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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 C1 |
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管理番号 | 1192206 |
審判番号 | 不服2008-10865 |
総通号数 | 111 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2009-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-04-30 |
確定日 | 2009-01-06 |
意匠に係る物品 | レジャーシート |
事件の表示 | 意願2007- 14895「レジャーシート」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願意匠は,平成19年6月5日に意匠登録出願されたものであり,その願書及び添付図面の記載によれば,意匠に係る物品を「レジャーシート」とし,その形態を願書及び添付図面の記載のとおりとしたものである(別紙参照)。 2.手続の経緯 (1)拒絶理由 原審において平成20年1月24日に拒絶理由を通知した。その内容は下記のとおりである。 「この意匠登録出願の意匠は,下記に示すように,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められますので,意匠法第3条第2項の規定に該当します。 記 本願の意匠は,薄地の間にクッション材を挟んで成るありふれたシート地を,シート状のものの折り畳み方法として,本願出願前より広く知られたミウラ折の折り方ができるよう縫製した上で,これを単なる円形にして表したにすぎず,本願意匠の属する分野の通常の知識を有する者が容易に創作することができたものと認められます。」 (2)出願人(請求人)の意見 出願人(請求人)は平成20年3月10日に意見書を提出した。その意見は,要旨以下とおりである。 すなわち,本願意匠は,基本的構成態様について,平面視円形状とし,厚手のシート地の表裏面を小さく折り畳みできるよう縫製により溝部(谷間)を形成したもので,具体的構成態様について,シート地は,薄地の間にクッション材を挟んでなる三層構造とした一定の厚みを有したもので,略シート地の縫い目をジグザグ状(略「く」字状,略矢羽根状)に連続してなる断面上端丸いV字状の溝部(谷間)を形成し,立体的な表裏面を形成したものである。 意匠の創作においては,物品の形態の一部分を広く知られた形状に基づいて形成しているものであっても,その形状の変形,構成比の変更,組合せ等により構成態様に創意工夫をした結果,形態上の特徴を形成し,形態全体の基調にも大きな影響を与える要素となり得るものである。 すなわち,「ミウラ折」は,一枚(一層)の薄い紙などを折り返してなるもので,これに対し,本願意匠においては,シート地間にクッション材を挟んでなる三層構造を有する一定の厚みを持ったものを小さく折り畳みできるように創意工夫をした結果,表裏面を縫い目が略「く」字状,あるいは略矢羽根状にジグザグ状に連続してなる断面上端丸いV字状の溝部を形成した意匠で,容易に創作できたということはできない。 また,シートを広げた状態においては,三層構造にジグザグ状の縫い目を施したことにより,より表面に立体的な凹凸感を有し,この立体的な凹凸感は座る人に座りやすさ(体圧が加わることで体に馴染む)を感じさせるものである。そして,表裏面の縫い目が方向性を感じさせてくれるもので,全体観察において極めて印象的である。本願意匠に見られるような縫い目模様により登録になっている例に照らしてみても,本願意匠について容易に創作できたものであるとの認定は適切を欠くものである。 更に,シートを折り畳んだ後の形状は,色々な位置に外周部ができることにより,より立体的になる。 なお,折り方は,二つ折り,三つ折り,段折り,蛇腹折りなど,多種多様な折り方が存在し,シンプルな形状で通常の折り方においても登録になっている例に照らしてみても,本願意匠について容易に創作できたものであるとの認定は適切を欠くものである。 ところで,シート地を平面視円形状とすること自体は,ごくありふれたものであるが,本願意匠の特徴である厚手のシート地の表裏面を小さく折り畳みできるよう縫製によりジグザグ状に連続してなる断面上端丸いV字状の溝部(谷間)を形成したことにより,新たな美的外観が生じているもので,その態様も容易に創作できたものと認めることはできない。 以上のとおりであるから,本願意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められないというべきである。 (3)拒絶査定 原審では,平成20年3月25日に拒絶査定をし,要旨以下のなお書きを付した。 すなわち,意見書を提出して,本願意匠は,厚手のシート地を縫い目が略「く」字状に連続するよう縫製し,断面形状が上端丸いV字状である溝を形成した意匠で,新たな美感が生じており,その態様は容易に創作できたものではない旨主張された。しかしながら,本願意匠のような三層構造よりなるシート地において,その各層がずれないように縫製しておくことはごくありふれており,その際に,縫い目箇所の断面は,三層シートが柔らかい素材であれば,自然に上端の丸い浅いV字形状溝を呈するのであり,また略「く」字状に連続する縫い目の線はミウラ折りの折線そのままを縫い目としたにすぎないから,これらの点に格別の創作を要したとは認められない。したがって,本願意匠は,本願意匠に係る物品の属する分野の通常の知識を有する者が容易に創作することができたと言わざるを得ず,意見書の御主張を採用することはできない。 3.請求人の主張 請求人の主張は要旨以下のとおりである。 すなわち,原審は,「ミウラ折りの折り方ができるよう縫製した」或いは「縫い目の線はミウラ折りの折線そのまま縫い目としたにすぎない」としているが,本願意匠の特徴である厚手のシート地の表裏面を小さく折り畳みできるように,縫い目が略「く」字状,あるいは略矢羽根状にジグザグ状に連続してなる断面上端丸いV字状の溝部を形成することができたとする具体的証拠を全く示されていない。 また,意匠を創作するのが観念的に容易であるとしても,その形状の変形,構成比の変更,組合せ等により構成態様に創意工夫をした結果,形態上の特徴を形成し,形態全体の基調にも大きな影響を与える要素となり得るものであり,そのうえで,機能的創作性をも含め,創作性の評価がなされるべきである。そして,従来のレジャーシートの分野における折り方としては,二つ折り,三つ折り,段折り,蛇腹折りなど,多様な折り方が存在しているが,本願意匠のような折り方は存在していない。審査官の査定理由は,物品の具体的形態という意匠的視点を離れて,概念的・思想的に創作容易性を論じているに過ぎない。 当該意匠の実施物の製品開発においては,丹念な研究及び多大な企業努力を費やし,レジャーシートにおいて,座る際の厚みや溝部だけでなく,外周部,折り畳んだ場合の大きさを含めた全体のバランスを考慮して完成したものである。 仮に,厚手のシート地に単に溝部を形成しただけのものでは,きれいに小さく折り畳むこと(角閉じ)が出来ないのに対して,本願意匠においては,座りやすい厚手のシート地で,且つ断面上端丸いV字状の溝部により折り目が分かりやすく,折り畳みを誘導し,早く正確にきれいに小さく折り畳むことができるものである。 以上のとおりであるから,本願意匠は意匠法第3条第2項の規定に該当するものでない。そして,他にその登録の妨げとなるべき理由がなく,請求の趣旨のとおり,原査定を取り消す,本願の意匠は登録すべきものであるとの審決を求める。 4.当審の判断 (1)本願意匠 本願意匠は,平成19年6月5日に意匠登録出願されたものであり,その願書及び添付図面の記載によれば,意匠に係る物品を「レジャーシート」とし,「表裏面がシート地(合成樹脂地,布地)と,これら両シート地間に介在するクッション材とからなるものであって,表裏面に縫製により縦横それぞれ谷間(凹み)を形成し,使用しない時は略谷間が折目となり小さく折り畳んで袋,鞄などに入れて持ち運びできるもの」であり,その形態を願書及び添付図面の記載のとおりとしたものである(別紙参照)。 すなわち,その形態は,(A)全体を平面視円形状のやや厚手のシートとし,一定の折り畳み形状を保って小さく折り畳みできるようシートの表裏面に縫製により縦横に溝部(谷間)を形成し,該溝部でミウラ折り状の縫い目模様を形成した基本的構成態様であり,そして,具体的構成態様について,(B)シート地の厚みは,全体に一定の厚みを有し,ややクッション性があるもので,(C)ミウラ折り状の縫い目模様は,縦横5本ずつの縫い目の一方を直線状に他方をジグザグ状に連続して形成し,(D)溝部の断面形状を上端丸いV字状とし,全体に立体的な表裏面模様を形成したものである。 (2)創作非容易性の判断 そこで検討するに,ミウラ折りはシートの折り方として広く知られたものであり,また,矩形のシートについてミウラ折りとした意匠も公然知られたものである。しかし,円形状のシートについてミウラ折りとした意匠は,公然知られたものではない。そして,円形状は広く知られた幾何学形状であるが,レジャーシートにおいて,本願意匠の基本的構成態様のうち,「ミウラ折り」の態様を除く,「全体を平面視円形状のやや厚手のシートとし,一定の折り畳み形状を保って小さく折り畳みできるようシートの表裏面に縫製により縦横に溝部(谷間)を形成した態様」は広く知られたものではなく,また,公然知られたものともいえない。 そうすると,ミウラ折りが広く知られた折り方であるとしても,そのミウラ折りの折り方を,「全体を平面視円形状のやや厚手のシートとし,一定の折り畳み形状を保って小さく折り畳みできるようシートの表裏面に縫製により縦横に溝部(谷間)を形成した態様」に適用した本願意匠の基本的構成態様は,公然知られた態様に基づき容易に創作されたものとはいえない。 また,「三層構造よりなるシート地において,その各層がずれないように縫製しておくことはごくありふれている」としても,どの程度の厚みのシート地とし,何本の縫い目模様を形成し,どのような縫製とするかによって異なった態様が構成されるものである。そして,本願意匠の基本的構成態様に具体的態様を合わせた態様,すなわち(B)全体に一定の厚みで,(C)縦横5本ずつの縫い目模様を形成し,(D)溝部の断面形状を上端丸いV字状に形成した態様を有する円形状レジャーシートは,この種レジャーシートにおいて広く知られたものでも,公然知られたものでもない。したがって,ミウラ折りが広く知られた折り方であり,縫製の手法がありふれたものであったとしても,この種レジャーシートにおいて広く知られたものでも,公然知られたものでもない縫い目模様や立体的態様を有する本願意匠の構成態様を創作することが容易であるとはいえない。 以上のように,本願意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとは認められない。 5.むすび したがって,本願意匠は,意匠法第3条第2項に掲げる意匠に該当しないものであり,また,他に拒絶の理由がなく,意匠登録をすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2008-12-17 |
出願番号 | 意願2007-14895(D2007-14895) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(C1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 早川 治子 |
特許庁審判長 |
梅澤 修 |
特許庁審判官 |
樋田 敏恵 並木 文子 |
登録日 | 2009-02-20 |
登録番号 | 意匠登録第1353426号(D1353426) |
代理人 | 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所 |