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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K1
管理番号 1243094 
審判番号 不服2010-24849
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-04 
確定日 2011-06-07 
意匠に係る物品 スクリュー座金用回転治具 
事件の表示 意願2009- 21018「スクリュー座金用回転治具」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2009年(平成21年)9月11日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「スクリュー座金用回転治具」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当する(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)としたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(意匠公報発行日:2003年(平成15年)1月14日)に記載された意匠登録第1162755号(意匠に係る物品,携帯用動力回転工具用補助具)の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「スクリュー座金用回転治具」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「携帯用動力回転工具用補助具」であって,表記は異なるが,本願意匠の願書及び願書に添付した図面の記載並びに引用意匠に係る文献の記載等を総合すれば,両物品は,共に,その突起部を,座金に形成した係合凹部に嵌合させ,座金付き締結具を回転させてねじ込むための,回転工具に取付けて使用する治具であり,両意匠の意匠に係る物品は一致する。

(2)本願意匠と引用意匠の形態
本願意匠と引用意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。(なお,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)

(i)共通点
基本的構成態様として,
(A)全体は,(い)六角柱状の回転工具取り付け部と,(ろ)この下方に連接する円盤状の座金係合部から成り,(は)座金係合部の下面には,周囲に突起,中心に孔を設けた構成である点,

具体的構成態様として,
(B)回転工具取り付け部について,六角柱の一側面中央に小球体を嵌めた点,
(C)座金係合部について,六角柱の直下においては六角柱と直径をほぼ同じくする円柱形状とし,下方に向かって側面視円弧状に次第に直径を大きくし,最下方の円盤状部の直径は,六角柱状部の二倍程度とした点,下面の突起は,円盤の周縁部において,円周を三等分する位置に小柱状に設けた点,下面中心の孔は,回転工具取り付け部の六角柱よりひとまわり小さい円柱形状とし,その奥を円錐状に小径とした点,

(ii)相違点
具体的構成態様として,
(ア)座金係合部下面周縁部の突起について,
本願意匠は,円盤の外周縁をそのまま延伸させた円弧状面を一側面とする略小四角柱形状とし,その下方面を,外周から内側方向にわずかに高くなる傾斜面とした態様であるのに対して,
引用意匠は,円盤の外周縁からわずかに内側に入った位置に,略小円柱の下方周囲を面取りした態様である点,
(イ)座金係合部下面中心の孔周囲の態様について,
本願意匠は,座金係合部下面中心の円柱形状孔の開口部周囲に外形を正六角形とする凸状段部を形成しているのに対して,
引用意匠は,座金係合部下面中心の円柱形状孔の開口部周囲は平坦面としている点,
(ウ)プロポーションについて,
本願意匠は,高さと幅を比較すると,やや幅が広いのに対して,
引用意匠は,高さと幅をほぼ同じにしている点。


2.本願意匠と引用意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

(1)共通点の評価
本願意匠に係る物品は,座金をねじ込むため回転工具に取り付けて使用する治具であり,その使用状態においては,係合部の突起部分を,ねじ込む対象の座金付き締結具(本願意匠に係る物品において「スクリュー座金」と表現している締結具)の座金部に形成した係合凹部に嵌合させて,座金付き締結具を回転させねじ込むのであって,対象の締結具の座金部分に形成した係合凹部との嵌合にあたり,嵌めやすくかつ遊びが少ない嵌合状態を保つことが要求されるところ,基本的構成態様としてあげた共通点(A)につき,(い)取付け部を六角柱状とすることは,回転工具に取り付けるためのごくありふれた態様であり,(ろ)取付け部に円盤状の座金係合部を連設させること及び(は)座金係合部の下面周囲に突起,中心に孔を設けることも,係合部の突起部分を,ねじ込む対象の座金付き締結具の座金部に形成した係合凹部に嵌合させるための,いずれもごく一般的でありふれた態様にすぎないから,これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。
具体的構成態様としてあげた共通点(B)は,この種物品の回転工具への取り付け部において見られるごくありふれた態様にすぎないから(例えば意匠登録第1296407号の意匠参照),この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
また,具体的構成態様としてあげた共通点(C)につき,座金係合部の下面を除く部位の態様及び下面の突起を円盤周縁部において円周を三等分する位置に小柱状に設けた態様は,この種物品の先行意匠(例えば特許出願公開番号特開2003年第106322号第10図のカプラーの意匠,特許出願公開番号特開2003年第139120号図2の埋込治具の意匠参照)に照らすところ,いずれもありふれた態様であり,下面中心の孔についても,回転工具取り付け部の六角柱よりひとまわり小さい略円柱形状の孔はこの種物品においては所謂「呑み込み孔」として知られているから,この共通点(C)が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。

(2)相違点の評価
これに対して,両意匠の具体的構成態様に係る各相違点のうち,(ア)および(イ)としてあげた座金係合部下面周縁部の突起それぞれの具体的形状,また座金係合部下面中心の孔周囲の態様についての相違点は,この種物品の需要者が,それぞれ最も注意して見る部分に関する相違であり,異なる構成として視覚的に別異の印象を与えるから,この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は非常に大きいというべきである。また,相違点(ウ)については,プロポーションの変更は,この種物品に限らずごく普通に行われるものであることを考慮すると,この点が類否判断に及ぼす影響は大きくはないものの,相違点(ア)から(ウ)までが相まった視覚的効果を考慮すると,相違点が類否判断に及ぼす影響は大きい。
(3)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は,一致するが,形態においては,共通点が類否判断に及ぼす影響を大きいと言うことはできないのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点を圧倒しているから,意匠全体として観察した場合,本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。


第4 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同条同項柱書によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また,本願意匠について,他に拒絶すべきものとする理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2011-05-25 
出願番号 意願2009-21018(D2009-21018) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (K1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 智加 
特許庁審判長 遠藤 行久
特許庁審判官 杉山 太一
早川 治子
登録日 2011-09-02 
登録番号 意匠登録第1424139号(D1424139) 
代理人 涌井 謙一 
代理人 鈴木 一永 
代理人 鈴木 正次 
代理人 山本 典弘 

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