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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D7 |
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管理番号 | 1216229 |
審判番号 | 不服2009-16632 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-09-08 |
確定日 | 2010-02-01 |
意匠に係る物品 | 椅子 |
事件の表示 | 意願2008- 22396「椅子」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
1 本願意匠 本件の審判請求に係る意匠登録出願の意匠(以下、「本願意匠」という。)は、2008年(平成20年)8月30日に出願したものであって、出願書類の記載によれば、意匠に係る物品を「椅子」とし、その形態を願書および添付図面に記載したとおりとしたものである。(審決に添付の「図面第1」) 2 引用意匠 原審査において、本願意匠が類似するとして引用した意匠(以下、「引用意匠」という。)は、独立行政法人工業所有権情報・研修館が2008年 5月7日に受け入れた、株式会社岡村製作所より発行の「Medical Consultation Room 診療室用家具カタログ」の第14頁に掲載された一人掛けいす(製品番号:8168ZZ-P)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC20010591号)であって、意匠に係る物品は「折りたたみイス」であり、その形態は、前記カタログの同頁の写真版に現したとおりのものである。(審決に添付の「図面第2」) 3 本願意匠と引用意匠の対比 本願意匠と引用意匠は、いずれも折りたたみ可能な椅子に係るものであるから、意匠に係る物品が共通し、両意匠の形態については、主として以下のとおりの共通点及び差異点が認められる。なお、引用意匠については、本願意匠の図面の向きに揃えて、以下それぞれの形態を認定する。 まず、共通点として、全体は、前脚部を後脚部よりも縦長の略隅丸「コ」字形状とし、前脚部のやや上端寄りを支点として後脚部の上端を接合し、支点よりやや下方に上面視略隅丸正方形状の座面部を支持し、前脚部の左右上端の間に横長略矩形の背凭れ部を取り付け、前後両脚部を開閉自在に構成したものである点、その各部の具体的な態様において、座面部は、外縁を枠体としてその内側にクッション部を設けている点、そして、背凭れ部は、後方に湾曲したパネル状の部材(以下、「背凭れ部パネル」という。)の左右両端を略筒状部に形成して前脚部の左右上端を挿入し、背凭れ部パネル前方の左右の略筒状部間に、略横長矩形の下辺を下反りの弧状としたパッド部を取り付けている点が認められる。 一方、差異点として、(1)前後両脚部に用いた型材の外形状について、本願意匠は角パイプ状であるのに対し、引用意匠は丸パイプ状である点、(2)背凭れ部パネルの態様について、本願意匠は、上下両縁部分を後方に折り曲げて下縁部分を背面視細長い略截切円状とし、背面略全面に規則散点状の模様を施し、左右の略筒状部の上端にそれぞれ前後に貫通した凹部を形成してバッグ等のハンガーとしているのに対し、引用意匠は、上下両縁部分及び背面の態様が不明であり、左右の略筒状部の上端を丸面状に形成してハンガー部を設けていない点、(3)パッド部の態様について、本願意匠は、下縁の細長い略截切円状部分を背凭れ部パネルに沿って折り曲げているのに対し、引用意匠は、そのような折り曲げ部分がない点、そして、(4)座面部の前縁部分の態様について、本願意匠は、クッション部を枠体の前面にせり出しているのに対し、引用意匠は、せり出していない点が認められる。 4 本願意匠と引用意匠の類似性についての判断 前記共通点及び差異点を総合し、意匠全体として、本願意匠と引用意匠が類似するか否か、すなわち両意匠の類似性について考察する。 まず、前記各共通点について検討すると、形態の全体の構成及び各部の具体的な態様において共通しているとした前記各態様は、この種椅子の構成態様として例を挙げるまでもなく多数見受けられ、両意匠にのみ共通する点であるとは言えないから、共通点はいずれも両意匠の類似性についての判断に与える影響が微弱であり、これら差異点を総合したとしても、両意匠の類似性についての判断を左右するものとなり得ない。 一方、前記各差異点が両意匠の類似性についての判断に与える影響を考察すると、差異点(1)については、この種椅子の分野において、脚部に角パイプ状の型材を用いたものも見受けられるが、形態の骨格的態様を形成し、脚部以外の構成部分と相乗して生じる意匠的な効果に影響を与える場合を考慮すると、本願意匠の前脚部と差異点(2)に係る背凭れ部の形態とを組み合わせた態様に本願意匠を特徴づける新規性が認められるから、その差異は、両意匠の類似性についての判断に影響を与えるものと言える。差異点(2)については、本願意匠の出願前に、背凭れ部パネルの左右の略筒状部の上端に、本願意匠のようにそれぞれ凹部を形成してバッグ等のハンガーとしている態様のものは見受けられず、本願意匠を特徴づける形態であり、また、使用態様において、背凭れ部の前後両面及び左右の上端は比較的目に触れやすい部位である点を勘案すると、その差異が両意匠の類似性についての判断に与える影響は大きいと言える。差異点(3)については、比較的目に触れやすい部位の態様についての差異であるから、両意匠の類似性についての判断にも影響を与えるものと言える。差異点(4)については、この種椅子の分野において、座面部の前縁部分のみを本願意匠のようにせり出した態様のものは見受けられず、本願意匠を特徴づける態様であるから、その差異は、両意匠の類似性についての判断に影響を与えるものと言える。そうすると、差異点(2)及び(3)は、比較的目に触れやすい背凭れ部の態様についての差異であり、これら差異点にかかる態様が相乗した意匠的な効果及びこのほかの差異点を総合した場合、差異点は、両意匠の類似性についての判断を左右するものと言うべきである。 したがって、本願意匠と引用意匠は、意匠に係る物品について共通しているが、両意匠の形態については、共通点よりも差異点の方が両意匠の類似性についての判断に支配的な影響を与えているから、両意匠は、意匠全体として互いに類似しないものと認める。 5 結び 以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであり、同条の規定により拒絶すべきものとすることはできない。 また、本願意匠について、他に拒絶すべきものとする理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2009-12-16 |
出願番号 | 意願2008-22396(D2008-22396) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(D7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 加藤 真珠、松尾 鷹久 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
並木 文子 鍋田 和宣 |
登録日 | 2010-05-21 |
登録番号 | 意匠登録第1390368号(D1390368) |