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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M2
管理番号 1212868 
審判番号 不服2009-6247
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-24 
確定日 2010-02-24 
意匠に係る物品 膨張弁 
事件の表示 意願2007- 26214「膨張弁」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,本意匠を意願2007-26213とする関連意匠の意匠登録出願として2007年(平成19年) 9月27日に出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品は「膨張弁」であり,その「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)」は,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりのものである。(別紙第1参照)


第2 引用意匠
原審において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとし,本願意匠に対して拒絶の理由として引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,2007年(平成19年) 8月 6日に特許庁が発行した意匠公報に記載の意匠登録第1307166号の意匠であって,同公報の記載によれば,意匠に係る物品は,「膨張弁」であり,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)
また,原審の拒絶査定の理由において,「中央部左右の取付け孔の形状について,本願意匠のように取付け孔の略4/5が円弧状を呈する形状」がありふれた形状であることを示す例示として,「意匠登録第1067091号」の意匠,「意匠登録第1058843号」の意匠があげられている。(別紙第3参照)


第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
両意匠は,意匠に係る物品が一致する。
両意匠は,形態について,主として,以下の共通点と相違点がある。
(共通点)
(A)両意匠は,全体が,略縦長直方体形状の「弁本体部」の頭部に略円盤状の「パワーエレメント」を載設したものである点,
(B)弁本体部は,その左右両側面の中ほどに略円弧状で深い「取付凹部」を形成し,そこから下側を下窄まりとしたものである点,
(C)弁本体部の上部には正面から背面へ貫通している大きな円孔部(以下,「大円孔部」という。)を形成し,弁本体部の下部には正面と背面のそれぞれに大円孔部より小さい円孔部を形成し(以下,正面のものを「正面小円形凹部」,背面のものを「背面小円形凹部」という。),その位置は,正面小円形凹部が上端寄り,背面小円形凹部が中央寄りとし,正面小円形凹部の方が背面小円形凹部よりもやや高いものである点,
(D)弁本体部の中心部に垂直の長い棒が貫通して設置されており,それは,大円孔部及び正面小円形凹部から覗いているものである点,
(E)パワーエレメントは,円盤の上面中央部を低い円錐台状に突出させ,下面側に一回り小径の円盤を重ねた態様に形成され,円盤の直径は,弁本体部の正面・側面の横幅よりやや幅広に構成されているものである点。

(相違点)
(ア)左右の取付凹部の態様について,本願意匠は,弁本体部の左右両側面が「垂れ壁」のようにそれぞれ取付凹部を覆って,取付凹部の開口部が狭く,その向きが左右とも外側の斜め下方向を向いており,また,取付凹部と下窄まりとなった弁本体部の下半部との境界部分が角張っているものであるのに対して,引用意匠は,弁本体部の左右両側面が隅丸状に屈曲し内側へ水平状と続いて取付凹部にそれぞれ連続して,取付凹部の開口部が本願意匠のそれより広く,その向きも左右ともに外側のほぼ横方向を向いており,また,取付凹部と下窄まりとなった弁本体部の下半部との境界部分が滑らかな弧状をなしているものである点,
(イ)正面小円形凹部の位置について,本願意匠は,左右の取付凹部に非常に近接しているのに対して,引用意匠は,左右の取付凹部から少し離れている点,
(ウ)底面の態様について,本願意匠は,底面に,薄い略円錐台状で中央に略小円形状の凹部が形成された突出部が設けられているのに対して,引用意匠は,そのような突出部は設けられておらず,底面の中央に同心二重円で囲まれた六角形状の凹部が形成されている点。

2.本願意匠と引用意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

(1)共通点の評価
共通点(A)及び同(C)ないし(E)は,従前からありふれた態様で,かつ,膨張弁が自動車用空調機器として使用されるもので,機能的な要素が強い物品であるから,これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は限定的なものといわざるを得ない。
共通点(B)について,取付凹部を形成して,下窄まりとすることはありふれた態様であるが,そのことより,むしろ,取付凹部と下窄まりとの態様には,様々なものがみられるところ,その観点から評価すべきであるから,共通点(B)については,左右の取付凹部の対応に係る相違点(ア)に関連させて評価することとする。

(2)相違点の評価
相違点(ア)は,この種物品分野の意匠の先行事例を参照するところ,両意匠のそれぞれに特徴的な態様であり,とりわけ,本願意匠の態様,すなわち,弁本体部の左右両側面が「垂れ壁」のようにそれぞれ取付凹部を覆い,左右の取付凹部の開口部の向きがそれぞれ外側の斜め下方向を向き,そして,取付凹部と共通点(B)の態様である下窄まりとなった弁本体部の下半部との境界部分が角張っているという点は,他にはみられないものであり,需要者・取引者の目を強くひくと同時に,共通点が与えている共通するとの印象を凌駕して,意匠全体として両意匠に別異の印象を与えているものというべきである。
また,相違点(イ)及び同(ウ)も,相違点(ア)と相まって,この感を一層強くしており,相違点が及ぼす影響は,両意匠の類否判断を決定付けているものということができる。

(3)まとめ
したがって,共通点はこの種物品分野の意匠において非常にありふれた態様であって,それらが相まって生じている視覚的効果は,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至っていないのに対して,相違点が相まって生じている視覚的効果はそれらを凌駕して,意匠全体として両意匠に別異の感を与えているものであるから,両意匠が類似するということはできない。


第4 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原審の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同条同項柱書によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2010-02-12 
出願番号 意願2007-26214(D2007-26214) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (M2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 越河 香苗 
特許庁審判長 瓜本 忠夫
特許庁審判官 杉山 太一
淺野 雄一郎
登録日 2010-03-26 
登録番号 意匠登録第1386455号(D1386455) 
代理人 山本 哲也 
代理人 山本 哲也 

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