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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4 |
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管理番号 | 1206607 |
審判番号 | 不服2009-8423 |
総通号数 | 120 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2009-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-04-17 |
確定日 | 2009-10-14 |
意匠に係る物品 | 包装用容器 |
事件の表示 | 意願2007- 20801「包装用容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,平成19年7月31日の意匠登録出願であり,その意匠は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「包装用容器」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとするものである(別紙第1参照)。 2.引用意匠 これに対して,原査定において,拒絶の理由として引用した意匠は,特許庁特許情報課が2003年6月12日に受け入れた2003年3月15日発行の大韓民国意匠商標公報(CD-ROM番号:2003-16)に記載された意匠登録第30-0319952号の「包装用容器」(特許庁意匠課公知資料番号第HH15527595号)の意匠であって,その形態は,当該意匠公報に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。 3.請求人の主張 請求人は,審判を請求し,おおむね次のとおりの主張をした。 (イ)容器全体の構成 両意匠とも,首部,肩部,胴部からなるほぼ円筒形状の構成である点は,共通しているものの,液体を入れるビン容器の機能上,通常出てくる構成であって,看者による美観の相違に影響しないことは自明であります。 本願意匠は,首部,肩部,胴部の一部からなるとっくり様形状の本体上部と,間が窄まった鼓状の本体下部の二つに大きく分かれるのに対し,引用意匠は,首部,肩部からなる本体上部と,間の窄まった鼓状の本体下部の中間に,間の窄まった本体中部が挟まって三分割され,基本的に異なった構成です。 また,間の窄まった本体下部,即ち審査官殿の言われる下端部よりの胴部の外周部は,前述の通り看者の目の惹き易い部分でありますが,本願意匠においては,4本の平行した若干右傾の太目リブと,リブに囲まれた四つの細長の略平行四辺形状からなる凹部群が形成され,どっしりとした安定感を醸しているのに対し,引用意匠は,5本の平行した右傾の目立つ細目のリブとそれに囲まれた5つの略平行四辺形状からなる凹部群であり,動きのある軽快な美感を強く看者に与えます。 これらの容器全体の構成の相違,目を惹き易い下端部より胴部の凹部群の特徴が,本願意匠には全体として安定感のあるどっしりとした印象を,引用意匠には変化に富んだダイナミックな印象を看者に与えており,両意匠の美感は,対照的であると言えます。 (ロ)本体上部 本願意匠の本体上部は,肩部がなだらかなとっくり様形状をしており,その底から3分の1のところに底の浅い横溝が形成され,意匠に一つのアクセントを与えています。そして本体上部と本体下部の境を成すとっくり底部は,前述の横溝に比してやや深い横溝になっています。本体上部は,横溝のアクセントはあるものの一体感を保ち,全体としてどっしりした安定感を看者に与えます。 一方,引用意匠は,前記の通り,対応部分が上部と中部に二分され,上部は円筒に半球を結合させた形状で,蓋栓部下のリング状突起のやや下から傾斜のきつい肩部が始まり,周囲を巡る浅い細溝により中部に接続し,中部は,正面から見て上下部から中央に向けて縮径する鼓形状で,上部の半球形状と対照的であり,上部中部を全体としてみると凹凸に富んだダイナッミクな印象を看者に与え,安定感ある本願意匠と全く異なった美感を形成しています。 (ハ)本体下部 本願意匠は,細溝を境に,下部全体の高さの8割を占める鼓状部と,残り2割を占める厚みの目立つ底部に分かれ,鼓状部は,最大の直径を持つ同径のリング状の上下端部と,正面視左右両側がなだらかな弧を描いて上下から縮径する部分からなり,縮径部の上端から下端にかけて,正面視やや右傾した同形の太いリブが4本,同間隔に縮径面に沿って形成されています。リブが太くかつ右傾の度合いがそれ程大きくないため,リブに囲まれた細長の平行四辺形状も傾斜が小さく,凹部群の醸す捩れ感が少ないことから,全体の安定感に影響を与えるに至りません。 これに対して引用意匠は,鼓状部と底部からなり,鼓状部に右傾リブが形成されている点は共通するものの,右傾の程度が大きくかつリブが細幅でその本数も5本と本願意匠より多く,リブに囲まれた5つの細長平行四辺形状の大きな傾斜と相俟って,全体として凹部群の醸す捩れ感の影響は大きく,容器の持つダイナミックな印象を強める働きをしています。 (ニ)まとめ 以上の通り,本願意匠は,基本構成が略二部構成をなし,透明で凹凸が目立たず,本体下部表面の凹部群の醸す安定感と相俟って,全体として落ち着いた安定的な美感を与えるのに対し,引用意匠は,三部構成で,白色不透明であり,容器全体が凹凸に富み,かつ,凹部群の醸す捩れ感により,軽快でダイナミックな美感を呈しており,両意匠は,相違点が共通点を凌駕する非類似の意匠であって,意匠法第3条第1項第3号に該当しないことは明白であると思料します。 4.当審の判断 そこで,本願意匠と引用意匠を比較すると,まず,両意匠は,意匠に係る物品が共通する。 次に,形態について,共通点と差異点について総合的に検討すると,請求人が主張するように,共通点については,この意匠の属する分野においては,既に公知かつありふれたものであって,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるほどの格別な特徴とは言えない。 一方,差異点については,特に,首,肩,胴の一部からなる本体上部につき,本願意匠は,とっくり様の形状なのに対し,引用意匠は,凹状周面を設け,ワイングラスを伏せたような形状である点,本体下部鼓状部につき,本願意匠は,太い大きなリブ4本で構成し,リブに囲まれた略平行四辺形状の凹パネル部は,大きな段差でへこませると共に凹パネル底面を凸曲面としているのに対し,引用意匠は,ごくありきたりな太さのリブ6本で構成し,リブに囲まれた略平行四辺形状凹パネル部も,ありきたりな段差でへこんでいる点,が,引用意匠とは異なる本願意匠の独特な特徴をよく表しているものであることから,僅かな相違とは言えないものであり,これらの類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。 以上のとおりであって,両意匠は,意匠に係る物品は共通するが,その形態については,両意匠の共通点及び差異点の視覚的効果を総合的に判断すると,両意匠は類似しないものと言わざるを得ない。 5.結び したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないので,原査定の拒絶理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願の登録を拒絶すべき理由を発見することができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2009-10-01 |
出願番号 | 意願2007-20801(D2007-20801) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(F4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 樫本 光司 |
特許庁審判長 |
関口 剛 |
特許庁審判官 |
樋田 敏恵 橘 崇生 |
登録日 | 2009-11-20 |
登録番号 | 意匠登録第1376379号(D1376379) |
代理人 | 棚井 澄雄 |
代理人 | 鈴木 三義 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 高柴 忠夫 |