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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M3
管理番号 1205105 
審判番号 不服2008-33020
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-19 
確定日 2009-10-03 
意匠に係る物品 建具用取手 
事件の表示 意願2007- 35755「建具用取手」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2007年(平成19年)12月 4日に意匠登録出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書および願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品は,「建具用取手」であり,その「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)」は,願書の記載および願書に添付した図面に記載されたとおりのものである。(別紙第1参照)


第2 引用意匠
本願意匠に対して,原審において拒絶の理由として引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前の2007年9月18日に欧州共同体商標意匠庁が発行した,欧州共同体意匠公報所載,ハンドル(登録番号000703855-0001)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH19207092号)であって,その形態は,同公報の写真版に現されたとおりのものである。(別紙第2参照)


第3 両意匠の対比
1.意匠に係る物品
そこで両意匠を対比すると,意匠に係る物品については,共通するものと認められる。
なお,請求人は,本願意匠の意匠に係る物品は,建具用取手であり,引用意匠の意匠に係る物品は,少なくとも建具用の取手ではないと推測できるから,両者は物品が同一または類似であるとはいい難い旨主張するが,両者は,用途において共通する部分を有するものであり,上記のとおり物品が共通するとするのが相当である。

2.形態の主な共通点と差異点
両意匠(引用意匠は,本願意匠の配置に対応させながら対比する。)は,薄肉円板体の縁側をその中心方向に対して直角に浅く切り取ったものを,側面視,手を通すためにその内側中央部を外径よりかなり小径の略円弧状に切り欠いて握り部を形成し,握り部の上下側を取付用の脚部とし,側面視弧状の外周面を湾曲円柱面状の丸面に形成した構成態様が主に共通する。

他方,両意匠間には,差異点として,具体的構成態様について,
(ア)引用意匠は,正面視上端から下端まで幅が一定であるのに対して,本願意匠は,正面視上下両脚部の部分の幅が,握り部の幅より若干広めになっており,これをさらに詳細に見ると,引用意匠は,左右両側面を対向する 平行面に形成し,脚部の取付面を背面視略矩形状としているのに対して,本願意匠は,左右両側面を平面視握り部から脚部にかけて次第に拡がる傾斜面に形成し,また,脚部の取付面を背面視それぞれ内側方向に向かって次第に拡げている点,
(イ)本願意匠は,扉等に設置された本建具用取手を手前に引くと,側面視90°回転させた略「ハ」字状の握り部と脚部の境界線で,握り部のみが手前に若干スライドして解錠する機構を有しているのに対して,引用意匠は,そのような機構を有していない点,
(ウ)本願意匠は,握り部の形状が,その断面が平面視半円状である丸面をなす外周面と緩やかな丸面をなす内周面が接合してなるものであるのに対して,引用意匠は,それが,平面視やや緩やかな丸面をなす外周面と略平坦面をなす内周面を,対向する平行面である左右両側面でつないでなるものである点,
(エ)本願意匠は,両脚部の外周面に切り欠き部を形成し,そこに正面視二重円状の中に十字の孔部を有する施解錠用シリンダーを形成しているのに対して,引用意匠は,同部に切り欠き部等は形成していない点,
に主な差異がある。


第4 両意匠の類否判断
以上の共通点および差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断すると,両意匠の前記共通点に係る構成態様は,両意匠全体の骨格を成すと共に,そのまとまりが一定の共通する基調を形成するものではあるが,それは従前のこの種物品分野の意匠に照らすところ,他にも普通に見られる類型的な態様であって,両意匠のみの特徴を形成するものとはいえず,よって,この共通点が類否判断に及ぼす影響力を大きいということはできない。

これに対して,前記各差異点については,差異点(ア)の握り部と脚部の具体的構成態様の差,および,差異点(イ)の施・解錠機構の有無差および境界線の有無差については,これらは,基本的構成を共通にする中での差異とはいえども,この種物品分野の意匠では,見る者に対して別異の感を与えるに十分な程度の差異であり,いずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。差異点(ウ)の握り部の断面形状の差,とりわけ,内周面の態様差についても,差異点(ア)と相まって,両意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼすというべきである。また,差異点(エ)の切り欠き部等の有無差については,切り欠き部等自体は付加的なものではあるが,視覚的効果において一定の影響力をもつというべきし,施解錠用シリンダーの有無は,付加的な機能の差であるが,上下対称形状に二重円状の形状が形成されている態様は,比較的他にあまり例を見ない態様でもあり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さくないものである。

そうすると,これらの差異点を総合すれば,もはや差異点が前記の影響力の大きくない共通点を圧しているというべきである。

したがって,両意匠は,意匠に係る物品は,共通するが,形態においては,差異点が相まって生じる視覚的効果は,共通点が生じさせている共通感を凌駕しており,意匠全体として観察した場合,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。


第5 むすび
以上のとおりであって,原審の引用意匠をもって,本願意匠は意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願は,同条同項柱書の規定により拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,さらに審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。


別掲
審決日 2009-09-07 
出願番号 意願2007-35755(D2007-35755) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (M3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 成田 陽一尾曲 幸輔 
特許庁審判長 瓜本 忠夫
特許庁審判官 杉山 太一
淺野 雄一郎
登録日 2009-10-23 
登録番号 意匠登録第1374197号(D1374197) 
代理人 宮口 聡 

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