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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 D7
管理番号 1219780 
審判番号 不服2009-25329
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-22 
確定日 2010-06-11 
意匠に係る物品 自動車用シート 
事件の表示 意願2008- 2151「自動車用シート」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,平成20年1月31日の意匠登録出願であり,その意匠は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「自動車用シート」とし,意匠登録を受けようとする部分は一点鎖線の内側部分であり,その形態を願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとするものである(別紙第1参照)。

2.原査定の拒絶の理由
原査定において,本願の意匠は,「単に,本願出願前に公然と知られた例示意匠1及び例示意匠2のように,自動車用シートの背もたれ部において,正面部の右端略中央部に外装布状皮革の縫合部を形成し,該縫合部につき,本願出願前に公然知られた『日本工業規格 シームの分類と標記記号 JIS L 0121』に記載の表示記号4.07.02あるいは5.42.01ように,端部を折り返した二枚の布を,該折り返し部の稜線同士が隙間を有して平行に向かい合うように左右一対に配し,正面視において,該隙間からみえるようにもう一枚の布を奥側に配して,該左右一対の布のそれぞれの端部寄りの位置に,上下方向にごく普通のステッチを施し,該奥側の布につき,同表示記号5.20.01のように,正面視において,中央部上下方向に凸条部を形成し,該凸条部の両脇部にそれぞれ上下方向のごく普通のステッチを施す態様としたまでに過ぎず,当業者であれば容易に創作できたものと認められます。
例示意匠1 特許庁総合情報館が1999年11月10日に受け入れた(株)ダイヤモンド社が発行した内国雑誌である カー・アンド・ドライバー 1999年12月10日23号の第25頁に記載された自動車用運転席用いすの意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HA11019523号)(別紙第2参照)
例示意匠2 特許庁意匠課が2004年6月11日に受け入れたダイハツ工業株式会社が発行した内国カタログであるCopenの 第38頁に記載された自動車運転席用いすの意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC16026793号)(別紙第3参照)」とし,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当する旨の拒絶の理由が通知された。

3.請求人の主張
これに対し,請求人は,意見書を提出して,要旨以下のとおり主張した。
自動車用シートの接合部をデザインするにあたっては,皮革という素材が際立つように,皮革に隙間を設けるかどうか,設ける場合に幅をどうするか,隙間に配した皮革をプレーンにするか立体的にするか,縫い糸の太さをどうするか,糸の太さにバリエーションをつけた場合にそれぞれの配列をどうするか,様々な意匠を選択する余地がある。これらの選択は,デリケートな美感を考慮しながら決定されるものであり,決定の過程において創作者が相当程度の知的労力を要したものである。
本願意匠に関しても,凸条部の幅や左右の折り返し部分との間隔やステッチのピッチについて,様々な選択肢があった。本願意匠は,デザイン上の様々な選択肢の中から,美感上の配慮をしながら,最終的に完成したものである。その創作の過程には,独占権付与に値する相当程度の知的労働がなされたのであるから,本願意匠は登録されるべきものである。

4.当審の判断
そこで請求人の主張を踏まえ,さらに検討する。
本願意匠は,意匠登録を受けようとする部分を自動車用シートの端部寄りの縫合部の一部とする出願であり,その部分の縫合方法については,本願出願前に公然知られた『日本工業規格 シームの分類と標記記号 JIS L 0121』に記載の表示記号4.07.02あるいは5.42.01(別紙第4参照)にみられるように,縫合方法を個別に観察した場合には,格別の特徴はないが,これらの縫合方法を組み合わせて本願意匠のように構成することにより,一定の創作がなされたということができる。すなわち,(1)中央の上下方向の凸条部は略円弧状の曲面であり,この凸条部と両側に形成された凹部とにより,全体が立体的に構成されている点,(2)左右の折り返し部には太糸で粗いステッチを施し,凸条部の左右には細糸で細かいステッチを施している点,(3)中央の上下方向の凸条部の幅と,折り返し部の端部からステッチまでの長さの比が約5:3である点は,創作に当たって格別困難なものではないにせよ,上記縫合方法を単に組み合わせたものとはいえない程度に,本願意匠を特徴付ける一定の創作行為が行われたというほかない。
以上のとおりであって,本願意匠は,その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものということはできない。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,原査定の拒絶理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。また,他に本願の登録を拒絶すべき理由を発見することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2010-05-31 
出願番号 意願2008-2151(D2008-2151) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (D7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 真珠松尾 鷹久 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 橘 崇生
樋田 敏恵
登録日 2010-07-09 
登録番号 意匠登録第1394363号(D1394363) 
代理人 三好 秀和 

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