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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) F4
管理番号 1200349 
判定請求番号 判定2008-600044
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2009-08-28 
種別 判定 
判定請求日 2008-10-31 
確定日 2009-07-06 
意匠に係る物品 模造まつげケース 
事件の表示 上記当事者間の登録第1262161号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号意匠は、登録第1262161号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 請求の趣旨
本件判定請求人(以下、「請求人」という。)の請求の趣旨は、イ号意匠は、意匠登録第1262161号の登録意匠(以下、「本件登録意匠」という。別紙第1参照。)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求めるものである。

第2 当事者の主張
当事者の主張は、概ね以下のとおりである。
1.請求人の主張
[1] 平成20年2?3月頃に、本件判定被請求人(以下「被請求人」という。)が請求人に対し、商品「模造まつげセット」の見本(最初の見本)を示し、販売して良いかどうかにつき打診してきたが、請求人が製造販売する商品「模造まつげセット」(甲第2号証)と混同が生じるおそれがあるので、請求人は、販売を禁止する旨申し伝えた。
これに対し、被請求人は、二回目の見本と共に、これに係る商品を勝手に実施することを宣言して来たので、平成20年4月21日付の警告書にて、販売を禁止する旨の通知を行った。
しかし、被請求人から何ら回答がないため、平成20年5月8日付で二回目の警告書を送付し、その後も書面による正式な回答はなかったが、ある展示会会場にて被請求人の代表者から二回目の見本に係る商品「模造まつげセット」を販売しない旨の回答を口頭で告げられた。
それにもかかわらず、被請求人がその約束を反故にしてイ号意匠「模造まつげケース」から構成される商品「模造まつげセット」(甲第4号証)の販売を開始している事実が判明した。したがって、平成20年6月19日付でこの商品の販売を禁止する旨の三回目の警告書を被請求人に送付した。
これに対して、被請求人は、「イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない」旨等主張するので、特許庁による判定を求めた次第である。
[2]補足しておくと、甲第2号証に示した本件登録意匠から構成される商品「模造まつげセット」は、この商品の市場においてこの業界で突出した販売シェアを有する商業的成功を収めた商品である。
[3]本件登録意匠の説明
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「模造まつげケース」とする。
(1) 基本的な構成態様
透明なケースと透明な上部カバーとから成るものであり、内部に二個(左右一対)の模造まつげと一個の接着剤とを固定して収容するものである。
(2) 具体的な構成態様
ケースも上部カバーも左右対称のハート型の形状をしており、ケースに上部カバーを取り付けた状態では、正面から見るとハート型であり、斜視方向から見ると均一高さを有する立体形状である。ケースには、上方に突出する二個の弧状突起が、中央位置の上部側とやや左側位置の中央側に形成されていて、この弧状突起は、模造まつげを取り付けるためのものである。右側に空間(溝)が形成され、その空間には接着剤が収容される。
[4]イ号意匠の説明
イ号意匠は、意匠に係る物品を「模造まつげケース」とする。
(1) 基本的な構成態様
透明な内部ケースと透明な内部カバーと透明な外部ケースとから成るものであり、その内部に二個(左右一対)の模造まつげと一個の接着剤とを固定して収容するものである。
(2) 具体的な構成態様
構成部材である内部ケースと内部カバーは、正面から見てハート型で均一の高さのある立体形状から右下側を斜めに約4分の1程度切り取った形状のものである。内部ケースには、上方に突出する二個の弧状突起がほぼ平行に形成されていて、この弧状突起は、その位置に模造まつげを取り付けるためのものである。
外部ケースは、左肩に三つの弧線を有する略四角形の土台部と、その土台部とヒンジ状に連結された蓋部とから成り、蓋部の中央には、正面から見て左右対称形のハート型を基本とする立体的な隆起部を有している。その隆起部は、内部ケースが丁度嵌合する形状の左隆起部と、その左隆起部と連絡するものであって左隆起部より一段低い右隆起部とから成る。左隆起部内の空間には内部カバーを取り付けた状態の内部ケースが収容されている。右隆起部は、内部ケースの切り取られた右下部分の箇所に該当する形状である。右隆起部にはチューブ型の空間(凸部)が形成されており、その空間には接着剤が収容される。隆起部の下部の中心位置(ハート型の下部先端)には内部にへこむくぼみ部が形成され、上部の中心位置付近(ハート型の二つの弧線の間)には、相対的に低い突出部と、その突出部からさらに低いテーパ状部が小さく形成されている。
[5]イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明
(1)本件登録意匠に関する先行周辺意匠との比較
先行周辺意匠は、模造まつげを収容するケースの全体又は一部が透明となっており、中身である模造まつげの形状を外部から視認できる点において全て共通している。しかし、本件登録意匠のように「ハート」のイメージを認識させるようなハート型の立体形状を有するものは皆無である。
(2)本件登録意匠の要部
本件登録意匠のハート型の立体形状は、他の先行周辺意匠においては全く見られず、当然、ハート型の立体形状の中に二個の模造まつげと一個の接着剤とをバランス良く配置している点も他の先行周辺意匠には全く見られない。したがって、本件登録意匠においては、特徴的な部分は、「ハート」をイメージさせる立体形状と、そのハート型の立体形状の中にバランス良く配置された二個の模造まつげと一個の接着剤との配置関係であり、これらの点が本件登録意匠の要部として高く評価されることになる。
(3)イ号意匠の要部
イ号意匠では、隆起部、即ち、ハート型の立体形状が取引者・需要者にとって最も目を惹く箇所である。したがって、イ号意匠においては、外部ケースに形成された隆起部がハート型の立体形状に見える点と、そのハート型の立体形状内の左側に二個の模造まつげを配置し、且つ、その右側に一個の接着剤を配置している点が一番の要部となる。
(4)本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察
本件登録意匠及びイ号意匠の要部は、共に、このハート型の立体形状、及び、そのハート型の立体形状の中にバランス良く配置された二個の模造まつげを取り付けるための弧状突起と一個の接着剤を収容するための空間との配置関係であり、この点が取引者・需要者にとっても最も目を惹く部分である。したがって、これらの共通点は両意匠の類否の判断に多大な影響を与えるものである。
また、意匠保護の根拠は、当該意匠に係る物品が流通過程に置かれ取引の対象とされる場合において、取引者・需要者が当該意匠に係る物品を混同し、誤って物品を購入することを防止すると同時に、取引者・需要者の混同を招く行為を規制することにより意匠権者の物品流通市場において保護されるべき地位を確保することにある。このことからも、本件登録意匠とイ号意匠との類否判断においては、甲第7号証(b)に示す模造まつげと接着剤とを収容した状態、即ち、商品「模造まつげセット」を構成した状態における共通点も、両意匠の類否の判断に非常に大きなウエイトを占めるものである。
両意匠の差異点については、構成部材の点数は異なるものの、両意匠ともその内部に二個の模造まつげと一個の接着剤とを固定して収容するという機能・用途が共通している。したがって、本件登録意匠もイ号意匠も意匠に係る物品は共に「模造まつげケース」という同一物品となり、ここでいう構成部材点数の相違は意匠の類否判断に影響を与えるものではない。
なお、イ号意匠の構成部材の一つである内部ケースと内部カバーは、ハート型の右下部分を切り取った形状である。しかし、その内部ケースと内部カバーの形状は、商品「模造まつげセット」を購入して接着箇所を破って開いてからでないと具体的には判別できないものである。また、隆起部内の右側(内部ケースの切り取られた右下部分にあたる部分)には接着剤を収容する空間が形成されている。このため、実際には、接着剤は内部ケースの外側に配置されているものであるにもかかわわらず、結果的に、外部ケースに形成されたハート型の立体形状の内部に一緒に包含される構成、即ち、ハート型の立体形状内の左側に二個の模造まつげが配置され、右側に一個の接着剤が配置される構成となる。この構成態様は本件登録意匠と全く同じである。
上記のような理由から、イ号意匠の内部ケースと内部カバーの形状、即ち、ハート型の右下部分を切り取っている点をイ号意匠の要部の一つとして認定し、本件登録意匠との類否判断の重大な根拠とすることは困難である。即ち、イ号意匠を形成する内部ケースと内部カバーがハート型の一部を切り取った立体形状であったとしても、その内部ケースと内部カバー自体のみを類否判断の対象にすることはできないし、イ号意匠全体においては、本件登録意匠と同様、「ハート」のイメージを取引者・需要者に認識させることに変わりない。
したがって、イ号意匠を構成する一部材である内部ケースと内部カバーがハート型の右下部分を切り取った形状である等ということによって本件登録意匠との間に生じた差異点は、意匠全体としてみると特段顕著な相違とはいえず、類否の判断に与える影響は微弱で、それらの差異点が纏まっても両意匠の類否の判断に及ぼす影響は、その結論を左右するまでには至らないものである。

2.被請求人の主張
[1]本件の経緯
被請求人は、平成20年3月13?15日に幕張メッセで行われた第9回JAPANドラッグストアショーに、乙第2号証に示す「模造まつげケース」を出品したところ、請求人から本件登録意匠を侵害するのではないかとの連絡を受け、話し合いを行った。その際、被請求人は無用な争いになることを避けたかったため、ハート型の約1/3を切り取った模造まつげケースにデザインを変更する旨を伝え、書面にてデザイン変更案を請求人に送付した(甲第3号証の1)。被請求人は、変更後の商品に関して、登録意匠とは全く非類似な商品であると確信しており、請求人に応答しなかった。
しかし、請求人は、被請求人に第1回目の警告書を送りつけてきた。被請求人は、さらにパッケージ全体をリンゴ型と把握されるような状態に変更し、平成20年5月2日に意匠登録出願を行い、平成20年7月22日に早期審査請求を行って、平成20年9月5日に登録第1341210号として登録を受けた(別紙第4参照)。
請求人は、第1回目の警告後も、第2回、第3回と警告状を送りつけてきたが、非類似と確信していたので応答しなかった。しかしながら、取引先にも影響が出始めたこともあり、平成20年7月14日に回答書を送付した(甲第3号証の5)。
[2]物品の類否について
請求人はイ号意匠を、「透明な内部ケースと透明な内部カバーと透明な外部ケースから成る『模造まつげケース』である」としているが、「透明な内部ケースと透明な内部カバー」が「模造まつげケース」(以下、「イ号意匠A」という。)を構成し、「透明な外部ケース」は「パッケージ」(以下、「イ号意匠B」という。)を構成するものであって、イ号意匠は2物品からなるものである。したがって、物品として用途・機能の異なる非類似の物品であり、本件登録意匠の意匠に係る物品とイ号意匠Bは非類似の物品である。
[3]形態の類否について
(1)本件登録意匠とイ号意匠Aの類否判断
本件登録意匠はその外形をハート型とし、イ号意匠Aはリンゴ型の一部を切り欠いた形状からなるが、イ号意匠Aは、意匠登録第1341210号(別紙第4参照)として、本件登録意匠とは非類似として登録を受けている。
(2)イ号意匠Bと本件登録意匠との比較
イ号意匠Bと本件登録意匠を比較すると、接着剤チューブ収容部がイ号意匠Bは隆起部で構成されるのに対し、本件登録意匠は台形の溝で構成されており、構成が全く異なっている。さらに、イ号意匠Bは蓋部と土台部がヒンジ状に連結されていて、構成が全く異なっている。加えて本件登録意匠の基本的態様に不可欠なまつげ収容部をイ号意匠Bは備えておらず、その外観もハート型と3つの弧線を有する四角形(隆起部はリンゴ型)で全く異なる。特に隆起部の上部先端が果梗と葉の形状に隆起しているとともに、隆起部の下部先端に萼窪を模した内側のくぼみが形成されることによって、リンゴ型が強調されており、隆起部からリンゴの形状を認識するとみるのが自然であり、請求人のいうようなハート型とは認識されない。
(3)イ号意匠Aをイ号意匠Bに内蔵させた状態での本件登録意匠との比較
イ号意匠Aにイ号意匠Bを内蔵させた状態は、「模造まつげケース内蔵パッケージ」なる物品で、用途・機能の異なる非類似の物品である。さらに、イ号意匠と本件登録意匠は部材の構成点数が異なっており、基本的構成態様が大きく異なっているため、類似するとは言い難い。また、イ号意匠は、外形が3つの弧線を有する略四角形からなっており、本件登録意匠のハート型の外形とは何の類似点もない。

第3 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、2005年8月18日に出願(優先日 2005年5月26日 韓国(KR))され、2005年12月16日に設定登録された、意匠に係る物品が「模造まつげケース」の意匠であり、その形態は願書の記載及び願書添付の図面の記載のとおりのものであって、以下のとおりである(別紙第1参照)。
[1]本件登録意匠の基本的構成態様
(A)透明なケースと透明なカバーとから成る透明な包装用容器であり、ケースもカバーも平面視は左右対称のハート型の形状をしており、カバーを被せた状態では側面が均一高さを有し、容器全体で扁平な略立体ハート型形状を成すものである。
(B)ケースの上面は、平面視ハート型の右上円弧状部から下部先端部の左方に至る段差を設け、右側を隆起平坦面に、左側を略切り欠きハート型状の一段低い平坦面に形成し(以後、この面を「切り欠きハート型面」という。)、該部に模造まつげを固定して収容するために平面視凹弧状の弧状突起を二個設け、隆起部に接着剤を固定して収容するために凹陥溝を設けたものである。
[2]本件登録意匠の具体的構成態様
(C)切り欠きハート型面につき、段差線の上下両端部とも丸く形成し、切り欠きハート型面の左上円弧状の端縁部に、突壁を形成している。
(D)模造まつげ用弧状突起は、1個を切り欠きハート型面の中央上部に左下降する斜状に、1個を左側半ハート型部中央部に右下降する斜状に配し、接着剤収容用溝は、外形を略倒立細長台形とし、隆起部の下端寄りに配したものである。

2.イ号意匠
イ号意匠は、請求の全趣旨によれば、請求人が「イ号意匠」として提出した見本のうち、商品である二個の模造まつげ及び接着剤と、包装用の台紙を除いた、包装用の透明な容器部分の意匠である。それは、請求人が甲第7号証として提出した、「本件登録意匠とイ号意匠との比較写真」のうちの、上段(a)の写真中の、右側に現された透明な包装用容器の意匠と同一のものと認められる(別紙第2参照)。
なお、請求人は、「イ号意匠」として提出された見本と同一のものを、当該「本件登録意匠とイ号意匠との比較写真」の下段(b)の写真中の右側に現わしている(別紙第2参照)。また、請求人は、甲第4号証として提出した「イ号意匠から構成される商品」の写真中にも、この見本と同一のものを現している(別紙第3参照)。

3.対比
両意匠は、意匠に係る物品は、本件登録意匠が「模造まつげケース」であり、イ号意匠が「模造まつげケース」を外部ケースで覆っているものであるが、共に「模造まつげ」と「接着剤」を固定して収容し販売に供することを目的としたもので、包装用容器というべきものであるから共通し、形態においては、主として以下の共通点と差異点がある。
[1]両意匠の共通点
(A)ケースとカバーにより内部に空間を形成した透明な包装用容器であって、容器全体を扁平立体状とした点。
(B)模造まつげの収容は、略切り欠きハート型面に、平面視凹弧状をなす弧状突起を、上下に2個設けたものである点。
(C)接着剤の収容は、容器の右方の略1/4ハート型状を成す部分に設けた点。
[2]両意匠の差異点
(a)構成部材数につき、本件登録意匠は、ケースとカバーの2点から成るのに対し、イ号意匠は、内部ケースと内部カバーによる内部容器と、それを覆う、蓋部と土台部がヒンジ状に連結された外部ケースの、3点から成る点。
(b)各構成部材及び容器全体の形状について、本件登録意匠は、ケースもカバーも平面視は左右対称のハート型の形状をしており、ケースは側板が下側に設けられた略台状であって、カバーを被せた状態では側面が均一高さで、容器全体で扁平な略立体ハート型形状を成すのに対し、イ号意匠は、内部容器は、内部ケースも内部カバーも平面視は切り欠きハート型の形状をしており、内部ケースは側板に囲まれた略トレー状であって、内部カバーを被せた状態では、側面が均一高さで、内部容器全体で扁平な略立体切り欠きハート型形状を成し、外部ケースは、蓋部を土台部に被せて容器とした状態では、平面視において、左肩に三つの弧線を有し、左下隅部を大きな弧線に、右上下隅部をごく小さな弧線とした、略厚板四角形状を成すもので、蓋部の下方寄り中央に、外形が略立体リンゴ形状をなす略平坦状隆起部を形成しており、その上面にリンゴ形状の右上円弧状部から下端の凹み部に至る段差を設け、左隆起部を高くし、内部容器を格納している点。
なお、被請求人は、答弁書において、当該内部容器を「イ号意匠A」とし、登録第1341210号として登録されている旨主張するが、側板部において差異があり、両者は同一の意匠ではない。そのカバー部について、登録第1341210号意匠には、周囲を取り巻く側板があるが、イ号意匠には、ハート切り欠き側(右方の直線部)に側板を設けていない。また、ケース部の側板についても、一重であるか否かで相違する。
(c)模造まつげ収容部について、収容部が形成された部位につき、本件登録意匠は、略台状のケース上面の、一段低くなった切り欠きハート型面に設けられているのに対して、イ号意匠は、略トレー状の切り欠きハート型の内部ケースの、底面部に設けられ、突起の上下の配置向きについても、本件登録意匠は傾斜方向を違えた斜状に配したのに対し、イ号意匠は略平行状に配した点。
(d)接着剤収容部の形成部位と形状について、本件登録意匠は、平面視ハート型ケースの右方の隆起部に、略倒立細長台形状の凹陥溝として形成したのに対し、イ号意匠は、略四角形状外部ケースの蓋部に形成された略立体リンゴ形状隆起部の右方側の低い隆起部に、さらに細長凸字状の隆起部を設け、その空間内に収容するように形成した点。

4.類否判断
意匠の類否を判断するにあたっては、意匠を全体として観察することを要するが、この場合、意匠に係る物品の性質、用途、使用態様、更には公知意匠にはない新規な創作部分の存否を参酌して、意匠に係る物品の取引者・需用者の注意を最も惹きやすい部分を意匠の要部として把握し、両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心にして観察して、両意匠が全体として美感を共通にするか否かを判断すべきものといえる。
この点につき請求人は、本件登録意匠とイ号意匠との類否判断においては、甲第7号証(b)(別紙第2参照)に示す模造まつげと接着剤とを収容した状態、即ち、商品「模造まつげセット」を構成した状態における共通点も考慮すべきと主張するが、意匠法の保護対象は、意匠に係る物品の、形状、模様、色彩、及びそれらの結合、すなわち、形態それ自体である以上、制度の主旨から外れてしまうため、販売態様まで考慮する必要はなく、請求人の主張は採用できない。
[1]本件登録意匠の出願前の公知意匠
(1)本件登録意匠の基本的構成態様について
(A)の、透明で略立体ハート型形状を成す態様は、包装用容器の分野において例を挙げるまでもなくありふれたものである。(B)の、ケース上面の切り欠きハート型面に、模造まつげ収容用に平面視凹弧状の弧状突起を設け、隆起部に、接着剤収容用として凹陥溝を設けた態様は、公知意匠にはない、新規な態様である。
(2)本件登録意匠の具体的構成態様について
本件登録意匠の具体的構成態様(C)ないし(E)は、公知意匠にはこれまで見られないものである。
[2]本件登録意匠の要部
以上から、本件登録意匠において、公知意匠にはない新規な態様は、ケース上面の切り欠きハート型面に、模造まつげ収容用の平面視凹弧状の弧状突起を設け、隆起部に、接着剤収容用の凹陥溝を設けた態様といえる。
そして、この態様は、模造まつげと同時使用される接着剤を収容して商品として展示し、流通時や販売時に、外部から視認できるようにしたと共に、購入者が繰り返し使用する際の保管用でもあるという、本件登録意匠の使用目的である収納展示保管の態様を具体的に表し、また簡単な観察で把握できることから、製造業者、取引者、購入者等の、需用者の注意を惹く部分であり、要部を成すと共に、本件登録意匠の特徴を成すと認められる。
[3]両意匠の類否判断
そこで、以上の共通点と差異点を総合し、両意匠の類否を全体として検討する。
この種模造まつげ用の包装用容器の意匠の需要者は、第一義的には模造まつげの製造販売者であるから、類否判断にあたっての看者は第一義的には製造販売者といえるが、当該物品は、流通課程における取引者を経て、一般需用者に販売され、一般需用者が購入した後には、繰り返し使用するための保管用容器としても利用されるものであるから、看者としては、製造販売者のみならず、流通業者や一般需用者も対象となるもので、そうすると、商品包装工程における経済性、商品陳列態様、使用の利便性などの様々な観点から、多様な看者が、形態全体とともに各部の具体的態様にも注意を向けて意匠を認識し、ケースやカバーの部品数にも注意を払い、意匠を把握するといえる。
両意匠が小型の包装用容器であるために、看者は、簡単に全体を視認できるが、まず視認するのは、その包装用容器としての外形状における明らかな相違であって、看者が受ける第一印象は、大きく相違するといわざるを得ない。しかしながら、外形状があまりにも相違し、そこに大小関係があるため、両意匠を正確に把握しようとする看者は、面積的に大である縦長長方形状の容器の中に、小たるハート型状の容器が格納されているかもしれないとの観点から、意匠を注視するものである。そうすると、縦長長方形状の容器表面の隆起部が表す形状は、ハート型状ではなく略リンゴ形であることを看取するが、さらに注視すると、模造まつげ収容部は、平面視凹弧状の弧状突起として切り欠きハート型面に設けられていることを見いだし、この点において共通の印象を受けるものである。しかしながら看者は同時に、弧状突起の配置向きがやや異なり、接着剤収容の態様は、明らかに異なることも、看取する。
さらに、特に製造業者や一般需用者にあっては、容器全体を外から視認するだけでなく、組み立てたり分解したりするのであるから、製造や使い勝手の観点から、構成部材に大きな関心を持つものであり、そうすると、構成部材数やその具体的形状は、大きく相違するため、これらの看者は、もはや両意匠に共通の印象をいだくことはないといえる。
そうすると、両意匠は、本件登録意匠の要部の一部の、模造まつげ収容部に係る構成に共通点があるものの、それが設けられた部材の形状が異なるなど、基本的な構成態様において差異が明らかであり、両意匠は、要部において構成態様を共通にするとはいえないものである。したがって、両意匠は、形態の骨格が相違し、意匠全体の基調も異なるものである。
これらを総合すると、模造まつげ収容部に対し、看者が共通の印象を受けるとしても、いわば観念的なものであるのに対し、実際の形態からは、看者は、両意匠が大きく異なるという印象を受ける。したがって、両意匠全体が看者に起こさせる美感も、異なるといわざるを得ない。
結局、差異点は、各構成部材の形状から組み合わせたときの全体形状までのすべてにわたり、さらに、模造まつげや接着剤の収容といった主要な部分においても顕著な差異があって、類否判断に大きな影響を及ぼしているのに対し、共通点は、本件登録意匠の要部のごく一部の構成に係るだけで、他の共通点が相まって奏する効果を検討しても、格別な効果はなく、差異点が共通点を圧倒しており、両意匠は、意匠全体として異なる美感を起こさせている。
以上のように、両意匠は全体として美感が相違し、類似するとすることはできない。

5.むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2009-06-24 
出願番号 意願2005-23882(D2005-23882) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (F4)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 石坂 陽子 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 橘 崇生
樋田 敏恵
登録日 2005-12-16 
登録番号 意匠登録第1262161号(D1262161) 
代理人 中村 希望 
代理人 羽鳥 亘 
代理人 八嶋 敬市 
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