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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D4
管理番号 1261402 
審判番号 不服2012-628
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-13 
確定日 2012-08-06 
意匠に係る物品 扇風機 
事件の表示 意願2011- 2324「扇風機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,平成23(2011)年2月3日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品が「扇風機」であり,その形態は,願書及び願書添付の図面に記載されたとおりのものである(別紙第1参照)。

2.引用意匠
原審において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由として引用した意匠は,独立行政法人工業所有権情報・研修館が2010年5月6日に受け入れた,株式会社新建築社発行の内国雑誌「新建築7号(2010年5月1日発行)」第193頁所載下段中央に表された添付イメージの左側の「送風機」の意匠(製品名:GreenFan)(特許庁意匠課公知資料番号第HA22004631号)(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,雑誌に掲載された写真に現されたとおりのものである(別紙第2参照)。

3.当審の判断
(1)両意匠の対比
両意匠を対比すると,意匠に係る物品について,本願意匠は,「扇風機」であるのに対して,引用意匠は,「送風機」であるが,いずれも室内で用いられる羽根車によって作り出した風を所定の方向に送り出す機械に係るものであるから,意匠に係る物品が共通し,その形態については,主として以下の共通点及び差異点が認められる。
1)共通点
(A)全体を,前面にネット状カバー部(以下,「前面カバー」という。)を有する略短円筒状のガード部(以下,「ガード部」という。)を設け,その内部に多数の羽を有する回転羽部を設け,さらに後方に小径の円筒形状の駆動部(以下,「駆動部」という。)を設け,その下側に細長円柱形状の支柱部(以下,「支柱部」という。)と扁平な略円盤状の台座部(以下,「台座部」という。)とから構成した点,(B)ガード部は,周側面に細い孔部を配した点,(C)前面カバーは,中央に小型円形状の平坦部を設け,中型円形状の枠部と外枠とを同心円状に配して三重円状に表し,それぞれの間に細い線材を放射線状に配している点,(D)台座部は,上側の径を大きくしている点,において主に共通する。
2)差異点
(ア)ガード部の具体的態様について,本願意匠は,前面カバー及び後面が略円錐台形状に膨出していて,周側面の円周方向に長い孔部を設けているのに対して,引用意匠は,後方側の角部を隅丸状とした円筒形状で平坦な前面カバーを設け,周側面の円周方向に対して垂直に孔部を設けている点,(イ)操作部について,本願意匠は,台座部の上面に大小の円形状操作部を設けているのに対して,引用意匠は,操作部がはっきりと視認できない点,(ウ)台座部の形状について,本願意匠は,上段と下段が径の違う円盤状で段差を有しているのに対して,引用意匠は,全体が逆円錐台形状で,段差を有さない点,(エ)支柱部の具体的態様について,本願意匠は,上方に角度調節のための側面視円形状の軸部を有し,下段を円柱状支柱とし,上段を後方に目盛のある細い支柱として,全体を段差状に形成しているのに対して,引用意匠は,支柱全体が円柱状で段差がない点,(オ)駆動部の形状について,本願意匠は,後方側の径がやや細くなっており,下方に支柱接続用の突出部を設けているのに対して,引用意匠は,後方まで同径の円筒形状で突出部がない点,(カ)取っ手について,本願意匠は,ガード部の後面側上部に略倒コ字状の取っ手を設けているのに対して,引用意匠には,取っ手が見当たらない点,に主な差異が認められる。
(2)類否判断
そこで検討するに,共通点の態様のうち,共通点(A)及び同(B)の全体の構成に係る態様及びガード部の態様は,この種の物品の分野においては,他にも見られるものであり,両意匠を概括的に捉えたものに過ぎず,これらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいというほかない。次に,共通点(C)の前面カバーの態様も,他にも見受けられる態様であって,両意匠のみに共通する態様とはいえず,この共通点が両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。さらに,共通点(D)の台座部の共通点についても,他にも普通に見られるありふれた態様であって,それが注意を惹く部分とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であり,共通点全体としても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。
これに対して,下記考察のとおり,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両意匠を見る者の目に付き易いものであるから,両意匠の類否判断を左右するものというべきである。
すなわち,差異点(ア)に係る態様は,ガード部の具体的態様における差異であるが,この種の物品分野において,ガード部の態様は,見る者が着目するものであるから,孔部の差異と合わせて側面視の態様が,本願意匠を特徴付け,見る者に引用意匠とは別異の印象を与えるものである。次に,差異点(イ)に係る態様は,操作部に係る具体的な態様における差異であって,使用時に見る者の目に付き易い部分に係る差異であり,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。また,差異点(ウ)に係る態様は,台座部の形状に係る差異であり,いずれも普通に見られる態様ではあるが,差異点(イ)の操作部の具体的な態様の差異と相俟って,両意匠が別異であるとの印象を与えるものである。そして,差異点(エ)に係る態様は,支柱部の具体的態様における差異であって,支柱部の態様は,いずれもこの種物品分野においてよく見られる態様であるが,その差異は,両意匠を見る者に与える印象を異ならせるものといえる。さらに,差異点(オ)及び同(カ)に係る態様は,駆動部の具体的形状や取っ手の有無というあまり目立たない部分における差異であって,それらのみでは両意匠の類否判断に与える影響がさほど大きいとはいえないが,差異点(ア)に係る態様と関連して,両意匠の類否判断に影響を与えるものであるから,これらの差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,上記共通点を凌ぐものであって,生起する美感を異にしていると認められる。
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,意匠全体として見る者(需要者)に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

4.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原審の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2012-07-25 
出願番号 意願2011-2324(D2011-2324) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 兼安 あい加藤 真珠 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 橘 崇生
下村 圭子
登録日 2012-08-24 
登録番号 意匠登録第1451768号(D1451768) 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 野間 悠 
代理人 佐藤 英二 
代理人 黒川 朋也 
代理人 塚原 憲一 

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