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審決分類 審判 補正却下不服  物品(物品の説明を含む) 取り消す F2
管理番号 1212845 
審判番号 補正2009-500011
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 補正却下不服の審決 
審判請求日 2009-08-19 
確定日 2010-01-05 
意匠に係る物品 録音再生器具 
事件の表示 意願2008- 20164「録音再生器具」において、平成21年5月11日付けでした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原決定を取り消す。
理由 第1 本願意匠及び手続きの経緯
1.本願は、平成20年(2008年)8月5日の意匠登録出願であり、出願当初の願書の記載によれば、その意匠は、意匠に係る物品を「録音再生器具」とし、形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。
なお、添付図面は、【意匠の説明】欄に「左側面図は右側面図と対称にあらわれるため省略する。」とあり、6面図のうち左側面図を除いた各図面と、「A-A線断面図」、「B-B線端面図」、及び「使用状態を示す参考図」である。そして、【意匠に係る物品の説明】欄に、「本物品は、録音再生回路基板を内蔵するボード型の録音再生器具である。さらに、ボード面にはマーカーでの書き込みが可能であり、ボード下部にはマーカーを収納する為の収納ケースが設けられている。また、ボード上部両端には紐取付用の貫通孔が形成されており、その紐により所望の場所に掛けて使用できる。」とある。

2.これに対し審査官は、請求人(出願人)に対し、架電すると共に、平成21年4月16日付けで「この意匠登録出願については、平成21年4月16日付の架電内容による補正書の提出を待って、何らかの通知をする予定です。」と記載した通知書を送付した。

3.架電に対し請求人は、平成21年5月11日付けで手続補正書を提出し、【手続補正1】として「内部構造を示す参考図」を追加し、【手続補正2】として「意匠に係る物品の説明」欄の記載を変更した(別紙第2参照)。
その欄の記載の変更は、出願当初の記載の末尾に「また本物品は、内部構造を示す参考図に示されるような薄型の音声情報記録/再生部を有し、この内部構造を2枚の支持シートで挟み込んで構成されている。」との一文を追加したものである。

4.この手続補正に対し審査官は、平成21年6月29日付けで、「上記手続補正書により、内部構造を示す参考図を追加して録音再生に関わるスイッチの位置及び領域を特定されましたが、この補正は、この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて出願当初の願書の記載及び添付図面を総合して判断しても特定できなかった意匠の要旨を特定するものと認められます。」との理由で、意匠法第17条の2第1項の規定に基づき補正の却下の決定をした。

第2 審判請求の趣旨とその理由
これを不服とした請求人は、「平成21年5月11日付けでした手続補正書に対して、平成21年6月29日になされた補正却下の決定を取り消す、との審決を求める。」とした審判請求をし、同決定の取消しを求めた。その理由は、おおむね以下のとおりである。

1.要旨変更に係る争点の説明
本件の要旨変更に係る争点は、「内部構造を示す参考図」を追加したことで、本件意匠の録音再生に関わるスイッチの位置及び領域が特定されたか否かの判断にあります。
2.補正の根拠及び要旨の変更でない旨の説明
本件意匠は「正面図」に示される通り、そのボード面に何の印刷も施されていない状態の物品です。ただし「意匠に係る物品の説明」で説明されている通り、そのボード内には録音再生回路基板が内蔵されています。したがって、出願当初の本件意匠は、録音再生機能を備えた物品ですが、そのスイッチの位置及び領域は特定されていません。なぜならば、本件意匠は、ボード面にスイッチの位置等を示す印刷等を施す前に出荷されることもある製品だからです。
例えば、製造業者は本件意匠に係る物品を製造し、これを販売業者に出荷し、その販売業者がボード面に印刷又はデザイン付フィルムを貼着して一般消費者に販売するという流通形態が有ります。この場合は、製造業者が販売業者にそのスイッチの位置(回路基板の内蔵位置)を伝えれば良いのですが、逆に製造業者が販売業者の希望に応じて位置を設計変更して製造することもできます。なお、本物品は薄い回路基板を2枚の支持シートで挟むという簡単な構成なので、容易に回路基板の位置を設計変更して製造できます。
また例えば、一般消費者が購入する段階で初めて印刷又はデザイン付フィルムを貼着するという流通形態も考えられます。この場合は、その購入者に多数のデザインのサンプルの中から一つを選択して貰い、それを販売業者が印刷又はデザイン付フィルムを貼着して完成品を渡すことになります。そして、この場合は、スイッチの位置も一種類だけでなく左右、上下、真ん中など多数のタイプの製品を予め取り揃えておくことが、購入者の様々なニーズにより良く対応する観点から必要です。
以上の通り、本件意匠においてスイッチの位置及び領域は、その後ボード面に印刷又はデザイン付フィルムの貼着を行なう販売業者や一般消費者のニーズに応じて適宜変更されるものです。したがって、出願当初の本件意匠ではスイッチの位置及び領域が特定されていないと言うよりも、本物品の流通形態や利用法に鑑みれば、それは特定されるべきでないと言うべきなのです。
「内部構造を示す参考図」は、「意匠に係る物品の説明」に記載の「薄型の音声情報記録/再生部」の構成をより明確に理解出来るように補足的に追加した参考図であり、決してスイッチの位置及び領域を特定する為の参考図ではありません。更に述べるならば、「参考図」とは、正面図、側面図等の意匠の形態全体を特定する為の図面とは異なり、意匠に係る物品の一部の事項を理解し易いようにする為の参考目的の図面です。そして本件の「内部構造を示す参考図」中で参考にすべき部分とは、「薄型の音声情報記録/再生部」を構成する各部品が全て「薄型」である点です。一方、この参考図のスイッチの位置及び領域については、本件意匠の参考にすべきではありません。なぜならば、先に述べたように、本件意匠においてはスイッチの位置及び領域はその外観形態には現れず、本物品の流通形態や利用法に鑑みれば、そのスイッチの位置及び領域は決して特定されるべきではないからです。
本件意匠の「内部構造」は外観形態に現れないので、その構造や位置関係は本件意匠の形態とは無関係です。特に、本件で争点となるスイッチの位置及び領域に関しては、販売業者がボード面に印刷又はデザイン付フィルムの貼着を行なった後や一般消費者の手に渡る段階では、ボード表面にスイッチの位置が表示されますが、本件意匠に係る物品はその前の段階の製品であり、内部構造中のスイッチの位置及び領域は本件意匠の形態を特定するものではありません。
以上の通り、本件の「内部構造を示す参考図」は、本件意匠の録音再生に関わるスイッチの位置及び領域を特定しておらず、それ故に「内部構造を示す参考図」を追加した本件手続補正書は、出願当初の願書の記載及び図面の要旨を変更するものではないと確信致します。

第3 当審の判断
そこで、原決定の当否について検討する。
1.出願当初の願書の記載によれば、本願の意匠は、意匠に係る物品が「録音再生器具」であり、【意匠に係る物品の説明】欄の記載により、「本物品は、録音再生回路基板を内蔵するボード型の録音再生器具である。さらに、ボード面にはマーカーでの書き込みが可能であり、ボード下部にはマーカーを収納する為の収納ケースが設けられている。また、ボード上部両端には紐取付用の貫通孔が形成されており、その紐により所望の場所に掛けて使用できる」ものであることが認められる。
その外観形態は、横長長方形状の一枚板型ボードの下部中央に、上部が開口した箱型収納ケースを、背板部がボード下端から延伸するように形成し、ボードの左右上隅部に紐取付用の小円状貫通孔を設けた構成態様のものであり、ボードの縦横比を約10:17とし、収納ケース横幅はボード横幅の約1/6とし、収納ケースの縦横奥行き比を約1:7:1とし、ボードの厚みはボード横幅の約1/70程度の薄いものであることが認められる。

2.当該手続補正書における補正の内容のうち、【意匠に係る物品の説明】欄の記載の変更とは、出願当初の記載の内容に続けて、「また本物品は、内部構造を示す参考図に示されるような薄型の音声情報記録/再生部を有し、この内部構造を2枚の支持シートで挟み込んで構成されている。」との記載を追加したものであり、同時に追加された「内部構造を示す参考図」を説明したものと理解される。そして「内部構造を示す参考図」は、出願当初の正面図(ただし、小円状貫通孔はない。)様に表した図の右方部分に、内蔵されている振動板とピエゾ素子による音声情報入出力部、フィルム基板、スイッチ、IC基板、コイン電池など、音声情報記録/再生部を構成する薄型部品を、概略図として表したものである。

3.以上の事実を踏まえ、これらの補正が、出願当初に特定されていなかった意匠の要旨を特定した補正にあたるのかを検討するが、以下、(1)本願意匠は、録音再生に関わるスイッチの位置及び領域が明示されなければ、意匠の要旨が特定されたとはいえないのか否か、(2)「内部構造を示す参考図」の追加は、本願意匠の録音再生に関わるスイッチの位置及び領域の特定となるのか否か、(3)本願意匠は、当該補正による形態のままで保護の対象となるのか否か、(4)総合判断、の順で検討する。
なお、請求人が当該補正を行った理由は、審判請求書の請求人の主張によれば、原審の審査官から、「本件意匠では回路基板がどのように内蔵されているか不明確なので補正により明らかにして欲しい」と、架電による連絡を受けたためとしている。

(1)本願意匠は、録音再生に関わるスイッチの位置及び領域が明示されなければ、要旨が特定されたとはいえないのか否かについて
意匠法は意匠の持つ形態価値を保護するものであるところ、本願意匠は、すでに出願当初の願書の記載及び添付図面の記載により、形態が特定された意匠が表されており、また、意匠に係る物品においても、意匠に係る物品は「録音再生器具」であるが、録音再生及び筆記用ボードの双方の用途が開示されている。
そして、本願意匠の意匠に係る物品は、「録音再生器具」としていても、筆記を目的としたボードでもあるということだから、本願意匠の物品特性について、録音再生領域とボード領域がどうなっているのか、例えばその全面に装置があって両者は完全に重なっているのか、あるいは装置のないボードのみの部分もあるのか、すなわち、ボード形状をなす「録音再生器具」なのか、また、ボード付きの「録音再生器具」あるいは「録音再生器具」付きボードなのかという点の理解を要するが、出願当初の記載では不明である。
よって、この点の開示がなかったことにつき、本願意匠は意匠の要旨が未だ特定されていない意匠にあたるのかについて検討するが、本願意匠では、この物品特性の理解のために開示されるべき対象物は、外観に現れない内部構造部分である。通常、外観に現れない物品内部の構成態様は意匠の内容として捉えることができないが、物品として特有の機能を発揮する部分に係るものであるために意匠の理解に必要な場合は、参考図等として、意匠の理解を助けるために適宜加えられなければならないものである。
本願意匠は、いわゆる「録音再生器具」とされる物品の意匠としては、従前の一般的なものとは異なった形態であって、ボードという特別な用途もあるのだから、内部構造に関することとはいえ、本来は出願当初から開示されるべき情報であり、原審において「回路基板がどのように内蔵されているか」を明らかにするための補正を求めたのは、当然といえる。
そうではあるが、当該補正による内容は、外観に現れない部分に係る開示であって、本願意匠の外観形態を何ら変更するものではなく、保護されるべき形態価値は出願当初のものと何ら変わるものではないこと、さらに、一定の範囲内において出願当初から内部構造の存在が明示されていたこと、及び、物品として新規ともいえること等を考慮すれば、この補正はそもそも内蔵されていたスイッチ等の位置の確認程度のものといえ、補正によって初めて本願意匠の意匠の要旨が特定されたとするほど、厳格に取り扱うべきものではない。本願意匠の場合、出願当初の願書の記載及び添付図面の記載により、意匠の要旨は特定されていたものとするのが相当である。

(2)「内部構造を示す参考図」の追加は、本願意匠の録音再生に関わるスイッチの位置及び領域の特定となるのか否かについて
請求人は、審判請求書において、補正で開示した本願意匠のスイッチの位置及びその領域は、実はこれに限ったものでなく、位置を設計変更して製造することも可能な物品であるため、特定されるべきものではない旨主張し、さらに具体的に、「スイッチの位置も一種類だけでなく左右、上下、真ん中など多数のタイプの製品を予め取り揃えておくことが、購入者の様々なニーズにより良く対応する観点から必要」とし、「本物品の流通形態や利用法に鑑みれば、そのスイッチの位置及び領域は決して特定されるべきではない」と主張する。
もしも請求人の主張を採用するならば、本願意匠は、このままでは製造もできない工業上利用不可能な意匠であるか、または、内部構造のない筐体の様な意匠ということになる。また、出願当初の願書の記載及び添付図面、あるいは補正された願書の記載及び添付図面から、乖離していることにもなる。しかし、意匠の範囲は、願書の記載及び添付図面の記載に基づき定められるものであるから、それらの記載に照らせば、請求人の上記主張を採用することはできない。
そうすると、本願意匠は、外観形態に現れていないが、スイッチは参考図のような位置及び領域に特定されて内蔵されていると解するのが合理的である。
しかしながら、本願意匠のスイッチの位置及び領域の特定は、物品の成立のためには重要ではあるが、参考図で現される内部構造はそもそも外観と等価とみるべきではなく、前項のとおり、意匠の要旨がこれにより特定されたとするのは適切ではない。

(3)本願意匠は、当該補正による形態のままで保護の対象となるのか否かについて
次に、スイッチの位置及び領域が外観形態に現れていない意匠は、意匠保護の対象となるものであるのか否かについて検討する。
意匠においては、当該意匠に係る物品が流通過程に置かれ取引の対象とされる場合において、保護されるべき地位を確保すると解されるものである。エンドユーザーへ販売するための体裁が整った意匠のみを意匠保護の対象とするということはできない。
本願意匠の流通形態について請求人は、審判請求書において、「製造業者は本件意匠に係る物品を製造し、これを販売業者に出荷し、その販売業者がボード面に印刷又はデザイン付フィルムを貼着して一般消費者に販売する」流通形態や、一般消費者が購入する段階で初めて印刷又はデザイン付フィルムを貼着するという流通形態を挙げている。
そのような販売実態の証明書の提出はないが、例えば一般消費者への販売に係る業者が、消費者の嗜好を踏まえたボード面への印刷又はデザイン付フィルムの貼着等を自ら手がけたいとして製造業者との業者間取引をすることは想定できる一方、このような取引を否定する証拠はない。
したがって、本願意匠に係る物品についてそのような流通過程に置かれることがあり得る以上、本願意匠を意匠保護の対象から排除すべきでない。ただし、本願意匠はそのような取引の対象とされる場合を鑑みて保護されるべきとするのであり、その取引の後、どのように使用される意匠なのかが、明示される必要がある。

(4)総合判断
以上、検討したところによれば、意匠法は意匠の持つ形態価値を保護するものであるところ、当該手続補正書における補正の内容は、出願当初の願書の記載及び添付図面の記載が表す本願意匠の外観形態を変更するものではなく、一方、本願意匠の意匠に係る物品については、出願当初の記載により、物品の成立性を一応認定できるものであったので、本願意匠は、出願当初の願書の記載及び添付図面の記載において既に、意匠の要旨は特定されていたものである。
当該手続補正書による補正についていえば、本願意匠は、物品特性に係るスイッチの位置等の内部構造と外観形態との関係性が、未だ確たるものではなかったため、当該補正により、その位置の確認がなされたと認めるのが相当である。なお、当該補正の内容も、この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて出願当初の願書の記載及び添付図面を総合して判断すれば当然に導き出される範囲にあるといえるものである。
したがって、当該手続補正書による補正について、この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて出願当初の願書の記載及び添付図面を総合して判断しても特定できなかった意匠の要旨を特定するものと認められます、との原審における補正の却下の決定は、補正についての認定を誤ったものであるといわざるを得ない。

第4 むすび
平成21年5月11日付けの手続補正書による補正を、意匠法第17条の2第1項の規定により却下すべきものであるとした原審の決定は不当であり、取り消しを免れない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2009-12-01 
結審通知日 2009-12-02 
審決日 2009-12-17 
出願番号 意願2008-20164(D2008-20164) 
審決分類 D 1 7・ 2- W (F2)
最終処分 成立 
前審関与審査官 木村 恭子 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 樋田 敏恵
橘 崇生
登録日 2010-03-05 
登録番号 意匠登録第1384541号(D1384541)  
代理人 緒方 雅昭 
代理人 石橋 政幸 
代理人 宮崎 昭夫 
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