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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 M3
管理番号 1205095 
審判番号 不服2009-8544
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-20 
確定日 2009-09-30 
意匠に係る物品 さく用チェーンの連結用リンク 
事件の表示 意願2008- 10355「さく用チェーンの連結用リンク」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2008年(平成20年) 4月22日に意匠登録出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書および願書添付図面の記載によれば,意匠に係る物品は,「さく用チェーンの連結用リンク」であり,その「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)」は,願書の記載および願書に添付した図面に記載されたとおりのものである。(別紙第1参照)
すなわち,本願意匠は,丸棒を陸上競技のトラック形に丸めた「環体」を,環体の連結部である両曲成部の中央部分で正面視水平状に2分割し,下方の半環体の両先端部を側面視凸状に,上方の半環体の両先端部を側面視凹状にそれぞれ切り欠いて,それら対向する先端部同士を係合させるように,ピンを通す貫通孔を設けた「連結係合部」を形成したものであって,正面視右側の連結係合部にピンを埋め込んだものである。


第2 原審の拒絶理由
本願意匠に対して,原審が行った拒絶査定に係る拒絶理由の要旨は,以下のとおりである。(拒絶理由通知書において添付された「参考意匠1」と「参考意匠2」とは,各掲載資料が相互に入れ違っているものと認める。)
本願意匠は,その出願前に公然知られたものと認められる「係合連結環」の形状(下記参考意匠1参照)を,特段特徴のない「チェーン用リンク」の形状(下記参考意匠2参照)に変形したにすぎないものであるから,容易に創作できたものと認められる。したがって,本願意匠は,その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた形状の結合に基づいて容易に創作をすることができたものと認められ,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができない。

(参考意匠1)独立行政法人工業所有権情報・研修館が2007年(平成19年) 3月19日に受け入れたカタログ『チェーン・金具・マリン 総合カタログ CATALOG 2007』第66頁所載,「係合連結環」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC19011483号)(別紙第2-1参照)
(参考意匠2)特許庁総合情報館が2001年(平成13年) 1月12日に受け入れたカタログ『Stainless Steel Marine Hardware』の 第4頁所載,「チェーン用リンク」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HD13006643号)(別紙第2-2参照)


第3 請求人の主張
原審の拒絶査定を不服とする本件審判請求人の主張の骨子は,以下のとおりである。
(ア)さく用チェーンの連結用リンクに係る本願意匠の創作のポイントは,本物品をチェーン等に連結した状態での美観を損ねないように,連結状態において埋め込んだピン等の係合部が相手のチェーン等によって隠れるように,連結係合部を両曲成部の中央に形成した点にある。
(イ)これに対して,参考意匠1の係合連結環は,円形環体であるから連結時の方向性がなく,その連結位置が特定されるように創作されたものではない。
また,参考意匠2のチェーン用リンクは,一般的なチェーンであって,連結状態で2つのリンクが重なり合う箇所は必ず曲成部である。
(ウ)そうすると,単に,参考意匠1を参考意匠2に変形させたとしても本願意匠とはならず,本願意匠は創作容易になしえたものではないから,意匠登録を受けることができるものである。

なお,上記(イ)の主張に対して,原審の拒絶査定時に,係合箇所をリンクの曲成部に設ける手法をとった先行事例として参考意匠(公知資料番号第HC19011431号)が例示された(別紙第3参照)が,請求人は,この参考意匠からも,当該手法を認定することはできないと主張した。


第4 本願意匠の創作の容易性について
そこで,本願意匠の創作の容易性について検討する。
1. 本願意匠の形状の要旨は,前記第1の本願意匠の欄で認定したとおりのものである。
2. 参考意匠1の係合連結環の形状の要旨は,丸棒を円形に丸めた「円環体」において,円環体の一箇所を開閉できるように,円環体を2分割し,一方の半円環体の両先端部を側面視凸状に,他方の半円環体の両先端部を側面視凹状にそれぞれ切り欠いて形成し,それら対向する先端部同士を係合させ,係合部に設けた貫通孔の一方にピンを埋め込んで回動自由に固定し,他方をネジにより固定・開放するようにした「係合部」に形成したものであり,この形状は本願出願前に広く知られたものであると認められる。
3. 参考意匠2のチェーン用リンクの形状の要旨は,丸棒を陸上競技のトラック形に丸めた環体とするものであり,この形状も本願出願前に広く知られたものであると認められる。
4. そうすると,参考意匠1の両係合部の位置を両連結部の位置に合わせると仮定するなら,その全体の円環体形状を参考意匠2の陸上競技のトラック形環体形状に変形すれば,本願意匠にほぼ近い形状(細部を除いて)になると一応いい得る。
5. しかしながら,参考意匠1は,円環体であってその係合部の位置を連結時にある箇所に特定させる創作意図を持たないものであるから,参考意匠1を参考意匠2に変形させたとしても,そのことが直ちに,連結係合部を両曲成部の中央に特定して設ける創作に当たるということにはならない。
そして,当審の調査によれば,この種物品に係る従前の意匠において,「環体の連結部に特定して係合部を形成した形状」のものを発見しない。
なお,原審が拒絶査定時に補充証拠として追加例示した参考意匠(公知資料番号第HC19011431号)は,本願意匠とは創作意図がかなり異なるものと認められるから,その証拠に当たるとはいえない。
6. 以上の検討によれば,本願意匠に対して,原審が述べたように,参考意匠1を特段特徴のない参考意匠2に変形したにすぎないものである,ということはできないから,本願意匠を,当業者が容易に創作をすることができたものということはできない。


5.むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しない。

また,当審においてさらに審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2009-09-18 
出願番号 意願2008-10355(D2008-10355) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (M3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 江塚 尚弘 
特許庁審判長 瓜本 忠夫
特許庁審判官 淺野 雄一郎
樋田 敏恵
登録日 2009-10-23 
登録番号 意匠登録第1374375号(D1374375) 
代理人 中尾 真一 

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