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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K1 |
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管理番号 | 1212849 |
審判番号 | 不服2009-16744 |
総通号数 | 124 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2010-04-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-09-09 |
確定日 | 2010-01-20 |
意匠に係る物品 | はさみ |
事件の表示 | 意願2008- 1716「はさみ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,平成20年1月29日の意匠登録出願であり,その意匠は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「はさみ」とし,形態を願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとするものである(別紙第1参照)。 2.引用意匠 原査定において,拒絶の理由として引用した意匠は,特許庁発行の意匠公報記載,意匠登録第1292060号「はさみ」の意匠であって,その形態は,当該公報に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。 3.請求人の主張 これに対して,請求人は審判を請求し,概ね次のとおりの主張をした。 両意匠は,(a)5連刃よりなる刃部,グリップ,刃とグリップを繋ぐ柄部よりなる全体の構成の点,(b)柄部の形状の点,および(c)大小2つのグリップよりなる構成の点において共通しています。 両意匠の共通点のうち(a)の5連刃よりなる刃部,グリップ,刃とグリップを繋ぐ柄部よりなる全体の構成の点は,文書や書類を細断する用途に持いられる「はさみ」の物品分野においては,ありふれた形態にすぎず,かかる物品の需要者をして特段注意を惹く部分ではないといえます。また,両意匠の共通点である(b)(c)の点につきましても,(b)柄部がグリップ刃側端部から刃部根元に掛けて傾斜されており,全体形状を略くの字形にして成形されている点は,使用時の安定感や手首への負担軽減のため,(c)大小二つのグリップよりなる点は,手になじませるためや親指を動かしやすくするために,いずれも従来からごく普通に見られる形状にすぎません。したがって,両意匠の共通点である上記(a)乃至(c)の点は,意匠の類否を左右する要素としては大きく評価できるものではないといえます。 一方,両意匠は,(d)小グリップの外周形状の点,(e)小グリップの指入れ穴の形状の点,(f)大グリップの外周形状の点,(g)大グリップの指入れ穴の形状の点,(h)大小のグリップと柄部との接続形態の点,および(i)グリップに設けられたヒットポイントの形状,数の点において相違し,グリップの形状において多くの差異点を有しています。 小グリップに関しては,外周形状において,本願意匠が,大グリップと平行に対向する辺,および柄部側端部にある2本の直線と,一方の端部付近にて逆方向へ曲がる2種類の曲線によって構成される略円弧からなり,3カ所の角がはっきりと確認できる形状よりなっているのに対し,引用意匠は,略楕円形に形成されており,1カ所の角も確認することができません。また,小グリップの指入れ穴の形状について,本願意匠は略正円形よりなるのに対し,引用意匠は小グリップ外周形状とほぼ相似形の略楕円形に形成されています。 また,大グリップに関しては,外周形状において,本願意匠は,小グリップと平行に対向する辺,および柄部側端部にある2本の直線と,一方の端部付近にて円周方向とは逆方向への曲線に,直線同士の交点と逆側の端部同士を略円弧よりなる曲線によって繋げて形成されており,当該略円弧は,柄部側端部付近にて円周方向とは逆方向への曲線を描いて柄部側端部の辺に繋げられており,3カ所の角が看取される形状よりなるのに対し,引用意匠は,小グリップと平行に対向する部分を直線とし,柄部側端部の曲率を柄部方向逆側端部に比べて大きくした,丸味を帯びた略三角形に形成されており,1カ所の角も存在しない形状になっています。また,大グリップの指入れ穴の形状において,本願意匠は小グリップと対向する辺の中間付近を丸く膨出させた,豆形の形状よりなるのに対し,引用意匠は大グリップ外周形状とほぼ相似形の略三角形に形成されています。 加えて,(i)グリップに設けられたヒットポイントの形状においても,本願意匠は正面視長方形よりなり直線的であるのに対し,引用意匠は正面視略半円形からなり曲線的である点において異なっています。 したがって,グリップを全体として観察した場合に,本願意匠は,曲線と直線が入り混じった前衛的でシャープな印象を与える一方,引用意匠はシンプルで柔らかな印象を与えるといえます。 また,グリップ全体として,本願意匠は,ヒットポイントが1個であり,大グリップと小グリップとの間隔が狭いこと,小グリップの外周から大グリップの外周がほぼ1つのラインによって続いているように看取されることから,グリップが全体としてまとまりをもった一体感のある印象を需要者に与えることに成功しているといえます。一方で,引用意匠は,ヒットポイントが2個設けられていること,ヒットポイントの下部に柄部の始点があること,大小のグリップの形状が同じような円形形状に看取されることから,大小のグリップが分断された印象を与えるといえます。 よって,本願意匠と引用意匠は,グリップの形状において需要者に与える印象を全く異にするといえます。 さらに,本願意匠において,小グリップの柄部逆側,大グリップの柄部側に角を設け,大小グリップの柄部側を中央に向かって上がった斜めの直線状とし,全体として直線と曲線で大グリップと小グリップがつながったように見えるデザインは,従来のはさみに見られないものであり,高い創作性を有する部分であるといえます。また,本願意匠の大グリップに設けられた抉れ部は使用時に人差し指を指入れ穴に入れずに当該部分に当てて使用できる点で,デザイン性と使いやすさを兼ね備えた形状となっており,全ての指を指入れ穴に入れて使用される引用意匠とは異なっています。かかる点は,はさみの使用方法にかかる重要な点であり,需要者をして着目される点であるといえます。また,当該抉れ部と柄部中央に向かって斜めに上がった柄部端部側のV字型境界部分とを調和させた本願意匠の形状は,上述のとおり従来のはさみには見られません。 したがって,本願意匠はグリップが需要者に与える印象に加え,創作のポイントにおいても引用意匠と全く異なったものであるといえます。 4.当審の判断 そこで,本願意匠と引用意匠を比較すると,まず,両意匠は,「はさみ」であるから意匠に係る物品が一致する。 次に,形態について,一致点と相違点について総合的に検討すると,一致点については,すなわち,5連刃からなる点,柄部が略「く」字状である点,小グリップと大グリップが対向して形成されている点については,この意匠の属する分野においては,極めて普通に見られる形態であって,格別な特徴はなく,意匠の類否判断上重要視することはできない。 一方,相違点については,すなわち,本願意匠について,(あ)小グリップが,大グリップと平行に対向する辺,および柄部側端部,の2辺が,約120度の角度を有し,また,大グリップの相当部分も対称的に形成されており,これらの4辺の直線により小グリップと大グリップ間の内側に略Y字状部が形成されている点,(い)小グリップの指を入れる穴は,大グリップと対向する辺の一部を直線にした略正円形よりなり,小グリップの端部が略三角形状に突出している点,(う)大グリップの指を入れる穴が,小グリップと対向する辺の中間付近を丸く膨出させた,豆形の形状よりなる点,(え)大小のグリップと柄部とは,柄部が,グリップ柄部側端部の幅内に収まるように接続されている点,(お)大小のグリップ間に,正面視長方形状のヒットポイントが1つ設けられている点は,引用意匠とは異なる本願意匠の独特な特徴をよく表しているものであることから,僅かな相違とはいえないものであり,これらが類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。 以上のとおりであって,両意匠は,意匠に係る物品は一致するが,その形態については,両意匠の一致点および相違点の視覚的効果を総合的に判断すると,相違点が意匠全体に与える影響は大きく,両意匠は類似しないものといわざるを得ない。 5.結び したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないので,原査定の拒絶理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。また,他に本願の登録を拒絶すべき理由を発見することができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2010-01-04 |
出願番号 | 意願2008-1716(D2008-1716) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(K1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大峰 勝士 |
特許庁審判長 |
関口 剛 |
特許庁審判官 |
樋田 敏恵 橘 崇生 |
登録日 | 2010-03-12 |
登録番号 | 意匠登録第1384744号(D1384744) |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |