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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) J7
管理番号 1233224 
判定請求番号 判定2010-600068
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2011-04-28 
種別 判定 
判定請求日 2010-11-16 
確定日 2011-02-24 
意匠に係る物品 オストミーパウチ固定用ベルト 
事件の表示 上記当事者間の登録第1355160号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号写真に示す「オストミーパウチ固定用ベルト」の意匠は、登録第1355160号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は,甲第3号証に示す意匠(以下,「イ号意匠」という。)は,登録第1355160号意匠(以下,「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求める,と申し立て,その理由として,要旨以下のとおり主張し,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第7号証及び検甲第1号証ないし検甲第3号証を提出した。

1.本件登録意匠について
本件登録意匠は,平成20年9月16日,意匠に係る物品を「オストミーパウチ固定用ベルト」として出願し,その後,平成21年3月6日に設定の登録がなされたものであって,その意匠の内容は,甲第1号証に示される図面記載,甲第2号証の写真及び検甲第1号証の見本のとおりである。

(1)本件登録意匠とイ号意匠の一致点について
両意匠の基本的態様は,いずれも「帯状のベルト本体の長手方向の両端にオストミーパウチのタブを挟み込むクリップがそれぞれ装着され,ベルト本体の長手方向に左右対称の態様のものである。」点で共通し,さらに具体的態様の一致点は次の通りである。
a.クリップは,クリップのベルトとの結合側に,該ベルトの長手方向に平行な対向する2辺がそれぞれやや外向きに湾曲し,該ベルトの長手方向に直角な対向する2辺がそれぞれ直線状をなすベルト通し穴がある態様のものである。
b.正面図側又は背面図側(正面側又は背面側)から観察すると,クリップの長手方向側面とベルト本体の長手方向側面が観察される。クリップの長手方向側面は鰐口状をなし,ベルト本体の長手方向側面は,ベルト本体の両先端部が,クリップのベルト通し穴を貫通した後,折り返され,自ベルト本体の中間部と相互にぴったりと面ファスナーで密着し,折り返し部のベルト本体が2層構成をなす態様のものである。
c.平面図側(平面側)から観察すると,ベルト本体の両端にクリップがあり,クリップとクリップを繋ぐ様に幅寸一様の帯状の伸縮性に富む素材からなるベルト本体があり,該帯状ベルト本体の両先端部は両端のクリップのベルト通し穴を底面図側(底面側)からそれぞれ掻い潜って平面図側(平面側)に出て,折り返され,面ファスナーによって,自ベルト本体の中間部と密着し,折り返し部のベルト本体が2層に構成される態様のものである。

(2)本件登録意匠とイ号意匠の差異点について
本件登録意匠とイ号意匠とは,その基本的態様においては一致しており,具体的態様についても,概ね一致しているが次の微細な差異点が存在する。
a.平面図側(平面側)から観察すると,折り返されたベルト本体の両最先端部は,本件登録意匠の場合には,ベルト本体の長手方向に対して,直角な直線状をなし両角は丸隅処理された形状の態様のものであるのに対し,イ号意匠の場合には,ベルト本体の長手方向に対して,向かい合う形で傾斜を有する直線状をなし,その両角のうち鈍角をなす角は切断されたままであり,鋭角をなす角は,角先がベルト長手方向に対して直角に切断処理された態様のものである。
b.背面図側(背面側)からベルト本体を観察すると折り返されたベルト本体の側面が見えるが,本件登録意匠の場合には,両最先端部が丸隅に処理されているため変曲点を示す線は観測されないが,イ号意匠の場合には,両先端部がベルト本体長手方向に対して向かい合う形の傾斜を有する直線状に切断され,その鈍角の位置に切断された部位を示す切断線が観察される。

2.本件登録意匠とイ号意匠の類否
(1)本件登録意匠とイ号意匠について比較検討するに,両意匠の一致点は,意匠に係る物品が共通し,基本的構成態様は全く一致しているものであり,その具体的態様においてごくわずかな部分について差異点があるのみで,その余の大部分は共通しているものである。
次に,両意匠の差異点について検討するに,ベルト本体の両最先端部の処理についてのみ差異が認められる。すなわち本件登録意匠の場合には,両最先端部は,ベルト本体長手方向に対して,直角に直線状に切断され,その両角は,丸隅処理が施されているのに対し,イ号意匠では,両最先端部は,ベルト本体長手方向に対して,向かい合う形の傾斜を持って直線状に切断され,その両角については,鈍角部は切断されたままであり,鋭角部は角先がベルト長手方向に対して直角に切断処理が施されているが,いずれも丸隅の処理が施されていない。
しかしながら,この程度の差異は,帯状のベルト本体の長手方向の両端にオストミーパウチのタブを挟み込むクリップがそれぞれ装着された態様に影響を与えるものではない。したがって,その差異が両者の類否判断に与える影響は軽微なものと言うほかなく,両意匠の類否判断の要素としてもほとんど評価することができないものである。
(2)請求人が従来提供していた従来品に対比して,本件登録意匠の本質的な特徴は,「ベルト本体長手方向に対して,左右対称であり,かつ,バックルレスである。」点にあるが,イ号意匠もこの特徴を共有していることは言うまでもない。してみると,両意匠の一致点である基本的な構成態様及び具体的態様は,両意匠の形態に関する主要部を構成しているものであり,かつ,意匠全体の基調をなす特徴と言わざるを得ないものであるから,看者の注意を強く惹くところであって,両者の類否判断を左右する支配的要素と考えられる。
そうすると,両意匠に係る物品が共通し,さらに両意匠の形態について,その類否判断を左右する支配的要素による“まとまり”が共通していることとなり,これから生ずる美感をも共通にすることとなるから,両者の創作の要旨は軌を一にするものであって,両意匠は類似する意匠であるといわざるを得ない。

第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は,「イ号意匠は登録第1355160号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない,との判定を求める。」と答弁し,その理由として,要旨以下のとおり主張し,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第9号証を提出した。

1.本件登録意匠第1355160号は,
a.ベルトAが長い長方形状をしていること。
b.当該ベルトAが左右対称になっていること。
c.クリップBを有していること。
d.長さ調節部Cである面ファスナーを有していること。
からなります。

2.本件登録意匠のベルトAが長い長方形状をしていることは乙第2号証の人工肛門用ベルトの図面及び乙第4号証のストーマ衛生装具の図面に示されているように公知である。
その他,乙第6号証の人工肛門における替え袋の固定バンドの図面,乙第7号証の人工肛門処理器の図面にも示されており,これらからも公知であることが分かるものと思料します。一般にベルト,バンドが長い長方形状をなしていることは乙第2,4,6,7号証の図面を参照するまでもなく周知の形状であると思料します。
さらに,判定請求人の提出した本件登録意匠創作前の写真である甲第4号証にもベルトが長方形状をなしていることが示されています。
本件登録意匠のベルトAが左右対称になっていることは乙第2号証の人工肛門用ベルトの図面に示されている。即ち,ベルトAの両端部に面ファスナーが取り付けられており,ベルトが左右対称になっていることが示されており公知である。
その他,乙第6号証の人工肛門における替え袋の固定バンドの図面,乙第7号証の人工肛門処理器の図面にも左右対称であることが示されており,これらからも公知であることが分かるものと思料します。
一般にベルト・バンドが左右対称になっていることは本件登録意匠,及びイ号意匠とは異なる物品のベルト・バンドである乙第5号証の姿勢矯正ベルトの図面,乙第8号証のサスペンダーの図面にも示されており,周知の形状である。
本件登録意匠のクリップBはそれと同様の形状が乙第3号証の帯状体用狭持具の図面,乙第5号証の姿勢矯正ベルトの図面,乙第8号証のサスペンダーの図面,乙第9号証のプラスチック製クリップの図面に示されており公知である。
又,判定請求人の提出した本件登録意匠創作前の写真である甲第4号証にも本件登録意匠と同様のクリップBが示されています。
さらに,当該乙第5号証の図面,乙第8号証の図面及び判定請求人の提出した本件登録意匠創作前の写真である甲第4号証から,ベルトAの両端部にクリップBが設けられている形状はすでに周知の形状である。
本件登録意匠及びイ号意匠のベルトA,A’はストーマ袋を両側から挟む(固定する)ものであるから,ベルトA,A’の両端部にストーマ袋を挟むクリップB,B’が設けられることは当然のことであり,機能上必然的なことである。
したがって,前述の如くベルトAが長方形状であり,左右対称であること,ベルトAの両端部にクリップBが設けられている形状,はすでに本件登録意匠の出願日前より使用されている形状であり,周知の形状であると思料します。

3.そうしますと,本件登録意匠は長さ調節部Cの部分,即ち面ファスナーに特徴があって登録されたものであると思料します。
してみると,イ号意匠が本件登録意匠の類似範囲に入るか否かの判断は長さ調節部C,C’の差異によるもの(差異によることが大きいもの)であると思料します。
即ち,当該長さ調節部C,C’の差異が,全体としてイ号意匠が本件登録意匠に類似するか否かの重要なポイントになるものと思料します。
登録意匠Cの長さ調節部は,通常の略4角形状の面ファスナーを使用しており,さらに,ベルトAの先端部分も面ファスナーと同じ形状で,つまみ部もありません。
これに対し,イ号意匠の長さ調節部C’は面ファスナーが刀の刃先のような特徴的な形状をしており,さらに,ベルトC’の先端部分は面ファスナーとは異なる略台形的な形状をしており,かつ,その斜辺及び端部がつまみ部となっています。
したがって,この特徴的な異なる形状の組み合わせにより,デザイン的に大きな外観的相違を生み出し,全体として本件登録意匠とイ号意匠が全く異なった外観を有することを示しております。
登録意匠第1391608号(判定請求人提出の甲第6号証)は判定請求人である有限会社ピースケアのイ号意匠の意匠出願として出願されたものであり同一の意匠である。当該登録意匠第1391608号のベルトA’の部分,及びクリップB’の部分はすでに公知であることを前提として,長さ調節部C’の部分に特徴があることを明示して部分意匠で出願され,登録されたものである。
しかし,本件登録意匠とイ号意匠は長さ調節部C,C’の部分についての形状が,全く異なっております。この長さ調節部C,C’の形状の差異は非常に大きい,顕著なものであり,そのためイ号意匠と同一の意匠が登録第1391608号として登録されたものと思料します。
さらに,イ号意匠の長さ調節部C’のつまみ部に関し,判定被請求人の登録意匠第1391608号の意匠に係る物品の説明の欄に「参考図2に示されているようにつまみ部があり,そのつまみ部を指でつまんだり引っかけたりすることでより容易に面ファスナーを剥がすことが出来る。」旨が記載され,イ号意匠の当該長さ調節部C’のつまみ部の機能,機能美が示されていますが,本件登録意匠は当該イ号意匠の当該長さ調節部C’の有するつまみ部がなく,そのつまみ部が有する機能,機能美は全く有しておりません。
このようにイ号意匠のC’の部分と,本件登録意匠の長さ調節部Cとの差異,即ちC,C’の形状,機能美の差異は非常に大きな顕著な差異であり,本件登録意匠とイ号意匠を全体として全く別の意匠であるとして認識されるに十分であると思料致します。

4.したがって,イ号意匠は登録第1355160号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないものである。

第3.当審の判断
1.本件登録意匠について
本件登録意匠は,平成20年9月16日に意匠登録出願をし,平成21年3月6日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1355160号意匠であり,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「オストミーパウチ固定用ベルト」とし,その形態は,願書に添付された図面に表されたとおりとするものである(別紙第1参照)。
すなわち,本件登録意匠は,全体が左右対称形状であって,帯状のベルト部とオストミーパウチのタブを挟む2つのクリップ部からなり,帯状ベルト部については,伸縮性を有する細幅のベルトであって,両端部は長手方向に対して直角に切断されたものであるが,角部が隅丸状に形成され,この隅丸形状に沿ってその内側に横長の隅丸長方形状のフック面が形成された面ファスナーが縫い付けられており,これを下記のベルト通し部に挿入した後に折り返すことによりベルトの片面に形成されたループ面と接合するようになっており,クリップ部については,細長のトラック形状の輪状ベルト通し部とこれに2本の細幅の軸により連結された挟み部からなり,ベルト通し部の外径はベルトよりやや幅広であり内径はベルトの幅程度であり,挟み部は平面視隅丸の略横長長方形状であり開口片とこれを軸支する挟み部本体からなり,開口片は横幅の略3分の2を占めており,開口片のヒンジ部側が弧状であり,開口端部側とで略括弧状の形状をしており,正面視では平板状であり,挟み部本体はヒンジ部側が厚く開口端部側は開口片と略同一の厚さであって,この間には傾斜面が形成されているものである。

2.イ号意匠について
イ号意匠は,判定請求書に添付の,甲第3号証の写真に現された意匠(別紙第2),及び,検甲第2号証の見本に示されたとおりとするものである。
すなわち,帯状ベルトの端部形状とクリップ部の挟み部を除き本件登録意匠と同一である。

3.本件登録意匠とイ号意匠の対比検討
本件登録意匠とイ号意匠を対比すると,両意匠は,いずれも腹壁に造設された排泄孔より排泄される便や尿を収納するための小袋を固定するためのベルトであるから意匠に係る物品が一致し,形態については主として以下の一致点及び差異点がある。
先ず,一致点として,(1)全体が左右対称形状であって,帯状のベルト部とオストミーパウチのタブを挟む2つのクリップ部からなる点,(2)帯状ベルト部については,伸縮性を有する細幅のベルトの両端部に面ファスナーが縫い付けられている点,(3)ベルトの両端部を下記のクリップ部のベルト通し部に挿通後,両端を内側に折り返すことによりベルトの片面に形成されたループ面と接合するようになっている点。(4)クリップ部については,細長のトラック形状の輪状ベルト通し部とこれに2本の細幅の軸により連結された挟み部からなり,ベルト通し部の外径はベルトよりやや幅広であり内径はベルトの幅程度である点,(5)挟み部は平面視隅丸の略横長長方形状であり開口片とこれを軸支する挟み部本体からなり,開口片は横幅の略3分の2を占めている点,がある。
一方,相違点として,(ア)帯状端部の形状について,本件登録意匠は,両端部が長手方向に対して直角に切断されたものであるが,角部が隅丸状に形成され,この隅丸形状に沿ってその内側に横長の隅丸長方形状のフック面が形成された面ファスナーが縫い付けられているのに対して,イ号意匠は,帯状ベルトの端部がベルトの上辺に対して略150度の角度で傾斜状に切断され先端付近がベルトの長手方向に直角に切断され,ベルト幅の3分の1程度の幅になっており,この形状に沿って略直角台形状のフック面が形成された面ファスナーが縫い付けられている点,(イ)クリップ部の挟み部について,本件登録意匠は,挟み部の開口片のヒンジ部側形状が弧状であり,開口端部側とで扁平な略樽形状をしており,正面視では平板状であり,挟み部本体はヒンジ部側が厚く開口端部側は開口片と略同一の厚さであって,この間には傾斜面が形成されているのに対して,イ号意匠は,開口片のヒンジ部側形状は略直線であり,開口片の上面に開口片の外形と相似形の細いリブが形成され,挟み部本体上面には略U字状凸部が形成され,細いリブと凸部の外形とで挟み部全体の外形と相似形状部が形成されており,開口端部側の厚さは開口片の方がやや厚い点,がある。
そこで,上記の一致点と差異点について総合的に検討するに,一致点のうち,(1)の点は,両意匠の基本的な構成態様の一致点であり,両意匠の形態の全体にかかわりその骨格を構成するところであって,両意匠の特徴をよく表し,(2)?(5)の点は,各部の具体的態様を表す点であり,基本的構成態様と相俟って両意匠の共通感を際立たせる特徴的な点であり,これらの一致点は,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。これに対して,(ア)の帯状ベルトの端部形状の相違は,この点のみを注視するならばその相違は認識できるものの,本件登録意匠とイ号意匠の類否判断においては意匠全体を観察すべきであるから,帯状ベルトの端部のみにおける部分的な相違であるというほかなく,その視覚的効果も部分的であり,かつ,使用に際しては両端部を折り返して面ファスナーで接合することから,端部形状の相違がそのまま外側に表れるものではなく,折り返した状態では端部形状の相違はそれほど目立つものではなく,類否判断に及ぼす影響はわずかなものであるということができる。(イ)のクリップ部の挟み部における相違は,意匠全体からすると部分的なものである上に,両意匠の挟み部が共に一般的に見かける挟み部の範疇を超えるほど特徴的なものではないことから,類否判断を左右するほど格別顕著な相違とはいえない。
なお,被請求人は,答弁書において「ベルトAが長方形状であり,左右対称であること,ベルトAの両端部にクリップBが設けられている形状,はすでに本件登録意匠の出願日前より使用されている形状であり,周知の形状である・・・そうしますと,本件登録意匠は長さ調節部Cの部分,即ち面ファスナーに特徴があって登録されたものである」旨を主張するが,たとえ公知の意匠の寄せ集めであるとしても寄せ集めたことにより,本件登録意匠の属する分野において,意匠全体として観察した場合,新たな視覚的効果を発揮している場合には意匠登録されることは十分にあり得ることであり,本件登録意匠が意匠登録を受けたのはフック面が形成された面ファスナーに特徴があるからであると断定することは失当である。さらに,「登録意匠第1391608号(判定請求人提出の甲第6号証)は判定請求人である有限会社ピースケアのイ号意匠の意匠出願として出願されたものであり同一の意匠である。当該登録意匠第1391608号のベルトA’の部分,及びクリップB’の部分は・・・すでに公知であることを前提として,長さ調節部C’の部分に特徴があることを明示して部分意匠で出願され,登録されたものである。」旨を主張するが,帯状ベルト部の長さ調節部分について意匠登録を受けることができたのは,意匠登録を受けようとした部分が新規性や創作非容易性などの登録要件を満たしたからであって,部分について意匠登録を受けることができたことと,帯状ベルト部やクリップ部の各部位が公知であったということとは無関係である。すなわち,この種の物品分野においては,伸縮性の細幅ベルトを用いることは実開昭49-98194号の第1図(乙第2号証)のように既に知られており,伸縮性の細幅ベルトの両端部をそれぞれ係止具のベルト通し部に挿通して折り返す態様も実開昭57-149021号の第2図(乙第6号証)にみられるように既に公知であり,ベルトの折り返し部をベルトのループ面に面ファスナーで固定する態様も乙特開2006-280538号の【図1】(第4号証)や実開昭49-88600号の第2図(乙第7号証)のように既に知られている。そして,バンドの一端にクリップが取付けられた態様は,実開昭64-20817号の第1図のように知られているところである。そうすると,本件登録意匠の特徴は,各部それぞれが部分的には既に公知であった態様ではあるが,これらを美感の観点から,一つにまとめ上げ視覚的効果を高めた点にあるというべきであって,本件登録意匠は部分的に特徴があったから意匠登録されたと考えることは相当ではない。
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,その形態について意匠全体として観察すると,両意匠の一致点は,類否判断に大きな影響を及ぼすものであるのに対し,相違点は,いずれも類否判断に及ぼす影響が軽微なものであり,相違点が相俟った効果を考慮してもなお,一致点を凌駕することができず,両意匠は類似するものといわざるを得ない。

4.結び
以上のとおりであって,イ号意匠は,本件登録意匠に類似するものである。
よって,結論のとおり判定する。
別掲

判定日 2011-02-15 
出願番号 意願2008-23679(D2008-23679) 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 太田 茂雄 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 樋田 敏恵
橘 崇生
登録日 2009-03-06 
登録番号 意匠登録第1355160号(D1355160) 
代理人 加藤 孝雄 
代理人 高橋 剛 
代理人 高橋 雅和 
代理人 高橋 友和 

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