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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2010880009 審決 意匠
無効2010880015 審決 意匠

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審決分類 審判    J7
審判    J7
管理番号 1246304 
審判番号 無効2010-880018
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-11-22 
確定日 2011-10-11 
意匠に係る物品 医療廃棄物容器 
事件の表示 上記当事者間の登録第1378203号「医療廃棄物容器」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1378203号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
請求人は、結論同旨の審決を求めると申立て、その請求の理由として要旨以下のとおり主張し、意匠登録第1378203号が意匠法第48条第1項第1号の規定に該当し無効とすべきであるとし、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第12号証(枝番号を含む。)を提出した。

1.意匠登録第1378203号の意匠(以下、「本件登録意匠」という。)の登録を無効とすべき理由(創作容易)(以下、「無効理由1」という。)
本件登録意匠は、出願前に公然知られることとなった甲第1乃至7号証に記載された意匠に基づいて当業者が容易に創作することができたものであり、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるので、本件意匠登録は同法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。

2.本件登録意匠の登録を無効とすべき理由(共同出願違反)(以下、「無効理由2」という。)
本件登録意匠は、その意匠登録を受ける権利が共有に係るものであったにもかかわらず被請求人単独で出願したものであるから、意匠法第15条第1項において準用する特許法第38条の規定に違反してされたものであり、意匠法第48条第1項第1号の規定に該当し、この理由によっても無効とすべきである。

第2.被請求人の答弁及び理由
当審は平成22年12月22日付けで請求書副本を送付し、期間を指定して答弁書の提出を求めたところ、期間内には応答がなされなかった。

第3.その後の経緯
当審は平成23年4月7日付けで、請求人に対して審尋をしたところ、請求人は平成23年4月25日付けで回答書を提出した。
被請求人は平成23年6月2日付けで、株式会社エムシービーの「ECOPAIL50」の容器の意匠について、各部の形態をより明確にする資料、証拠等を提出してほしい旨の内容の上申書を提出した。
請求人はこの上申書を受けて、平成23年8月3日付けで上申書(上申書には各部の形態を明確にするためのものとして資料1ないし資料3を添付。)を提出した。

第4.当審の判断
1.無効理由1について
請求人は、本件登録意匠が甲第1号証ないし甲第4号証、甲第5号証の1、甲第6号証及び甲第7号証に表された意匠に基づいて容易に創作できた意匠であり、意匠法第3条第2項の規定に該当すると主張するので、以下検討する。

(1)本件登録意匠
本件登録意匠は、2009年(平成21年)6月5日の出願に係り、2009年(平成21年)年12月18日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1378203号の意匠であって、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「医療廃棄物容器」とし、その形態は願書の記載及び願書に添付の図面に記載されたとおりのもので、概要次のとおりである(別紙第1参照)。
<基本的構成態様>
(A)容器全体が本体部と蓋部とからなり、本体部は、上面が開口した下窄まりの方形箱状体とし、その上面の開口部に、略長方形平板状の蓋部を嵌着している。
<各部の具体的構成態様>
(B)本体部につき、
(B-1)上面の開口部に沿って、断面を略倒「コ」字状とする縁部を形成し、正背面側の中央横幅1/5弱と側面側の中央横幅1/4弱の上下幅をやや縮め、側面側においてはこれをさらに外方に拡幅して手掛け部とし、
(B-2)縁部下方に一定長さの板状リブを、正背面において、左右外寄りに3本ずつ、中央の上下幅をやや縮めた縁部両隣に2本ずつ、合わせて10本ずつ設け、左右側面において、左右外寄りに3本ずつ、中央の手掛け部を挟んで両隣に1本ずつ、合わせて8本ずつ設け、四面に全部で36本設けたものとし、
(B-3)正背面において、左右に略3等分する位置に、上下方向に長い筋条突起を2本ずつ設け、各筋条突起は上下端部が鋭角的に収束するように形成された細幅の紡錘形をなし、
(B-4)底面の外周に沿って一回り小さく、断面が台形の脚部を形成している。
(C)蓋部につき、
外周に沿って、断面が略倒「コ」字状で、正背面側の下縁が横方向に弓状に張り出す鍔部を備えた細幅の縁部を形成し、この内側上面を縁部上端より一段低く形成し、中央の浅い円形凹部の両隣に、平面視略長方形状の低い台状凸部を2個並べて設けている。

(2)引用意匠
請求人が、本件登録意匠がその出願前に公然知られた意匠に基づいて容易に創作された意匠であるとして引用した意匠は、以下のとおりである。
甲第1号証に表された意匠は、平成20年5月26日、株式会社日報アイ・ビー発行の刊行物「週刊循環経済新聞 平成20年5月26日号」第69頁右欄2段目の写真「ECOPAIL20・50の段積み」中で、上に積まれた2個の容器と下に置かれた容器の意匠(医療廃棄物処理容器「エコペール」の意匠)であり、右欄4段目の写真「ECOPAIL20・50・70」にあっては、3つの容器のうち左側に配置された容器と中央に配置された容器の意匠である。そして、第69頁右欄1段目に「廃プラスチックのマテリアルリサイクルを具現化した画期的商品で、販売も起動に乗っている。」と記載され、同2段目には「今までは取り外しにくかった重ねてある空の容器を、ハンドリングがしやすいように容器外部に溝を付けるなど、実用新案申請中の創意工夫が施されている。」と記載されている。
なお、引用の新聞記事中に記載された「起動」は「軌道」の誤記と認め、容器外部の「溝」は、上記の意匠中の小さい方の容器外部に形成された2本の「筋条突起」を意味していると認める。
甲第2号証に表された意匠は、株式会社日本ビジネス出版発行の業界専門誌「環境ビジネス 2008年8月号」第66頁左下に記載された写真の中の3つの容器のうち左側に配置された容器と中央に配置された容器の意匠である。第66頁左欄11?14行目に「エコペール」は現在、月間6?7万缶を売上げ、引き合いのある企業に断りを入れなければならないほどの人気商品となった。」と記載されており、同第67頁中欄12?15行目には、「対応策として、容器外部にわずかな溝を加えた。このことで、真空状態を防ぎ、取り外しの問題をクリアした。」と記載されている。
なお、引用の記事中に記載の容器外部の「溝」は、甲第1号証と同様に、小さい方の容器外部に形成された2本の「筋条突起」を意味していると認める。
甲第3号証に表された意匠は、株式会社エムシービー発行のカタログ「取扱商品力タログ2008 vol.2」第2頁左上方に記載された「ECOPAIL20」の容器と中央上方に記載された「ECOPAIL50」の容器の意匠である。本カタログには発行日について明示的な記載はないが、表紙のタイトル中の「2008 vol.2」の記載、及び裏表紙の左下隅の「会社概要(平成20年10月現在)」の記載により、2008年(平成20年)10月以降作成され、遅くとも2008年度中には発行・頒布されたものと認められる。
甲第4号証に表された意匠は、株式会社エムシービー発行のカタログ「取扱商品力タログ2008」表紙裏頁左方に記載された医療用廃棄物容器(商品の全面中央部に貼付されたラベルに「ECOPAIL」と書かれている)の意匠である。本カタログには発行日について明示的な記載はないが、表紙のタイトル中の「2008」の記載、及び裏表紙の左下隅の「会社概要(平成20年5月現在)」の記載により、2008年(平成20年)5月以降作成され、遅くとも2008年度中には発行・頒布されたものと認められる。
甲第5号証の1に表された意匠は、株式会社エムシービー発行のカタログ「取扱商品力タログ2009 vol.1」第2頁左上方に記載された「ECOPAIL20」の容器と中央上方に記載された「ECOPAIL50」の容器の意匠である。同頁左下方には、「新機能搭載」として、「ECOPAIL20」の容器の意匠が複数個重ねられた状態の写真と「本体に突起を付けることにより梱包時の真空状態を防ぎ容器を引抜き易くしてあります。(ECOPAIL20のみ)」とする文章が記載されて、本体正面に設けられた上下方向に延びる2本の筋条突起について説明がなされている。ところで、甲第5号証の1のカタログには発行日について明示的な記載がないため、裏表紙の左下隅の「会社概要(平成21年1月現在)」の記載により、2009年(平成21年)1月以降に作成されたと認められるものの、本件登録意匠の出願日である2009年(平成21年)11月11日より前に発行・頒布されたかどうか必ずしも明らかではない。しかしながら、この種のカタログは、一般に頒布を目的として作成されるものであるから、通常は、作成され次第、そう日を置かずに頒布されるに至ったと考えるのが自然であるところ、甲第5号証の1のカタログ裏表紙の「会社概要」に代表取締役として「本田知己」の記載があり、同氏が株式会社エムシービーの代表取締役を平成21年2月24日に退任したことから、この日よりも前に作成されたことは明らかであり、遅くとも、本件登録意匠の出願前(2009年(平成21年)11月11日前)迄には発行・頒布されたものと認められる。
甲第6号証に表された意匠は、特許庁が2009年(平成21年)5月21日に発行した公開特許公報記載の特開2009-107664号の図4及び図5に記載の容器(実施形態2)の意匠である。
甲第7号証に表された意匠は、特許庁が2001年(平成13年)5月14日に発行した意匠公報記載の登録第1108781号の意匠である。

そして、当審は、上記甲第1号証ないし甲第5号証の1に表された大小2種の意匠は、何れも同じ「エコペール」の称呼を用いて同一人(株式会社エムビーシー)が販売する商品に係る意匠であることから、これら各号証に表された意匠は、大小2種の意匠ごと、同一又はバリエーションの意匠と認め、甲第1号証に表され、販売されたことにより、公然知られた容器の意匠のうち、小さい方の容器(第69頁右欄2段目の写真「ECOPAIL20・50の段積み」中で、上に積まれた2個の容器)の意匠を「引用意匠1」(別紙第2参照)とし、大きい方の容器(同写真中で、下に置かれた容器)の意匠を「引用意匠2」(別紙第2参照)とし、甲第6号証に表された容器の意匠を「引用意匠3」(別紙第3参照)とし、これらに基づいて本件登録意匠が容易に創作することができたか否かについて検討する。
なお、以下の項(3)で述べる引用意匠1及び引用意匠2の形態は、甲第1号証に記載された写真に現されたとおりのものであるが、併せて請求人が提出した平成23年4月25日付回答書に添付された資料1(甲第1号証の広告原稿データを印刷したもの)を参酌する(別紙第4及び別紙第5参照)。

(3)創作容易性の判断
本件登録意匠の形態は、前記、本項1.(1)に記載のとおりである。このうちで(B-3)と(B-4)の構成態様を除く他の全ての構成態様を備えた意匠、すなわち、全体を(A)の構成の容器体とし、本体部について(B-1)の縁部を形成し、その下方に(B-2)の板状リブを設け、蓋部を(C)とする構成態様を備えた医療廃棄物処理容器の意匠は、本件登録意匠の出願前、既に公然知られている(引用意匠2)。また、(B-3)の構成態様についても、正背面に上下方向に長い筋条突起を2本間隔を開けて設けた意匠が公然知られているところであり(引用意匠1)、その配置間隔を本体の正背面を左右に略3等分するような位置とすることも、本願出願前から公然知られていたことである(引用意匠3)。また、この筋条突起が上下端部が鋭角的に収束するように形成された細幅の紡錘形をなしている点も、引用意匠1の筋条突起を子細に観察すると、左右側辺がわずかに弧状に湾曲し、上下端が鋭角的に収束するような形状をしていると認めることができることから、本件登録意匠に表された紡錘形は、この引用意匠1に設けられた筋条突起の左右幅を幾分か広げたことにより自ずと表れたに過ぎない程度の形状と認められるものである。したがって、本件登録意匠の正背面における筋条突起の形状及びその配置態様にも特段の創作は認められない。(B-4)の脚部の態様については、底面に外周より一回り小さく脚部を形成することは、引用意匠2にもみられるように本願出願前よりごく普通に行われていることであり、本件登録意匠はこの脚部の断面形状をありふれた台形状としたに過ぎないことから、意匠上の創作として特に評価すべき程のものではない。
してみると、本件登録意匠は、その出願前に公然知られた引用意匠2の全体形状を基とし、その正背面に、公然知られた形状である引用意匠1の筋条突起をやや太幅にして左右等間隔に配したまでであって、底面に断面を台形状とする脚部を形成した点も含めて何ら困難を伴うものではないから、特段の創作を要したものとは認められず、本件登録意匠は意匠法第3条第2項の規定に該当するといわざるをえない。

2.無効理由2について
請求人は、本件登録意匠の意匠登録を受ける権利が共有に係るものであったにもかかわらず被請求人単独で出願したものであるから、意匠法第15条第1項において準用する特許法第38条の規定に違反してされたものであると主張するので、以下検討する。

(1)創作の経緯
請求人の主張によれば、以下のとおりである。
(ア)請求人会社(株式会社エムシービー)は、平成18年半ば、三和産業株式会社(東京都墨田区江東橋4-25-10)に対して、ECOPAIL の初期型製品(容量65L及び50Lのものがある。以下、初期ECOPAIL65(現製品名ECOPAIL70)、初期ECOPAIL50と呼ぶ。)の設計を依頼した。
(イ)これを受けて、三和産業株式会社は、同社の中国現地法人である上海申嘉三和坏保科技?友有限公司(以下、「上海三和」と呼ぶ。)に同製品の設計を行わせた。この設計に際しては、適宜、請求人会社が意見を提供し、設計に取り入れられた。
(ウ)その後、平成18年11月に初期ECOPAIL65(現製品名ECOPAIL70)(甲第8号証)について、平成19年2月に初期ECOPAIL50(甲第9号証)について、それぞれ上海三和にて設計が完了し、設計図面が請求人会社に渡された。
(エ)請求人会社は、この設計図面を確認して承認し、三和産業株式会社に対して製品の製造を発注した。三和産業株式会社は、上海三和の工場にて初期ECOPAIL65(現製品名ECOPAIL70)の試作を行い、金型を日本国内に輸入した。初期ECOPAIL50についても、同じ時期に、三和産業株式会社は、上海三和の工場にて金型を作成し、日本国内へ輸入した。
(オ)三和産業株式会社は、国内製造に際して、被請求人会社(株式会社クリーン技研)を協力先として選定し、平成19年5月に同社に対して初期ECOPAIL65(現製品名ECOPAIL70)及び初期ECOPAIL50の国内製造を委託した。
(カ)これに基づき、被請求人会社は、初期ECOPAIL65(現製品名ECOPAIL70)及び初期ECOPAIL50の各金型を預かり、これらの製品の委託生産を開始した。平成19年6月14日、初回製品が、被請求人会社から請求人会社に納入された。
(キ)その後、製品を重ね合わせたときに負圧が発生して容器が抜けにくくなるという顧客クレームが発生した。これを受けて、被請求人会社は、平成21年6月、容器正面部に上下方向に延びる2本の突起を追加する設計変更を提案し、請求人会社はこれを承認した。
(ク)この突起に関して、請求人及び被請求人が共同で平成19年(2007年)10月30日に特許出願を行い、平成21年(2009年)5月21日に特開2009-107664号として出願公開された(甲第6号証)。

(2)共同出願違反の判断
まず、請求人は、本件登録意匠の意匠登録を受ける権利が被請求人と共有に係るものであることの根拠の一つとして、上記創作の経緯(ク)の特許出願を共同で行った事実を挙げるが、当該特許出願の添付図面には、正背面に2本の細幅の紡錘形の突起を備えた、本件登録意匠と実質的に同一と認められる容器の形態が開示されておらず、本件登録意匠の創作がなされたとする事実そのものを認めることができないから、(ク)の特許出願の事実は、本件登録意匠の意匠登録を受ける権利の帰属を左右するものとはならない。
上記、創作の経緯(ア)?(キ)に照らすならば、被請求人会社は、被請求人会社を除く他社(請求人会社を含む。)が開発し、市販した製品である初期ECOPAIL65(現製品名ECOPAIL70)及び初期ECOPAIL50に対し発生した、製品を重ね合わせたときに負圧が発生して容器が抜けにくくなるという顧客クレームに対して、これを解消すべく、被請求人会社が独自で、正背面に2本の細幅の紡錘形の突起を備えた新たな容器の意匠、すなわち、前記、本項1.(1)の構成を有する本件登録意匠を開発したものと認められる。
そうとすると、本件登録意匠は、請求人側が関与することなく創作されたものであって、請求人はその意匠登録を受ける権利を有していたとはいえないから、本件登録意匠は意匠法第15条1項で準用する特許法第38条に違反して出願されたものとはいえない。

3.むすび
以上のとおりであって、請求人の主張する無効理由2には理由がないが、無効理由1には理由があり、本件登録意匠は、意匠法第3条第2項の規定に該当するにもかかわらず意匠登録を受けたものであるから、同法第48条第1項第1号の規定に該当し、その意匠登録を無効にすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2011-08-11 
結審通知日 2011-08-15 
審決日 2011-08-29 
出願番号 意願2009-12739(D2009-12739) 
審決分類 D 1 113・ 121- Z (J7)
D 1 113・ 15- Z (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中村 遥子中田 博康 
特許庁審判長 遠藤 行久
特許庁審判官 瓜本 忠夫
杉山 太一
登録日 2009-12-18 
登録番号 意匠登録第1378203号(D1378203) 
代理人 立石 博臣 

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