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審決分類 審判 補正却下不服   取り消す J7
管理番号 1201882 
審判番号 補正2008-500005
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 補正却下不服の審決 
審判請求日 2008-05-22 
確定日 2008-12-02 
意匠に係る物品 エックス線検出器 
事件の表示 意願2007- 23633「エックス線検出器」において、平成20年3月26日付けでした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原決定を取り消す。
理由 1.本願意匠
本願意匠は、2007年(平成19年)8月31日に意匠登録出願されたものであって、願書及び願書添付図面の記載によれば、意匠に係る物品を「エックス線検出器」とし、その形状を同図面並びに意匠の説明の欄及び意匠に係る物品の説明の欄に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

2.本願出願後の手続の経緯
(1)拒絶理由通知:平成20年2月18日付け
本願の意匠は、断面図等が表されていないので、願書及び添付図面の記載によっては、上面と下面における凹凸等が不明確であり、該意匠を把握することができず、具体的な意匠を表したものと認められないとして、意匠法第3条第1項柱書を適用。
(2)手続補正:平成20年3月26日
平面図を、A-A断面指示線を記載した平面図に変更し、断面図を追加。
(3)補正の却下の決定:平成20年4月14日付け(発送番号019254)
平成20年3月26日付け手続補正で追加された断面図について、本願意匠を上下面開口の筒状枠に補正したものと認定し、その上で、出願当初の願書添付図面の要旨を変更するものと認められるとして却下した決定。

3.断面図に表された意匠
上記2.(2)の手続補正書添付図面に記載された意匠の形状は、別紙第2に示すとおりのものである。
すなわち、平面図については、平面中央横断面図の作成のため、断面指示線を図の外に記載した。また、断面図に表された意匠は、前記1.で認定した本願意匠の側面の態様を表すと同時に、特に、平面部については、正円形状の開口部とし、開口部の縁を細幅のテーパー状に形成し、また、底面部については、四隅の丸い略正方形状の部分を開口部とし、さらに、四辺を外弧状に軽く湾曲させた四隅の丸い略正方形状の形状線部をごく僅かに本体内側に凹ませて縁として形成し、その上で、同形の極めて厚みの薄い板体を嵌め込んだ態様と認められる。

4.原審の補正の却下の決定の理由
原審が平成20年4月14日付けでした平成20年3月26日付け手続補正書に対する却下の決定(発送番号019254)の理由は以下のとおりである。
同手続補正書により、断面図を追加し、本願意匠を上下面開口の筒状枠に補正したが、補正後の形状は、この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて出願当初の願書の記載及び添付図面から総合的に判断しても導き出すことができず、また、当該補正部分は、本願意匠の要旨の認定に大きく影響を及ぼす部分であることから、上記手続補正書による補正は、出願当初の願書に添付した図面の要旨を変更するものと認められる。よって、意匠法第17条の2第1項の規定により、本手続補正を却下すべきものと決定する。
なお、補正後の意匠は、単に上下面開口の筒状枠であり、エックス線検出器としての使用目的を果たすことができる機能、構造を有するものとは認められない。

5.請求人の主張の骨子
上記補正の却下の決定の取り消しを求める本件審判請求人の主張の骨子は、以下のとおりである(以下、(1)ないし(3)の項番を付して、項分け記載する。)。
(1)願書添付図面の使用状態を示す参考図に示すように本願意匠の平面部はCアームの連結器に配設される。そのため、平面部中央は開口している。その点は、当業者と一般観者が推認できる。
(2)同参考図に示すように、Cアームに取り付けたエックス線検出器の検出面、すなわち本願意匠の底面は、患者に面する側である。製品の体裁、検出器内部の精密機器・配線保護のため、そこには底板が設けられるのであって、開口部分はない。その点は、当業者と一般観者の常識である。
(3)手続補正後の本願意匠が平面部と底面部を開口させた筒状枠であって、エックス線検出器としての使用目的を果たすことができる機能、構造を有さないとした原審認定は誤りである。

6.当審の判断
そこで、本件補正が出願当初の願書の記載又は願書に添付された図面の要旨を変更するものであるか否かについて検討し、総合的に判断する。
(1)出願当初の平面図には、三重の同心円が記載されている。そのうち外側から一番目の円と二番目の円は、平面に設けられた突出部における法面の縁の形状線を示すものであることは他の正面図等から明らかである。外側から二番目の円と三番目の円との間の態様、さらに、三番目の円の内側の態様については、添付された図面の限りでは判然としないものである。しかしながら、出願当初の願書の意匠に係る物品の説明によれば、本願意匠に係る物品が参考図に示す連結器を介するものと理解できるほか、該参考図を参酌すると、本物品が上記の二番目の円に合わせて該連結器に接続されるものであることが理解できる。以上を考慮すれば、本物品と連結器との間に、本物品を制御するための何らかの装置が介在することは自明であり、少なくとも三番目の円の内側は開口部であると推量される。また、二番目の円と三番目の円との間の態様については、開口部周縁に設けられる一般的な縁面と推認できる。
(2)出願当初の底面図には、四辺を外弧状に軽く湾曲させた四隅の丸い略正方形状の二つの形状線が、それぞれの対角線が同じになるよう、外側と内側に記載されている。外側から一番目の形状線と二番目の形状線の間の態様、そして、二番目の形状線の内側の態様については、添付された図面の限りでは判然としないものである。そこで、本願意匠に係る物品が属する分野における通常の知識について、願書の記載及び参考図をもとに、以下に考察する。
そもそも、本願物品はエックス線透視撮影装置のうちでフラットパネル検出器方式を採用した装置に取り付ける部品としての検出器である(参考文献、2007年(平成19年)2月22日に株式会社コロナ社が発行した国内図書「画像診断装置学入門」第75頁ないし第78頁の説明及び図)。本検出器は、エックス線源と対で略C字状のアームの両端にそれぞれ設けられてエックス線透視撮影装置に用いられる。本装置では、該アームを回転移動又は角度可変移動させ、被験者位置を固定した状態で各種方向から被験者を撮影する。従って、本検出器の内部には、原理的に、方形で薄い平板状の形状しか構成し得ないFPD(フラットパネルディテクタ)が、被験者を透過したエックス線が垂直入射できるように設置されることになる。
その際、まず、該FPDが精密電子部品であるが故に、該FPDを格納した本願物品の筐体の被験者面側に該FPD保護のための底板を嵌め込むことは製品開発上の必然であり、次に、放射線を損失なく透過させるために、該FPDの形状に準じて該底板も略方形状とし、該底板を凹凸のない極薄の平板とし、さらに、該底板を筐体の底面に平行に嵌め込む(すなわち、該底板を本物品内部の該FPDに平行に設置する)ことは技術上自明である。
以上の知識を踏まえた上で、底面部の形状の認定に戻ると、例えば、外側から二番目の形状線の内側を放射線透過のための筐体開口部とし、外側から一番目の形状線と二番目の形状線の間の略ロ字状の部分を筐体底面部から筐体内部に若干凹ませたフランジ状の部分とし、さらに、外側から一番目の形状線の内側全面に上記の底板を嵌め込むことは、出願当初の願書及び添付図面に基づいて推量できるものである。
なお、手続補正書における断面図の描き方については、切断面には平行斜線を引くものと定める意匠法施行規則に照らして、原審での誤解を招かない程度に適切であったといい切ることはできない。さらに、底板が透光性を有する素材であるならばともかくも、不透明な材質で構成されるものであるならば、出願当初の底面図における外側から二番目の形状線は現れないはずであるが、これについては要旨認定に影響を与えない程度の作図上の明らかな誤記と認められる。
(3)以上の各検討結果を総合すれば、本件の手続補正は、出願当初の願書に添付した図面の要旨を変更するものではないというべきである。

7.むすび
したがって、本件手続補正は、意匠法第17条の2第1項の規定に該当しないから、原審の補正の却下の決定は、取り消しを免れない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2008-11-18 
出願番号 意願2007-23633(D2007-23633) 
審決分類 D 1 7・ 7- W (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川崎 芳孝本多 誠一 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 岩井 芳紀
宮田 莊平
登録日 2009-07-24 
登録番号 意匠登録第1367965号(D1367965)  
代理人 江口 裕之 
代理人 喜多 俊文 

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