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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F3
管理番号 1214480 
審判番号 不服2009-20240
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-21 
確定日 2010-04-05 
意匠に係る物品 表札 
事件の表示 意願2009- 1915「表札」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,平成21年1月30日の意匠登録出願であり,その意匠は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「表札」とし,形態を願書及び願書に添付した図面に示すとおりとしたものである(別紙第1参照)。

2.原査定の拒絶の理由
これに対して,原査定において,「願書記載の説明及び提出図面によれば,本願意匠は,当該物品の形状に関する創作物であって,その構成態様は,(1)正面視長方形状で奥行き方向に湾曲するパネル(以下,湾曲パネルという)の正面側中央にそれよりも一回り小さい長方形パネルを,間隔をあけて配置すると共に,該長方形パネルを左右端部付近の背面側中央に湾曲パネルを貫通して正面側に突出する棒状ステーを突き当てて固定することで全容を形成し,(2)湾曲パネルの正面視縦横比を略1:1.2程度,長方形パネルの縦横比を略1:2.4程度,湾曲パネルの縦幅に対する長方形パネルの縦幅を略5:2程度にそれぞれ設定し,(3)長方形パネルの正面側に円形のビス頭を露出させて成るものと認められます。また,(1)に示す全体の基本的構成態様は,本願意匠を全体的に特徴付けるものであることから,本願意匠の主たる構成態様であると認められます。しかしながら,(1)に示す全体の基本的構成態様は,棒状ステーの本数及び取付け位置が相違する点を除き,下記の文献に記載されていることから,本願の出願前に公然知られたものと認められます。また,長方形パネルの四隅に配置されたステーの配置を左右両側の中央に1カ所ずつとする変更及び(2)に示す全体的な寸法比率の設定は,いずれも常套的改変の域をでないものであり,(3)に示すビス頭を正面に露出させる手法は,この種物品におけるありふれた手法であることから,本願意匠は,当業者であれば,下記の文献に記載された意匠の形状に基づいて容易に想到し得るものといわざるを得ません。」とし,下記意匠として「特許庁発行の意匠公報記載意匠登録第1334833号の意匠」(別紙第2参照)を提示し,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当する旨の拒絶の理由が通知された。

3.請求人の主張
これに対し,請求人は,意見書を提出して,要旨以下のとおり主張した。
(1)本願意匠と引用意匠との対比
本願意匠と引用意匠とを対比すると,下記のような差異点があります。すなわち,(A)後方湾曲パネルについて,本願意匠は,正面視略正方形状であるのに対し,引用意匠は,長方形状である点 (B)本願意匠は,大きな略正方形状湾曲パネルと小さい横長長方形パネルという,形状が異なる両パネルを組み合わせているのに対し,引用意匠は略横長長方形状の相似形の大小のパネルを組み合わせている点(C)本願意匠は,両パネルを左右2本の棒状ステーで固定しているのに対して,引用意匠は4本の棒状ステーと前面パネル後部のボックスで固定している点(D)本願意匠は,形状が異なる大小の両パネルを,間に空間をあけて組み合わせた全体的構成としているのに対し,引用意匠は,形状が相似形の両パネルを,間にボックスを設けて組合わせ,間に空間がなく大きなマッス(塊)で両パネルを連結した全体的構成としている点(E)本願意匠は,長方形パネルを透明として,後方の湾曲パネルの間に空間をもうけたことで,該前面の透明パネル上の文字が後方の曲面パネルに映り込んで文字を立体的に浮かび上がらせる効果を生じさせるものであるのに対し,引用意匠は,「前面パネル後部のボックスを透光性を有する素材で構成し,前記ボックス内に照明装置を組み込んだ場合には,照明器具としても使用できる」もので,前面長方形パネルは不透明である点(F)本願意匠は,湾曲パネルの正面視縦横比を略1:1.2程度としたのに対し,引用意匠は,略5:2程度にしている点(G)本願意匠は,長方形パネルの正面側に円形のビス頭を露出させて成るのに対し,引用意匠は,露出させていない点(H)湾曲パネルの湾曲について,本願意匠は,平面視円弧状で湾曲の奥行きを前面横幅(弦)の略5分の1としたのに対し,引用意匠は,略10分の1とした点(I)湾曲パネルと長方形パネルの配置関係について,本願意匠は,湾曲パネルの両端部と略同じ位置に長方形パネルを配置し,側面視すると長方形パネルが湾曲パネルに隠れるのに対し,引用意匠は,長方形パネルが湾曲パネルの両端部から前方に突出し,側面視すると長方形パネルと湾曲パネル両端部とに隙間が見える点
(2)共通点,差異点に基づく創作非容易性の評価
拒絶理由通知における判断では,引用意匠との大きな差異点である,大きな略正方形状湾曲パネルと小さい横長長方形パネルという,形状が異なる両パネルを組み合わせた基本的構成態様,形状が異なる大小の両パネルを,間に空間をあけて組み合わせた全体的構成態様,および,長方形パネルを透明として,後方の湾曲パネルの間に空間をもうけたことで,該前面の透明パネル上の文字が後方の曲面パネルに映り込んで文字を立体的に浮かび上がらせる効果を生じさせる基本的構成態様の認定を看過しています。これら看過された基本的構成態様については,創作容易である根拠はなんら示されていません。
さらに,拒絶理由通知における判断では,具体的構成態様における引用意匠との差異点である,湾曲パネルの湾曲態様及び両パネルの配置関係についても,認定を看過しており,これらについても創作容易である根拠はなんら示されていません。
以上のように,拒絶理由通知における判断は,本願意匠と引用意匠の構成態様におけるこのような明白な差異点について,創作容易である根拠をなんら示していません。したがって,「本願意匠は,当業者であれば,引用意匠の形状に基づいて容易に想到し得るものといわざるを得ません。」との判断は誤りであり,承服できるものではありません。

4.当審の判断
そこで請求人の主張を踏まえ,さらに検討する。
なお,請求人は,本願意匠の基本的構成態様が,「形状が異なる大小の両パネルを,間に空間をあけて組み合わせた全体的構成態様」及び「長方形パネルを透明として,後方の湾曲パネルの間に空間をもうけたことで,該前面の透明パネル上の文字を立体的に浮かび上がらせる効果を生じさせる」ものであると主張し,原審の拒絶査定は,この点を看過したものであり,この点について,創作容易である根拠はなんら示されていない旨主張するが,拒絶理由通知書および拒絶査定の内容が,上記の点が看過されたものであるか否かについてはともかく,審判における審理においては,請求人の主張も含め,かつ,審判合議体の独自の観点からも,本願意匠が容易に創作できたものであるか否か総合的に検討するものである。
そこで,まず,本願意匠の意匠に係る物品である「表札」として最も注目される正面から観察した状態から検討すると,本願意匠の正面視の形状は,実際に定規を当てて計測した場合には,その縦横比は約1:1.2ではあるものの,この程度の縦横比の差では,視覚的には長方形というよりは略正方形に観察されるものであるとしても不自然ではない。加えて,前面の横長長方形状パネルの存在が,これとの対比効果により後方パネルが略正方形に観察される要因ともなり,全体観察を行った場合,本願意匠は,略正方形状大パネルと横長長方形状小パネルの2枚のパネルから構成されるものであると観察されるというべきである。これに対して,引用意匠の正面視は大小2枚のパネルとも横長長方形状であるので,両意匠は基本的構成態様が異なるということができる。
次に,基本的構成態様が異なる両意匠の視覚的効果を考慮して,本願意匠が創作が容易であったか否かについて検討する。本願意匠は,形状の異なる大小2枚のパネル間の空間により,光の当たり方によっては,前面の透明パネル上の文字を立体的に浮かび上がらせる効果を生じさせることができるのに対して,引用意匠には,大小2枚のパネル間にボックス状部が形成されているので,本願意匠のような効果は生じない。また,本願意匠は,照明器具を別体として設置し,または,自然光によって,前面の透明パネル上の文字を立体的に浮かび上がらせる視覚的効果を狙ったものであるのに対し,引用意匠は,大小2枚のパネル間をボックス状のもので連結し,これが背面まで貫通しているものであり,このボックス状部は透光性素材からなり内部に照明器具を組み込むものであるから,いわば照明器具と表札とを一体化したものであるということができ,文字を明瞭に,または,背面からの間接照明により見せることを目的としているものである。したがって,本願意匠と引用意匠とは創作意図が異なるものであるから,本願意匠については異なる創作行為が行われたというべきである。また,創作意図が異なり,異なる創作行為が行われたのであるから,本願意匠が,引用意匠に基づいて容易に想到できたということはできない。
さらに,請求人は,具体的構成態様における引用意匠との差異点である,湾曲パネルの湾曲態様及び両パネルの配置関係についても,認定を看過しており,これらについても創作容易である根拠はなんら示されていない旨主張するが,本願意匠の基本的構成態様について,上記のとおり引用意匠に基づいて容易に想到できたということができないのであるから,これらについて検討したとしても,結論に影響はないということができる。
以上のとおりであって,本願の意匠は,その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものということはできない。

5.むすび
したがって,本願の意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,原査定の拒絶理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。また,他に本願の登録を拒絶すべき理由を発見することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2010-03-24 
出願番号 意願2009-1915(D2009-1915) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 恭子 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 樋田 敏恵
橘 崇生
登録日 2010-04-16 
登録番号 意匠登録第1387788号(D1387788) 
代理人 山本 哲也 
代理人 梅澤 修 

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