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審決分類 審判    M2
管理番号 1244655 
審判番号 無効2010-880005
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-05-28 
確定日 2011-10-12 
意匠に係る物品 空調装置用膨張弁 
事件の表示 上記当事者間の登録第1380365号「空調装置用膨張弁」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1380365号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、結論同旨の審決を求める、と申立て、その理由として、概要以下の主張をし、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。

登録第1380365号意匠(以下「本件登録意匠」という。)は、2006年11月14日発行の米国オフィシャルガゼットに掲載された、米国意匠特許公報 US D532080Sの「膨張弁(EXPANSION VALVE)」の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似し、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当する。従って同法第48条第1項第1号の規定により、その登録は無効とされるべきである。
すなわち、本件登録意匠と引用意匠とは、本体部の基本的な構成態様が共通している上に、正背面の円孔群構成が共通し、両意匠が類似すると決定付けるに十分な視覚的印象を表出している。また各部の具体的な構成態様についても、僅かに、(1)本体下端部寄りの切り欠きについて、下方の垂直面が上方の傾斜面より幅広であるか幅狭であるかの差異、(2)正面における下方大径孔の大きさと配設位置の差異、(3)底面における円形板状ねじ蓋の有無、そして他に(4)正背面の上方大径孔についての、本体部横幅に対する孔径幅、内側段差部の幅、内方に現れる駆動棒の太さに関する差異、(5)弁駆動部における上面の中央小突起形状、及び下面部の態様の差異、がある程度である。そして(1)は、本体部の基本的形態の特徴を何ら損なわない、略同一といえる範囲の部分的な改変で、(2)は、この種物品分野で普通に行われる、相手部品に応じた口径、配置態様の変更で、(3)は、通常ほとんど注目されない部位における差異であって、特徴もなく、そして(4)、(5)は、殊更採り上げるまでもないほどの軽微な差異であり、いずれの差異も、類否判断に与える影響は微弱で、その相俟った効果を勘案しても、両意匠に共通する特徴的な形態が表出する共通感を凌駕するものではない。従って両意匠が類似することに疑いの余地はなく、本件登録意匠の登録は無効とされるべきである。

第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、概要以下の主張をし、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証を提出した。

両意匠に共通する基本的構成態様は、甲第5号証、甲第6号証、及び乙第1号証ないし乙第5号証等にみられるように、引用意匠の出願前から今日に至るまでの一般的とされる態様に過ぎない。また請求人が強調する正面下部の「く」字様の形状も、甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証、及び乙第3号証ないし乙第6号証等にみられるように、一般的形状の範囲を出るものではない。したがって、これらは創作の要部を構成するものではなく、その共通性は意匠の類否判断に影響を与えるものではない。
これに対して両意匠は、その具体的構成態様において、(1)本体部外形状、特に「く」字様の部分の傾斜面の傾斜角度、及び傾斜面と垂直面との高さの比率の差異、(2)本体部正面側、及び背面側における上方大径孔と下方大径孔の位置、大きさの差異(3)弁駆動部の態様、即ち弁駆動部に対する本体部の正面側の位置と背面側の位置の差異(4)底面の態様の差異、があり、要部において大きく異なるものである。従って、本件登録意匠と引用意匠とが非類似であることは明らかで、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず、その登録が無効とされるべき理由はない。

第3.当審の判断

1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成21(2009)年4月8日に意匠登録出願がなされ、平成22年1月15日に、本意匠番号を意匠登録第1362427号とする関連意匠として、意匠権の設定の登録がされたものであり、意匠に係る物品を「空調装置用膨張弁」とし、その形態を、意匠登録出願の願書、及び願書に添付した図面に記載されたとおりとするものである。(別紙第1参照)

2.引用意匠
本件登録意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとして請求人が提出した意匠は、2006年11月14日発行の米国オフィシャルガゼットに掲載された、米国意匠特許公報 US D532,080Sの膨張弁(EXPANSION VALVE )の意匠であり、その形態を、当該公報に記載されたとおりとするものである。(別紙第2参照)

3.本件登録意匠と引用意匠の対比

本件登録意匠と引用意匠を対比すると、両意匠は意匠に係る物品が共通し、その形態において、主として以下の共通点と差異点がある。

まず共通点として、以下の点がある。
(1)略縦長四角柱状の本体部と、その上端に設けられた円盤状の弁駆動部からなり、本体部は、両側面の下寄りが、傾斜面、及び垂直面により正面視略「く」字状、及び略逆「く」字状に切り欠かれて(以下、「く」字状部、という。)、下端の横幅が上端に対して狭められた構成となっており、正面、及び背面に、複数の真円状の孔が配置されてなる円孔群が形成されたものであり、円孔群は、正面において、上から下へ、1つの上方大径孔、左右2つの中径孔、1つの小径孔、及び1つの下方大径孔が、全体として左右対称状に配され、背面において、上から下へ、1つの上方大径孔、左右2つの中径孔、及び1つの下方大径孔が、全体として左右対称状に配された基本的な構成態様のものである点、
(2)具体的な構成態様について、本体部は、高さが正面横幅の3倍弱で、側面横幅が正面横幅に対してやや広幅で、本体部の高さの下寄り3分の1の部分が「く」字状部となっており、本体部下端の横幅が正面横幅(最大横幅)のおおよそ3分の2弱程度で、「く」字状部の傾斜面の角度が、鉛直方向に対しておおよそ20度ないし30度程度の角度で内向きに下降するもので、側面において、この傾斜面の上辺、及び下辺が、横水平に、エッジ状の稜線、及び谷線を形成し、そして傾斜面の上下幅と垂直面の上下幅に、さほど大きな幅差のない構成となっている点、
(3)正面の円孔群について、高さ方向のほぼ中間位置に2つの中径孔をやや間隔を開けて左右に配し、2つの中径孔の上方に、双方の外周を接近させて上方大径孔を配し、2つの中径孔の内向き斜め下方に、小径孔を、2つの中径孔の隙間に入り込む態様で配したもので、上方大径孔は、径が本体横幅より僅かに小径程度であり、下方大径孔は、上方大径孔に対して略2/3程度の径の、上方大径孔対して小径のものである点、
(4)背面の円孔群について、高さ方向のほぼ中間位置に2つの中径孔を配し、その上方、及び下方のおおよそ等しい距離に、上方大径孔、及び下方大径孔を配し、下方大径孔を上方大径孔よりやや小径としている点、
(5)弁駆動部について、径が本体正面横幅よりやや大径で、頂面中央に円錐台上の突出部があり、下面に偏平逆錐台状の縮径段部が形成されている点、がある。

次に差異点として、主として以下の点が認められる。
(ア)「く」字状部の傾斜面の傾斜角度、及び傾斜面と垂直面の寸法比率について、本件登録意匠は、傾斜面が鉛直方向に対して略20度程度の内向きの傾斜であるのに対して、引用意匠は略30度程度の傾斜で、本件登録意匠の傾斜面が鉛直に近く、また、傾斜面と垂直面の寸法比率につき、上下方向(側面視)での幅比として、本件登録意匠は4対3程度で傾斜面が垂直面よりやや長いのに対し、引用意匠は3対4強で、垂直面が傾斜面よりやや長いものである点、
(イ)正面の上方大径孔の位置、大きさについて、本件登録意匠は、径が本体部横幅よりごく僅かに小径で、本体上端に残る余地も狭い、径が極めて大きいものであるが、引用意匠は、本体部左右に余地が若干残り、本体上端にも本件登録意匠に比べて広い余地を残す、本件登録意匠より小径のものである点、
(ウ)正面の下方大径孔の位置、及び大きさについて、本件登録意匠は、小径孔と下方大径孔との間隔が狭く、本体下端にやや広い余地が残され、そのほとんどが、「く」字状部の傾斜面に当たる高さ(上下幅)の範囲内に配されたものであり、径が本体下端の横幅より大径のものであるが、引用意匠は、下方大径孔と小径孔との間隔が広く、本体下端に余地がさほどなく、そのほとんどが、「く」字状部の垂直面に当たる高さの範囲内に配されたもので、径が本体下端の横幅より小径である点、
(エ)本体底面について、本件登録意匠は、中心にボルト孔のある円形のばね受けが設けられているが、引用意匠はこれが設けられていない点、
(オ)弁駆動部の位置について、本件登録意匠はその中心が、本体の中央のやや正面寄りに位置し、その前端が本体正面から手前に張り出した態様であるが、引用意匠はその中心が、本体の中央やや背面寄りで、その後端が本体背面から後方に張り出した態様である点、が認められる。

4.検討・判断

そこで上記の共通点と差異点が類否判断に及ぼす影響を形態全体として検討する。
まず共通点につき、共通点(1)は全体の基本的な構成態様を表し、共通点(2)ないし共通点(5)は、これを構成する各部の具体的な態様を端的に表すもので、これらが組み合わさり、一体となって、膨張弁としての全体の形態的まとまりを形成し、両意匠の共通感を極めて強く看者に印象付けるものとなっている。
とりわけ、共通点(2)の、略縦長四角柱状をなす本体部の下寄り3分の1を傾斜面、垂直面による「く」字状部とし、本体部下端の横幅が正面横幅のおおよそ3分の2弱程度で、傾斜面の角度を鉛直方向に対しておおよそ20度ないし30度程度の傾斜とし、傾斜面と垂直面にさほど大きな幅差のない構成として、傾斜面上下の稜部、谷部を、エッジ状の角張った態様としている点は、実測上での寸法差、角度差はあるとしてもなお、全体構成の共通性を看者に強く印象付け、さらに、共通点(3)及び共通点(4)の、正面、背面における円孔群の配置に関する共通点と組み合わさることによって、両意匠の全体に、極めて強い共通感が生み出されるところとなっている。
ところでこの「く」字状部について被請求人は、この種の物品の一般的形状であって、また創作の要部でもなく、類否判断に影響を与えるものではない、旨を主張しており、確かにこの種の物品において、本体部の下寄りを傾斜面、及び垂直面により切り欠くことはその出願前にもみられるところである。
しかしながら傾斜面の位置、全体に占める範囲、また切り欠きの深さ(本体横幅に対する下端横幅の広狭)、傾斜面と垂直面の幅比、傾斜面から垂直面に至る面処理等には様々の態様がみられるところであり、それにもかかわらず、両意匠は共通点(2)に掲げるとおりの態様として共通しており、且つ、それは、両意匠の全体構成に係わる共通点であって、更にこれがその余の共通点と一体となって、両意匠の全体の形態的まとまりを形成し、両意匠に極めて強い共通感を生み出すところとなっている。従って「く」字状部の存在が共通点として類否判断に影響を与えないとする旨の被請求人の主張は、採用できない。
以上のとおりであって、前記の両意匠の共通点は、類否判断に大きな影響を及ぼすものである。

一方差異点については、何れも以下のとおり、類否判断に及ぼす影響は小さいと判断せざるを得ない。
まず差異点(ア)については、傾斜面の傾斜角度の差は、実測上の数値としては異なるとしても、視覚による全体観察の中では、角度差として異なる印象を与えるほどではなく、また傾斜面と鉛直面の上下方向の幅の比率差も、形態全体としては、傾斜面と垂直面が上下方向にさほど幅差のないことの印象の方が、より強く、全体としては、下端をおおよそ2/3程度に狭めている点、傾斜面上下の稜部、谷部がエッジ状に角張り、その上下が垂直面状である点、等の(1)及び(2)の共通点が組み合わさってもたらされる両意匠の共通感に対しては、両意匠を別異の意匠に印象付けるまでの差異感を生んでいない。従って、その類否判断に及ぼす影響は軽微なものに止まる。
差異点(イ)は、正面において共通する円孔群の配置構成の中でみられる上方大径孔の僅かな寸法差であり、類否判断に影響を及ぼすほどの差異とはいえない。
差異点(ウ)は、この種の物品における正面側、及び背面側の円孔群の構成配置には従来から様々な態様がみられるところであり、その中にあっては、正面側を共通点(3)とし、背面側を共通点(4)とした点は、全体としてはやはり正背面の円孔群の構成配置の共通性を強く印象付けるもので、差異はこの中での、主として正面側の配置に限られ、しかも本件登録意匠のように、上方の孔との間にさほど余地を開けない態様、本体下端に若干余地を残す態様、或いは下方大径孔を側面に形成された傾斜面に概ね当たる高さの範囲内に配する態様は、いずれも本願出願前からみられる態様であり(意匠登録第1249639号、同第1092027号等)、形態を独自に特徴付ける点としても重要視できない。従ってこの差異は、円孔群に関する共通する構成態様の中でみられる部分的な差異というほかなく、その類否判断に及ぼす影響は軽微なものに止まる。
差異点(エ)は、本体下端面における差異であって、さほど目立たず、しかも本願意匠の態様は、その出願前からごく普通に見られる類型的な態様であり、形態上の特徴としても重要視できない。従ってその差異が類否判断に及ぼす影響は微弱である。
差異点(オ)は、弁駆動部の位置について、その中心が、本体中央に対してやや前後にシフトした位置にあって、弁駆動部の一端が側面視において本端からやや張り出した態様である点では共通しており、また両意匠とも、正面、背面の双方に円孔群が形成されていることから、形態上の差異としてもさほど目立たず、その類否判断に及ぼす影響は微弱である。
なお両意匠には他にも、請求人の挙げた、正面、背面の上方大径孔の内周縁の段差幅の広狭差、その奥の駆動棒の太さ、等の差異もあるが、何れも、局所的な微差であって、類否判断に影響を及ぼすほどの差異とはいえない。

以上のとおりであって、両意匠における差異点は、いずれも類否判断に及ぼす影響が軽微、或いは微弱なものというほかなく、差異点が総合され、関連する視覚効果を考慮してもなお、共通点が形成する全体の形態的まとまりを覆し、両意匠を別異の意匠に特徴付けるまでのものとは認められず、両意匠においては、共通点が類否判断に及ぼす影響が差異点を凌駕し、両意匠は意匠全体として類似するものである。

4.むすび
従って、本件登録意匠は引用意匠に類似し、引用意匠は、本件登録意匠の出願前に頒布された刊行物に記載された意匠であるから、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するにもかかわらず意匠登録を受けたものであり、その登録を無効とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2010-12-13 
結審通知日 2010-12-15 
審決日 2011-01-07 
出願番号 意願2009-8045(D2009-8045) 
審決分類 D 1 113・ 113- Z (M2)
最終処分 成立 
前審関与審査官 原田 雅美 
特許庁審判長 瓜本 忠夫
特許庁審判官 遠藤 行久
市村 節子
登録日 2010-01-15 
登録番号 意匠登録第1380365号(D1380365) 
代理人 松尾 卓哉 
代理人 森下 賢樹 
復代理人 横井 康真 
代理人 永芳 太郎 
代理人 村田 雄祐 
代理人 水野 尚 
代理人 南部 さと子 
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