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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C5
管理番号 1195368 
審判番号 不服2008-11978
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-12 
確定日 2009-04-02 
意匠に係る物品 炊飯ジャー 
事件の表示 意願2006- 15169「炊飯ジャー」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願意匠は,平成18年6月13日の意匠登録出願に係り,願書及び添付図面の記載によれば,意匠に係る物品が「炊飯ジャー」であり,その形態が添付図面の記載のとおりのものである。(別紙第1参照)
2.引用意匠
これに対して,原審の拒絶の理由において,本願意匠に類似するとして引用された意匠は,特許庁意匠課が2006年3月10日に受け入れた「象印総合カタログ2005」(No.81)第43頁所載の電気炊飯ジャーの意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC18008015号)であり,その形態が当該カタログの写真に現わされたとおりのものである。(別紙第2参照)
3.両意匠の対比
本願意匠と引用意匠を対比すると,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,その形態については,次のような共通点と差異点がある。
(1)共通点
両意匠は,(A)全体を略楕円柱体形として,上部,胴部,底部に上下平行に高さ略3:4:1の比率に3区画し,上部上面部全体を前方へ向けて緩やかに傾斜する凸弧面として,その前部分を操作表示部,後部分を開閉蓋部とし,それら上面の大部分を囲むように略楕円形に区画したものとする基本的構成態様が共通する。そして,具体的構成態様について,(B)蓋部の前端に角丸の横長矩形状の蓋開閉ボタンを配し,その後に蒸気孔部を配した点,(C)操作表示部の中央に大きな略矩形状表示部を設け,その左右に略対称形に円形ボタンを複数個配した点において共通する。
(2)差異点
(a)全体の前方部の形状について,本願意匠は上部,胴部,底部の前方形状が平面視中央に頂点を有する円弧状で,胴部は弧状曲面形成しているのに対し,引用意匠は上部,胴部,底部の前方形状が,平面視直線状で,胴部は平坦面を形成している点,(b)操作表示部について,本願意匠は,パネル全体の外形が頂点を有する円弧状で,中央やや上部に表示部を設け,その表示部下方の操作パネルの円弧状頂点部に横長楕円形状の操作ボタンを2つ横に配置し,左右サイドに大小の円形ボタンを縦に配置し,表示部3方を略U字状に一列のボタンで囲っているのに対し,引用意匠は,パネル全体の外形が扁平な円弧状で,中央に表示部を設け,その左右の外側に円形ボタンを1個ずつ,内側に2ないし3個の小円形ボタンを縦に配置し,表示部の左右にのみボタンを配置した点,(c)蓋部の蒸気孔について,本願意匠は,蓋部中央寄りに蒸気孔が設けられ,やや膨出した全体の外形は円形であるのに対し,引用意匠は,蓋部後端に設けられ,蒸気孔周囲パネルの外形が前方やや円弧状の略矩形状である点に差異がある。
4.類否判断
意匠の類否を判断するに当たっては,両意匠の共通点及び差異点について,意匠全体に占める割合,物品特性,及び公知意匠を参酌し,美感の観点から看者の注意を引く部分か否かを評価して,意匠全体として両意匠の全ての共通点及び差異点を総合的に観察した場合に,需要者に対して共通する美感を起こさせるか否かを判断する。
そこで検討するに,この種炊飯ジャーの性質,用途,使用態様を参酌すると,使用する場合は,蓋を開閉し操作ボタンを操作するものであり,需要者は,主として斜め上方からこの種炊飯ジャーを視認し,操作部を中心として,意匠全体を観察するものと認められる。
そして,この種炊飯ジャーの公知意匠を参酌すると,(A)全体を略楕円柱体形として,上部,胴部,底部に上下平行に高さ略3:4:1の比率に3区画し,上部上面部全体を前方へ向けて緩やかに傾斜する凸弧面として,その前部分を操作表示部,後部分を開閉蓋部とし,それら上面の大部分を囲むように略楕円形に区画したものとする基本的構成態様は,本願意匠の出願前及び引用意匠の公開前から広く知られた態様である(例えば,ほぼ同一の態様は,意匠登録第1070185号意匠,同第1068777号意匠,同第1218468号意匠,同第1228028号意匠,同第1233542号意匠,同第1226193号意匠にみられる(別紙第3参照)。)。そして,両意匠の具体的構成態様は,各部分の態様としては格別特異なものではない(上記公知意匠参照)。
そうすると,両意匠は,意匠全体の骨格をなす基本的構成態様(A)において共通するものの,その基本的構成態様(A)は広く知られた態様であって,格別看者の注意を引くものではなく,これに加えて,使用状態等を考慮すると,両意匠の構成態様のうち看者の注意を引く部分は,主として斜め上方から視認される操作部等を中心とした具体的構成態様である。したがって,これらの具体的構成態様が,主として両意匠の類否判断を左右するものといわなければならない。
両意匠の具体的構成態様については,(B)蓋部の開閉ボタンや蒸気孔部の配置,(C)左右対称の操作部態様において共通するが,この共通点はやや概括的なものであり,(C)の横長矩形状の蓋開閉ボタンを除き,各部の具体的構成態様に明らかな差異が認められる。すなわち,差異点(a)全体の前方部の形状の差異は,全体形状の前面部全体に係る差異であり,操作部パネル面の形状とあいまって看者の注目する部位での明白な差異となっており,類否判断を左右するものである。差異点(b)操作部の態様の差異は,操作部パネル面の形状の差異と操作ボタンの配置の差異があいまって看者の注意を引く顕著な差異である。また,差異点(c)は,蒸気孔の外形状の明白な差異であり,その位置の差異も合わせて,看者の注意を引くものである。
したがって,両意匠を全体として観察する場合,基本的構成態様(A)において共通するものの,それは引用意匠の公開前に広く知られたものであり,使用態様を考慮しても格別看者の注意を引かず,これに対して,差異点(a)ないし(c)は各部分では格別特異なものではないが,いずれも看者の注目する部位での明白な差異であって,(a)ないし(c)の相まった意匠的効果は,具体的構成態様(B),(C)の概括的な共通点を凌駕し,両意匠は全体として異なる美感を起こさせるものである。
以上のように,両意匠は,異なる美感を起こさせるもので,類似しない。
5.むすび
したがって,本願の意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2009-02-24 
出願番号 意願2006-15169(D2006-15169) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 本田 憲一遠藤 行久 
特許庁審判長 梅澤 修
特許庁審判官 樋田 敏恵
並木 文子
登録日 2009-04-17 
登録番号 意匠登録第1360140号(D1360140) 

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