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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) L6
管理番号 1208168 
判定請求番号 判定2009-600025
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2010-01-29 
種別 判定 
判定請求日 2009-07-07 
確定日 2009-12-14 
意匠に係る物品 壁板 
事件の表示 上記当事者間の登録第0985732号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「壁板」の意匠は、登録第0985732号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1 請求の趣旨
イ号図面並びにその説明書に示すイ号意匠は、登録第985732号意匠(以下「本件登録意匠」という。)及びそれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める。
イ号意匠は、本件判定被請求人(以下「被請求人」という。)が製造販売した製品「ラクオンLSパネル」の意匠である。本件判定請求人(以下「請求人」という。)が、被請求人に対し、本件登録意匠及びこの本件登録意匠の出願後に出願して登録された実用新案第3025509号の登録実用新案の公報資料を提示し、又その製品説明をして、請求人の本件登録意匠の商品の販売代理の交渉を進めていたところ、被請求人は独白に製品「ラクオンLSパネル」のイ号意匠の商品を製造販売した。これを後で知ったので本判定請求を申請する次第である。

第2 本件登録意匠
本件登録意匠である登録第985732号意匠は、平成7年3月8日に出願され、平成9年4月25日に設定登録されたもので、意匠に係る物品を「壁板」とし、形状、模様、及び色彩の結合(以下、「形態」という。)からなるものとし、その形態は、願書及び願書添付の図面の記載のとおりのものである(別紙第1参照。)。
願書の「意匠に係る物品の説明」の欄に、「本意匠は、音楽室・ホール・体育館・住宅の室壁に使用される防音・吸音のための壁板である。本意匠は、音・空気流通の小孔を多数穿孔したベニア等の90cm×180cm×5mmの木質板の裏面の4個所に、長方形状の黒色の通音性紙を貼り、その各紙上に黄色の吸音効果があるガラス繊維を使った38cm×37cm×13mm程のグラスボードを2枚上下に少し間隔を離して接着している。本意匠は、建物躯体壁面に格子枠を取付け、その表面に本意匠の壁板を固着して使用する。グラスボードと躯体壁面とは離れ、その間に空気層が形成され高い吸音・消音効果を奏する。」との記載がある。

第3 イ号意匠
イ号意匠は、イ号図面及びイ号意匠説明書に示すものであり、請求人によれば、被請求人株式会社エルエス京都の「内装音響材ラクオンLSパネル」総合力タログ(甲第4号証)、「音響吸音材ラクオンLSパネル」カタログ(甲第5号証)に基づいて作成されたものである。
イ号意匠について、当事者間に争いはない。

第4 当事者の主張
当事者の主張は、概ね以下のとおりである。
1.請求人の主張
請求人は、イ号意匠は本件登録意匠の類似の範囲に属するものであると主張し、証拠として、甲第1号証ないし甲第8号証を提出している。
その主張は、要旨以下のとおりである。
両意匠は、物品上の用途・機能・使い方で同一又は類似であり、又その形態は、基本形態の点で共通で同一に近い類似のものである。グラスボードに色相の違いはあっても明度差はあり、裏面の通音性紙の色又は木質板の木肌色とグラスボードの色とに明度差があってグラスボードは裏面にその存在が明確にみえている。
しかも、吸音材又は断熱材として使うグラスボードは、そのまま露出して使用する場合と、それをガラスクロスで覆って使う場合があることが、建築分野ではよく知られている。例えば、グラスウールの吸音材をガラスクロス・カバー袋で覆う点が公知であることは、甲第6?8号証の特許公報で公知・周知のことである。従って、表面板(木質板)の裏面のグラスボードが、本件登録意匠はグラスウールが露出していて黄色にみえるに対し、イ号意匠では、被覆した黒色のガラスクロスの色の黒色にみえる点の差異は単に、吸音材のグラスボードをグラスウール露出のままの黄色か、ガラスクロス覆いの黒色グラスボードかの選択の違いとしか認識されない。
又、表面材の裏面の外周縁及び中央の十字帯部分が、本件登録意匠では木質板の色の黄褐色にみえるに対し、イ号意匠では、全面的に貼り付けられた通音性紙のうすい黒色(灰色)がみえる点は、通音性紙が全面的に貼り付けられていて、外周及び裏面中央の十字状が黄褐色からうす黒色(灰色)にみえるだけの違いである。両意匠とも、グラスボードとの明度の差の点で、グラスボードが明確に左右一対で縦方向に4対配置されていることが認識できる明度差がある。
従って、一般需要者が正面(表面)をみると、表面材の小孔の部分が黒くみえて、4区分に分けられた各領域で多数存在し、900mm×1800mmの木肌の黄褐色のベース色に複数に分かれた黒の斑点模様が存在するように視覚され、裏面はグラスボードが略正方形状に大きく突出するように左右一対縦長方向に4列貼り付けられていると強く認識され、グラスボードの色と裏面の表面色に違いがあるといえど、グラスボードの色の選択だけの差異と判断され、グラスボードは略正方形状に8個存在することが明確に視覚できるものであるから、一般需要者によって両意匠は類似のものと認識されるものである。

2.被請求人の主張
被請求人は、両意匠は類似しないと主張し、証拠として、乙第1号証ないし乙第4号証を提出している。
その主張は、要旨以下のとおりである。
[1]本件登録意匠とイ号意匠の類否判断
意匠の類比を判断するにあたっては、公知意匠にはない新規な創作部分の存在を参酌して、需用者の注意を最も惹きやすい部分を意匠の要部として把握し、両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察して、両意匠が全体として美感を共通にするか否かを判断すべきものであるため、以下、これらの点について考察する。
(1)本件登録意匠の出願前の公知意匠
本件登録意匠の出願日前から、音楽室等に使用される吸音のための壁板として、多数の小孔(吸音孔)が穿孔された表面板が多用されていた。そして、有孔領域の裏面側に吸音材を固着することも、本件登録意匠の出願日前から当然に行われていたことであり、吸音材として、黄色のグラスウールを用いることや、表面板とグラスウールの間に通音性紙を介在させることも公知であった。
具体的に例を挙げて説明すると、実開平6-63703号公報(乙第2号証)の図1には、本件登録意匠の背面図と同様の外観を呈する音響調節パネルが開示されており、図3には、吸音ボードが固着された当該音響調節パネルの裏面が開示されている。
さらに、乙第2号証の図2には破断図が開示されており、[0017]に記載されていることから明らかなように、吸音材と表面板の間に、通音性紙を設けることも、本件登録意匠の出願前から当然に行われていたことである。そして、[0014]に記載の通り、吸音材として矩形板状のグラスウールを用いることも公知であった。
なお、乙第2号証では、吸音材は発泡スチロール等の外囲材で囲われているが、むき出しのグラスウール(通常、グラスウールの色は鮮やかな黄色である)を有孔領域に貼り付けた音響吸音ボードも、実開平3-71005号公報(乙第3号証)等に記載の通り、本件登録意匠の出願前から公知であった。また、特開平5-2396号公報(乙第4号証)には、多数の吸音孔を有する表面板にシート(薄膜体)を介してグラスウールを貼り付けた吸音ボードが開示されており、有孔領域を有する表面板にシートを介してむき出しのグラスウールを貼り付けることも、本件登録意匠の出願前から公知であった。
したがって、長方形状の表面板に、長方形状の4つの有孔領域が田の字状に配置されている点、および、この表面板の裏面側に、略正方形の黄色のグラスボードが、通音性紙を介して複数個貼り付けられている点については、本件登録意匠の出願前から公知の態様であることが明らかで、需用者の注意を引く部分ではない。すなわち、本件登録意匠の形状は、長方形の表面板に略正方形の吸音ボードを縦長方向に4個×2列というごくありふれた配置で固着したにすぎず、形状自体は吸音用の壁板としては何ら新規なものではなく、本件登録意匠の要部とはなりえない。
したがって、本件登録意匠の基本的構成態様(ア)長方形状の表面板(木質板)が、帯状の十字で同じ大きさの4つの区画に分割されており、表面板の外周縁と十字帯部分を除いて多数の小孔が穿孔されており、4つの長方形状の有孔領域を有する点と、(イ)有孔領域の裏面側に、通音性紙を介して、略正方形の吸音ボード(グラスボード)が2つ、所定の間隔を空けて固着されており、全体として、8個の吸音ボード(縦長方向に4個×2列)が規則的に配置されている点はいずれもありふれたものであり、本件登録意匠の具体的構成態様(ウ)表面板の裏面側の通音性紙は、有孔領域のみを覆う大きさの長方形状であり、4つの有孔領域それぞれに貼り付けられ、通音性紙は黒色であり、グラスボードは鮮やかな黄色であるため、裏面側から見た際、表面板の4つの有孔領域はそれぞれ、鮮やかな黄色の正方形2つとその間に挟まれた黒色の帯に色分けされて見える点が、公知意匠にこれまで見られないものと考えられる。
[2]本件登録意匠の要部
以上から、本件登録意匠において、公知意匠にはない新規な構成態様は、その配色、すなわち、黒色の通音性紙を有孔領域のみに貼り付け、この通音性紙の上に、鮮やかな黄色の略正方形のグラスボードを2つ、間隔を空けて配置することにより、長方形状の有孔領域を、鮮やかな黄色の正方形2つとその間に挟まれた黒色の帯に色分けした点、および、この色分けされた長方形が、黄褐色ベースの長方形の中に田の字状に4つ配置されている点が、需用者の注意を惹く要部と認められる。
[3]両意匠の類比判断
両意匠の共通点(A)表面板の形状が長方形であり、表面板の色が黄褐色である点、(B)表面板は帯状の十字で同じ大きさの4つの区画に分割されており、表面板の外周縁と十字帯部分を除いて多数の小孔が穿孔されており、4つの長方形状の有孔領域を有する点、(C)表面板の有孔領域の裏面側にはそれぞれ、略正方形の吸音ボードが2つ、所定の間隔を空けて固着されており、全体として、8個の吸音ボードが縦長方向に4個×2列で規則的に配置されている点、(D)有孔領域は、表面から見ると、黒点の斑点からなる長方形状の領域に見える点は、いずれも、この種の意匠の分野において、本件登録意匠出願前に既に周知の構成態様であり、本件登録意匠の要部を構成するものではないから、類比判断に直接影響を及ぼさないことは明らかである。
これに対し、両意匠の差異点(a)表面板の裏面に固着された吸音ボードが、本件登録意匠では、鮮明な黄色であるのに対し、イ号意匠では黒色である点、および(b)表面板の裏面に貼り付けられた通音性紙が、本件登録意匠では黒色であり、各有孔領域のみに接着されているのに対し、イ号意匠では薄い黒色であり、表面板の外周縁を除く全面に接着されている点は、本件登録意匠の要部に係るものであり、類比判断に大きな影響を及ぼす。すなわち、本件登録意匠の最大の特徴は、表面板の裏面側の配色にあると言えるところ、表面板の裏面全体を見ると、上記(a)および(b)の差異点に起因して、本件登録意匠では、黄褐色の長方形内に、鮮やかな黄色と黒に塗り分けられた小さい長方形が4つ、田の字状に配置された態様をなし、黄色と黒のコントラストが非常に目立つ態様となっている。黄色と黒の組合せは、警告色とも呼ばれ、踏切の遮断器や交通標識として汎用されていることから明らかなように、人間の視覚に最も強く訴える色の組合せであり、非常に目立つコントラストをなす。特に、本件登録意匠では、黒色の帯が、鮮やかな黄色の正方形の間に挟まれていること、及び、表面板も黄系統の色であることから、4つの黒色の帯が非常に目立つ構成となっている。
これに対して、イ号意匠では、黄褐色で縁取りされた薄い黒色の長方形内に、黒色の略正方形が縦長方向に4個×2列で配置されており、外周縁を除いて黒色で統一され、一色の濃淡・明暗だけで表現されている。また、中央の十字帯が目立たず、本件登録意匠の如く、4つの長方形単位(有孔領域)が明確に視認されないため、8個の正方形単位が均等な間隔で配置されているとの印象を与える。また、各有孔領域に配置された2つの吸音ボードの間の色彩が、一際目立つ配色でもない。したがって、両意匠は、裏面から観察した際、コントラストの強弱・認識される模様が著しく異なるため、上記色彩の顕著な差異は、看者に異なった美感を与えると言える。
また、両意匠を平面(もしくは底面)または側面から観察すると、形状には共通点があるものの、形状自体は公知意匠と同様であって特徴がないため、やはり色彩の差異が美感に与える影響は大きい。本件登録意匠では、黄褐色の表面板に、黄色の吸音ボードが配置されており、黄系統で統一されているのに対して、イ号意匠では、黄褐色の表面板に、黒色の吸音ボードが配置されており、色のコントラストが非常に鮮明である。したがって、平面(もしくは底面)および側面から観察した際にも、色彩の差異は、看者に異なった美感を与えるといえる。
このように、本件登録意匠は、その形状に独創性は認められず、色のコントラスト・色模様が看者の注意を惹く要部と認められるところ、本件登録意匠とイ号意匠は、この要部が顕著に異なっている。そのため、差異点が共通点を圧倒しており、両意匠は、意匠全体として異なる美感を起こさせている。

第5 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成7年3月8日に出願され、平成9年4月25日に設定登録された、意匠に係る物品が「壁板」の意匠であり、その形態の構成態様及び特徴は以下のとおりである(別紙第1参照)。 なお、形態の認定は、イ号意匠の図面の向きによる。
[1]本件登録意匠の構成態様
(ア)長方形状有孔表面板(90cm×180cmの木質板)の裏面に、通音性紙を介して、所定の間隔で多数の正方形状吸音ボード(グラスボード)が固着された構成のもので、
(イ)表面板は、縦横比を2:1とした薄板状で、横幅の1割前後の幅の帯状十字で同じ大きさの4つの区画に分割し、外周に十字帯幅の半分幅の縁部を設け、これらにより略縦長「田」の字状余白部を形成し、余白部に囲まれた領域に多数の小孔を穿孔して、4つの縦長長方形状の有孔領域を設けており、
(ウ)通音性紙は、有孔領域相当の大きさで、各有孔領域裏面に貼着され、
(エ)吸音ボードは、各辺が有孔領域短辺と同長で、各有孔領域毎に2個ずつを、有孔領域短辺に合わせて裏面に固着し、そうすることで2個の吸音ボード間に十字状帯幅程度の間隔が空き、裏面全体として、8個の吸音ボード(縦長方向に4個×2列)が規則的に配置された形状のものである。
(オ)色彩について、表面板は黄褐色で、通音性紙は黒色で、吸音ボードは黄色である。
[2]本件登録意匠の特徴
(1)本願意匠の出願前の先行公知意匠
本願意匠の態様について、先行公知意匠を検討すると、有孔表面板の裏面に吸音ボードが固着された態様は、実開平6-63703号公報(乙第2号証)、実開平3-71005号公報(乙第3号証)に見られ、間に通音性紙状の薄膜体を介在させたものは実開平6-63703号公報(乙第2号証)や特開平5-2396号公報(乙第4号証)に見られる。このうち、実開平6-63703号公報(乙第2号証)には、略縦長「田」の字状余白部内に多数の小孔を穿孔した、4つの縦長長方形状有孔領域裏面に、有孔領域相当の大きさの縦長長方形状吸音ボードを設けた態様が見られるが、縦長長方形状有孔領域裏面毎に、各辺が有孔領域短辺と同長の正方形状吸音ボード2個を、有孔領域短辺に合わせて固着した態様はなく、そのような態様で、2個の吸音ボードの間隔を十字状帯幅程度としたものや、通音性紙を介在させたものもない。
(2)本件登録意匠の新規な特徴
そうすると、本件登録意匠の新規な特徴は、縦長長方形状有孔領域裏面毎に、各辺が有孔領域短辺と同長の正方形状吸音ボード2個を、有孔領域短辺に合わせて固着し、該2個の吸音ボード間を十字状帯幅程度の間隔とし、裏面全体として、8個の吸音ボード(縦長方向に4個×2列)を規則的に配置した態様にあり、さらに、通音性紙を一対の吸音ボード間に表している点も特徴といえる。
なお、被請求人が本願意匠の特徴として主張する色彩については、いわば通常の素材色を略そのまま表わした色彩であるため、特段の創意工夫の結果とはいえないので、格別な特徴とはなし得ないものである。

2.イ号意匠
イ号意匠は、イ号図面及びイ号意匠説明書に示すものであり、被請求人もこれに基づき答弁をしている。
[1]イ号意匠の構成態様
(あ)長方形状有孔表面板(木質板)の裏面に、通音性紙を介して、所定の間隔で多数の正方形状吸音ボード(グラスボード)が固着された構成のもので、
(い)表面板は、縦横比を2:1とした薄板状で、横幅の1割前後の幅の帯状十字で同じ大きさの4つの区画に分割し、外周に十字帯幅の半分幅の縁部を設け、これらにより略縦長「田」の字状余白部を形成し、余白部に囲まれた領域に多数の小孔を穿孔して、4つの縦長長方形状の有孔領域を設けており、
(う)通音性紙は、表面板より僅かに小さい大きさで、表示板裏面の細幅外周縁部を除く領域全体に貼着され、
(え)吸音ボードは、各辺が有孔領域短辺と略同長で、各有孔領域毎に2個ずつを、有孔領域短辺に合わせて裏面に固着し、そうすることで2個の吸音ボード間に十字状帯幅程度の間隔が空き、裏面全体として、8個の吸音ボード(縦長方向に4個×2列)が規則的に配置された形状のものである。
(お)色彩について、表面板は黄褐色で、通音性紙は灰色で、吸音ボードは黒色である。

3.対比
両意匠は、意匠に係る物品は、共に防音・吸音のための壁板であるから一致し、形態において、主として以下の一致点と相違点がある。
[1]一致点
(A)長方形状有孔表面板(木質板)の裏面に、通音性紙を介して、所定の間隔で多数の正方形状吸音ボード(グラスボード)が固着された構成のもので、
(B)表面板は、縦横比を2:1とした薄板状で、横幅の1割前後の幅の帯状十字で同じ大きさの4つの区画に分割し、外周に十字帯幅の半分幅の縁部を設け、これらにより略縦長「田」の字状余白部を形成し、余白部に囲まれた領域に多数の小孔を穿孔して、4つの縦長長方形状の有孔領域を設けており、
(C)通音性紙は、各有孔領域裏面に貼着され、
(D)吸音ボードは、各辺が有孔領域短辺と略同長で、各有孔領域毎に2個ずつを、有孔領域短辺に合わせて裏面に固着し、そうすることで2個の吸音ボード間に十字状帯幅程度の間隔が空き、裏面全体として、8個の吸音ボード(縦長方向に4個×2列)が規則的に配置された形状のものである。
(E)表面板の色彩が黄褐色である。
[2]相違点
(a)通音性紙の大きさについて、本件登録意匠は有孔領域相当であるのに対し、イ号意匠は表面板より僅かに小さい大きさであり、そのため、本件登録意匠は通音性紙が各有孔領域の一対の吸音ボードの間からのみ表れているのに対し、イ号意匠は略縦長「田」の字状余白部や各吸音ボードの外周部、そして各有孔領域の一対の吸音ボードの間に表れており、該吸音ボード間からは表面板に穿設された小孔が通音性紙を通して透けて見える点。
(b)色彩について、本件登録意匠は通音性紙が黒色で、吸音ボードが黄色であるのに対し、イ号意匠は通音性紙が灰色で、吸音ボードが黒色である点。
そのほかに、吸音ボードの厚みが本件登録意匠よりもイ号意匠の方が厚い(被請求人の主張では13mm対25mm。)という相違があるが、表面板の厚さが本件登録意匠よりもイ号意匠の方が厚いため、意匠全体の構成比率としてみれば、類否判断に影響を及ぼす程の相違はみられないものである。

4.類否判断
意匠の類否を判断するにあたっては、意匠を全体として観察することを要するが、この場合、意匠に係る物品の性質、用途、使用態様、更には公知意匠にはない新規な創作部分の存否を参酌して、意匠に係る物品の取引者・需用者の注意を最も惹きやすい部分を把握し、両意匠がこの部分において構成態様を共通にするか否かを中心にして観察して、両意匠が全体として美感を共通にするか否かを判断すべきものといえる。
以上を踏まえて以下検討すると、両意匠の物品は防音・吸音のための壁板であるから、需要者は、内装として表れる表面(正面)部と防音・吸音に資する態様が表れている裏面部の双方に注意を向けるが、表面板の表面部に小孔を多数設けて長方形状に表したものは、例えば実開平6-63703号公報(乙第2号証)など、従来より普通に見られるためによくあるものと受け止めるので、表面部がそのような構成態様である場合、吸音ボード等による防音・吸音についての創意工夫が表されている裏面部に注意が向けられ、その構成態様に強い関心を持つものである。
そうすると、両意匠の一致する構成態様(A)ないし(D)に表されている裏面部の態様は、この物品分野においてこれまでに見られなかった態様であるため、需用者の注意を強く惹くといえる。そして、裏面全体として8個の吸音ボード(縦長方向に4個×2列)が規則的に配置された形状は、立体として明確なまとまりを形成しているので、これを見る者に強い印象を与えているが、さらに、表面部の一致する態様と相まって、意匠全体として共通の骨格を形成しているので、類否判断を強く支配しているといえる。
これに対し、両意匠の相違点による形態については、需要者がさほど注意を向けないものであり、見る者に希薄な印象しか与えず、類否判断に及ぼす影響は微弱である。
すなわち、通音性紙の大きさの相違点(a)については、用途を勘案すれば、需要者がこれを見た場合、大きさの違いよりもむしろ、2個の吸音ボード間の間隔が空いた部分に通音性紙が貼着され、これにより表面部の小孔がふさがれているという点の共通性に強く注意が惹かれるもので、大きさの違い、ないしは通音性紙の貼着範囲の違いについては、製造上の理由で選択されたと推測することはあっても意匠的効果として受け止めることはないから、類否判断を左右するものではない。
そして、色彩の相違点(b)の、吸音ボード部については、本件登録意匠がガラス繊維をそのまま使用し、イ号意匠がガラス繊維をガラスクロスで覆って使用したものであるが、その場合の通常の素材色は両意匠に表された色彩であり、両意匠が意匠的効果を意図してその色彩を選択したものであるとしても、需要者はこれらの色彩に格別との印象は受けず、通音性紙の色彩も、いずれも無彩色の色調で、際立つ相違は見られず、これら色彩の相違を総合しても、形状の共通性に埋没し、類否判断を左右するものではない。
結局、本件登録意匠とイ号意匠の相違点は、いずれも需要者の注意を惹かず、そのような相違点を合わせても類否判断を支配する要素とはなり得ず、これに対して、両意匠の一致点は、全体の形状にわたるもので、意匠全体の骨格を形成し、需要者の注意を強く惹き、両意匠に共通する美感を起こさせているので、イ号意匠は本件登録意匠に類似するものである。

5.むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2009-12-02 
出願番号 意願平7-6475 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (L6)
最終処分 成立 
前審関与審査官 中田 博康日比野 香 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 橘 崇生
樋田 敏恵
登録日 1997-04-25 
登録番号 意匠登録第985732号(D985732) 
代理人 特許業務法人みのり特許事務所 
代理人 戸島 省四郎 
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