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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D6 |
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管理番号 | 1258136 |
審判番号 | 不服2011-28075 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-12-27 |
確定日 | 2012-06-05 |
意匠に係る物品 | 壁取り付けフック |
事件の表示 | 意願2009- 26508「壁取り付けフック」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,2009年(平成21年)11月12日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「壁取り付けフック」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠,すなわち,特許庁意匠課受入2007年(平成19年)12月28日,その掲載日(公知日)を2007年(平成19年)12月25日と確認したところの,ウンブラ,インコーポレイテッドがインターネットに掲載した,表題を“flip hook-Hooks and Pulls-Umbra Store-Manufacturer of Houseware ”とするページ(掲載ページのアドレス http://www.umbra.com/ustore/product/318850/c213/flip_hook.html)に掲載された「衣類掛け具」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ19073780号)であって,その形態は,同サイト掲載ページの写真版に現されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「壁取り付けフック」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「衣類掛け具」であって,両意匠の意匠に係る物品は,共通する。 (2)本願意匠と引用意匠の形態 本願意匠と引用意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。 (なお,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。) 共通点として, (A)全体は,略横長板状の基台と,これに面一・埋設状に等間隔で取り付けられた複数の回動展開するフックとで構成されている点, (B)基台は,正面が,その下方略三分の二程度の部位において断面略円弧状に膨出し,平面・底面が,正面から背面に向かってやや窄まる傾斜面で,背面が平坦な垂直面をなしており,フック埋設用の切り欠き凹陥部は,正面視で縦長細幅帯状のものである点, (C)フックは,正面視が細幅帯状の,その長さを基台の上下幅一杯とする,正面側が略円弧状に膨出した形態で,下方回転軸付近の厚みが大きいものである点。 相違点として, (ア)基台正面上方の切り欠き凹陥部の有無について, 本願意匠は,基台正面の上方略三分の一程度の部位に,断面を浅い略円弧状とする切り欠き凹陥部があるのに対して, 引用意匠は,切り欠き凹陥部はない点, (イ)フックの個数について, 本願意匠は,3個であるに対して, 引用意匠は,5個である点, (ウ)基台上方両角部について, 本願意匠は,丸みがあるのに対して, 引用意匠は,丸みがない点。 2.本願意匠と引用意匠の類否判断 共通点及び相違点を総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。 共通点について,共通点(A)は,両意匠の基本的構成態様に関する共通点であるが,この種物品分野においては,引用意匠が公然知られるより前にすでに知られていた(参考意匠:1995年12月21日,ベネルクス特許庁発行の『ベネルクス意匠公報 第12巻』 第2710頁掲載の帽子掛けの意匠 別紙第3参照)態様であるから,共通点(A)の類否判断に及ぼす影響を大きいと言うことはできない。 共通点(B)は,正面が膨出し,平面・底面が正面から背面に向かってやや窄まる傾斜面をなすという基台の構成態様が共通するのであるが,目に付く正面部において,その上方略三分の一の部分が相違しており,共通点は下方三分の二の領域に止まるものであるため,類否判断に及ぼす影響を大きいと言うことはできない。 共通点(C)は,目に付く正面部における,直接手を掛ける部位に関する共通点であるが,正面視を細幅帯状とし,その長さを基台の上下幅一杯とする態様は,この種物品分野においては引用意匠が公然知られるより前に知られており(前記参考意匠参照),共通点(C)が類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。 一方,相違点については,相違点(ア)の,本願意匠が,基台正面の円弧状膨出部の上方に,断面を浅い略円弧状とする切り欠き凹陥部を設けたのに対し,引用意匠には切り欠き凹陥部が無い点は,展開自在のフックを,手を掛けて基台から引き出す際の,手掛けの容易さに影響する形態処理であると同時に,フックの収納状態にあっては,本願意匠は,フック上方が基台から突出していて,上方略三分の一部位は,下方略三分の二部位と異なる,凹凸のある変化に富む印象を与えるのに対して,引用意匠は,フック全体が基台に収納されて,全体がひとつの略蒲鉾形状にまとまった印象を与えるという異なる美感を生み出しており,また,この相違は,意匠全体の中でも目に付きやすい部位における相違であるから,相違点(ア)が,類否判断に及ぼす影響は大きく,この点のみで両意匠の類否判断を決定付けていると言える。 相違点(イ)については,この種物品分野において,フックの個数を適宜変更することは常套的に行われているから,相違点(イ)が類否判断に及ぼす影響は,微弱である。 相違点(ウ)については,この種物品において,基台の角部に丸みを設けることも設けないことも,共に,例示するまでもなくありふれているから,相違点(ウ)が類否判断に及ぼす影響は,微弱である。 したがって,両意匠は,意匠に係る物品は共通するが,形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいと言うことができないのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,相違点が類否判断に及ぼす影響は,類否判断を決定付けており,共通点が類否判断に及ぼす影響を凌駕するから,意匠全体として観察した場合,本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。 3.むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同条同項柱書によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また,さらに当審が審理した結果,本願意匠について,他に拒絶すべきものとする理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2012-05-23 |
出願番号 | 意願2009-26508(D2009-26508) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(D6)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 植山 陽子、樫本 光司 |
特許庁審判長 |
遠藤 行久 |
特許庁審判官 |
瓜本 忠夫 早川 治子 |
登録日 | 2012-06-22 |
登録番号 | 意匠登録第1446843号(D1446843) |
代理人 | 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 |