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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立成立) H7
管理番号 1261407 
判定請求番号 判定2011-600055
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2012-09-28 
種別 判定 
判定請求日 2011-12-26 
確定日 2012-08-02 
意匠に係る物品 座標入力機 
事件の表示 上記当事者間の登録第1372732号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号写真に現された「座標入力機」の意匠は、登録第1372732号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 請求の趣旨及び理由
本件判定請求人(以下,「請求人」という。)は,「イ号写真に示す意匠(以下,「イ号意匠」という。)は,本件意匠「意匠登録第1372732号」(以下,「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。との判定を求める。」と申し立て,その理由として要旨以下のとおりの主張をし,添付書類としてイ号写真及び甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
1.判定請求の必要性
請求人は,判定請求に係る「座標入力機(イ号写真で示す物品(イ号物品))」を製造し,日本へ輸出することを検討している。しかしながら,請求人は,株式会社ワコム(本件判定被請求人)(以下,「被請求人」という。)が意匠権者である登録意匠(甲第2号証)の存在を確認した。
請求人はイ号物品を実施しても問題ないものと考えるが,見解の相違によって後日被請求人との間で問題が生じるおそれがあるため高度な専門的技術的知識を有する特許庁による,厳正中立的な立場からの判定を求めた次第である。
2.本件登録意匠の手続きの経緯
出願 平成20(2008)年12月17日(意願2008-31976)
登録 平成21(2009)年10月2日(意匠登録第1372732号)
3.先行意匠及び本件登録意匠との比較説明
先行周辺意匠に基づいて本件登録意匠の創作の要点を観察し,この種の物品における意匠上の創作の主たる対象を明らかにする。
3-1 操作部とパネルの位置関係について
「操作部」は「タッチパネル」の左側に位置する。これは,「タッチパネル」を右手で操作し,「操作部」を左手で操作するための機能的な形態であると言える。
また,「操作部」を3つ備えることは,ごく普通の構成態様であると言える。
3-2 サイドの下向湾曲部について
座標入力機のサイドに湾曲部を備えることは,ごく普通の構成態様であると言える。
以上のとおり,本件登録意匠にかかる物品全体はありふれた形態であるため,本件登録意匠の特徴は,「操作部」における「個々の操作部」に特徴があると考えられる。以下において,個々の操作部の検討を行う。
3-3 各操作部・丸型操作部について
「操作部」の中央に「丸型操作部」を備えることは,ごく普通の構成態様であると言える。
3-4 各操作部・3つ独立した操作部について
「丸型操作部」の上下に「3つ独立した操作部」を備えることは,ごく普通の構成態様である。
ここで,公知意匠4の「3つ独立した操作部」は,単なる長方形でなく,部分的に変形(湾曲)した形態を有している点が特徴的である。一方,本件登録意匠は長方形の「3つ独立した操作部」であって,変形した形態を有さない。
従って,変形した形態を有さない「3つ独立した操作部」,即ち,「長方形の3つ独立した操作部」であることが本件登録意匠における注意を引く特徴的な部分であると言える。
なお,変形した形態,即ち長方形以外の「操作部」の場合は,公然知られた形状の結合に基づいた意匠となるため,本件登録意匠の類似する意匠の範囲に「長方形以外の操作部」は含まれないと言える。
4.イ号意匠と本件登録意匠との比較説明
イ号物品に係る意匠も公知意匠に基づけば物品全体がありふれた形態であると言える。
一方,本件登録意匠における注意を引く特徴的な部分である「長方形の3つ独立した操作部」は,イ号物品に係る意匠においては存在していない。
また,上述したとおり,本件登録意匠の類似する意匠の範囲に「長方形以外の操作部」は含まれないと言える。
従って,「長方形の3つ独立した操作部」と「への字型操作部」が,本件登録意匠とイ号物品に係る意匠との相違点であり,類否判断に大きな影響を及ぼすものであると言える。
以上をまとめると,本件登録意匠とイ号物品に係る意匠との一致点は,公知意匠からありふれた形態であると言え類否判断に及ぼす影響が軽微であると言える。一方で,相違点は顕著であることからイ号物品に係る意匠は,本件登録意匠の類否範囲に含まれないことは明白である。
5.結び
以上より,イ号物品に係る意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さないので,請求の趣旨どおりの判定を求める。
6.請求人が提出した証拠
(1)イ号物品の写真
(2)甲第1号証:イ号物品に係る登録意匠 意匠登録第1423250号
(3)甲第2号証:本件登録意匠 意匠登録第1372732号 出願日 平成20年(2008年)12月17日
(4)甲第3号証:公知意匠1 意匠公報 意匠登録第1121021号 発行日 平成13年(2001年)9月10日
(5)甲第4号証:公知意匠2 OHIM登録証 共同体意匠登録番号000679816-0001 発行日 2007年5月15日
(6)甲第5号証:公知意匠3 意匠公報 意匠登録第1328408号 発行日 平成20年(2008年)4月28日
(7)甲第6号証:公知意匠4 OHIM登録証 共同体意匠登録番号000706809-0006 発行日 2007年6月5日

第2 被請求人の答弁の趣旨及び理由
1.答弁の趣旨
被請求人は,「イ号写真に現れた『座標入力機』の意匠は,意匠登録第1372732号の意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求める。」と答弁し,その理由として要旨以下のとおりの主張をし,証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。
2.答弁の理由
(1)物品の同一性
本件登録意匠は意匠に係る物品を「座標入力機」とし,一方,イ号意匠に係る物品も用途及び機能が同一の「座標入力機」に係るものであるから,意匠に係る物品が一致する。
(2)意匠の形態の類似性
(A) 本件登録意匠の構成態様
以下,本件登録意匠の構成態様を,その登録意匠公報(甲第2号証)の斜視図,平面図及び正面図等に表れた設置向きに基づき,使用者に対して手前側を「正面側」,遠い側を「背面側」とし,また,上側の面を「上面」,更に,左右の方向を「横方向」,正面側から背面側への方向を「縦方向」として説明する。なお,各構成態様に付された符号は,本答弁書に添付の本件登録意匠及びイ号意匠の対比図に記載されているものである。
1)基本的構成態様
(ア)全体1は,縦横比が1:1.5で,横方向中心軸線(O-O)に対して正面側と背面側が対称的に配置された,矩形の板状体である。
(イ)板状体の上面の正面側縁部2及び背面側縁部3は,横方向中心軸線(O-O)に対して正面側と背面側が対称的に,底面側に向けて湾曲している。
(ウ)板状体の底面4の正面側縁部5及び背面側縁部6は,横方向中心軸線(O-O)に対して正面側と背面側とが対称的に,上面側に向けてなだらかに湾曲している。
(エ)上面は,縦方向に延びる分割線7を境として,その左側約5分の1の操作領域部分8と,その右側約5分の4の本体領域部分9とに区分されている。 (オ)本体領域部分9には,中央左側寄りに,本体領域部分9の長辺の72%,また,短辺の54%を占める,横長矩形の入力部10が配置されている。
(カ)操作領域部分8には,中央に円形操作部11が,また,その正面側及び背面側のそれぞれに,横方向中心軸線(O-O)に対して対称的に,操作部12が配置されている。
2)具体的構成態様
(キ)円形操作部11は,中央の小さい円形部13及びその周囲のドーナツ形部14からなる二重円として現れる。
(ク)各操作部12は,縦方向に並んだ複数の操作ボタン15を有する。
(ケ)各矩形操作部12は矩形の操作ボタン15を3つ有する。
(B) イ号意匠の構成態様
一方,イ号意匠の構成態様は以下のとおりとなる。なお,各構成態様に付された符号は,上記本件登録意匠及びイ号意匠の対比図に記載されているものである。
1)基本的構成態様
(ア’)全体1’は,縦横比が1:1.5で,横方向中心軸線(O’-O’)に対して正面側と背面側が対称的に配置された,矩形の板状体である。
(イ’)板状体の上面の正面側縁部2’及び背面側縁部3’は,横方向中心軸線(O’-O’)に対して正面側と背面側とが対称的に,底面側に向けて湾曲している。
(ウ’)板状体の底面4’の正面側縁部5’及び背面側縁部6’は,横方向中心軸線(O’-O’)に対して正面側と背面側とが対称的に,上面側に向けてなだらかに湾曲している。
(エ’)上面は,縦方向に延びる分割線7’を境として,その左側約5分の1の操作領域部分8’と,その右側約5分の4の本体領域部分9’とに区分されている。
(オ’)本体領域部分9’には,中央左側寄りに,本体領域部分9’の長辺の72%,また短辺の54%を占める,横長矩形10’の入力部が配置されている。
(カ’)操作領域部分8’には,中央に円形操作部11’が,また,その正面側及び背面側のそれぞれに,横方向中心軸線(O’-O’)に対して対称的に,操作部12’が配置されている。
2)具体的構成態様
(キ’)円形操作部11’は,中央の小さい円形部13’及びその周囲のドーナツ形部14’からなる二重円として現れる。
(ク’)各操作部12’は,縦方向に並んだ複数の操作ボタン15’を有する。
(ケ’)各矩形操作部12’は,2つの正方形を対角線上に組み合わせた操作ボタン15’を2つ有する。
(C) 本件登録意匠とイ号意匠の共通点及び差異点
1)基本的構成態様
(ア-ア’)全体1,1’は,縦横比が1:1.5で,横方向中心軸線(O-O,O’-O’)に対して正面側と背面側が対称的に配置された,矩形の板状体である。
(イ-イ’)板状体の上面の正面側縁部2,2’及び背面側縁部3,3’は,横方向中心軸線(O-O,O’-O’)に対して正面側と背面側とが対称的に,底面側に向けて湾曲している。
(ウ-ウ’)板状体の底面4,4’の正面側縁部5,5’及び背面側縁部6,6’は,横方向中心軸線(O-O,O’-O’)に対して正面側と背面側とが対称的に,上面側に向けてなだらかに湾曲している。
(エ-エ’)上面は,縦方向に延びる分割線7,7’を境として,その左側約5分の1の操作領域部分8,8’と,その右側約5分の4の本体領域部分9,9’とに区分されている。
(オ-オ’)本体領域部分9,9’には,中央左側寄りに,本体領域部分9,9’の長辺の72%,また短辺の54%を占める,横長矩形の入力部10,10’が配置されている。
(カ-カ’)操作領域部分8,8’には,中央に円形操作部11,11’が,また,その正面側及び背面側のそれぞれに,横方向中心軸線(O-O,O’-O’)に対して対称的に,操作部12,12’が配置されている。
2)具体的構成態様
(キ-キ’)円形操作部11,11’は,中央の小さい円形部13,13’及びその周囲のドーナツ形部14,14’からなる二重円として現れる。
(ク-ク’)各操作部12,12’は,縦方向に並んだ複数の操作ボタン15,15’を有する。
一方,本件登録意匠とイ号意匠の構成態様は,2)の具体的構成態様に関し,以下の点で差異がある。
(ケ-ケ’)各操作部12,12’は,本件登録意匠においては,矩形の操作ボタン15を3つ有するのに対して,イ号意匠においては,2つの矩形を対角線上に組み合わせた操作ボタン15’を2つ有する点で,両意匠に差異がある。
(D) 本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察
1)上記のとおり,本件登録意匠とイ号意匠とは,基本的構成態様のすべての点((ア-ア’)?(カ-カ’))において,更に,具体的構成態様(キ-キ’)及び(ク-ク’)の点において共通する。
中でも,基本的構成態様の,全体が所定の大きさの,横方向中心軸線に対して正面側と背面側が対称的に配置された,矩形の板状体である点(ア-ア’),板状体の正面側縁部及び背面側縁部が横方向中心軸線に対して正面側と背面側とが対称的に,底面側に向けて湾曲している点(イ-イ’),板状体の底面の正面側縁部及び背面側縁部が,横方向中心軸線に対して正面側と背面側とが対称的に,上面側に向けてなだらかに湾曲している点(ウ-ウ’),上面が縦方向に延びる分割線で操作領域部分と本体領域部分とに区分されている点(エ-エ’),本体領域部分の中央左側寄りに横長矩形の入力部が配置されている点(オ-オ’),操作領域部分の中央に円形操作部が,また,その正面側と背面側のそれぞれに,横方向中心軸線に対して対称的に,操作部が配置されている点(カ-カ’)はいずれも,両意匠の基調を決定する構成態様であり,これらの点が類否判断に与える影響は大きい。
特に,上記の構成態様は,板状体全体を横方向中心軸線に対して正面側と背面側を対称形とするものであり,本件意匠が右利き及び左利きの使用者のいずれにも同様な使い心地を提供できるように,向きを180度回転可能とするものである。このような構成態様は,一定の向き(公知意匠A(乙第6号証)?公知意匠D(乙第3号証)の写真に示された向き)でのみ使用することを前提とし,縦方向中心軸線に対して左右対称の形状とされた公知意匠A?Dのいずれにも見られない態様である。したがって,本件登録意匠の上記基本的構成態様(ア-ア’)?(カ-カ’)が類否判断に与える影響は非常に大きいと言える。
また,両意匠に共通する具体的構成態様である,円形操作部が二重円として現れる点(キ-キ’),及び各操作部が縦方向に並んだ複数の操作ボタンを有する点(ク-ク’)は,上記基本的構成態様と相俟って,両意匠を特徴づけ,これらが類否判断に与える影響は大きい。
一方,本件登録意匠とイ号意匠とは,上記の具体的構成態様のうち,各操作部の操作ボタンの具体的な数及び形状(ケ-ケ’)に差異がある。しかし,この差異点は,共通点が形成する全体的な視覚的なまとまりに吸収されてしまう程度のものにすぎず,看者に格別の美感を与えるものではなく,看者の注意を惹くということは到底できない。
以上の認定,判断を前提として両意匠を全体的に観察すると,上記共通点は,両意匠の形態全体に著しい共通感を奏するものであり,共通点は差異点を凌駕しており,意匠全体として観察すると両意匠は類似するものである。
2)一方,両意匠の類否判断に関し,請求人は,両意匠の類否判断に関し,判定請求書の「4.イ号意匠と本件登録意匠との比較説明」において,「イ号物品に係る意匠も公知意匠に基づけば物品全体がありふれた形態である。」と主張する。しかし,公知意匠1?4に基づいては,本件登録意匠の態様が「ごく普通の構成態様である」とは到底,言うことはできないことは,既に説明したとおりであり,よって,本件登録意匠の物品全体の態様がありふれた形態とは言えない。一方,イ号物品に係る意匠についても,同じ理由により,物品全体の態様がありふれた形態とは到底言うことができない。
更に,請求人は,「本件登録意匠における注意を引く特徴的な部分」は,「長方形の3つの独立した操作部」であると主張している。これは,公知意匠1?4に基づき,本件登録意匠の物品全体の態様がありふれた形態であり,一方,公知意匠1?4に表れていない「長方形の3つの独立した操作部」が本件登録意匠の特徴的部分であると,主張しているものと思われる。しかし,「本件登録意匠の物品全体の態様がありふれた形態である」という主張は,既に説明したとおり,前提を欠くものであるから,「本件登録意匠における注意を引く特徴的な部分」は,「長方形3つの独立した操作部」であると言うことにはなり得ない。
更に,請求人は,「本件登録意匠における注意を引く特徴的な部分である『長方形の3つの独立した操作部』は,イ号物品に係る意匠においては存在」しておらず,「イ号物品に係る意匠においては,注意を引く特徴的な部分として瓢箪型操作部を隣接して左右対称に配置した『への字型操作部』を有し」ており,「従って,『長方形の3つの独立した操作部』と『への字型操作部』が,本件登録意匠とイ号物品に係る意匠との相違点であり,類否判断に大きな影響を及ぼすものである」と主張する。しかし,既に詳述したように,本件登録意匠の特徴的な部分は,「長方形の3つの独立した操作部」ではなく,構成態様(ア-ア’)?(ク-ク’)であり,これらの態様が両意匠の類否判断への影響が大きいのであって,「長方形の3つの独立した操作部」がイ号意匠に存在しておらず,「への字型操作部」が存在することが,これに対して大きな影響を及ぼすことはない。
結局,両意匠の全体を観察すると,イ号意匠は本件登録意匠に類似するものである。
3.結び
以上のとおり,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するので,答弁の趣旨のとおりの判定を求める。
4.被請求人が提出した証拠
(1)乙第1号証:雑誌「ラブベリー」2007年12月号,表紙,105頁
(2)乙第2号証:Taiwan External Development Council ウエブサイト “Computex Taipei 2007 WALTOP International Corporation”
(3)乙第3号証:ワコム intuos 3 プレスリリース(2004年9月9日発表)
(4)乙第4号証:Savant Systems社 ウエブサイト (http://www.savantsystems.com/touch tv.aspx)
(5)乙第5号証:欧州共同体登録意匠000706809-0006号 登録証
(6)乙第6号証:ワコム intuos カタログ(2000年)
(7)乙第7号証:ワコム intuos 2 カタログ(2003年)
(8)乙第8号証:「いきいき」2003年11月号表紙,190頁,191頁

第3 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠(意匠登録第1372732号の意匠)は,平成20年12月17日に意匠登録出願され,平成21年10月2日に意匠権の設定の登録がなされたものであり,その願書の記載及び願書に添付された図面によれば,意匠に係る物品を「座標入力機」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付された図面に表されたとおりのものである(別紙第1参照)。
すなわち,本件登録意匠は,意匠に係る物品が,電子ペン等を用いて操作者が所望の位置を指示することにより,二次元の座標や必要に応じ筆圧情報をコンピュ-タに入力する「座標入力機」であって,その形態についての構成態様は,全体を平面視横長長方形状の薄い板状の本体(以下,「本体」という。)とし,平面視略中央に横長長方形状の座標入力部(以下,「入力部」という。)を設け,平面視左側に縦長帯状の区画部(以下,「帯状区画部」という。)を設け,その帯状区画部内に操作部を一列に配したもので,中央に大きな円形操作部(以下,「円形操作部」という。)を設け,横長長方形状のボタンを縦に3つ連ねた長方形操作部(以下,「長方形操作部」という。)をその上下に配したものである。本体は,平面視隅丸長方形状で縦横比が約1:1.5であり,四隅の隅丸が小さく,本体の周側面は,上下2段の細帯状の縁部が囲み,側面視した外形状を左右対称状(前後に対称形状)とし,左右両端部(本体前端部と本体後端部)が下向きの円弧状を形成し,正面視した本体の外形状の厚みを左右端部まで同様に形成し,底面部を四辺より中央を膨出させた平坦面部とし,入力部は,平面視の縦横比が約1:1.6で,本体の平面視略中央に設けられ,入力部と本体全体の横の長さの比は,約1:1.8で,帯状区画部の横幅と本体全体の横の長さの比が約1:5で,円形操作部は,平面視二重円に表れ,外側の大きな円の内部が浅い凹円弧状の断面形状を有し,内側の小さな円と外側の大きな円の直径の比が,約1:2.3で,長方形操作部は,帯状区画部内の円形操作部の上下に隙間を空けて横方向中心線に対し対称状に設けられ,本体の右側面部の中央に接続用端子部を設けたものである。

2.イ号意匠
イ号意匠は,判定請求書に添付されたイ号物品の写真(請求人が提出した証拠:別紙第2参照)に現されたとおりのものであり,被請求人もこれに基づき答弁をしている。また,イ号意匠は,甲第1号証に示す請求人に係る意匠登録第1423250号「座標入力機」の意匠(平成23年4月27日出願,平成23年8月19日設定登録)の実施品と認められるものである。
なお,両意匠を同じ方向から観察するため,イ号意匠の向きを本件登録意匠の図面の向きに合わせて,本件登録意匠の斜視図,平面図及び正面図等に表れた向きに基づき,上面を「平面図」とし,左側に操作部がある向きとして対比して,以下,検討する。
イ号意匠は,意匠に係る物品が「座標入力機」であって,その形態についての構成態様は,全体を平面視横長長方形状の薄い板状の本体とし,平面視略中央に横長長方形状の入力部を設け,平面視左側に縦長の帯状区画部を設け,その帯状区画部内に操作部を一列に配したもので,中央に大きな円形操作部を設け,正方形状のボタンを市松模様状に対角線方向に斜めに連ね,その輪郭形状が略違い菱紋型のボタンを2つずつ組み合わせた,倒略凸字形状の操作部(以下,「略凸字状操作部」という。)を円形操作部の上下に配したものである。本体は,平面視隅丸長方形状で縦横比が約1:1.5であり,平面視左側上下の隅丸が右側上下の隅丸より大きく緩やかな円弧状とし,本体の周側面を細帯状の縁部が囲み,操作部のある左側面側を緩やかに湾曲してやや薄く形成し,底面部を四辺より僅かに中央を膨出させた平坦面部とし,入力部は,平面視の縦横比が約1:1.7で,本体の平面視略中央に設けられ,入力部と本体全体の横の長さの比は,約1:1.7で,帯状区画部は,その右側略中央部が円形操作部に沿って円弧状に入力部側に向かって突出した形状(以下,「円弧状突出部分」という。)で,帯状区画部の横幅と板状体全体の横の長さの比は帯状区画部の狭い場所で約1:5.5,円弧状突出部分の最も広い場所で約1:4.8で,帯状区画部において,円形操作部は,外側に略卵形状の枠部を設け,枠部内が平面視略二重円に表れ,外側の大きな円の縁部円周に短い筋状模様を配し,その内部が浅い凹円弧状の断面形状を有し,内側の小さな円は,溝部の内側にやや突出して設けられ,内側の小さな円と外側の大きな円の直径の比が,約1:4で,円弧状突出部分の円形操作部の外側付近に小型長方形状及び小型円形状の表示灯を設け,略凸字状操作部は,円形操作部の上下に隙間を空けて横方向中心線に対し対称状に設けられ,最上段と最下段のボタンの中央寄りの角部に小型二等辺三角形を配し,本体の右側面部の中央に長方形状のスライドスイッチを,その左側に接続用端子部を設け,底面部の四隅に略トラック形状の接地部を設け,全体を黒色としたものである。

3.両意匠の対比
両意匠を対比すると,いずれも「座標入力機」に係るものであり,意匠に係る物品が一致し,そして,形態については,主として以下の共通点と差異点が認められる。
(1)共通点
(a)全体を平面視横長長方形状の薄い板状の本体とし,平面視略中央に横長長方形状の入力部を設け,左側に縦長の帯状区画部を設け,その帯状区画部内に操作部を一列に配した点,(b)本体は,平面視隅丸長方形状で縦横比が約1:1.5であり,本体の周側面を細帯状の縁部が囲み,底面部を四辺より僅かに中央を膨出させた平坦面部としている点,(c)帯状区画部内には,中央に大きな円形操作部を設け,その上下に横方向中心線に対し対称状に他の操作部を配している点,(d)円形操作部は,平面視略二重円に表れ,外側の大きな円の内部が浅い凹円弧状の断面形状を有している点,(e)本体の右側面部に,接続用端子部を設けた点,において主に共通する。
(2)差異点
(ア)帯状区画部について,本件登録意匠は,平面視縦長長方形状で,帯状区画部の横幅と板状体全体の横の長さの比は約1:5であるのに対して,イ号意匠は,円形操作部の右側略中央部に円弧状突出部分を設け,帯状区画部の横幅と本体全体の横の長さの比が帯状区画部の狭い場所で約1:5.5,円弧状突出部分の最も広い場所で約1:4.8であり,円弧状突出部分付近に小型長方形状及び小型円形状の表示灯を設けている点,(イ)円形操作部の上下について,本件登録意匠は,横長長方形状のボタンを縦に3つ連ねた長方形状操作部としているのに対して,イ号意匠は,略凸字状操作部とし,最上段と最下段のボタンの中央寄りの角部に小型二等辺三角形を配している点,(ウ)本体について,本件登録意匠は,平面視左右が縦方向の中心線に対して対称状で,四隅の隅丸が小さく,周側面を上下2段の縁部が囲み,側面視した外形状を左右対称状(前後に対称形状)で,左右両端部が下向きの円弧状を形成し,正面視した本体の外形状の厚みを左右端部まで同様に形成しているのに対し,イ号意匠は,平面視左側上下の隅丸が右側上下の隅丸より大きく緩やかな円弧状という点で左右が非対称で,周側面を1段の縁部が囲み,操作部のある左側面側を緩やかに湾曲してやや薄く形成している点,(エ)入力部について,本件登録意匠は,平面視の縦横比が約1:1.6で,入力部と本体全体の横の長さの比は,約1:1.8であるのに対して,イ号意匠は,平面視の縦横比が約1:1.7で,入力部と本体全体の横の長さの比は,約1:1.7で本件登録意匠よりやや細長い点,(オ)円形操作部について,本件登録意匠は,内側の小さな円と外側の大きな円の直径の比が,約1:2.3で,内側の小さな円がやや大きめであるのに対して,イ号意匠は,外側に略卵形状の枠部を設け,外側の大きな円の縁部円周に短い筋状模様を配し,内側の小さな円が溝部の内側にやや突出し,内側の小さな円と外側の大きな円の直径の比が,約1:4で,内側の円が小さめである点,(カ)イ号意匠は,右側面部の中央に長方形状のスライドスイッチを設け,底面部の四隅に接地部を設けているのに対して,本件登録意匠は,いずれも設けていない点,(キ)本件登録意匠には,色彩が施されていないのに対して,イ号意匠は,全体を黒色としたものである点,に主な差異がある。

4.類否判断
そこで,イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するか否かについて,本件登録意匠の出願前に存する公知意匠等を参酌し,新規な態様や需要者の注意を最も惹き易い部分を考慮した上で,共通点と差異点が意匠全体として両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,検討する。
(1)共通点の評価
まず,共通点が類否判断に及ぼす影響について比較して検討する。
共通点(a)について,全体を平面視横長長方形状の薄い本体とし,平面視略中央に横長長方形状の入力部を設け,平面視左側に縦長の帯状区画部を設け,その帯状区画部内に操作部を一列に配したものは,この種の座標入力機の分野において本件登録意匠の出願前に既に見受けられ(例えば,参考意匠1,意匠登録第1252911号の意匠,別紙第3参照),本件登録意匠のみの特徴とはいえず,両意匠のみに共通する新規の構成態様とはいえないし,共通点(b)についても,本体が平面視隅丸長方形状で,本体の周側面を細帯状の縁部が囲み,底面部を四辺より僅かに中央を膨出させた平坦面部としている座標入力機も,本件登録意匠の出願前より普通に見られ(例えば,参考意匠2,意匠登録第1267831号の意匠,別紙第4参照,参考意匠3,意匠登録第1314721号,別紙第5参照),両意匠のみに共通する態様とはいえないのであるから共通点(a)及び同(b)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものというほかない。共通点(c)は,概括的な共通点に過ぎないものであるうえ,帯状区画部内に操作部を配することは,各種の電子機器において広く用いられる手法であって,本件登録意匠と引用意匠にのみ共通する態様とはいえず,また,中央に大きな円形操作部を設け,それに対し対称状に他の操作部を配している態様も,この種の座標入力機の分野において,本件登録意匠の出願前に既に見受けられ(例えば,判定請求書添付書類6,甲第5号証,意匠登録第1328408号の意匠,別紙第6参照),特徴のないものといえ,両意匠のみに格別共通する構成態様とはいえない上に,差異点(イ)を考慮すれば,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。共通点(d)については,平面視略二重円に表れ,外側の大きな円の内部に浅い凹円弧状の断面形状を有している円形操作部は,この種の物品分野のみならず,各種の電子機器の入力部として,本件登録意匠の出願前より,普通に見受けられるありふれた態様であって特徴のないものといえ,両意匠のみに共通する格別の態様ということはできず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きくない。共通点(e)について,本体の右側面部に,接続用端子部を設けた点については,この種の座標入力機の分野においては,従来より普通に行われているところであり,また,目立たない部位における細部の共通点といえるもので,その共通点が注意を惹く部分とはいえず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そうすると,これらの共通点に係る態様は,概括的に捉えたに過ぎないもの,または,公知意匠を参酌すれば,両意匠のみに共通する特徴的な態様とはいえないものであり,両意匠の類否判断を決定付けるものとはなりえない。
(2)差異点の評価
次に,差異点が類否判断に及ぼす影響について検討する。
差異点(ア)については,帯状区画部について,円弧状突出部分を設け,円形操作部付近に表示灯を設けたイ号意匠の態様は,本件登録意匠の態様とは異なり,イ号意匠独自の態様といえるものであるから,その差異が両意匠の類否判断に与える影響は看過できない。差異点(イ)について,円形操作部の上下に,横長長方形状のボタンを縦に3つ連ねた長方形状操作部としている本件登録意匠の態様は,イ号意匠の略凸字状操作部とは大きく異なり,いずれの態様も本件登録意匠の出願前から見受けられない,それぞれ独自の態様といえるもので,かつ使用時に操作部を観察した場合の印象が大きく異なり,その差異が両意匠の類否判断に与える影響は大きいものといえる。差異点(ウ)について,本体の周側面の側面視した外形状を左右対称状とし,縁部を2段とし,正面視した本体の外形状の厚みを左右端部まで同様に形成したという本件登録意匠の態様は特徴的なものといえ,本体における差異は両意匠の類否判断に一定の影響を与えるものといえる。差異点(エ)について,入力部の縦横比及び本体全体における長さの比の違いは,それ自体は格別目立つものとはいえないが,この種の座標入力機の分野においては,当該部位の違いは,実際にペンを用いて操作をする場合において,その大きさや縦横比に目の行くところであって,注意を惹く部位といえ,その差異は両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。差異点(オ)については,円形操作部は,使用者が実際に使用する際に手で操作する部分に係る差異であって,注意を惹く部分であり,差異点(イ)の上下の操作部の態様と相俟って両意匠の全体的な印象に影響を与えるもので,類否判断に与える影響は無視することができない。差異点(カ)については,それ自体は意匠全体の中では小さいものであるが,差異点(ウ)の本体の差異と相俟って,両意匠の類否判断に一定の影響を与えるものといえる。差異点(キ)の色彩の有無については,イ号意匠の態様はこの種の座標入力機によく見られる態様である黒色としたまでに過ぎないので,この差異点が両意匠の類否判断に与える影響は,小さいといえる。
(3)小括
そうして,これらの共通点と差異点を総合すれば,共通点に係る態様が両意匠にのみ共通する特徴とはいえないものであるのに対して,差異点(ア)に係るイ号意匠の特徴的な態様は,本件登録意匠には見られないものであって,また,両意匠の,目に付き易く,看者の注意を惹く差異点(イ)ないし(オ)が認められ,差異点(カ)に係る態様と相俟って,両意匠の類否判断に決定的な影響を及ぼすものとせざるを得ず,さらに他の差異点による意匠的な効果もあわせ考えれば,意匠全体として,イ号意匠は,本件登録意匠に類似するものとはいえない。
したがって,本件登録意匠とイ号意匠は,意匠に係る物品が一致するが,その形態については,イ号意匠は本件登録意匠の特徴的な態様を有さず,共通点よりも差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果の方が両意匠の類似性についての判断に与える影響が支配的であるから,両意匠は,全体として需要者に与える美感が異なるものであって,類似するということはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2012-07-23 
出願番号 意願2008-31976(D2008-31976) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZA (H7)
最終処分 成立 
前審関与審査官 小林 裕和 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 橘 崇生
下村 圭子
登録日 2009-10-02 
登録番号 意匠登録第1372732号(D1372732) 
代理人 弟子丸 健 
代理人 SK特許業務法人 
代理人 奥野 彰彦 
代理人 相良 由里子 
代理人 辻居 幸一 
代理人 伊藤 寛之 
代理人 倉澤 伊知郎 
代理人 松下 満 
代理人 井野 砂里 
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