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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立成立) H1
管理番号 1256330 
判定請求番号 判定2011-600034
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2012-06-29 
種別 判定 
判定請求日 2011-08-08 
確定日 2012-04-09 
意匠に係る物品 電池ケース 
事件の表示 上記当事者間の登録第1110656号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す電池ケースの意匠は、登録第1110656号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
本件判定請求人は、結論同旨の判定を求めると申立て、その理由を要旨以下のとおり主張し、証拠方法として、甲第1号証(登録意匠公報 意匠登録第第1110656号)、甲第2号証(登録意匠公報 意匠登録第第1110655号)、甲第3号証(公開特許公報 特開平10-40889号)を提出した。
1.判定請求の必要性
弊社が輸入し販売している「電池ケース」(イ号物品)に関し、弊社が納品した販売先に対し、意匠権者から意匠権を侵害する旨の通告書が郵送されてきた。これに対して上記販売先は侵害していない旨の回答をしたにも拘らず、意匠権者から侵害する旨、重ねて通告している。本件判定請求人は、イ号物品の輸入・販売業者であるので、「イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない」と考えており、特許庁による判定を求めるものである。

2.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「電池ケース」とし、その形態の要旨は次の通りである。
本物品は、甲第1号証の正面図及び左右側面図にて明快に表現されている特徴的な半割体の合体保持のための合わせ部を有しており、ここが本件登録意匠の最も大きな意匠的特徴部(主要部)であると思料する。
i)主要部の詳細な説明
本件登録意匠の主要部である合わせ部は、左右側面図に於いて、互いに対称状態の逆台形状の凹所として現れ、これが正面図に於いては、一対の半割体の両者に亘り合体して略太鼓状に現れる窪みが形成され、そしてその正面図において、略中央に位置し、大略3割程度の大きな面積を占めており、看者に強烈なインパクトを与えるもので、これが本件意匠の最大の特徴である。
そして、一対の半割体を保持する爪は、正面図において右側の半割体の凹みの左右の中央部付近で上下の中央より上下に変位した2箇所より横方向に平行に突出する一対の脚片に保持されたものであり、前方後円形状に形成されている。そして他方の凹みに設けられたと推測される被係合部に爪の引っ掛かり先端が係合されるものである。

3.イ号意匠
イ号意匠の正面図及び左右側面図にて明快に表現されている合体保持のための合わせ部は、半割体の一方より他方に向けて爪を突出させ、他方の半割体の縁に前記爪を係合するもので、爪が入り込む部分だけ、他方の半割体のみやや凹ませているものであって、凹みは半割体の片方のみに形成され、本件登録意匠のように一対の半割体の双方に亘る凹みは存在しない。そして、イ号意匠の爪は、一方の凹んでいない一方の半割体の縁より全幅が連なり、脚片などもなく、爪の外形も僅かな円の端を切ったような形状である。

4.本件登録意匠とイ号意匠との比較
i)両意匠の共通点
開閉自在な一対の半割体を有し、内部に単3電池を収納して、全体として単1電池の大きさ(寸法)として、使用するためのケースである。
ii)両意匠の差異点
本件登録意匠は+、-の電極金具が上下より突出するのに対し、イ号意匠は-電極金具は存在せず、しかも、+電極金具の形状においても、本件登録意匠の方は2段重ね円柱形であるのに対し、イ号意匠は球面の頂部により構成しており、更に追加すれば、その底面図のように-電極金具の傍に円弧状の形状が模様として現れているのに対し、イ号意匠は、シンプルな丸穴が明いているだけであって、周辺の前提構成が微妙に異なっている。本件登録意匠は、合わせ部において、一対の半割体のそれぞれに均等な凹みを構成し、一対の半割体を合わせた際に両者に亘って1つの大きな太鼓状の凹み(A)を構成し、その一対の半割体に亘る太鼓状の凹みの中に一対の半割体を係止保持させる前方後円形状の爪(B)を、一対の脚片で凹みに連結して配置(C)した点に大きな特徴があるデザインであるのに対し、イ号意匠は、本件登録意匠のような一対の半割体に亘る太鼓状の凹みはなく、半割体の片方に突設された爪を他方の縁に係合するようにしたもので、その凹みも片方の半割体が僅かに凹んでいるのみである。

5.イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない理由
(1)この種の電池ケースで、一対の半割体を合体させることにより形成したこと自体はその出願前既に公知の技術であり(甲第3号証)、これによると、本件登録意匠の出願日前に既に一対の半割体を爪で係合させることにより合わせて小さな電池を収納して大きなサイズの電池として使用することが既に知られている。(2)また、本件登録意匠は別件の登録第1110655号(甲第2号証)とは関連しない(類似しない)として登録されたのであるから、そのことをも勘案すると、両者の差以上に、イ号物件は本件意匠と差異が大きいのであるから、一層両者に類似性は存在しない。

6.むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属することはなく、請求の趣旨通りの判定を求めるものである。

第2.被請求人の答弁及び理由
当審では、被請求人に期間を指定して答弁書の提出を求めたが、被請求人からは期間内に何らの応答もなされなかった。

第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成12年(2000年)8月28日に意匠登録出願をし、平成13年(2001年)3月30日に意匠権の設定の登録がなされたものであり、願書の記載によれば意匠に係る物品を「電池ケース」とし、その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

2.イ号意匠
イ号意匠は請求人が輸入し販売している意匠で、判定請求書添付の説明書の記載によれば、意匠に係る物品は、内部に単3電池を収納して、全体として単1電池の大きさの電池として使用するための電池ケースであり、その形態は、イ号図面及びその説明書に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。

3.両意匠の対比
両意匠を対比すると、何れも、内部に電池を収容して、異なる規格の電池として使用できるようにする電池ケースに係るものであるから、意匠に係る物品が一致し、その形態については、主として以下の共通点と相違点がある。
<共通点>
基本的構成態様において、(A)ケース全体を開閉自在な一対の半割体によって略円柱形状に構成し、正面の上下中央位置に半割体同士を合体保持するための合わせ部を設け、背面の上下2箇所に間隔を空けて薄肉のヒンジ部を設けた点。
各部の具体的態様において、(B)ケース体の内側面について、どちらの半割体も、上下方向に間隔を空けて2枚の保持板を平行に設け、各保持板は、内側の中央部分を全て半円形に切り欠いた形状としている点、(C)ケース体の上面について、一方の半割体において、+電極部を他方の半割体に向けて平面視半円形に突出するように設け、他方の半割体は、一方の半割体の+電極部の突出形状に合わせて平面視半円形に切り欠いた点。
<相違点>
各部の具体的態様において、(ア)ケース体の合わせ部において、本件登録意匠は、ケース体の正面中央の、ケース体高さの約1/3部分を、正面視が左右の半割体にわたって略太鼓形状に表れる側面視が倒台形状の凹み部を形成し、この凹み部の中心に係止用の爪部を設け、爪部は左辺が弧状に張り出した略方形板状のものとし、この右辺寄り上下2箇所で、凹み部から手前側に平行に突出する上下一対の脚片と一体化したのに対し、引用意匠は、左右の半割体にわたる凹み部は形成せず、右側の半割体の中央の左辺側で、ケース体の高さの約1/4部分を側面視略倒円弧状に浅く凹ませ、係止用の爪部はこの凹み部の中には設けず、凹み部を設けない左側の半割体の外表面の一部を、凹み部よりやや狭幅なものとしてそのまま弧状に小さく張り出した点、(イ)ケース体の上面について、本件登録意匠は、上面全体を僅かに上向きに膨出させ、中心部に位置する+電極部は、略円柱形とし、爪部を設けない左側の半割体に平面視でケース体の半径の約1/3の大きさの半円形状に突設したのに対し、引用意匠は、上面全体を略平坦面状とし、+電極は略丸リベット形としてこの電極の周囲を板状に囲い、爪部を設けない右側の半割体に平面視でケース体の半径の3/4程度の大きさの半円形状に突設した点、(ウ)ケース体の下面について、本件登録意匠は、下面の外縁側を僅かに下向きに膨出させ、中央の-電極は、上面の一部が二重に構成された略円形盤状として、+電極を設けた側の半割体に、底面視でケース体の半径の2/3程度の大きさの半円形状に突設したのに対し、引用意匠は、下面全体を略平坦面状とし、中央に-電極は設けず、一対の半割体にわたって丸く表れる小孔を設けた点。

4.両意匠の類否判断
この種の電池ケースは、内部に電池を収容して、異なる規格の電池として使用するものであり、外形の基本寸法は規格の定めるとおりにせざるを得ないことから、需要者は、全体の基本的な構成態様だけではなく、電極部、ケースの内側面及び合わせ部等の各部の具体的な態様にも注意を払って観察するものと認められる。
両意匠の類否はこの点を踏まえ、共通点及び相違点を総合して意匠全体として検討し、判断する。
共通点(A)のうちの、ケース全体が開閉自在な一対の半割体によって略円柱形状をなす構成は、両意匠の形態全体にかかわる骨格的な態様を表現するものであるが、内部に円筒形のもの出し入れする小型ケースとして、例えば印鑑ケースに見られるようにごくありふれた構成であり、電池ケースの分野においても、既に公然知られている(特開平10-40889号公報 図1、図7及びこれに関連する記載【0020】(甲第3号証)参照。)。また、合わせ部を半割体の正面の上下中央位置に設け、薄肉のヒンジ部を背面側の上下2箇所に間隔を空けて設けることも、単一素材で構成された各種小型ケースにおいては従来よりごく普通に行われていることである。したがって、共通点(A)の態様は特段の看者の注意を惹くものではなく、類否判断に与える影響は微弱である。共通点(B)のうち、上下方向に間隔を空けて2枚の保持板を平行に設けた点は、単なる板状片を並べたまでであり、この保持板の内側中央部分を全て半円形に切り欠いた点も、保持対象である単3電池の側面形状に合わせたに過ぎないことから、共通点(B)は両意匠の形態上の特徴を生じるまでには至らず、看者の注意を惹く程度はごく僅かである。共通点(C)については、その構成に相違点 (ウ)の相違が同時に見られることから、共通するまとまりとしての視覚効果はさほど強いものとはいえず、加えて、電極部として同じ役割を持つケース体の下面における相違も視野に入れて一体的に観察することになるから、その共通性は殆ど看者の注意を惹かず、これら共通点(B)及び(C)が類否判断に及ぼす影響も微弱である。
他方、相違点について検討すると、相違点(ア)の合わせ部の相違は、この種電池ケースが手に持って観察できる大きさのものであり、電池の出し入れに際して頻繁に指先が触れる部位における相違であることから、強く看者の注意を惹くものであり、特に本件登録意匠は、正面中央の、ケース体の高さ約1/3に相当する部分に、外形が略太鼓形状に表れる大きな凹み部を設け、係止用の爪部がこの凹み部から手前側に突出する態様で立体的に設けられているのに対し、引用意匠は、右側の半割体のみ、ケース体の高さ約1/4部分を側面視略倒円弧状に浅く凹ませ、係止用の爪部は、凹み部を設けない左側の半割体の外表面の一部を、凹み部よりやや狭幅なものとしてそのまま弧状に小さく張り出しただけの平面的なものであり、右側の半割体に形成された凹み部が側面視で浅い円弧状に小さく形成されていることと相俟って、本件登録意匠の凹凸感に富んだ形状との違いを強調するものとなっている。また、相違点(イ)のケース体上面の相違と相違点(ウ)のケース体下面の相違は、電池ケースとしての機能に直接的な影響を及ぼすものであるから、それぞれ看者の注意を強く惹く相違と認められるものであり、特にケース体下面において、電極部を設けているか設けていないかの相違は、一方の半割体上に半径の2/3程度の大きさの半円形状の突出部が形成されているか否かという視覚的に極めて大きな相違を生じ、看者の視覚を良く捉えるところとなっている。
そしてこれらの共通点及び相違点を総合して意匠全体として観察すると、共通点(A)ないし(C)の態様は、何れも従来から見られる態様、若しくはさほど特徴を有しない態様であって、類否判断に及ぼす影響が微弱であるのに対し、相違点(ア)は、通常の使用状態において頻繁に指先が触れる部位における相違であり、これに電池ケースとしての機能に直接的な影響を及ぼす相違点(イ)と(ウ)が加わり、これらの相違点が一体となって類否判断に及ぼす影響は、上記共通点が類否判断に及ぼす影響をはるかに凌ぎ、意匠全体として両意匠に異なる美感を起こさせるものとなっている。
以上のとおりであり、両意匠は意匠に係る物品が一致するが、形態において類似するものではないから、意匠全体として類似しない。

5.むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2012-03-30 
出願番号 意願2000-23618(D2000-23618) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZA (H1)
最終処分 成立  
特許庁審判長 遠藤 行久
特許庁審判官 早川 治子
杉山 太一
登録日 2001-03-30 
登録番号 意匠登録第1110656号(D1110656) 
代理人 中谷 武嗣 

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