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審決分類 審判    G2
審判    G2
管理番号 1184346 
審判番号 無効2008-880007
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-02-28 
確定日 2008-08-25 
意匠に係る物品 自動車排ガス用触媒コンバーター 
事件の表示 上記当事者間の登録第1232271号「自動車排ガス用触媒コンバーター」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、登録第1232271号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める、と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証ないし甲第15号証を提出した。

1.審判請求理由の要点
(1)本件登録は、その意匠登録出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠に類似する意匠であるから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。
(2)本件登録意匠は、その意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができた意匠であるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものである。

よって、本件登録意匠は意匠法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。

2.本件登録意匠を無効とすべき理由
(1)意匠法第3条第1項第3項(意匠法第48条第1項第1号)について
本件登録意匠は、その出願日である平成16年(2004年)5月27日前に、日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠である下記の登録意匠に類似する意匠である。
・登録意匠第1141236号 (本意匠登録、甲第2号証)
・登録意匠第1141800号 (関連意匠登録、甲第3号証)
・登録意匠第1141801号 (関連意匠登録、甲第4号証)
・登録意匠第1141802号 (関連意匠登録、甲第5号証)
・登録意匠第1172565号 (本意匠登録、甲第6号証)
・登録意匠第1172966号 (関連意匠登録、甲第7号証)
・登録意匠第1172967号 (関連意匠登録、甲第8号証)
・登録意匠第1174168号 (関連意匠登録、甲第9号証)
・登録意匠第1172964号 (関連意匠登録、甲第10号証)
・登録意匠第1172965号 (関連意匠登録、甲第11号証)
・登録意匠第1174167号 (関連意匠登録、甲第12号証)
(以下、上記の甲第2号証乃至甲第12号証のすべての意匠を包括的に「引用意匠」という。)

(1.1)本件登録意匠と引用意匠の類否判断

(1.1.1)本件登録意匠と引用意匠の意匠に係る物品について
引用意匠の意匠に係る物品である「自動車用マフラー」、「触媒コンバーター」および「自動車用排気系部品の外筒」と本件登録意匠の意匠に係る物品である「自動車用排ガス用触媒コンバーター」とは、自動車の排気系統の部品として自動車に組み付け使用するという用途が共通する。また、自動車の排気ガスが含有する有害物質の排出量を軽減するという機能も共通する。
よって、引用意匠の意匠に係る物品と本件登録意匠の意匠に係る物品は、類似する物品である(以下、これらの3つの物品を一括して「触媒CVT」という。)。

(1.1.2)本件登録意匠と引用意匠の要部について
引用意匠における意匠の要部は、触媒CVTの意匠の分野において登録意匠第1141236号(甲第2号証)の出願日以前に存在しない、引用意匠が部分意匠登録を得ている「直線模様を有するテーパー部」であると認定することが妥当である。意匠が物品の形態の創作である以上、需要者・取引者が従来になかった新たな創作の意匠の形態に注意を惹かれ意匠を観察することは、火を見るより明らかである。とすると「触媒CVT本体部の端部に形成された直線模様を有するテーパー部」は需要者・取引者の注意を最も惹く部分である。
一方、触媒CVTにおいて、触媒CVT本体部は円筒状であることが意匠に係る物品の用途・機能から必然的に形成される形状であるとともに、従来から存在する形態である(甲第14号証)。よって、円筒状の形態は需要者・取引者の注意を惹くことにはならず、意匠の要部にはなり得ない。
また、触媒CVT本体部における嵌合部は、排気管を組み付けるためにのみ使用される機能的な要請にのみ基づく「溶接代(ようせつしろ)」、もしくは、触媒CVTを車体本体に装着するためクランプ又はブラケットなど、装着用部品を組み付ける「部品組付け代(ぶひんくみつけしろ)」であるから、排気管に組み付けた状態では排気管に抱合され、視覚を通じて認識できなくなる。よって、引用意匠及び本件登録意匠における嵌合部の形状は意匠の類否判断における構成要件の対比において重要視すべきではない構成であり、意匠の要部とはなり得ない。

(1.1.3)本件登録意匠と引用意匠の基本的構成態様について
本件登録意匠の要部である「触媒CVT本体部の端部に形成された直線模様を有するテーパー部」の基本的構成態様は次の通りである。
構成a.触媒CVT本体部の一端に略台形状のテーパー部を構成し、
構成b.テーパー部の表面に直線模様を円心状に構成する、触媒CVTである。
一方、引用意匠における要部(部分意匠として意匠登録を受けようとする部分に相当する)である「触媒CVT本体部の端部に形成された直線模様を有するテーパー部」の基本的構成態様は、次の通りである。
構成A.触媒CVT本体部の一端に略台形状のテーパー部を構成し、
構成B.テーパー部の表面に直線模様を円心状に構成する、触媒CVTである。
よって、本件登録意匠と引用意匠とは、基本的構成態様が共通するため、類似する意匠である。

(1.1.4)本件登録意匠と引用意匠の具体的構成態様について
まず、本件登録意匠における構成aと、各引用意匠における構成Aの具体的構成態様を比較して検討する。
本件登録意匠と引用意匠を構成する略台形状のテーパー部において、本件登録意匠が略台形状を形成する辺について、一対が直線の辺であるのに対し、他の一対の辺は、本体部の端部より辺が開始し、テーパー部の端部の直前に曲線を描く線で構成される。これに対し、引用意匠である、
甲第2号証と甲第5号証における略台形状のテーパー部を形成する辺はすべて直線であり、
甲第3号証と甲第4号証は、一対の辺が直線である一方、他方の辺が本体部の端部より緩やかな曲線が辺を構成し、
甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証、甲第9号証は、すべての辺が直線であり、
甲第10号証は、一対の辺が直線である一方、他の一対の辺は一辺が直線であるのに対し、他方の辺が端部の直前に曲線を描く線で構成され、
甲第11号証、甲第12号証は、平面図において、嵌合部に接する辺が緩やかな曲線である一方、他の辺は直線の辺で構成されている差異がある。
しかしながら、略台形状を形成する辺が、一部曲線を含むか否かの差異は、意匠の要部全体からすると微差にすぎず、需要者・取引者をして新たな印象を与えるものではない。
次に、本件登録意匠における構成bと各引用意匠における構成Bを比較して検討する。
本件登録意匠における構成bは、テーパー部の表面に直線模様を円心状に構成するが、正面視において平行である。
一方、引用意匠である、
甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証においては、テーパー部の表面に直線模様を円心状に構成するが、正面視において平行ではなく、
甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証、甲第9号証においては、テーパー部の表面に直線模様を円心状に構成するが、正面視において平行であり、
甲第10号証は、テーパー部の表面に直線模様を円心状に構成するが、平面視において平行ではなく、
甲第11号証は、テーパー部の表面に直線模様を円心状に構成するが、平面視において平行であり、
甲第12号証は、テーパー部の表面に直線模様を円心状に構成するが、平面視において平行ではない差異がある。
しかしながら、かかる形態の差異は、需要者・取引者に対し新たな印象を与えるものではなく引用意匠の類似の範囲を出るものではない。
また、触媒CVTの側面図視における同心円の線間隔が均等か非均等かの差異、並びに、嵌合部が若干下方に傾いているか、若干上方に傾いているかの差異は、他の構成の共通点を凌駕して、需要者・取引者に対し、異なる印象を与えるものではない。
よって、本件登録意匠の構成a及びbは、引用意匠A及びBをそれぞれ充足するから、本件登録意匠は引用意匠に類似する意匠である。したがって、本件登録意匠は意匠法第3条第1項第3項に該当し、登録を無効にされるべきものである。

(2)意匠法第3条第2項(意匠法第48条第1項第1号)について
本件登録意匠における意匠の要部は、引用意匠が持つテーパー部の形状、即ち、略台形状の形状、及び、直線模様を単に組み合わせた意匠である。また、引用意匠は触媒CVT本体部の双方にテーパー部を有するが、テーパー部の一方を削除し、片方のみの触媒CVTとすることは設計変更において通常行われる態様に過ぎず、触媒CVTの意匠の属する当業者であれば、容易に創作できるものである。 さらに、本件登録意匠は、その出願日である平成16年(2004年)5月27日以前に公然知られた意匠である次の意匠に基づいて容易に創作されたものである。本件登録意匠の触媒CVT本体部の形状は、本件登録意匠の出願日前に、触媒CVTの分野において公然知られた円筒状である(甲第14号証)。また、本件登録意匠のテーパー部が有する直線模様は、引用意匠において既に存在する形態である。よって、本件登録意匠は、本件登録意匠の出願日前に、触媒CVTの分野において公然知られた円筒状の形態と、公然知られているテーパー部に形成した直線模様を組み合わせた意匠であり、公然知られた形態に基づいて容易に創作できた意匠である。
したがって、本件登録意匠は独占権たる意匠権を付与するに値しない創作レベルの意匠であるから、意匠法第3条第2項に該当し、無効とされるべきである。

第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、要旨以下のとおり主張し、乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。
1.意匠法第3条第1項第3号について
(1)本件登録意匠と引用意匠の要部の認定と嵌合部の有無について
本体部の両端に形成されたテーパ部を有する意匠は、引用意匠の出願前から既に公知であった(乙1号証乃至乙4号証)ことから、そのテーパ部の形状を公知のテーパ部とどのように変えたのかが創作のポイントであり、要部となるものと考えられる。
この点について、被請求人は、出願時に特徴記載書を提出しており、この中で、特徴のない中央部ではなく、テーパ部やその先端部といった両端が創作のポイントであると主張しており、この部分を要部と捉えるべきであり、両意匠は、要部において、嵌合部の有無といった明確な相違点が見受けられるものである。
ところで、請求人は、引用意匠の嵌合部は、溶接代、部品組付け代であり、排気管に組み付けた状態では、排気管に抱合され、視覚を通じて認識できなくなる部分であるから、意匠の要部とはならないと主張している。しかし、本件登録意匠や引用意匠に係る物品は、それ自体、独立の商品として流通過程におかれ、取引の対象となるものであるから、嵌合部の形状も当然重要視されるべきものである。
このように、あるものに取り付けられる部品であっても、取り付け面側も考慮されるものであり、嵌合部が溶接代、部品組付け代であっても、その長さ、太さによって組み付けられる排気管の種類が限定されたり、その有無によって使用できないこともある以上、注意力の高い判断主体である「作業者」、「購買担当者」、「流通業者」、「購入者(末端消費者)」が、その有無に無関心であったり、見逃すとは到底考えられない。

(2)本件登録意匠と引用意匠の類否判断について
本件登録意匠と引用意匠には、嵌合部の有無という明確な相違点があるが、他にも下記のような相違点が存在する。即ち、
(a).テーパ部、先端部にかけて総てスピニング跡を設けた
(b)スピニング跡を総て平行に設けた(このため、一端の先端部とは平行とならない)
(c)テーパ部の角度が同角ではない
(d)首の部分(先端)が偏角となっている
というような特徴がある。
さらに、本件登録意匠と引用意匠とでは、スピニング跡の幅も異なると共に、略台形状を形成する辺も、一部曲線からなる線が辺を構成する点も異なっているため、判断主体に与える印象の違いは大きいものがある。
ところで、スピニング跡の平行の線についても、下記のように印象が異なるものである。
(e)観察され易い正面視において、同じ幅の線(本件登録意匠)と一端が幅広又は幅狭となる線とでは、印象が異なる。
(f)正面視において、平行の線が一端の先端部にかけて、途切れる線(本件登録意匠)と嵌合部の有無も含めて、全く途切れない線とでは、印象が異なる。
(g)一端の先端部と平行とならない線(本件登録意匠)と平行となる線とでは、印象が異なる。
このように、本登録意匠のスピニング跡の平行の線は、首の部分(先端)が偏角になっている点も合わせて観察すると、印象をかなり異にするものである。しかも、本件登録意匠は、これらの形状が、全体としてバランスよく一つの纏まりを構成しているものである。
本件登録意匠と引用意匠の類否判断の判断主体は、前述のような高い注意力を有する者であり、このような者が、従来の意匠や引用意匠とは大きく異なる特徴や全体の纏まりとしての印象の違いを見逃して混同するようなことは到底考えられないものである。

2.意匠法第3条第2項について
請求人は、本件登録意匠が意匠法第3条第1項第3号に該当しないとしても、意匠法第3条第2項に規定する容易な創作であると主張している。
しかし、本件登録意匠は、テーパ部や先端部に(a)?(d)のような特徴を有するものである。これらの特徴には、従来の意匠にはない特有の形状も含まれているものであり、公知の形状に基づいて容易に創作できたものではない。しかも、本件登録意匠は、これらの特徴をバランスよく一つの纏まりとしたものであり、当業者が容易に創作し得たようなものではない。
本件登録意匠は、従来の意匠にはない特有の形状を有し、しかも全体としての纏まり感も有するため、容易に創作し得るようなものではなく、意匠法第3条第2項に規定する容易な創作には当たらないものである。
したがって、請求人の主張は何れも妥当なものではない。

第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成16年5月27日に意匠登録出願をし、平成17年1月21日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1232271号の意匠であり、意匠に係る物品を「自動車排ガス用触媒コンバーター」とし、その形態を、願書及び願書に添付の図面の記載のとおりとするものである(別紙第1参照)。

2.請求人が無効の理由として引用した意匠
請求人が無効の理由として引用した意匠は、甲第2号証乃至甲第12号証であり、それぞれ、意匠登録第1141236号およびその関連意匠の意匠登録第1141800号、同意匠登録第1141801号、同意匠登録第1141802号、さらに意匠登録第172565号、およびその関連意匠の意匠登録第1172966号、同意匠登録第1172967号、同意匠登録第1174168号、同意匠登録第1172964号、同意匠登録第1172965号、同意匠登録第1174167号であり、意匠に係る物品を、甲第2号および甲第4号証については、「触媒コンバーター」とし、甲第3号証および甲第5号証については「自動車用マフラー」とし、甲第6号証乃至甲第12号証については、「自動車用排気系部品の外筒」とするものであり、これらの形態は、それぞれの意匠公報に掲載されたとおりとするものである(別紙第2乃至第7参照)。

3.本件登録意匠と引用意匠との対比
本件登録意匠と引用意匠との対比に当たり、当審は、次のとおりであると考える。
請求人が主張する本件登録意匠の登録を無効とすべき理由の一つは、意匠法第3条第1項第3号であり、無効の理由として引用した意匠は上記のとおり本件登録意匠の出願前に日本国内において頒布された刊行物である意匠公報に記載された意匠である。これらの意匠は、部分意匠出願を行い意匠登録を受けたものであり、意匠公報に記載された意匠は、実線と破線からなるものである。したがって、本件登録意匠と比較すべきは、実線と破線によって描き分けられているものの意匠公報記載の上記意匠であって、破線による形状であっても、意匠が認識できるものであるなら、そのまま全体が記載されているものとして類否判断すべきであり、実線のみを比較して類否を判断すべきではない。しかるに、請求人は、実線部分のみを比較して、類否判断を行おうとしている部分が随所に見受けられることから、請求人の主張は当を得ない部分が多々あるといわざるを得ない。
以上を踏まえ、本件登録意匠と引用意匠を比較すると、まず、本件登録意匠の意匠に係る物品は、「自動車排ガス用触媒コンバーター」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「触媒コンバーター」、「自動車用マフラー」、「自動車用排気系部品の外筒」であるが、消音か浄化かの機能的相違はあるものの、いずれも自動車の排気系を構成する部品である点で用途が共通し、また、近年は両機能を有する自動車用触媒マフラーが存在することから、両者は類似物品であると認められ、形態については、主として以下の共通点と相違点がある。
(1)共通点
すなわち、共通点として、(A)全体が、円筒状の触媒CVT本体部とテーパー状の円錐台形状部から構成される基本的構成態様からなる点、また、(B)テーパー状の円錐台形状部には、正面視直線模様が形成されている点、がある。
(2)相違点
一方、相違点として(a)触媒CVT本体部の形状について、本件登録意匠は、円筒状であるのに対し、引用意匠のうち、甲第2号証乃至甲第5号証については円筒状であるが、甲第6号証乃至甲第12号証については楕円筒状である点、(b)嵌合部について、本件登録意匠は、嵌合部が明確に形成されていないのに対し、引用意匠は両端部に、正面視縦長長方形状の嵌合部が明確に形成されている点、(c)円錐台形状部の取り付け位置について、本件登録意匠は、触媒CVT本体部の正面視右側にのみ円錐台形状部が形成されているのに対し、引用意匠は両側に形成されている点、(d)円錐台形状部の直線模様が形成されている部位について、本件登録意匠は、端部まで形成されているのに対し、引用意匠は嵌合部に直線模様が形成されていないため、端部までは直線模様が形成されていない点、(e)円錐台形状部の直線模様の態様について、本件登録意匠は平行な直線模様であるのに対し、甲第2号証乃至甲第5号証、甲第10号証、甲第12号証の引用意匠は正面視左側の円錐台形状部は平行な直線ではなく、右側は平行であり、甲第6号証乃至甲第9号証、甲第11号証は左右とも平行である点、(f)円錐台形状部の先端部の角度について、本件登録意匠は先端部を偏角としているのに対し、引用意匠は矩形状である点、(g)端部の態様について、本件登録意匠の端部は、平行直線模様を斜めに横切るようにカットされているのに対し、引用意匠は嵌合部があるため、端部が直線模様を斜めに横切るようにはカットされていない点、(h)両端部の径について、本件登録意匠は、正面視左側が本体部から傾斜面を介して大きく開口し(被請求人がいうところのネッキング部)、右側は円錐台形状部を介して本体部の略3分の1程度の開口部が形成されているのに対し、引用意匠は、甲第2号証乃至甲第5号証についてはは両端の開口部が正面視本体部の略3分の1程度であり、甲第6号証乃至甲第12号証については略4分の1程度である点、があげられる。

4.本件登録意匠と引用意匠との類否判断
そこで、上記の共通点と相違点について総合的に検討する。(A)の基本的な構成態様の共通点については、本件登録意匠および引用意匠の形態の全体にかかわりその骨格を構成するところではあるが、この点については、多くの触媒CVTに共通する特徴であって、格別顕著な特徴があるとはいえない。なお、触媒CVTの分野において、両端にテーパー部を有する意匠は、乙第1号証および乙第2号証や意匠登録第616373号および意匠登録第705063号などによれば、引用意匠の出願前より公知であったことは明らかである。また、具体的な態様の共通点である(B)については、スピニング加工による跡であると認められ、スピニング加工が管端の端部加工として公知であるから(乙第3号証および乙第4号証)、複雑なスピニング加工の跡である場合はともかく、自由に成型できる管端加工における直線的かつ単純な跡にそれほど特徴があるとはいえない。さらに、管の連結部という観点に着目した場合、管継ぎ手の分野においては、例えば、意匠登録第604027号、意匠登録第620242号および意匠登録第734578号のように、管端部に直線的かつ単純な凹凸模様を形成することは、普通に行われているところであって、触媒CVTの管端部においてのみ格別特徴的であるという状況を見出だすこともできないことを考慮すると、スピニング加工の跡を過大に評価することはできない。
したがって、これらの共通点は、本件登録意匠と引用意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであるということができない。
一方、相違点(a)本体部の形状について、引用意匠である甲第2号証乃至甲第5号証については円筒状であるから、この点に限っては類似するということができるものの、他の相違点も考慮すると、一般的な円筒状である点のみを重視して、全体を類似とすることはできない。また、甲第6号証乃至甲第12号証については楕円筒状であるから類似するとはいえない。(b)嵌合部の態様について、本件登録意匠や引用意匠に係る物品は、それ自体、独立の商品として流通過程におかれ、取引の対象となるものであるから、注意力の高い判断主体である「作業者」、「購買担当者」、「流通業者」、「購入者(末端消費者)」は、嵌合部の形状に注目することは明らかであり、嵌合部の態様が類否判断に与える影響は大きいというべきである。相違点(c)の円錐台形状部の取り付け位置について、全体形状が大きく異なるので、類否判断に与える影響は極めて大きいというべきである。相違点(d)の直線模様が形成されている部位については、相違点(b)と同様に注目される部分の相違であるから、類否判断に与える影響は大きいというべきである。相違点(e)の直線模様の態様について、相違点(c)から必然的に導き出すことができるように、本件登録意匠は、一方のみに直線模様が形成されているのであるから、この点は、両端部に直線模様が形成されている引用意匠と比較した場合、類否判断に与える影響は極めて大きいというべきである。相違点(f)の円錐台形状部の先端部の角度については、類否判断を左右するほどの大きな相違とはいえないまでも、ある程度の影響を与える相違というべきである。相違点(g)の端部態様について、相違点(b)と同様に注目される部分の相違であるから、類否判断に与える影響は大きいというべきである。相違点(h)の両端部の径について、相違点(c)から必然的に導き出すことができるように、左右の開口部の径が大きく異なる点は特徴的であるから、類否判断に与える影響は極めて大きいというべきである。
以上のとおりであって、本件登録意匠と引用意匠に共通する点は、類否判断を左右する要素としては重要視できないものであるのに対し、相違点(c)、(e)、(h)が類否判断に与える影響は極めて大きいものであり、これに相違点(b)、(d)、(g)の相俟った効果を加えると、本件登録意匠は、引用意匠に類似するものとすることはできない。
したがって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠には該当しない。

5.本件登録意匠の創作容易性について
請求人は、本件登録意匠における意匠の要部は、引用意匠が持つテーパー部の形状、即ち、略台形状の形状、及び、直線模様を単に組み合わせた意匠であり、また、引用意匠は触媒CVT本体部の双方にテーパー部を有するが、テーパー部の一方を削除し、片方のみの触媒CVTとすることは設計変更において通常行われる態様に過ぎず、触媒CVTの意匠の属する当業者であれば、容易に創作できるものであり、さらに、本件登録意匠は、本件登録意匠の出願日前に、触媒CVTの分野において公然知られた円筒状の形態と、公然知られているテーパー部に形成した直線模様を組み合わせた意匠であり、公然知られた形態に基づいて容易に創作できた意匠である旨主張するので、この点について検討する。
本件登録意匠と引用意匠とは、前記のとおりの共通点と相違点を有するものである。このうち共通点については、触媒CVTの意匠の属する分野における通常の知識を有する者であれば、普通に知られていることであり、格別特徴があるとはいえない。しかしながら、本件登録意匠の特徴は、主として相違点(c)、(e)、(h)さらに、(b)、(d)、(g)にもあるということができ、この点について全体とのバランスに配慮しながら創作したものと考えられる。そして、これらの相違点は、引用意匠にはみられない点であるから、引用意匠にこれらの点を着想させるヒントが存在していたということはできない。仮に、引用意匠の一方のテーパー部を削除したとしても、本件登録意匠と引用意匠には、相違点(b)、(d)、(g)が存在するので、単純な削除によって本件登録意匠を創作することはできないというべきである。
また、上記のような相違点があることから、公然知られた円筒状の形態と、公然知られているテーパー部に形成した直線模様を組み合わせたまでの意匠であるということもできない。
したがって、本件登録意匠は、公然知られた形態に基づき、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が、容易に創作をすることができた意匠であるとすることはできない。

6.結び
以上のとおりであって、請求人の提出した証拠及び主張によっては、意匠法第3条第1項および同条第2項の規定に違反して登録されたものとして、本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2008-07-01 
結審通知日 2008-07-03 
審決日 2008-07-15 
出願番号 意願2004-15653(D2004-15653) 
審決分類 D 1 113・ 121- Y (G2)
D 1 113・ 113- Y (G2)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 温品 博康尾曲 幸輔 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 岩井 芳紀
宮田 莊平
登録日 2005-01-21 
登録番号 意匠登録第1232271号(D1232271) 
代理人 伊藤 孝太郎 
代理人 中村 知公 
代理人 足立 勉 
代理人 前田 大輔 
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