意匠であり、資料1の展開した状態の平面図を参照すれば明らかである。
c)本件登録意匠には瓶を通す穴が左右に2ヶと、指を入れる穴2ヶが短辺に平行に設けられているが、イ号意匠には瓶を通す穴が中央に1ヶ、対角線上に2ヶ指を入れる穴が設けられているが、これも資料2の通り、本件登録意匠に類似との理由で、既に拒絶査定を受けている。同様に、資料3でも穴数が多くとも類似意匠との拒絶査定を受けた。
d)以上の認定、判断を前提にして両意匠を全体的に考察すると、両意匠の差異点は、類否の判断に与える影響は何れも微弱なものであって、強いてあげれば、拒絶査定を受けた、資料2の参考斜視図にパットの口を「Vの字」に開くのを抑えた、とめ片があるか、ないかの違いだけで、あとは全く同一の意匠である。よって、イ号意匠も本件登録意匠の類似意匠と判断されるべきである。
7 むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するので、請求の趣旨どおりの判定を求める。
第二 被請求人の答弁
被請求人は、イ号意匠は、意匠登録第1106700号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない、との判定を求めると申し立て、その理由として答弁書の答弁の理由に記載のとおりの主張をし、添付書類として別紙1及び別紙2の書証を提出したものである。
その主張の要点は、以下の通りである。
(1)本件登録意匠について
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「包装用緩衝具」とするものであり、意匠に係る物品の形状は、甲第1号証(1)の意匠公報に示す通りであり、次の形態を備える。
a 全体が段ボール製で、細幅の正面板の上下に、背面側に向かつて上面板と下面板が連設され、正面板の上下の折り曲げ部に、上面板と下面板の波芯が見えるように、正面板の上下に切れ目を入れている。
b 矩形の上面板と下面板は、長辺が短辺の2倍である長方形であり、正面板の反対側の上面板と下面板の先端は突き合わされ、側面から見て楔状になっている。
なお、請求人は、甲第1号証(2)において、正面板の反対側の上面板と下面板の先端を開いた状態の写真を示し、甲第1号証(1)の意匠公報の使用状態の参考図において正面板の反対側の上面板と下面板の先端が閉じているのは、イラストミスであると主張しているが、左右の側面図でも正面板の反対側の上面板と下面板の先端は突き合わされて閉じた状態であるから、正面板の反対側の上面板と下面板の先端が開くとするのは誤りである。
c 上面板と下面板とには、中央に上下に2個の小孔が形成され、左右を二分し、その中央部分に「瓶」の首部を差し込む大孔が形成されている。
(2)イ号意匠について
本判定請求におけるイ号意匠は、甲第2号証、資料1では不明確であるから、被請求人においてこれを別紙1のイ号物件の図面として提出する。イ号意匠は、包装用緩衝具に関する意匠であり、その形状は、別紙1のイ号物件の図面に示す通りであり、次の形態を備える。
a' 全体が段ボール製で、細幅の正面板の上下に、背面側に向かって上面板と下面板が連設され、正面板の上下の折り目を内側に入れ、上面板と下面板の折り曲げ部分に波芯が見えないようなっている。
b' 矩形の上面板と下面板は、正方形であり、上面板と下面板は、上面板の先端中央に設けられた折り込み片によって、側面から見て平行に設けられている。折り込み片の両側辺中央には、下面板を差し込む切込みを設けている。
c' 正方形の上面板と下面板とには、その中央部分に「瓶」の首部を差し込む大孔が形成され、この大孔を挟んで対角線方向に小孔を2個形成している。
(3)本件登録意匠とイ号意匠との比較
〈1〉意匠に係る物品
意匠に係る物品については、両意匠共に、「瓶」を包装用箱に収容する際に、「瓶」の首部に嵌めて使用する段ボール製の「包装用緩衝具」で共通する。
〈2〉意匠の形態
両意匠の形態は、全体が段ボール製で、正面板の上下に矩形の上面板と下面板からなる点、上面板と下面板とに「瓶」の首部を差し込む大孔を設けている点が共通している。
一方、両意匠間には、矩形の上面板と下面板が、本件登録意匠については長辺が短辺の2倍である長方形であるのに対し、イ号意匠については正方形である点(相違点1)、上面板と下面板が、本件登録意匠については、側面から見て尖鋭な楔形に形成されているのに対し、イ号意匠については、先端中央に設けられた折り込み片により、平行になっている点(相違点2)、「瓶」の首部を差し込む貫通孔が、本件登録意匠については、左右に2つ設けられ、その中間に2つの小径孔が短辺と平行に設けられているのに対し、イ号意匠については、中央に一つ設けられ、対角線上に2つの小径孔を設けている点(相違点3)、正面板の上下に、本件登録意匠については、上面板と下面板の端面の波芯が露出しているのに対し、イ号意匠については、折り目を内側にして上面板と下面板の端面の波芯が露出しないようにしている点(相違点4)において差異がある。
(4)両意匠の類否判断
以上の共通点と差異点を総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討すると、両意匠は、段ボール製の矩形の上面板と下面板からなる点、上面板と下面板とに「瓶」の首部を差し込む貫通孔を設けている点で共通しているが、両意匠は、相違点1の通り、長方形か、正方形かという点で基本形状を異にし、他の相違点2?4と合わさって、両者は全く別異の印象を受ける。その印象の相違は、別紙2の本件登録意匠とイ号意匠の対比表を見れば一目瞭然である。
特に、イ号意匠は、相違点2に記載の通り、上面板と下面板が平行であり、本件登録意匠のように、側面から見て尖鋭な楔形の印象を全く受けないし、正面板の上下の折り曲げ部分に波芯が見えず、全体として柔和な印象を受ける。
よって、両意匠は、意匠全体から見て別異の印象を受ける非類似のものであるから、イ号意匠は、本件登録意匠の範囲に属するものではない。
(5)むすび
イ号意匠は、以上のように、本件登録意匠と非類似のものであるから、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない、との判定を求める。
第三 当審の判断
1 本件登録意匠
本件登録意匠は、平成12年1月27日の意匠登録出願に係り、平成13年2月16日意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1106700号の意匠であり、意匠に係る物品を「包装用緩衝具」とし、その形態は、願書及び添付図面に記載されたとおりのものである(別紙第1参照)。
2 イ号意匠
イ号意匠は、本件判定請求書に添付された甲第2号証及び資料1によれば、瓶を包装用箱に収容する際に、瓶首を押さえるために使用されるもので、その形態は、甲第2号証及び資料1にあらわされたとおりのものである(別紙第2(なお、請求書添付の資料1のイ号意匠の図の表示「平面図」は「底面図」の誤記と認められる。)参照)。
3 両意匠の対比
両意匠は、ともに包装用箱に瓶を収容する際に瓶首を支持するために使用されるもので、意匠に係る物品が一致し、その形態については以下の共通点と差異点が認められる。
(1)共通点
両意匠は、基本的構成態様において、(A)全体を、四角形平板状の段ボールを本の表紙様に屈曲し、正面板、上面板、下面板からなる態様とした点、(B)上面板と下面板とで同じ位置に、大小2種類の円形孔が複数設けられている点、で共通し、また、具体的構成態様において、(C)正面板の幅を細幅とし、上下板の幅の5分の1以下とした点、(D)上面板と下面板とで同じ位置に、それぞれ小径孔を2個ずつ設けた点、(E)大径孔の直径を小径孔の直径の約2倍とした点、が共通する。
(2)差異点
両意匠は、基本的構成態様において、(a)上下板について、本件登録意匠は、長辺の長さが短辺の長さの約2倍の長方形であるのに対し、イ号意匠は、正方形である点、(b)本件登録意匠は、とめ片及びとめ片嵌合凹部がなく、開閉自在で、上下板が特に固定されておらず、使用状態において上下板の口が閉じ、側面視楔状にあらわれるか又は上下板の口がやや開いた状態となるのに対し、イ号意匠は、上面板の屈曲部の対辺中央部に略「土」の字状のとめ片を、下面板の上面板とめ片に対応する部分にとめ片嵌合凹部を有し、上面板と下面板とがとめ片により平行に固定され、側面視長方形状にあらわれる点、に差異がある。
なお、請求人は、意匠公報では右側面図視先端が交わった状態で描かれているが、段ボールの弾性の限界の法則により実際はこのようにはならず、意匠公報の使用状態参考図の口が閉じられた状態はイラストミスで、資料1の斜視図の本件登録意匠及び拒絶査定意匠のように口が「Vの字」に開いた状態になる旨主張する。しかし、本件登録意匠の屈曲部は陵部に切れ込みが施されており、この程度の切れ込みがあれば、段ボールの弾性を考慮しても先端が交わる程度に屈曲可能であると推認でき、また、使用状態参考図以外の図も口が閉じられた状態であらわされていることから、本件登録意匠の願書及び添付図面から、右側面図視先端が交わった状態が請求人の主張するようにイラストミスであると認定することはできない。また、資料1の斜視図に本件登録意匠としてあらわされたものは、口が「Vの字」に開いているが、右側面図からは屈曲部に切れ込みが認められず、資料1に本件登録意匠としてあらわされたものの屈曲部は、本件登録意匠とは異なるものと認められる。したがって、上記主張は採用することができない。
また、具体的構成態様において、(c)上下板それぞれの円形孔について、本件登録意匠は、長辺側を左右に2分した中央部に大径の瓶首押さえ用の孔を2つとし、長辺側の左右を2分する線上に2つの小径孔を配置したのに対し、イ号意匠は、板中央部に大径孔を1つとし、板の対角線上、大径孔の両端に2つの小径孔を配置している点、(d)屈曲部について、本件登録意匠は、陵部に切れ込みがあり段ボールの断面波形が外周側から視認できるのに対し、イ号意匠は、外周側の切れ込みがなく陵部に段ボールの断面波形はあらわれない点、に差異がある。
4.両意匠の類否判断
以上の共通点と差異点とを総合して両意匠を全体として検討すると、この種包装用緩衝具は、包装用箱内に設置し使用されるものであるから、看者は、箱内に設置する前の形態全体を観察するとともに、設置状態にも着目して意匠を認識するものであるから、板体の骨格的構成や円形孔の基本的態様に加え、円形孔の配置等の具体的態様にも注目するものである。
そうすると、両意匠は、看者の注意を惹く意匠全体の基本的態様及び具体的態様において多くの差異がみられ、全体として別異の美感を起こさせるものであるのに対し、共通点は、基本的態様、具体的態様の一部を構成するものの、差異点と比較すると類否判断に与える影響はいずれも限定的なものに止まり、両意匠全体に共通する美感を起こさせるまでのものではない。
すなわち、共通する構成態様のうち、正面板、上面板及び下面板について、共通点(A)全体を四角形とする態様は、瓶を収容する包装用容器の形状にあわせた態様であり、この種包装用緩衝具の分野において例示するまでもなくありふれた態様であるから、この点は格別看者の注意を惹くものではない。また、平板状の段ボールを本の表紙様に屈曲した態様については、両意匠の骨格的要素を形成するものではあるが、同様の構成を有するものとして、公開実用新案昭64-20483号第6図(B)記載の商品保持用緩衝材がみられ、本件登録意匠にのみ特徴的な態様とも言えず、格別看者の注意を惹くものではない。
共通点(C)正面板を細幅とした態様は、上下板について外形状やとめ片の有無など、正面板以外の構成に目立つ差異がみられるため、この共通点はそれらの差異点に希釈され、類否判断に与える影響はさほど大きいとは言えない。
また、円形孔について、共通点(B)、(E)上下板に複数の大小の円形孔を設け、大径孔の直径を小径孔の約2倍とした共通点については、この種包装用緩衝具の分野において、板体に2種の大きさの円形孔を複数設け、大径孔は瓶首のサイズに合わせ、小径孔は指差し込み孔として瓶首嵌合孔より小径とする態様は従前よりみられる態様であるから(例えば公開実用新案昭47-32734号第2図及び第3図記載の蓋箱、公開実用新案昭63-197824号第2図記載の保持板、登録実用新案公報第3062448号図3記載の穴明き板)、本件登録意匠にのみ特徴的な態様とも言えず、この点は格別看者の注意を惹くものではない。
また、共通点(D)小径孔を2つずつ設けた点については、その具体的配置が大きく異なっていることから、この共通点は差異点に希釈され、類否判断に与える影響は限定的である。
そして、それら基本的構成態様と具体的構成態様における共通点を総合して勘案しても、共通する態様の相俟って奏する視覚的効果は、差異点を凌駕するものではなく、両意匠全体に共通する美感を起こさせるまでのものではない。
これに対して、両意匠の差異点のうち、差異点(a)上下板が長方形か正方形かの差異は、包装用箱内に収容する瓶の本数にともなう差異であり、いずれもこの種物品においてはありふれた態様で、さほど看者の注意を惹くものではないが、本件登録意匠とイ号意匠とで、平面視の面積でほぼ倍の差があり、一見して認識することができる目立つ差異であるため、類否判断に一定の影響を与えるものである。
差異点(b)とめ片及びとめ片嵌合凹部の有無は、目立つ部位における全くないものとあるものの差異であって、さらに、とめ片のない本件登録意匠は上面板と下面板とが開閉自在で、使用時に上面板と下面板の一方の長辺が接し側面視楔状の、全体として扁平な略三角柱状を呈するか又はやや開いた状態で使用されるのに対し、イ号意匠は、使用時に上面板と下面板とがとめ片によって平行に保持され、全体として扁平な略四角柱状に固定された状態で使用されるもので、とめ片はイ号意匠の骨格的な態様を形成しているから、意匠全体として見てもその差異を微差ということはできない。
差異点(c)大径孔については、両意匠とも瓶首を包装用容器に収容する場合に嵌合するよう、瓶の本数に応じ板の中央に瓶首の位置に合わせて設けられており、この差異は収容する瓶が1本か2本かによる必然的な差異であるため、大径孔のみの位置と数の差異が類否判断に与える影響は大きいとは言えないが、小径孔の配置が両意匠で全く異なっており、小径孔の位置が異なることによって、大径孔と小径孔との位置関係、孔全体のレイアウトも相違することになるから、大径孔と小径孔の具体的態様の差異は一定の視覚的効果があるといわざるをえない。
差異点(d)屈曲部に段ボールの断面波形があらわれるか否かは、全体からするとごく部分的な微差であって、その他の屈曲部と平行な端面にはすべて波形があらわれることも考慮すると、この差異が類否判断に与える影響は小さい。
両意匠は上記のように、上下板の外形状、とめ片及びとめ片嵌合凹部の有無等の基本的構成態様において差異が認められ、さらに円形孔の具体的態様においても差異がみられ、それらの差異点はいずれも類否判断に一定の影響を与えるものであるから、その他の差異点も加味し、すべての差異点を総合すると、差異点が共通点を上回り、両意匠の奏する意匠的効果は異なるものであるから、両意匠は全体としては美感が相違する。
以上のように、両意匠は、意匠に係る物品が一致するが、形態においては差異点が共通点を凌駕し、意匠全体として美感が相違し、イ号意匠は本件登録意匠に類似しないものである。
なお、請求人は、本件登録意匠に類似するとして拒絶査定を受けた意匠とイ号意匠とは一部構成が異なるだけで、あとは全く同一の意匠であり、イ号意匠も本件登録意匠の類似意匠と判断されるべきである旨主張する。しかし、当該審査における判断は、本件判定に何ら影響を与えるものでもないし、拒絶査定を受けた意匠とイ号意匠とは構成が相違するものであるから、請求人の上記主張は採用することができない。
5.結び
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。


判定日 2008-07-02 
出願番号 意願2000-1054(D2000-1054) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (F4)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 梅澤 修
特許庁審判官 樋田 敏恵
並木 文子
登録日 2001-02-16 
登録番号 意匠登録第1106700号(D1106700) 
代理人 鳥居 和久 
代理人 鎌田 文二 
代理人 東尾 正博 
代理人 鎌田 文二 
代理人 鳥居 和久 
代理人 東尾 正博 
代理人 鳥居 和久 
代理人 東尾 正博 
代理人 鎌田 文二 

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