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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) L6
管理番号 1209860 
判定請求番号 判定2009-600029
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2010-02-26 
種別 判定 
判定請求日 2009-07-27 
確定日 2010-01-08 
意匠に係る物品 幅木用コーナーパッド 
事件の表示 上記当事者間の登録第1339448号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「幅木用コーナーパッド」の意匠は、登録第1339448号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は,イ号意匠並びにその説明書に示す意匠(以下,「イ号意匠」という。)は,登録第1339448号意匠(以下,「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求める,と申し立て,その理由として,要旨以下のとおり主張し,甲第1号証?甲第9号証を提出した。

1.本件登録意匠の要部
この種物品においては,本体表面の湾曲した形状,形態については,コーナーを被覆するものであるので,被覆する対象物に相応した形態を採用することになり,事実上の規格が存在し,これらの基本的構成については新規な創作の余地がほとんどないものである。
従って,コーナーパッドの表面以外のその他の部分をいかに創作するかが意匠の要点ということになる。本件登録意匠の本体背面に係止部を配置した創作については,甲第4号証?甲第5号証の公知意匠のいずれにも記載がない。特に,係止部についての参考または共通するモチーフは存在しないため,創作の程度においても背面側の上下二段に分けて全体の4方向に係止部を突設するという形状は,斬新なデザインといわれるべきものであり,創作の程度も非常に高いものとなっている。
また,施工業者である需要者が実際に当該物品を購入するに当たって,コーナーバッドの取付け部位がどのような形状であるかは強い関心が寄せられるところであり,全体的印象を強く左右する。
これらの事情を考慮すると,コーナーパッドの背面に上下二段に分け,左右四方向に係止部を形成したという創作部分が,従来にない斬新なデザインであることは明らかであり,特にこの部分は,コーナーパッドという物品の特質上,需要者に最も強く注目される部位であって,意匠の要部を構成するものである。

2.本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
(1)共通点
(ア)本件登録意匠は幅木の角部をカバーするコーナーパッドである。イ号意匠においても,壁のコーナーを被覆する立面部,及び立面部上端から後方に屈曲した上面部を備えており,立面部の中間上方寄りには幅木の溝部に相補的対応する溝状の陥没部が形成されており,幅木の角部をカバーするコーナーパッドである。そうすると,両者は用途及び機能の点において同一であり,物品が一致する。
(イ)基本的な構成態様において,本件登録意匠とイ号意匠は共に,壁のコーナーを被覆する円弧状に湾曲した本体と,本体の背面側の左右4方向に突設された係止部を備えている。
(ウ)具体的な構成態様において,両意匠は壁のコーナーを被覆する立面部,及び立面部上端から後方に屈曲した上面部を備えており,立面部の中間上方寄りには水平方向に通過する溝状の陥没部が形成されている。
係止部は,本体背面の中央の上下二股に設けられた隆起部に取付けられて左右に突設されている。
係止部はコーナーの屈曲に合わせてその方向に曲がっている。

(2)両意匠の差異点
(あ)本件登録意匠の背面の係止部は円弧状に湾曲しているのに対し,イ号意匠は略直角に屈曲している。
(い)背面の隆起部の形状において,本件登録意匠は台座状の隆起部を備えるのに対し,イ号意匠は上下左右4枚の板小片を組み合わせた隆起部を形成している。

(3)本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察
本件登録意匠とイ号意匠の共通点及び差異点を比較検討すると,
(A)両意匠の差異点については,係止部の形状を湾曲させずに直角に屈曲することはこの種物品において,当業者が設計に当たり適宜選択する設計事項であり,本件登録意匠の要部ではないことから,この点において特段顕著な相違といえず,類否に与える影響は微弱である。
また,本体背面の隆起部の形状を台座状とせずに,本件登録意匠の台座に相当する部位を切削して形成したような上下左右の板小片を使用することは,原料の抑制を目的として採用するこの種物品において常套的な手法である。この点においても本件登録意匠の要部ではなく,係止部に隠れて見えにくい部位でもあり,特段顕著な相違といえず,類否に与える影響は微弱である。
(B)両意匠の共通点は,コーナーパッドの本体の背面側の左右4方向に突設された係止部を有している点である。
この上下二段に分けて本体背面の隆起部に取り付けて,左右四方向に突設するという形態は従来にない斬新なデザインであり,意匠の要部を構成するものである。そして,これらの部分は創作の程度も非常に高いものであることから,類否判断に与える影響は非常に強く,この部分が共通する本件登録意匠とイ号意匠は,需要者をして共通する美観を起こさせるものであり,両者は同一または類似する意匠である。
(C)以上の認定,判断を前提として両意匠を全体的に考察すると,両意匠の差異点は,類否の判断に与える影響は微弱なものであって,共通点を凌駕しているものとはいえず,それらがまとまっても両意匠の類否に及ぼす影響は,その結論を左右するまでには至らないものである。

第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は,「イ号意匠は登録第1339448号に係る意匠及びこれに類似する意匠とは非類似であり,本判定の請求は成り立たない。」との判定を求めると答弁し,その理由として,要旨以下のとおり主張した。なお,被請求人は,平成21年8月20日発送した判定請求の「請求書副本の発送通知」の30日以内に答弁書を提出すべきところ,提出期限を5日過ぎて,平成21年9月29日に「判定事件答弁書に代わる上申書」を提出した。期限経過後とはいえわずか5日であり,上申書ではあるものの,その内容は実質的に答弁書であるので,これを被請求人の主張として採用しない積極的理由はないということができる。

1.本件登録意匠とイ号意匠との比較
(1)両意匠の共通点
幅木のコーナー部を被覆するコーナーパットである点。
両意匠に係る物品は用途と機能において共通し,幅木のコーナーを被覆する立面部,及び立面部上端から後方に屈曲した上面部を備えており,立面部の中間上方寄りには溝状の陥没部が形成されている。

(2)両意匠の相違点
(あ)本体の形状
本体は立面部,及び立面部上端から後方に屈曲した上面部を備えているが,高さ寸法と幅寸法の比率は違っており,イ号意匠の場合には比較的細長い形状としている。
又,立面部の中間上方寄りには溝状の陥没部が形成されているが,イ号意匠の場合には中間寄りであり,本件登録意匠の場合には上端寄りに溝状の陥没部を形成している。
(い)係止部の形状
本件登録意匠の係止部は本体に沿って湾曲して左右両方向へ延びている。これに対して,イ号意匠の係止部は左右斜め後方へ延び,左右の両係止部は互いに垂直を成している。
(う)隆起部の形状
本件登録意匠の隆起部は台座状としており,台座状の上下隆起部は繋がっている。これに対して,イ号意匠の隆起部は十字状を成し,上下左右の4枚の板小片を有している。
このように,イ号意匠は本件登録意匠とは,本体の高さと幅寸法比率,及び溝状の陥没部の位置も違っているが,少なくとも本体背面側形状は全く異なっている。

2.被請求人の抗弁
(1)本件登録意匠の要部に関して,請求人は幅木用コーナーパッドの湾曲した表面である本体ではなく,本体の背面側に設けている係止部に特徴があり,これが意匠の要部であると述べている。そして,本件登録意匠の係止部は本体に沿って湾曲しているのに対して,イ号意匠の係止部の場合にはストレートに延びていて,左右の係止部は互いに垂直をなしているが,この点に関してイ号の係止部は当業者が設計に当り適宜選択する設計事項であると主張されている。
又,本体背面側の隆起部の形状に関して,イ号意匠では台座状とせず,上下左右の板小片を十字状に形成している点は,原料抑制を目的として採用される常套的手段に過ぎず,しかも係止部に隠れて見え難い部位でもあり,類否に与える影響は微弱であると主張されている。
すなわち,本件登録意匠とイ号意匠の共通点は,幅木用コーナーパッドの本体背面側の左右4方向に係止部を有している点であり,これが本件登録意匠の要部となってイ号意匠と類似すると述べている。
(2)イ号意匠は,請求人も認めておられるように,係止部の形状は明らかに違っている。又隆起部の形状も違っている。すなわち,幅木用コーナーパッドの本体背面側の形状は本件登録意匠とは全く違っている。
請求人の考えは特許出願をした場合の発明の進歩性を基準としたものであり,あくまでも物品の外観形状を基にして判断される意匠の類否判断ではない。
すなわち,幅木用コーナーパッドを特許出願し,その特許請求の範囲に「本体の背面側に隆起部を上下2ヶ所に設け,各隆起部に係止部を左右両方向へ延ばした・・・」と記載しているのであれば,該隆起部及び係止部の具体的な形状に如何ようであっても,イ号意匠に係る幅木用コーナーパッドは技術的範囲に含まれるかもしれないが,本件登録意匠の湾曲して延びる係止部とイ号意匠の互いに垂直を成してストレートに延びる係止部とは明らかにその形状をことにしている。勿論,隆起部の形状も違っている。さらには,本体形状も多少違っている。

3.結び
以上述べたように,被請求人が製造しているイ号意匠である幅木用コーナーパッドは,本件登録意匠と類似することはないと考えます。

第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は,平成19年11月19日に意匠登録出願をし,平成20年8月8日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1339448号意匠であり,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたところによれば,意匠に係る物品を「幅木用コーナーパッド」とし,その形態を,別紙第1に示すとおりとするものである。

2.イ号意匠
イ号意匠は,判定請求書に添付の図面により示されたものであり,意匠に係る物品が「幅木用コーナーパッド」と認められ,その形態を,別紙第2に示すとおりとするものである。

3.本件登録意匠とイ号意匠との対比
本件登録意匠とイ号意匠とは,ともに建物用幅木におけるコーナー部分のカバー部材であるから,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,形態については主として以下の一致点及び相違点がある。対比の都合上,表面部を正面図とするイ号意匠の各図面のレイアウトを基準とし,これに本件登録意匠の各図面を対応させた状態のものとして対比する。

(1)一致点
先ず,一致点として,(a)全体が,壁のコーナー部をカバーするために,円柱の略4分の1に相当する弧状に湾曲した薄板状本体部からなり,正面視は略矩形状であり,背面視上下部に左右方向に伸びる係止具が計4箇所形成されている点,(b)正面視について,上面には本体部から連続する水平面部が形成され,上面部寄りに横溝が1条形成されている点,(c)背面側の係止部について,係止部は基部と係止具からなり,横溝により上下に分割された各区画に,係止部が1つずつ形成され,下部区画については略中央に係止部が形成されている点,がある。
(2)相違点
相違点として,(d)正面視の比率について,本願の意匠は縦:横の比率が略1.5:1(5.5cm:3.7cm)であるのに対して,イ号意匠は,略2.2:1(7.1cm:3.1cm)であり,上面から横溝上辺までの長さ:縦の長さが,本件登録意匠は略1:5(1.1cm:5.5cm)であるのに対して,イ号意匠は,略1:2.8(2.5cm:7.1cm)であり,横溝の幅:縦の長さが,本件登録意匠は1:13.8(0.4cm:5.5cm)であるのに対して,イ号意匠は1:11.8(0.6cm:7.1cm)である点,(e)背面の係止具について,本件登録意匠は,本体部に沿って円弧状に形成された湾曲した板体であるのに対して,イ号意匠は,平板を略90°に拡開した板状体である点,(f)係止部の基部について,本件登録意匠は上下に平面視略台形状の台座状の基台が2つ形成され,この上部基台は横溝を跨ぐように形成され,上下の基台間には平板状連結具が形成され,上部係止具は上方から差し込まれたように上部基台に形成され,下部係止具は下部基台に挿通されたように形成されているのに対して,イ号意匠は,係止具の奥に係止具に連続して基部が形成され、その基部は,係止具と同幅の連結用板状体によって本体に連結され,係止具と連結用板状体とで平面視略Y字状に形成され,連結用板状体と係止具に直角に略扇型連結用基板が一体的に形成されて基部が形成され,上下の基部を連結するものはなくそれぞれ別個に形成されている点,(g)上部屈曲部について,本件登録意匠は,上部の屈曲部に傾斜面が形成され,上面に連続しているのに対して,イ号意匠は,傾斜面ではなく滑らかな円弧状に形成され,上面に連続している点,(h)両側部の屈曲部について,本件登録意匠は,両側部の上面から下端までわずかな幅の傾斜面が形成されているのに対して,イ号意匠には不鮮明ながらこのような傾斜面がない点,がある。

3.類否判断
そこで,上記の一致点と相違点について総合的に検討するに,一致点としてあげた,(a)および(b)のうち,正面側に関することについては,甲第7号証?甲第9号にみられるように幅木用コーナーパッドとして一般的に行われている手法による形態であって,請求人も被請求人も認めているように,格別注意を惹くほどのものではないというべきである。(a)および(c)のうち背面側に関することについては,要するに係止部が上下に2つ形成され,係止具が4方向に形成されていることに帰するが,これについては,意匠登録第541915号の類似第1号(別紙第3参照),意匠登録第550281号(別紙第4参照)にみられるように,請求人が「本件登録意匠の要部」の項で主張するような「係止部についての参考または共通するモチーフは存在しない」ということはなく,従来から公然と知られていることであって,係止部が上下に2つ形成され,係止具が4方向に形成されていることは,格別注意を惹くほどのものではないということができる。そうすると,本件登録意匠とイ号意匠との一致点に関わることは,いずれも格別な特徴がないので,類否判断上,重要視できないものであるということができる。
次に,相違点について検討してみると,(d)の各部の比率の相違は,本件登録意匠に比べて,イ号意匠の方が縦長であり,横溝が下の位置から始まり,その幅も広いという視覚的効果をもたらすものである。これらは,直接看者に訴える要素であって,計測数値にそれほど大きな差がない場合はともかく,この程度の相違は,一見して相違点として十分認識できるほどの相違があり,類否判断に一定程度の影響を与えるものである。(e)の点については,一般的なコーナーパッドの係止具は,イ号意匠のように90度に拡開しているものであるが,本件登録意匠は本体に沿って円弧状に形成されており,連結に際して幅木の厚さをそれほど必要としない点で極めて特徴的であり,係止具を受ける側についても一定の特徴があることが容易に想定できるものである。これに対して,イ号意匠の係止具は,90度に拡開した従来タイプのものであり,一定の厚さの幅木または連結具が必要であり,本件登録意匠の特徴を有さず格別な特徴はないということができる。したがって,本件登録意匠は従来のものと比べて顕著な特徴があり,引用意匠には格別な特徴はないということになるので,その相違は類否判断に大きな影響を与えるというべきである。(f)の点については,係止具と本体との具体的連結状態であり,本件登録意匠が,台形状基台を形成しているので比較的高い強度があるような視覚的効果があるのに対して,イ号意匠は板体の組み合わせであるから,それほど強度が高くない視覚的効果をもたらしており,それぞれ独特の特徴を表しているということができ,類否判断に大きな影響を与えるものであるというべきである。(g)および(h)の点については,本件登録意匠やイ号意匠の分野に限らず,あらゆる分野で一般的に行われている角部や端部の加工方法による相違であって,格別な特徴はなく,類否判断に与える影響はほとんどない。
以上のことから,類否判断に大きな影響を及ぼす要素である相違点(e)および(f)の点に加えて,類否判断に一定程度の影響を及ぼす要素である(d)の点が相俟った効果を考慮すると,両意匠を別異の基調のものと看者に印象付けるに十分なものであって,両意匠の類否判断に決定的ともいえる大きな影響を及ぼすものというほかない。
従って,両意匠の態様についての共通点は,前記のとおり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものとはいえないのに対して,相違点である,(d),(e),(f)の点は,両意匠の類否判断に極めて大きな影響を及ぼしており,相違点が共通点を凌駕するものであるというほかないので,意匠全体として,イ号意匠は,本件登録意匠に類似するものとはいえない。

4.結び
以上のとおりであって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2009-12-24 
出願番号 意願2007-31773(D2007-31773) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (L6)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 越河 香苗 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 橘 崇生
樋田 敏恵
登録日 2008-08-08 
登録番号 意匠登録第1339448号(D1339448) 
代理人 平崎 彦治 
代理人 綾田 正道 
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