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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B4 |
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管理番号 | 1208164 |
審判番号 | 不服2009-5398 |
総通号数 | 121 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2010-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-03-12 |
確定日 | 2009-12-11 |
意匠に係る物品 | アタッシュケース |
事件の表示 | 意願2008- 15196「アタッシュケース」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願意匠は、平成20年6月13日(パリ条約による優先権主張 2008年1月18日 欧州共同体商標意匠庁)に意匠登録出願されたものであって、願書及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品が「アタッシュケース」であり、その形態が願書及び願書添付の図面に記載されたとおりのものである(別紙第1参照)。 2.原審の拒絶理由の要旨 原審において、本願意匠を拒絶すべき理由として要旨以下の通り通知をしたものである。 この種のアタッシュケースを含む鞄の分野において、装飾や補強を目的として表面部に種々の模様や凹凸形状等を設けることは本願出願前より極普通に行われているありふれた手法(例えば、意匠1?4、『意匠1、独立行政法人工業所有権情報・研修館が2007年 1月26日に受け入れたHOZAN ホーザン総合カタログ 2007 VOL.29第66頁所載工具ケースの意匠の表面部(特許庁意匠課公知資料番号第HC18062988号)(別紙第2参照)、意匠2、特許庁総合情報館が1990年11月 6日に受け入れた「モノマガジン」 1990年11月 2日23号第214頁所載スーツケースの意匠の表面部(特許庁意匠課公知資料番号第HA02032124号)(別紙第2参照)、意匠3、特許庁発行の意匠公報記載、意匠登録第1091007号の意匠、鞄の表面部(別紙第3参照)、意匠4、独立行政法人工業所有権情報・研修館が2007年3月7日に受け入れた「ELLE DECO」2007年3月7日2号第79頁所載、スーツケースの意匠の表面部(特許庁意匠課公知資料番号第HA19001710号)(別紙第3参照)。』)であり、本願意匠は、本願出願前に公然知られたものと認められる鞄(例えば、意匠5、6、『意匠5、特許庁発行の意匠公報記載、意匠登録第1305446号の意匠(別紙第4参照)、意匠6、電気通信回線の種類 インターネット、掲載確認日(公知日) 2007年7月30日、受入日 特許庁意匠課受入2007年8月3日、掲載者 Amazon.com、表題 Amazon.com: Samsonite Graviton 31” Spinner Upright: Appare,掲載ページのアドレス http://www.amazon.com/Samsonite-Graviton-31-Spinner-Upright/dp/B000NGGYKG/ref=pd_nr_a_62/102 -3956784-3454519?ie=UTF8&s=apparelに掲載された「旅行かばん」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ19036268号)(別紙第4参照)』)に、本願出願前に公然知られたものと認められる水玉様の連続円形凸形状(例えば、前記意匠4の表面部)を施したに過ぎないもので、容易に意匠の創作をすることができたものと認められ、意匠法第3条第2項の規定に該当する。 3.審判の請求理由の要旨 (A)本願意匠の基本的形態である(a)鞄本体の上面及び側面の2箇所に取手を有する点、(b)鞄本体の底面四隅にキャスターを設けた点、(c)鞄本体に収納部及び伸縮把手を設けた点、については、多くの被服や身の回り品などを収納して比較的長期の旅行に使用されるこの種のアタッシュケースにおいて、多様な形態で持ち運べるようにするために要求される機能上必然の概念的形態であって、多くのアタッシュケースにおいて採用されており、需要者が格別注意を惹くところではない。 (B)これに対し、本願意匠は、(1)鞄本体の正面及び背面に、鞄本体の横幅の約54/1000という小さい直径の裁頭円錐形の円形凸部を形成している点、(2)鞄本体の正面の上部に伸縮把手を収納する収納部が形成され、この収納部の左右に円形凸部が最上段に各3個、2段目に各4個配置され、3段目から左右方向一杯に配置されて、収納部を囲むように円形凸部が配置されている点、(3)伸縮把手を収納する収納部の枠体を構成する内周縁が、円弧状の中央部内周と中央部内周より半径の小さい左右部内周とが突合して、突合点が富士山形を呈し、全体として逆さ鏡餅形を形成すると共に、この内周縁を囲んで形成された外周縁が、中央部外周と左右部外周との突合点がさざ波形を呈している点、が合わせ綜合された点に特徴を有するものであり、これらの形態については引用例のいずれにも見られないものである。 (C)以上の通り、本願意匠の特徴である上記(1)(2)(3)の具体的形態は、アタッシュケースの正面の大部分を占める形態であり、しかも、使用者がアタッシュケースを使用する際に必ず手に触れる部位における形態であるから、把手部周縁及び鞄本体の正面の上記形態は、この種のアタッシュケースを使用する需要者の注意を強く惹くところであり、このような特徴は引用意匠のいずれにも見られない。しかも、本願意匠では、上記(3)の収納部及び枠体と、それらを囲むようにして上記(1)(2)の円形凸部が配置されることにより、それぞれの意匠的特徴をより鮮明に浮かび上がらせるように構成したものであり、これにより、本願意匠を正面視した需要者に、あたかも「水玉模様の襟首」との印象を生じさせるものである。以上より、本願意匠の有する上記(1)(2)(3)の形態を備えていない引用各意匠に基づき、本願意匠を容易に創作できたとは到底言うことができず、本願意匠は、意匠法3条2項の規定に該当するものではなく、登録要件を全て具備するものである。 4.当審の判断 本願意匠が拒絶の理由に基づき、容易に意匠の創作ができたか否かについて、請求人の主張も参酌し、以下検討する。 (1)本願意匠 本願は、意匠に係る物品を「アタッシュケース」とし、その形態は、ケース本体を奥行きのやや短い略縦長直方体状とし、ケース本体の上面及び左側面に、持ち運び用の取っ手を設け、正面側上方に取っ手収納部を設け、略倒「コ」字状の伸縮取っ手を収納可能とし、ケース本体の底部四隅にキャスターを設け、縦横整列状に等間隔多数の円形状突起部を配列し、伸縮取っ手収納部の正面の縁を、中央を大きな弧状とし、その左右両側を小さな弧状として左右対称に形成したものである。 (2)創作容易性の判断 まず、(a)装飾や補強を目的として鞄などの表面部に種々の模様や凹凸形状等を設けることは本願出願前より普通に行われているありふれた手法ではあるが、この種のアタッシュケースを含む鞄の分野において、円形状突起部の形状及び配列態様に様々なものが見受けられるところ、正面及び背面に円形状突起部を本願意匠のように縦横整列状に等間隔に多数設けたものは、他に見受けられず、意匠全体として、本願意匠が容易に創作できたものとはいえない。次に、(b)伸縮取っ手収納部の正面の縁の態様について、中央を大きな弧状とし、その左右両側を小さな弧状として左右対称に形成した態様は、この種のアタッシュケースを含む鞄の分野において、本願意匠の出願前には他に見受けられない態様であって、本願意匠のみを特徴付ける創作であるといえる。さらに、(c)ケース本体の形状についても、意匠5及び意匠6で示した公然知られたケース本体とも、全体形状やファスナー部の有無が異なり、意匠全体として本願意匠とは大きく異なるものである。 そうすると、装飾や補強を目的として鞄などの表面部に種々の模様や凹凸形状等を設けることは本願出願前より普通に行われているありふれた手法であったとしても、公然知られた意匠4の円形状突起部と公然知られた意匠5及び意匠6のケース本体とを結び付け、本願意匠のような態様まで容易に想到できるとは認めることができず、意匠1乃至意匠6に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとは認めることができない。 以上のとおり、本願意匠は、その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内または外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものということはできない。 5.むすび したがって、本願意匠は、意匠法第3条第2項に掲げる意匠に該当しないものであり、同条同項により拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2009-11-30 |
出願番号 | 意願2008-15196(D2008-15196) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(B4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 富永 亘 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
鍋田 和宣 並木 文子 |
登録日 | 2009-12-25 |
登録番号 | 意匠登録第1378854号(D1378854) |
代理人 | 福島 三雄 |
代理人 | 高崎 真行 |
代理人 | 向江 正幸 |