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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) L4
管理番号 1193792 
判定請求番号 判定2008-600047
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2009-04-24 
種別 判定 
判定請求日 2008-11-21 
確定日 2009-03-04 
意匠に係る物品 壁見切り縁材 
事件の表示 上記当事者間の登録第1135036号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠の写真に示す意匠は、登録第1135036号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1.請求の趣旨及び理由
請求人は、イ号意匠の写真に示す意匠は、登録第1135036号意匠(以下「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める、と申し立て、その理由を要旨以下のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証(枝番を含む。)を提出した。
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「壁見切り縁材」とし、形態の基本的構成態様を次のとおりとする。
正面図及び側面図における物品全体の高さを11cmとし、左右に連続する薄板を数箇所で折曲して形成した壁見切り縁材であり、垂直状の基板の下端を略L字状に折り曲げて傾斜板部を形成し、その下端を凹状に折り曲げて樋状部を形成した構成からなる。
イ号意匠は、意匠に係る物品を「同質用オーバーハング水切り」とし、その形態の基本的構成態様を次のとおりとする。
正面視及び側面視における全体の高さを8.5cmとし、左右に連続する薄板を数箇所で折曲して形成した壁見切り縁材であり、垂直状の基板の下端を略L字状に折り曲げて傾斜板部を形成し、その下端を凹状に折り曲げて樋状部を形成した構成からなる。
本件登録意匠について考察するに、物品性及び出願前の公知性(新規性)、創作性の各面から捉えて本件登録意匠の主要な創作態様であるとみられるから、本件登録意匠の要部は基本的構成態様にあるものとみられる。
両意匠の基本的構成態様は、物品に関する認定を含み、全体形状の構成が共通する。
具体的構成態様では、垂直板状部分である基板部、L字状折り曲げ状態の下方で傾斜させた板状部分である傾斜板部、傾斜板部の下端に形成した凹状部分である樋状部等における構成態様が共通する。
両意匠は、相違点として、底板部の幅が、本件登録意匠では1.8cm、イ号意匠では1.6cmである点、底板部に並列された排水穴が、本件登録意匠では両端を円弧状とした長方形状でありイ号意匠では正円形状である点、基板部と傾斜板部の角部内側にイ号意匠では小段部を設けているが本件登録意匠には段部がない点、樋状部の内側縦板部と外側縦板部の高さが異なる点、基板部先端に、本件登録意匠では折り返しがあるがイ号意匠にはない点がある。
両意匠の共通点及び相違点を総合的に捉えると、意匠に係る物品は同一であり、全体の形態の骨格というべき基本的構成態様が共通するものである。
本件登録意匠とイ号意匠とはその形態において樋状部底面の排水穴の形状を除き類似するものである。施工された状態では樋状部底面が目に付き易いとしても、本件登録意匠は「壁見切り縁材」に係る意匠であって全体の構成態様が本件登録意匠の内容であるから樋状部は一部分に過ぎず、類否判断に際し当該部分は形態に応じた評価がなされるのは当然である。
本件登録意匠とイ号意匠は、上記で指摘した構成態様において共通し、本件登録意匠の要部と見られる基本的構成態様をイ号意匠も具備するものであり、両意匠を全体的に観察した場合に需要者取引者に共通の美感を与えるものであるとみられるから、イ号意匠は本件登録意匠に類似するものといわざるをえない。

第2.被請求人の答弁及びその理由
被請求人は、イ号意匠の写真に示す意匠は、登録第1135036号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない、との判定を求める、と答弁し、答弁書に記載のとおり主張し、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証(枝番を含む。)を提出した。その主張の要旨は、以下のとおりである。
両意匠の意匠に係る物品は同一であり、両意匠は、左右に連続する薄板を数箇所で折曲して形成した壁見切り縁材であり、垂直状の基板の下端を略L字状に折り曲げて傾斜板部を形成し、その下端を凹状に折り曲げて樋状部を形成した基本的構成態様において共通する。
一方、両意匠は、次の点で相違する。
a)垂直な基板部と傾斜板部が略L字状に折曲した部分の角部において、イ号意匠は、樋状部の外側縦板部先端の折れ曲がり部と同じ高さ位置に、逆L字状の段部が形成されているのに対し、本件登録意匠は前記段部が無く、単に略L字状に折れ曲がっているだけである点。
b)傾斜板部において、イ号意匠は、樋状部側寄りの部分を水平に折り曲げた部分があり、施工時に当該水平部分が出隅材の水平部の内面と接するように構成されているのに対し、本件登録意匠はそのような折り曲げた水平部分は全くなく、単なる直線状の傾斜板部として構成されている点。
c)樋状部の底板部に設けられた排水孔の態様において、イ号意匠は円形の孔を並列したものであるのに対し、本件登録意匠は隅丸長方形の孔を並列したものである点。
d)垂直な基板部の先端において、イ号意匠は折り返しが無いが、本件登録意匠は先端部分を僅かに折り返している点。
周辺先行意匠をもとに、本件登録意匠の創作の要点について述べれば、この種物品における意匠上の創作の主たる対象は、全体形状における各部の具体的構成態様及び使用時に外部から観察される「底板部」の具体的態様にあることは明らかで、本件登録意匠については、他に全く見られないシンプルな構成の全体形状及び使用時に外部から観察される底板部に多数個並列された隅丸長方形状の排水孔の態様が相俟って、本件登録意匠全体の基調を表出している。
また、意匠は物品の構造に係る考案ではなく、美的外観に係る創作であるから、物品の形態のうちに、使用時に内部に隠れて見えなくなる部分と、外部に露出して観察されうる部分とがある場合、特段の理由がない限り、内部に隠れて見えなくなる部分よりも外部から観察されうる部分の方が、看者の注意をより強く惹く部分であると考えられる。
両意匠の共通点は、基本的構成態様に係るものであり、全体形状の骨格に関するものではあるが、本件登録意匠については、基本的構成態様の共通する先願意匠の登録(乙3意匠登録第1113601号意匠、乙4意匠登録第1116928号意匠)がある中で、それらとは非類似のものとして登録されたものであることから見て、かかる共通点が両意匠の類否に与える影響はそれ程大きくないものと考えられる。
一方、両意匠の差異点a)については、両意匠の具体的態様における全体の骨格に係わる部分における相違であり、両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものである。特に、イ号意匠の逆L字状の段部は、樋状部の外側縦板部先端の折れ曲がり部と共に、施工時には、胴縁等に同物品を取り付ける際の基準面を形成するためのものであることが一見して看取される。したがって、その逆L字状の段部の存在は、看者の注意を強く惹くことはあっても全体の中に埋没することはないものである。
両意匠の差異点b)について見ると、イ号意匠の傾斜板部に形成された水平部分は一見僅かな曲がり部分ではあっても、全く曲がり部分のない傾斜面を有する本件登録意匠との関係で見る限り、顕著な相違というべきである。特に、イ号意匠の水平部分は、施工時に当該水平部分が出隅材の水平部内面と接するように構成され、出隅部材を安定した形で施工することができるよう寄与するものであるため、この種物品の需要者の注意を強く惹く部分といえる。
さらに、両意匠の差異点c)については、施工後も外部から観察される部分における顕著な相違であるから、両意匠の類否の判断に大きな影響を与えるものである。
以上の認定、判断を前提として両意匠を全体的に考察すると、両意匠の差異点、特に差異点a)及びc)は、意匠の要部における特に目立った相違であるから、共通点全体よりも差異点全体の方が類否判断に及ぼす影響が優っているというべきである。
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。

第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成13年2月8日に意匠登録出願をし、平成14年1月11日に意匠権の設定の登録がなされた、登録第1135036号の意匠であって、登録原簿及び願書の記載によれば、意匠に係る物品が「壁見切り縁材」であり、形態については、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものである(別紙1参照)。
2.イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書添付、甲第2号証「イ号意匠の写真」により示されたものであり、意匠に係る物品については、判定請求書の記載によれば「同質用オーバーハング水切り」であり、形態については、同写真により示されたとおりのものである(別紙2参照)。
3.両意匠の対比検討
意匠に係る物品について、イ号意匠は判定請求書及び甲第3号証の3のカタログの記載によれば名称を「同質用オーバーハング水切り」としたものであるが、同証の3のカタログ上段右端に掲載された「収まり図」に表されたその使用状態の内容によれば、本件登録意匠の「施工状態を示すA-A’線拡大参考図」の内容とほぼ共通するものであるから、意匠に係る物品を「壁見切り縁材」とした本件登録意匠と実質的差異はなく、両意匠の意匠に係る物品は共通する。また、形態については、主として以下の共通点と差異点がある。なお、本願添付図面背面図側を「前」として、以下認定する。
すなわち、両意匠は、共通点として、
(1)横長帯状薄板体に横方向の折曲部を数箇所平行状に設け、同一断面形状が横方向に連続する構成としたものであり(後記する透孔部を除く。)、鉛直状とした基板部と、該基板部下端から前方に向け略L字状に折り曲げた態様の中間板部(傾斜板部)と、該中間板部前端側に設けられた断面を上面開口概略コ字状とした樋状部からなるものであり、中間板部については前側を僅かに下げた傾斜状とし、樋状部について、前・後両壁部は鉛直状、底板部を水平状とし、樋状部前壁上端について、高さ位置を後壁上端よりもやや高い基板部下端位置とほぼ一致するものとし、後方に向け直角に折曲した態様の細幅の縁部を設けている点、
(2)基板部側の高さ幅に対する中間板部側の前後幅(イ号意匠においては、後記する「段差部」の幅を各板部それぞれに加えたもの。以下同じ。)は近似するものとし、樋状部の前後幅を全体幅の1/5?6ほどとしたものであり、樋状部について、後壁部縦幅と底板部前後幅は近似したものとし、前壁部縦幅は後壁部の2倍弱とした点、
(3)樋状部の底板部について、同一形状とした透孔を横方向等間隔に設けた点、
が主として認められる。
次に、差異点として、
(ア)基板部側の高さ幅と中間板部側の前後幅について、本件登録意匠は、両板部側それぞれの幅をほぼ同じとしているのに対して、イ号意匠は、中間板部側の幅を約1.2倍としている点、
(イ)基板部と中間板部の境界付近について、イ号意匠は、本件登録意匠には存在しない逆L字状の段差部を設けている点、
(ウ)中間板部前端側約1/4幅部分について、イ号意匠は、本件登録意匠には存在しない逆へ字状折曲部を設け、その前側を水平状としている点、
(エ)樋状部底板の透孔形状について、本件登録意匠は縦細長状とし前後両端を半円状としているのに対して、イ号意匠は正円状としている点、
が主として認められる。
そこで両意匠の形態を意匠全体として比較検討すると、前記共通するとした、(1)の点は基本的構成態様に相当するもの、(2)の点はその構成比に関するものであって、これらは訴求力の強い共通した視覚的まとまりを形成し、更に、(3)の点は、共通する箇所に共通する機能を持たせるためと認められる透孔を等間隔に設けた構成に関するものであり、共通感を高める働きをするものであって、これら(1)ないし(3)の構成態様は、相互に関連し合って極めて大きな共通感を表出させ、共通した基調を形成するものであり、また、これらを併せ持った点は本件登録意匠の特徴を形成するものと認められるから、類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
これに対して、差異点は何れも微弱であり、類否判断に及ぼす影響は僅かである。
すなわち、(ア)の差異点について、イ号意匠は中間板部側の幅を広くしているとしても本件登録意匠の約1.2倍ほどであり、さほど顕著というほどのものではなく、(2)において指摘したように「近似する」範囲に止まるものであり、意匠全体として観察した場合には視覚効果において優る樋状部を含む各部相互の構成比に関する共通点(2)が意匠全体として生じさせる共通感に吸収されてしまう程度のものにすぎない。
(イ)の差異点について、イ号意匠における逆L字状段差部の大きさは樋状部と比較してもかなり小さなものであり、また、同段差部は例えば意匠登録第929003号公報等にみられるような単なる位置決め手段にすぎないから格別着目されるほどのものではなく、その視覚効果は(1)及び(2)の共通点に係る構成態様が意匠全体として生じさせる訴求力の強い視覚的まとまりに吸収されてしまう程度の微細かつ微弱なものにすぎない。
(ウ)の差異点について、中間板部の傾斜はもともと僅かなものであり、折曲部の折曲角度も極く僅かなものにすぎず、これに対して共通点(1)における各屈曲部の屈曲角度は何れも直角ないし直角に近いものであり、意匠全体として観察した場合には(1)の構成態様が有する圧倒的視覚効果に比しその視覚的効果は極めて微弱なものにすぎない。
(エ)の差異点について、その差異点の前提となる共通する箇所に共通する機能を持たせるためと認められる透孔を等間隔に設けたとする(3)の点は共通し、その共通する中における具体的態様の差異にすぎず、また、イ号意匠の円形孔は、例えば前掲意匠登録第929003号公報、あるいは意匠登録第862328号公報等にみられる水抜き孔としては極めてありふれたものであるから、その形状に関し着目されるほどのものではなく、仮に共通点(3)の視覚的効果より優っているとしてもその差異は顕著とは言い難く、共通するとした基調を凌駕するほどのものとすることはできない。
このように、(ア)ないし(エ)の差異点は何れも微弱なものであり、また、これら差異点の相まった効果を総合したとしても、両意匠の共通点に係る(1)ないし(3)の構成態様が形成する共通した基調を凌駕し別異の感を生じさせるまでに至っているとすることができないから、意匠全体として、イ号意匠は本件登録意匠に類似するものとせざるを得ない。
4.むすび
以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2009-02-19 
出願番号 意願2001-2806(D2001-2806) 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (L4)
最終処分 成立 
前審関与審査官 早川 治子 
特許庁審判長 本田 憲一
特許庁審判官 山崎 裕造
市村 節子
登録日 2002-01-11 
登録番号 意匠登録第1135036号(D1135036) 
代理人 朝倉 悟 
代理人 黒瀬 雅志 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 岡田 淳平 
代理人 吉武 賢次 
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