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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 D5
管理番号 1222911 
審判番号 不服2010-708
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-13 
確定日 2010-08-31 
意匠に係る物品 コンロ付き流し台 
事件の表示 意願2008- 4951「コンロ付き流し台」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 本願は、本意匠を意願2008-4950号(意匠登録第1357933号)とする平成20年(2008年)2月29日の意匠登録出願であって、その意匠は、願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「コンロ付き流し台」とし、その形状は、願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)
これに対して、原審は、拒絶の理由について、この意匠登録出願の意匠は、願書に記載した本意匠に類似する意匠と認められず、意匠法第10条第1項の規定に該当せず、意匠登録をすることができないものであるとしたものである。
そこで、原審が拒絶の理由において本件出願の意匠(以下、「本願意匠」という。)が類似する意匠と認めないとした願書の【本意匠の表示】の欄に記載された上記(意願2008-4950号)の意匠登録出願の意匠(以下、「本意匠」という。)(別紙第2参照)との類否判断について検討する。
まず、両意匠を対比すると、意匠の係る物品は、ともにコンロ付き流し台であって、同一である。また、その物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状」という。)は、前面に引き出しと食器乾燥機等を備えた正面側に対する背面側の形状において、本願意匠は、ほぼ全面を一枚の幕板としたのに対して、本意匠は、横方向に5枚の同形の扉を並列した差異が認められる他は、ほぼ同一である。
ところで、この流し台は、部屋の中央部に配置される、いわゆる「アイランドタイプ」のシステムキッチンに係り、背面側が壁に当てられて隠れる部分ではなく、背面側からでも通常の使用の状態において利用されるものであり、また、システムキッチン自体は、使用する需要者によって流し台を構成する扉や引き出し等の各ユニットが選択されて組み合わされて設計されるものでもある。
そこで、背面側形状の差異についてみると、本意匠のように正面側と背面側とに扉や引き出し等を組み合わせて設けることは、既にこの種流し台の分野においてありふれた手法であり(例えば、意匠登録第1193047号等参照。)、本意匠の背面側形状にしても、調理する側に立つ正面側が主体的に利用されることからすれば、付加的な要素が強く、その扉も単に横方向に並列しただけであって、他の正面側や上面側などに比べて特段注意を惹くものとは言い難く、また、本願意匠の一枚の幕板にしても、扉や引き出し等の各ユニットが選択される各種組合せのバリエーションの一つとして、付加的な要素を省き一枚の幕板のみとしただけであって、その一枚の幕板形状も、本願意匠の出願前にこの種流し台の分野において公然知られたものであり(例えば、意匠登録第1086085号、意匠登録第1257606号等参照。)、特徴的なものではないことから、この背面側形状の差異は、意匠全体から観れば、格別注意を惹く程のものにはならないと言わざるを得ず、類否判断に及ぼす影響は微弱である。
さらに、一方で、共通する形状については、全体の大半を占めるものであり、かつ、その形状の中でも、特に、(A)全体は、上面にコンロとシンクとを有するキャビネット部と、その下面に取り付けられる台輪部とで構成され、台輪部を、やや高さのある略扁平横長直方体状とし、それに載せるように、キャビネット部を、横と奥行の大きさが台輪部より一回り大きくした略横長直方体状として、キャビネット部が床面より浮き上がる様にし、さらに各部の具体的な形状として、(B)キャビネット部の正面側を、正面視、上端の細幅帯状のカウンタートップ部を除いて、横方向に三分割し、その各横幅の構成比率を約2.4:1:2.4とし、中央が狭い左右対称形とし、さらに、キャビネット部の縦方向の中央よりやや上の位置において、左右両側の引き出しの前面板の上端と、中央の食器乾燥機の前面板とに、横方向に細幅に連続して繋がる、縦断面が略「J」字状の引き手金具を取り付け、また、キャビネット部の上部においても、カウンタートップ部に沿って、右側に収納可能なレンジ用操作部、中央に食器乾燥機用操作部、左側に縦断面略「J」字状の引き手金具とを、横方向に細幅に連続して繋げ、(C)台輪部につき、(C-1)キャビネット部に対する台輪部の位置を、キャビネット部の正面側へ寄せたものであり、底面視、正面側の余地部を細幅として、左右両側の余地部と背面側の余地部との各幅の構成比率を、約1:2.2:3.6とし、背面側が他より大きく幅広とし、(C-2)正面側を、キャビネット部の分割線が台輪部にもそのまま下方に延長して、横方向に三分割し、その各引き出しの前面板の上端に、略鉤状に突出する引き手金具を取り付け、横方向に細幅に連続して繋げた共通点である形状は、(A)全体形状及び(C-1)台輪部位置により、扁平略横長直方体状のキャビネット部が、床面より浮き上がる様になり、台輪部がキャビネット部の正面側へ片寄ることによって、前後方向へのアンバランスを生じさせ、かつ、(B)キャビネット部の正面側形状及び(C-2)台輪部の正面側形状において、キャビネット部と台輪部とを、横方向に三分割し、中央が狭い左右対称形としながら、さらに、引き手金具や各種操作部によって、分割された各キャビネットに跨って、横方向に細幅に連続して繋がる計三本のラインが強調され、これら(A)ないし(C)の合わせ持った形状は、全体の骨格となる統一したまとまりあるデザインの基調を成し、かつ、独自の形状を表出し、従来見られない特徴的なものであり、需要者の格別の注意を惹くものであるから、総じて、共通する形状から生じる意匠的効果は、意匠全体として両意匠に強く共通した美感を生じさせるものである。
そうとすれば、背面側形状の差異は、意匠全体から観れば、背面側だけの一部位の差異に過ぎず、格別注意を惹く程のものともならず、共通する形状が持つ統一したまとまりあるデザインの基調を変更するまでに至らず、差異点が共通点を凌駕せず、両意匠は類似するものである。
以上のとおりであり、本願意匠は、本意匠に類似するものであるから、意匠法第10条第1項の規定を満たすものと認められ、原審がした拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2010-08-16 
出願番号 意願2008-4951(D2008-4951) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (D5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 陽子淺野 雄一郎 
特許庁審判長 遠藤 行久
特許庁審判官 杉山 太一
市村 節子
登録日 2010-09-10 
登録番号 意匠登録第1398853号(D1398853) 

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