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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 K3
管理番号 1212852 
審判番号 不服2009-15351
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-21 
確定日 2010-01-28 
意匠に係る物品 張線器 
事件の表示 意願2007- 32439「張線器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由
1.本願の意匠
本願は,平成19年11月27日の意匠登録出願であり,その意匠は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「張線器」とし,形態を願書及び願書に添付した図面のとおりとしたものである(別紙第1参照)。

2.原査定の拒絶の理由
原査定において,本願の意匠は,「この種物品においては,一端を係止する支柱等の状況に応じて,連結部分を適宜改変し,状況に応じたクランプ等を取り付けて使用することが商習慣上普通に行われているところ,この出願の意匠は,日本国内に於いて広く知られた意匠1の張線器の連結部分に僅かな改変を加え,意匠2にみられるようなU字板クランプを,断面コ字状の支持金具を介して逆U字状に取り付けたものであって,格別の創作力を要したものとは認められません。
意匠1 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第0724667号の意匠
意匠2 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1053700号の意匠」とし,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとして,拒絶の理由が通知された。

3.請求人の主張
これに対し,請求人は,意見書を提出して,要旨以下のとおり主張した。
(A)引例意匠1の張線器部分は,コ字形の軸受部の対向する側板間に巻き線軸を架設し,対向する側板の一方の外側にラチェット機構を形成した構成ですが,引例意匠1のこのラチェット機構は,側板の巾いっぱいに大きく形成されていて,このラチェット機構が非常に大きく見えるデザインです。これに対し,本願意匠の張線器部分も,コ字形の軸受部の対向する側板間に巻き線軸を架設し,対向する側板の一方の外側にラチェット機構を形成した構成ですが,本願意匠は,コ字形の軸受部の側板が引例意匠1の側板に比較して横長に形成され,また,本願意匠のラチェット機構は,引例意匠1のそれと比較して小さく形成されていて,側板が横長なこととあいまってラチェット機構が側板の端部寄りに小さく見えるデザインであり,ラチェット機構が大きく見える引例意匠1とは印象が異なります。
また,本願意匠の軸受部の側板間の連結板には,クランプ部分を連結するためのボルトナットが設けられたデザインですが,この本願意匠の連結板に相当する引例意匠1の張線器部分には,このような連結用ボルトナットはありません。
(B)引例意匠2のロープクランプは,U字状板の対向する板間にボルトを架設したデザインですが,このボルトは長さがあり,その先端を外方へ長く突出させていて,この長く突出するボルト先端が非常に目立つデザインとなっております。これに対し,本願意匠のクランプ部分は,U字状板の対向する板間に,このU字状板の板間の開口方向と開口方向を逆向きにしてコ字状連結部を配設すると共に,U字状板の対向板とコ字状連結部の対向板とを重合し,このコ字状連結部とU字状板の重合板部間にボルトを架設した構成デザインです。即ち,本願意匠のクランプ部分は,U字状板の内側に,引例意匠2のロープクランプにはない小さいコ字状連結部が配設されて成るデザインであり,U字状板とボルトだけで成る引例意匠2のロープクランプとはデザインが大きく異なります。
以上のように,引例意匠1の張線器部分と,引例意匠2のロープクランプを組み合わせても,本願意匠の張線器とは異なるデザインとなり,本願意匠に容易に想到することはできません。

4.当審の判断
そこで請求人の主張を踏まえ,さらに検討する。
(1)引例意匠
引例意匠1は,昭和63年2月10日に特許庁が発行した意匠登録第724667号公報に記載の意匠であって,その形態は,当該公報に示すとおりとしたものである(別紙第2参照)。また,引例意匠2は,平成11年11月10日に特許庁が発行した意匠登録第1053700号公報に記載の意匠であって,その形態は,当該公報に示すとおりとしたものである(別紙第3参照)。
(2)創作が容易か否かについての検討
本願意匠の張線器は,張線器本体とクランプ部からなり,張線器本体は,横長長方形状の板体を略「コ」字状に折り曲げて,対向する側板が形成され,その側板間に巻き線軸が架設され,一方の側板の外側にラチェット機構部が形成されており,クランプ部は略U字状板からなり略U字状部を横に貫通するようにボルトナット部が設けられているが,このような概括的な見方をした場合には,本願意匠と引例意匠とが一致するとも一応いえるが,このような見方は,クランプ付張線器として最低限要求される機能的部分についての特徴を列挙したにすぎず,本願意匠と引例意匠とは以下の点について,相違点があり,これらが容易に想到できたものであるかどうかを検討する必要がある。そこで,具体的な相違点を検討すると,本願意匠は1枚の板体を折り曲げて略「コ」字状の張線器本体が形成されているのに対して,引用意匠1は2枚の板体を貼り合わせて形成されている点,本願意匠の方が引例意匠1より横長である点,本願意匠のラチェット機構部が引例意匠1より小さく,その形状も異なる点,本願意匠の軸受部の側板間の連結板には,クランプ部を連結するためのボルトナットが設けられている点,があげられる。これらの相違点のそれぞれを個別に観察した場合には,それぞれ創作が容易ともいえるが,意匠は常に全体観察をするべきであるから,個別に観察するべきではなく,これらの相違点を総合的にまとめて張線器として造形したことは,商習慣上普通に行われる改変の域を超えており,一定の創作がなされたものであるというべきである。したがって,本願意匠の張線器本体部は,公知の張線器の形態に基づいて,容易に想到できた意匠ではないということができる。
また,本願意匠のクランプ部分は,U字状板の内側に対向して,小さいコ字状連結部がボルトナットで張線器本体と連結されているが,引例意匠2にはこのような部材が存在しない点が相違点としてあげられるが,この点もまた,引例意匠2に基づいて容易に創作できたものということはできないことの証左ということができる。
以上のことから,本願意匠は,公知の意匠に基づいて容易に創作されたものということはできない。

5.むすび
したがって,本願の意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しない。また,外に拒絶をすべき理由を発見することが出来ない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2010-01-15 
出願番号 意願2007-32439(D2007-32439) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (K3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 原田 雅美 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 樋田 敏恵
橘 崇生
登録日 2010-03-05 
登録番号 意匠登録第1384388号(D1384388) 
代理人 吉井 雅栄 
代理人 吉井 剛 

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