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審決分類 審判 補正却下不服  図面(意匠の説明を含む) 取り消す H7
管理番号 1200317 
審判番号 補正2008-500002
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 補正却下不服の審決 
審判請求日 2008-03-04 
確定日 2008-12-10 
意匠に係る物品 カメラ付き携帯電話機 
事件の表示 意願2007- 3681「カメラ付き携帯電話機」において,平成19年(2007年)11月16日付でした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原決定を取り消す。
理由 1.本願の手続の経緯
(1)本願は,2006年12月11日に大韓民国についてした意匠登録出願30-2006-0049171を基礎出願としたパリ条約による優先権の主張を伴った平成19年(2007年) 2月15日の意匠登録出願である。

(2)特許庁審査官は,平成19年(2007年) 8月14日付(発送日:平成19年8月22日)の拒絶理由通知書によって,この意匠登録出願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書および添付の図面から上蓋部が開く構造をもったものであるが,上蓋を開いた際に表れる本体側の図面が不足しており,それは,ダイヤルキー等(有無も含む),意匠の要旨を構成する重要な部分であり,意匠が特定しているものと認めることができないから,この本願意匠は,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しない旨,拒絶の理由を通知した。

(3)出願人は,平成19年(2007年)11月16日付(受付日:平成19年11月16日)で,意見書および手続補正書を提出し,意見書において,同日付で上蓋を開いた状態の正面図を提出したので,拒絶理由が解消した旨主張し,なお書きに,この図面は第一国出願(大韓民国出願,出願番号:第30-2006-0049171号)には含まれていない図面であることを記し,そして,手続補正書によって,図面に「開いた状態の正面図」を追加した。

(4)特許庁審査官は,平成19年(2007年)11月29日付(発送日:19年12月5日)で,平成19年11月16日付手続補正書に対して,次の理由で,意匠法第17条の2第1項の規定により,補正の却下の決定をした。
すなわち,手続補正書により,「開いた状態の正面図」を追加する補正をしたが,当該「開いた状態の正面図」は,優先権証明書および本願出願当初に添付されておらず,また,拒絶理由通知にも記載したとおり,開いた状態の意匠(態様)は,この種物品において要旨を構成する重要な部分であるところ,この手続補正書による補正は,出願当初表されていなかった意匠の要旨の一部を新規に追加するものであり,出願当初の願書に添付した意匠の要旨を変更するものといわざるを得ない。


2.決定に対する取消事由
請求人は,平成19年(2007年)11月29日付の補正の却下の決定を取り消すべき事由として,要旨以下のように主張する。

(1)本願意匠は,意匠に係る物品を「カメラ付き携帯電話機」とする意匠であり,上蓋部を回転させることが可能な二つ折り式の電話機であって,大韓民国における第一国出願(出願番号30-2006-0049171)を基礎とする優先権主張を伴う意匠登録出願である。

(2)日本国に意匠登録出願をした際,願書に添付した出願当初の図面は,透明部を示す参考図(3図)と各部名称を示す参考図(2図)を除き,第一国出願に提出したものである。

(3)大韓民国の意匠法下では,折り畳み式携帯電話機の上蓋を開いた際に表れる本体部の内側についての図面の提出は必ずしも要求されていないため,当該第一国出願には当該内側を表す図面が含まれていなかった。

(4)一方,日本の意匠審査便覧は「我が国への意匠登録出願に係る意匠が,優先権証明書の中に示されていない構成要素を含む場合には,優先権の主張の効果は認めないこととする」(意匠審査便覧15.09)としており,第一国出願に係る意匠との同一性を保つという観点から,日本での出願時に第一国出願には含まれない新たな図面を加えることを躊躇する場合が多々ある。本願の場合でも,優先権の主張の基礎となる第一国出願にない「開いた状態の正面図」の追加が新たな構成要素の追加となり意匠の同一性を損なう可能性があるとすれば,日本の運用上必須か任意かが不明確な図面について審査で提出を求められ,その図面を提出することが要旨の変更と判断され最終的に拒絶される,または,補正の却下後の新出願を行いパリ条約上の優先権の利益を喪失するという選択肢しかないとすれば,外国からの出願人にとってあまりに酷であり,日本の意匠制度自体が疑問視されかねない状況である。

(5)平成19年(2007年)11月16日付の手続補正書は,平成19年8月22日付の拒絶理由通知において,上蓋を開いた際に表れる本体側の図面が不足しており,それはダイヤルキー等(有無を含む)意匠の要旨を構成する重要な部分であり,意匠が特定しているものと認めることはできないとの判断が示されたため,それに応答して意見書とともに提出したものである。

(6)一般に,折り畳み式の携帯電話機において上蓋部の内側にディスプレイ,本体部の内側に操作キー部が位置するのは通常の態様(形態)であって,かつ,「開いた状態の正面図」に表された本願意匠の操作キー部は,通常の携帯電話機と同じく数字キーと記号キーからなり,配置も含めてそれほど特徴的とはいえないものであり,出願当初から,開いた状態の本体側の部分における操作キーの存在は容易に想定しうるため,当該図面を追加する補正は出願当初不明であった意匠の要旨を明確なものとする程の補正とは考えられない。

(7)本願意匠は,上蓋部が回転可能で,この動きは従来の携帯電話機を考慮すると意外なものと明らかに予想できるため,この動きを示す図面は,出願当初より添付されている。一方,携帯電話機の内側に操作キーなどが存在することは比較的容易に予想できるため,操作キー部がそれほど特徴的なものでない場合,基本的な必要図面である六面図が提出されていれば内側の操作キー部を含む図面を提出しなくとも,出願人が意匠を十分表現できているはずと考える可能性は否定できない。

(8)補正の却下の決定および拒絶理由通知では,上蓋を開いた際に表れる内側のダイヤルキー等(有無を含む)はこの種意匠の要旨を構成する重要な部分である旨説示するが,手続補正書で追加した図面に表された本願意匠の本体部内側の操作キー部の態様は,あまり特徴的ではなく,また,携帯電話機によくみられる形態から操作キーの存在や配置が予想できるものである。

(9)以上のとおりであって,本願意匠の本体部内側の操作キー部の態様はあまり特徴的ではなく,携帯電話機によくみられる形態から操作キーの存在や配置が予想できることから,「開いた状態の正面図」を追加しても意匠の要旨の変更にはあたらないと考える。それに加え,開いた状態の図面の提出の要否の基準の不明確性や,優先権主張の効果を保つ必要性があったという事情を考慮の上,国際的に見ても妥当な判断をすべきである。


3.当審の判断
(1)本願の出願当初の意匠
本願の出願当初の意匠は,出願当初の願書および願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「カメラ付き携帯電話機」とし,「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)」については,願書の記載および願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

(2)補正後の意匠
平成19年(2007年)11月16日付でした手続補正は,出願当初の願書に添付した図面について,「開いた状態の正面図」(以下「本件図」という。)を追加したものであり,補正後の意匠は,補正後の願書および願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「カメラ付き携帯電話機」とし,形態については,補正後の願書の記載および願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第2参照)

(3)要旨変更の当否
出願当初の願書に添付した図面の記載において,本願意匠を表すために,上蓋を閉じた状態を基本として,「斜視図」(以下「a図」という。),そして,意匠法施行規則に定める立体を表す場合の一組の図面として「正面図」(同「b図」),「背面図」(同「c図」),「左側面図」(同「d図」),「右側面図」(同e「図」),「平面図」(同「f図」)および「底面図」(同「g図」)の6図(これを「基本六面図」という。),さらに,「上蓋を開いた状態を示す縮小右側面図」(以下「h図」という。),「上蓋を開いて回転させた状態を示す縮小右側面図」(同「i図」),「上蓋を反転させて閉じた状態を示す斜視図」(同「j図」),「透明部を示す参考正面図」(同「k図」),「透明部を示す参考背面図」(同「l図」),「透明部を示す参考右側面図」(同「m図」),「各部名称を示す参考斜視図」(同「n図」),「各部名称を示す参考背面図」(同「o図」)の合計15図が提出されている。
また,願書の記載において,「意匠に係る物品の説明」の欄には,「この物品は,上蓋部を開いて回転させた状態を示す縮小右側面図と上蓋部を反転させて閉じた状態を示す斜視図に表されているように,上蓋部が回転可能な携帯電話機である。」との記載が,「意匠の説明」の欄には,「透明部を示す参考正面図,透明部を示す参考背面図,透明部を示す参考右側面図中,網掛部は透明である。」との記載がある。


以上を前提として,出願当初の願書の記載および願書に添付された図面の要旨と対比して,その補正後の要旨がその意匠の属する分野における通常の知識に基づいて当初のものと同一であると当然に推定できる範囲内のものであるか否かを判断する。

願書の意匠に係る物品の説明の欄の記載にあるとおり,この意匠は,表示部を有する上蓋部が回動可能な携帯電話機に係るものであって,この種物品分野における常識から考えて,本体部の内側には操作キー部およびテン・キー部などが設けられているものと当然に推定しうる。

一方,そもそも意匠法および意匠法施行規則の図面に関する規定によれば,図面は,意匠登録を受けようとする意匠を記載して,願書に添付して提出しなければならならず(意匠法第6条第1項),立体を表す図面は,正投影図法により各図同一縮尺で作成した基本六面図を一組として記載し(意匠法施行規則様式第6備考8),基本六面図だけでは,その意匠を十分表現することができないときは,展開図,断面図,切断部端面図,拡大図,斜視図その他必要な図面を加え,そのほか意匠の理解を助けるため必要があるときは,使用の状態を示した図その他の参考図を加え(同様式第6備考14),また,動くもの,開くもの等の意匠であって,その動き,開き等の意匠の変化の前後の状態の図面を描かなければその意匠を十分表現することができないものについては,その動き,開き等の意匠の変化の前後の状態が分かるような図面を作成する(同様式第6備考20)こととしているが,これらを前提として判断するに,本願意匠の場合は,出願当初に,h図ないしj図などを提出しており,回動可能な上蓋部について,a図および基本六面図の態様から順次h図の態様,i図の態様,そしてj図の態様へと,その開蓋の態様を明確にしており,意匠登録を受けようとする意匠を表すにのに十分な図を提出していると認められる。

そうとすれば,本願の図面は,もとより登録性を判断するに十分な状態であったにもかかわらず,原審査において,「上蓋を開いた際に表れる本体側の図面が不足しているから,ダイヤルキー等(有無も含む),意匠の要旨を構成する重要な部分が表されておらず,意匠が特定しているものと認めることができないので,工業上利用できる意匠に該当しない」という拒絶理由,すなわち,出願当初の図面によっては開蓋状態を十分に表現できていないとされたことに対して,それを補充して明確にしたものであると解すべきである。

言い換えれば,もともと本願意匠は,出願当初の願書の記載および願書に添付した図面の記載などから総合的に判断して,意匠登録を受けようとする意匠が十分に開示されていたものであったところ,本件図を追加する補正によって,開蓋状態における本体部の内側の形状について明確にしたに過ぎないものであって,補正後の意匠は,出願当初から当然に推定できる範囲内のものと認められる。

要すれば,本願は,パリ条約に基づく優先権主張の効果を享受しつつ,意匠登録を受けようとする意匠を適切に表した図面を提出しており,拒絶理由通知に対する応答として,当該物品分野の常識に照らして想定し得る範囲内において,出願当初の図面に表された意匠との整合性を保ちつつ手続の補正を行ったものと見るのが相当であって,図面の要旨,すなわち,意匠の内容
に実質的な変更があったとはいえないものである。

したがって,この手続補正書による補正は,出願当初の願書に添付した図面の要旨を変更したものとはいえず,この手続補正書による補正を意匠法第17条の2第1項の規定により却下すべきものとした原審の決定は取消を免れない。

以上のとおりであり,平成19年11月16日付でした手続補正は,出願当初の願書の記載および願書に添付した図面の記載の要旨を変更するものとは認められない。


4,むすび
したがって,平成19年11月16日付手続補正書による補正を,意匠法第17条の2第1項の規定により却下すべきものとした原審における決定は不当であって,取り消しを免れない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2008-11-28 
出願番号 意願2007-3681(D2007-3681) 
審決分類 D 1 7・ 1- W (H7)
最終処分 成立 
前審関与審査官 北代 真一 
特許庁審判長 瓜本 忠夫
特許庁審判官 鍋田 和宣
杉山 太一
登録日 2009-05-01 
登録番号 意匠登録第1361617号(D1361617) 
代理人 鈴木 博久 
代理人 志賀 正武 
代理人 渡邊 隆 
代理人 高柴 忠夫 
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