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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) D2
管理番号 1211346 
判定請求番号 判定2009-600039
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2010-03-26 
種別 判定 
判定請求日 2009-09-18 
確定日 2010-02-15 
意匠に係る物品 正座用座いす 
事件の表示 上記当事者間の登録第1201508号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠は、登録第1201508号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立て及び理由

請求人は、イ号意匠は登録第1201508号意匠(以下「本件登録意匠」という)およびこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める、と申し立て、その理由を大要以下のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証(枝番を含む)を提出した。
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「正座用座いす」とし、形態の要旨について、基本的な構成態様を、全体が、使用時に逆三角形を成し、展開時には長めの帯状体となり、収納又は運搬時には座面を折り畳む構成態様とし、具体的な構成態様を、長めの帯状袋体の中に板辺を2枚直列状に収納して、この2枚の板辺を相互隣接部を境に折り曲げてV字状にし、袋体の余った部分を袋体の先端に重ねて回し、袋体の外面に縫着したマジックテープに貼り合わせて逆三角形状とし、正座時にでん部に敷いて使用するもので、マジックテープの貼り合わせ位置を変えることにより、高さが調節でき、収納又は運搬時には、座面を内側に二つ折りして折り畳むことができるものである。
そしてイ号意匠(甲第2号証の1?3)は、本件判定被請求人が現在製造販売している座いすの意匠であり、先行周辺意匠である意匠登録第572908号意匠(甲第4号証の1)、同第1170215号意匠(同号証の2)、実開昭61-97950号公報記載意匠(同号証の3)、実開平2-100558号公報記載意匠(同号証の4)、実開昭64-32660号公報記載意匠(同号証の5)によれば、本件登録意匠の要部が、側面2面において板状体を帯状袋体に収納し、座面には板状体を収納せずに、使用時には逆三角形のV字状に開き、でん部を座面に敷くようにするとともに、帯状体に縫着したマジックテープで座面の高さを調節可能にした形態にあることが明らかであることから、本件登録意匠とイ号意匠は、意匠の要部において共通する。
なお両意匠には、(a)底面部の有無、(b)マジックテープの形状及び縫着位置の差異があるが、(a)は、さして需要者及び取引者の注目を惹かず、また単に縫着しているのみなので、座椅子の安定には無意味であり、また滑り止めの機能も果たさず、物品の全体から受ける視覚上の美感は相互に同一の印象である。また(b)についても、高さ調節を可能とするマジックテープの存在自体が極めて大きな注目を惹き、このなかでの形状及び位置の差であるから、需要者及び取引者の印象に残りにくい。また実施態様においても、両意匠は、高さ調節の方法、収納時及び使用時の形態、使用時の効果、未使用時と使用時の比較写真等において非常に紛らわしく、両意匠を需要者及び取引者が混同する事は明らかで、両意匠は類似するとされるべきである。

第2.被請求人の答弁及び理由

被請求人は、結論同旨の判定を求める、と答弁し、その理由を大要以下のとおり主張し、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
イ号意匠は、使用時の正面視において略逆三角形状の底部が着座する部位に水平方向に張り出す矩形形状の台座が形成され、集中荷重を分散させ、看者に安定感のある印象を与えている。そして、この台座の外側部位には底部クッション材が設けられ、内側部位には面ファスナー部が設けられ、その両サイドに、使用時に折り畳まれて係止される面ファスナーが設けられている。また本件登録意匠は、使用時に、帯状体の解放端部が略逆三角形状の底部を回り込む構成であるが、イ号意匠は回り込まない。また面ファスナーの位置、幅にも差異があり、両意匠は類似せず、イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない。

第3.当審の判断

(1)本件登録意匠
本件登録意匠は、平成15年6月2日に意匠登録出願をし、平成16年2月20日に意匠権の設定の登録がなされた、登録第1201508号意匠であり、意匠に係る物品を「正座用座いす」とし、形態を、願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとするものである。(別紙第1参照)

(2)イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書の甲第2号証の1(使用状態を示す斜視写真)、甲第2号証の2(商品説明書説明書写し)、及び甲第2号証の3(商品広告写し)に示された、正座用座いすの意匠であり、その形態は、甲第2号証の1、同号証の2、及び同号証の3に示されたとおりである。(別紙第2参照)。

(3)両意匠の対比、検討
両意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態について、主として以下の共通点と差異点が認められる。
即ち共通点として、(A)展開状態の全体を、横長の帯状体とし、その左端を基端部として右に、横長矩形の同形の区画を2区画設けて、これを剛質でやや肉厚のものとして左脚部、及び右脚部とし、右脚部に連続する帯状体のその余の部分を柔軟で肉薄のシート状(以下「シート部」とする。)とし、使用時において、左脚部、及び右脚部を適宜の角度の略V字状に折曲して脚部を上開き状とし、その開かれた上面に、座面としてシート部を架け渡し、更にシート部の余った部分を帯状体の基端部から左脚部の外面に沿って巻き回し、そしてシート部の先端寄りの内面、及び脚部の外面に取り付けられた雄雌一組の面ファスナーを貼り合わせて、略逆三角形の枠体を形成して座いすとして使用し、また面ファスナーを適宜ずらせて貼り合わせることにより、座面の高さを適宜の高さに調節し、更に使用しないときには、左脚部と右脚部を平らに折り畳み、その間に座面を内折りして挟むことができるよう構成されたものである点、(B)左脚部、及び右脚部について、帯状体の内部に芯材が挿入されて形成されたもので、外観上、左脚部、右脚部とシート部とが、同一の表面素材として現れる点、が認められる。
一方両意匠には差異点として、(ア)本件登録意匠は、左脚部と右脚部とが、帯状体において隣接配置され、使用時には、左脚部と右脚部とがそのままV字状に折曲されて脚部下端が下尖り状となるのに対し、イ号意匠は、帯状体において左脚部と右脚部の間に、横幅比を略1対2対1とする、幅狭の3つの区画が設けられ、使用時には、これが左右にそれぞれ二つ折りされて外方に水平に張り出し、脚部下端に矩形板状の台座が形成される点、(イ)シート部の長さについて、本件登録意匠は、左右の脚部を60度程度に開いた場合、シート部の先端が、左脚部から脚部下端を越えて右脚部に及ぶ長さであるのに対し、イ号意匠では右脚部に届かない長さであり、脚部に対するシート部の長さが、本件登録意匠がイ号意匠よりやや長いと認められる点、(ウ)面ファスナーの形状、及び配置について、本件登録意匠は、面ファスナーの前後幅が、帯状体の幅の1/3程度で、そのうちの、脚部に取り付けられた面ファスナーの位置が、使用状態での脚部下半部下面、即ち、脚部下面の左脚部と右脚部とにそれぞれ同じ長さでまたがる位置に配されているのに対し、イ号意匠は、面ファスナーの前後幅が、帯状体の幅の2/3強で本件登録意匠より広幅であり、そのうちの脚部の面ファスナーの位置が、左脚部の外面(下面)の範囲に止まる点、(エ)シート部の先端について、本件登録意匠は両角が円弧状であるが、イ号意匠は直角状である点、が認められる。

そこで上記の共通点と差異点が類否判断に及ぼす影響を検討する。
まず共通点(A)について、この種の正座用の座いすにおいては、剛質でやや肉厚の横長矩形の同形の区画を2区画、横に連ねて左脚部、及び右脚部とし、使用時にこれを略V字状に折曲して開き、その開かれた上面に、座面として柔軟で肉薄のシート材を架け渡して逆三角形の枠体を形成して座いすとして使用する構成は、実開昭61-97950号公報記載の携帯用折畳み正座椅子(甲第4号証の3)実開昭62-203649号公報記載の携帯用しびれ防止座具(乙第3号証)、実公昭2-14743号公報記載の折畳正座器(乙第4号証)等に認められ、またこれらの座椅子は、使用しないときには、左右の脚部を平らに折り畳み、その間に座面を内折りして挟むことができるように形成されたものであることも認められる(甲第4号証の3、乙第4号証)。
またこのような構成の座いすにおいて、シート材を一方の脚部に固定し、略V字状に開かれた脚部の上面に、座面としてシート部を架け渡した後、余った部分を他方の脚部の外面に沿って巻き回し、そしてシート部と脚部の双方に設けられた止着部を止着し、逆三角形の枠体を形成して座いすとして使用し、同時に止着位置を調節して座面の高さを調節できるよう構成されたものも、実公平1-22539号公報に示された正座用座いす(乙第1号証)に認められる。
従って、これらの構成態様は、本件登録意匠のみが持つ独自の態様とはいえず、類否判断において特徴としてことさら重視することはできない。
また止着部として面ファスナーが用いられている点についても、シート材や布材等を相互に止着する手法として面ファスナーを用いることは、様々の分野で広く、また極く一般的に行われており、正座用椅子においても、シート部と脚部の止着に面ファスナーを用いたものが、実開平2-100558号公報記載の正座用椅子(甲第4号証の4)に認められるところである。従って、シート部と脚部の止着に面ファスナーが用いられている点についても、類否を決定付けるほどの特徴とはいえない。
そして両意匠の共通点について、共通点(B)が、特に実施製品において仮に両意匠に同じ表面素材が用いられた場合に、両意匠に一定の共通感を醸し出すこととなると認められるところであり、これを推し量り、共通点(B)が持つ視覚性を最大限に重視してもなお、共通点(A)及び(B)のみによって類否を決定付けるに十分なものとは判断することができない。
次に、両意匠の差異点について検討する。
まず差異点(ア)、すなわち、脚部下端の台座の有無という差異は、この種の、全体がシンプルな略逆三角形の枠体をなす座いすにおいては、骨格的な構成に係わる差異というべきで、また使用状態における外観上の明らかな差異であって、全体観察における視覚上の差異として顕著である。また全体が略逆三角形の枠状をなすことが格別特徴的とはいえないこの種の座いすにおいては、特にイ号意匠において形態上の特徴を表すところとして、看者が着目すると考えられる。従って差異点(ア)は、それのみで、類否判断に極めて大きな影響を及ぼすものである。
そして差異点(イ)は、シート部の長さそれ自体は、展開状態では両意匠間にさほど大きな差はないとしても、座いすとして極く普通に使われる状態において、シート部が、脚部下端、即ち接地部を回り込む構成であるか否かの差異となるもので、差異点(ア)と関連し合って、座いすとしての構成の違いを更に強く看者に印象付けるところとなっている。
そして差異点(ウ)も、とりわけ面ファスナーが配置の違いが、(イ)の差異と組み合わさり、座いすとしての構成の違いを看者に強調する効果として働いている。
即ち両意匠の差異点について、差異点(ア)が、それのみで類否判断に極めて大きな影響を及ぼし、更にこれに、差異点(イ)のシート部に長さの違い、及び差異点(ウ)の面ファスナー配置に関する差異が加わり、座いすとしての、全体構成の違いが看者に強く印象付けられるところとなっており、そして両意匠には他にも、差異点(ウ)の面ファスナーの形状、差異点(エ)のシート部の先端形状の差異等が認められ、両意匠の差異点は、共通点を凌駕して、座いすとしての形態的まとまりを別異とし、意匠全体として、優に、両意匠の類否を決定付けるものと認められる。
従って、両意匠は、意匠全体として類似しない。

(4)むすび
以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2010-02-02 
出願番号 意願2003-15489(D2003-15489) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (D2)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 遠藤 行久
特許庁審判官 市村 節子
杉山 太一
登録日 2004-02-20 
登録番号 意匠登録第1201508号(D1201508) 
代理人 熊野 剛 
代理人 田中 秀佳 
代理人 城村 邦彦 
代理人 新庄 孝 
代理人 入江 一郎 

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