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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C3
管理番号 1208152 
審判番号 不服2009-7719
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-09 
確定日 2009-11-17 
意匠に係る物品 電気洗濯機 
事件の表示 意願2008- 19096「電気洗濯機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,平成20年7月25日の意匠登録出願であり,その意匠は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「電気洗濯機」とし,形態を願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとするものである(別紙第1参照)。

2.引用意匠
これに対して,原査定において,拒絶の理由として引用した意匠は,特許庁発行の意匠公報記載,意匠登録第1305353号(意匠に係る物品,電気洗濯乾燥機)の意匠であって,その形態は,当該公報に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。

3.請求人の主張
請求人は,上記拒絶査定に対して審判を請求し,概ね次のとおりの主張をした。
本願意匠と引例意匠とは,洗濯槽を内蔵する箱型の本体の上面に,洗濯物を投入するための開口部を有するトップカバー部が形成され,トップカバー部に操作部や二つ折れとなる開閉蓋が配置され,開閉蓋の取っ手部やフラップ部を矩形枠で囲んだ基本的態様において共通しております。しかし,この共通点は,多くの周辺意匠に見受けられ,この種物品においては,ごく一般的なありふれた態様であり,基本的な態様であって,類否判断ではさほど重要視されておりません。したがって,両意匠のトップカバー部の具体的構成態様について比較検討いたします。
イ)トップカバー部の各部の具体的構成態様
本願意匠は,トップカバー部の手前側と左右の側方に幅狭の余地部を形成し,洗濯物を投入する開口部の後方側は幅広な給水口を有する余地部を形成したフレーム構成としております。また,幅狭の枠部で囲われた手前側の余地部には操作部が設けられ,洗濯物を投入する開口部を覆うように二つ折れとなり,取っ手部と排気を行うフラップ部とが構成されている開閉蓋が設けられています。
以上の通り,トップカバー部に配置された操作部と開閉蓋の具体的態様は,上面視において,トップカバー部の周囲に余地部を残し,トップカバー部に操作部や開閉蓋が埋設された印象を与えています。
これに対し,引例意匠は,トップカバー部上面の手前側から,操作部,二つ折れの開閉蓋,給水口を有する余地部の各構成部位をトップカバー上面に載置した態様としており,特に,開閉蓋を閉じた時にはトップカバー部の存在感は希薄となり,箱型本体の上面に操作部,取っ手部,フラップ部,余地部がそれぞれに独立して載置された印象を強く与えております。
ロ)トップカバー部の具体的態様
本願意匠のトップカバー部は,後方から操作盤が配置されている手前側に向かって傾斜したなだらかな面で形成されております。このなだらかな傾斜面に僅かに突出させて蓋を設け,蓋の手前側にトップカバー部と略同一な面となるように操作部を設けております。
これに対し,引例意匠は,トップカバー部は後方から手前側に向かって傾斜面を形成しておりますが,トップカバー部の手前側に配置された操作部を除いて,中央部を周囲より隆起した態様としております。
ハ)開閉蓋の具体的構成態様
本願意匠の開閉蓋は,トップカバー部の左右に余地部を残して構成されており,トップカバー部に蓋が埋設されている印象を与えております。
これに対し,引例意匠の開閉蓋は,トップカバー部の横幅と同一な大きさで形成されており,側面視においても蓋の存在を明確に認識できる意匠であります。
ニ)開閉蓋に配置された取っ手部とフラップ部の具体的構成態様
本願意匠は,開閉蓋の上面部に手前側から,取っ手部と窓部とフラップ部とが配置されており,それぞれの横幅が同一となるように形成したために,その輪郭が全体として四角枠で囲まれているような印象を与えております。なお,開閉蓋を開けた状態で明確な通り,フラップ部は取っ手部の後方に隙間を形成し,この隙間から排気を行うようにしております。開閉蓋を開けた状態ではフラップ部の隙間を覆う板状の突起部を目視することができます。
これに対し,引例意匠は,開閉蓋の上面部に四角枠を形成し,その四角枠内の周囲に余地部を残して,取っ手部と窓部とフラップ部とが配置されており,それぞれが1枚の部材で形成されている印象を与えております。なお,フラップ部は開閉蓋の表面から露出しておりその存在は視覚的に顕著であります。
ホ)操作部と開閉蓋の具体的構成態様
本願意匠は,トップカバー部に配置された開閉蓋の左右余地部と同一幅の余地部が操作盤を囲んでおり,トップカバー部のフレーム内に操作部が埋設された印象を提供しております。また,操作部に配置された操作ボタンは,開閉蓋に配置された取っ手部等の横幅と同一となる操作パネルが設けられており,取っ手部等との連続感を表現することで,操作部の視認性や全体のまとまりを表現した意匠といえます。
これに対し,引例意匠は,トップカバー部の手前側の上面部に操作部を形成し,その操作部には大きな操作パネルが設けられており,開閉蓋の上面部に配置された取っ手部等との分離感が強い意匠といえます。
以上の通り,両意匠のトップカバー部の具体的態様における美的まとまりは全く異なるものであり,明らかに非類似であると確信いたします。
4.当審の判断
そこで,本願意匠と引用意匠を比較すると,まず,両意匠ともに,電気洗濯機の意匠であるから,意匠に係る物品が一致する。
次に,形態について,一致点と相違点について総合的に検討すると,一致点について,すなわち,両意匠は,洗濯槽を内蔵する箱型の本体の上面に,洗濯物を投入するための開口部を有するトップカバー部が形成され,トップカバー部に操作部や二つ折れとなる開閉蓋が配置され,開閉蓋の取っ手部やフラップ部を矩形枠で囲んだ基本的構成態様が一致するが,この一致点は,この種の意匠の属する分野においては,極めて普通に行われている手法による形態であるということができる。したがって,この点が一致することを以て,類似するとすることは相当ではなく,より具体的な構成態様の相違を検討の上,類否判断すべきである。
このような観点から,両意匠の具体的構成態様における相違点について検討するに,本願意匠について,上面の洗濯物を投入する開閉蓋の周囲をフレーム構成としている点,上面の中央部を周囲より隆起させた特徴を有する引用意匠に比べ,上面を概ね平坦な傾斜面としている点,開閉蓋には手前から順に取っ手部,窓部,フラップ部が形成されているが,フラップ部は取っ手部を兼ねるとともに,その後方に隙間を形成し,この隙間から排気するようフラップ奥部に多数の小円形状開口部が形成されいる点,操作部と開閉蓋の横幅が略同一である点が,主な相違点として看取され,この相違点は,引用意匠とは異なる本願意匠の独特な特徴をよく表しているものであることから,僅かな相違とはいえないものであり,これらが類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。
以上のとおりであって,両意匠は,意匠に係る物品は一致するが,その形態については,両意匠の一致点および相違点の視覚的効果を総合的に判断すると,相違点が意匠全体に与える影響は大きく,両意匠は類似しないものといわざるを得ない。
5.結び
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないので,原査定の拒絶理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。また,他に本願の登録を拒絶すべき理由を発見することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2009-11-05 
出願番号 意願2008-19096(D2008-19096) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 斉藤 孝恵 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 橘 崇生
樋田 敏恵
登録日 2009-12-11 
登録番号 意匠登録第1377882号(D1377882) 
代理人 ポレール特許業務法人 

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