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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1256321 
審判番号 不服2011-18826
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-31 
確定日 2012-04-27 
意匠に係る物品 イヤホン 
事件の表示 意願2010- 19243「イヤホン」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2010年(平成22年)8月6日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品が「イヤホン」であり,その形態は,願書及び願書添付の図面に記載されたとおりのものである(別紙第1参照)。

第2 原審の拒絶の理由
原審の拒絶の理由は,本願意匠が,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:2008年(平成20年)8月4日)に記載された意匠登録第1336993号(意匠に係る物品,イヤフォン)の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1.意匠に係る物品について
本願意匠の意匠に係る物品は「イヤホン」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「イヤフォン」であって,表記は異なるが,本願の願書及び願書添付の図面の記載,並びに,引用意匠掲載の意匠公報の記載等を総合して判断すれば,両物品ともに,耳の穴に挿入して音楽等を聞くためのものであって,両意匠の意匠に係る物品は、一致する。

2.形態について
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。

(1)共通点
(A)エンクロージャーは,後端部を略半球面状とした略円筒形状の胴部の先端部に,径の小さな略円筒状の放音ダクトを設けた態様であって,胴部に一本の周回する分割線が形成されている点
(B)放音ダクトに取り付けられたイヤーピースは,全体形状を,倒略円錐台形状とし,エンクロージャーと同一軸上に配置されている点

(2)相違点
(a)胴部につき,本願意匠は,全体形状を,倒略「薬剤カプセル」形状とし,先端角部をやや大きな径の円弧で面取りして,放音ダクトに至る面を凸曲面状としているのに対し,引用意匠は,全体形状を,倒略「砲弾」形状とし,先端角部を小さな径の円弧で面取りして,放音ダクトに至る面を平坦面状としている点
(b)胴部底面の後方寄りに、下方に向かって設けられたガイドチューブにつき,本願意匠は,ほぼ垂直であるのに対し,引用意匠は,底面との接合部付近で屈曲して,やや前方に傾斜している点
(c)イヤーピースにつき,本願意匠は,周面が僅かに湾曲する倒略円錐台形状とし,イヤーピースの後縁部が,胴部先端部に若干覆い被さる態様であるのに対し,引用意匠は,周面がやや球面状をなす倒略円錐台形状であり,イヤーピースの後縁部と,胴部先端部との間には,やや隙間が設けられた態様である点
(d)分割線につき,本願意匠は,胴部の左右幅を略3:4とする位置に,隙間なく設けられているのに対し,引用意匠は,略1:2とする位置に,僅かな細幅溝部として設けられている点

第4 本願意匠と引用意匠の類否判断
以上の共通点及び相違点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,両意匠の類否を意匠全体として総合的に検討し,判断する。

1.共通点の評価
(A)及び(B)の点については,この種物品においては,引用意匠が刊行物に掲載される前に,例えば,特許庁が2007年(平成19年)9月13日に受け入れた雑誌「モノ マガジン」16号26巻100頁に掲載されたヘッドホンの意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HA19011657号,参考意匠1(別紙第3参照))に,既に見られるように,いずれもありふれた態様であって,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものと認められる。

2.相違点の評価
これに対して,相違点に係る形態が,相乗して生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。

すなわち,胴部の形態に係る相違点(a)については,本物品を耳の穴に挿入する際には,指先で摘む部分であり,また,耳の穴に挿入した後は,耳飾りのように,看者の注意を強く惹く部分であって,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
ガイドチューブの相違点(b)については,当該チューブ内に挿入されるコードの接続方向にも影響を及ぼし,耳飾りのような装飾性も有する,この種物品においては,それなりに看者の注意を惹く部分であって,両意匠の類否判断に一定の影響を及ぼすものと認められる。
イヤーピースの相違点(c)については,両意匠ともに,引用意匠が刊行物に掲載される前から,既に見られるありふれた態様であって,更に,本願意匠も,観察する角度によっては,引用意匠のように放音ダクトを視認することができる程度の隙間を有しており,また,分割線の相違点(d)については,両意匠の分割線の位置は,この種物品においては,適宜変更される範囲内のものであり,また,引用意匠の態様も,視覚的に顕著なものとはいえないことから,いずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものと認められるが,相違点(a)及び(b)に係る態様と相俟って,両意匠の類否判断に影響を及ぼすものであるから,これらの相違点に係る形態が相乗して生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けると言わざるを得ない。

3.小括
そうすると,両意匠の意匠に係る物品は一致するが,その形態において,相違点が共通点を凌駕し,意匠全体として看者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものである。

第5 むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原審の拒絶の理由によっては,拒絶すべきものとすることができない。
また,本願意匠について,他に拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2012-04-11 
出願番号 意願2010-19243(D2010-19243) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 恭子江塚 尚弘 
特許庁審判長 川崎 芳孝
特許庁審判官 斉藤 孝恵
遠藤 行久
登録日 2012-05-25 
登録番号 意匠登録第1444678号(D1444678) 
代理人 野村 慎一 
代理人 藤本 昇 

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