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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K8
管理番号 1265895 
審判番号 不服2012-11918
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-26 
確定日 2012-11-10 
意匠に係る物品 回転ポンプ 
事件の表示 意願2011- 10464「回転ポンプ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は、2011年(平成23年)5月10日の意匠登録出願であって、その意匠登録を受けようとする意匠(以下、「本願意匠」という。)は、願書及び願書添付図面の記載によれば、意匠に係る物品を「回転ポンプ」とし、その形態を願書及び願書添付図面に記載されたとおりとするものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当する(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)とするものであって、拒絶の理由に引用した意匠(以下、「引用意匠」という。)は、本願出願前、日本国特許庁発行の公開特許公報 特開2011-064078号(発明の名称「クローポンプ及びその製造方法」。以下、「引用文献」という。)に記載された「クローポンプ」の意匠であって、その形態は、引用文献の図2ないし図5に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)なお、図2ないし図5については、【図面の簡単な説明】の欄において、いずれも引用文献記載の図1のクローポンプの形態例に係る図である旨説明されていることから、引用意匠の形態の認定にあたっては図1も参酌することとする。

第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「回転ポンプ」であり、引用意匠の意匠に係る物品は「クローポンプ」であって、表記は異なるものの、本願意匠の願書及び願書添付図面の記載並びに引用文献の記載を総合すると、両意匠とも、例えば真空ポンプやブロアとして気体を吸排気するために用いられる回転ポンプであることが認められるから、両意匠の意匠に係る物品は共通する。
(2)形態
本願意匠と引用意匠の形態を対比すると、両意匠の形態については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。(以下、対比のため、本願意匠の図面における正面、平面等の向きを、引用意匠にもあてはめることとする。)
(i)共通点
基本的構成態様の共通点として、(A)全体は、正面視を横長楕円形状とする略倒楕円柱形状の本体に、外周面には奥行き方向に伸びる多数のリブを平行状に設け、本体下方の四方4か所に正面視略「ハ」字状を呈する脚部を設け、本体上面の背面側に円孔からなる吸気口を、背面下方に偏平略矩形筒状の枠体からなる排気口を設けたポンプであり、具体的構成態様の共通点として、(B)正面中央部やや右寄りの位置に、軸受部から略円柱状の回転軸を突設した点、(C)本体外周面に設けたリブは、奥行き方向の略中間位置で前後に二分し、それぞれの前後両端部を隅丸の態様とした点、(D)脚部は、内側を肉抜きの態様とした縦方向の脚と、接地面に沿って延設した略平板状の固定部により、略「L」字状を呈するように形成した点、が認められる。
(ii)相違点
一方、具体的構成態様の相違点として、(ア)正面の態様が、本願意匠は、右方にのみ、外部モータに接続される回転軸及びその軸受部が配設され、左方は平滑面となっているのに対して、引用意匠は、右方には外部モータに接続される回転軸及び軸受部が、左方には従動側回転軸の軸受部を覆うやや大径の円形状蓋部が配設されている点、(イ)背面の態様について、本願意匠は、中央部付近に、上下辺を平行直線とする略陸上競技トラック形状のリブが配され、またそこを起点として、直線状のリブが本体外周面のリブと連続する態様で多数放射状に配設されているのに対して、引用意匠は、全体がリブのない平滑面として形成されている点、(ウ)背面排気口の態様について、本願意匠は、背面下方に設けられた排気口の筒状枠体が対称性の高い横長略長方形状であり、その内側面に三角形状のリブが複数形成されているのに対して、引用意匠は、筒状枠体の底辺が中間部付近で右下がりの段部として形成されていると共に、同枠体の外側面に三角形状のリブが複数形成されている点、(エ)本体外周面の態様について、本願意匠は、上面に、正面側には上端部を直立のリング状、中央部には上端部を回転ツマミ状とした二本の円柱状凸部を設け、左右両側面には、やや前方(正面側)寄りの位置に大型の横長略矩形ブロック状の凸部と、その下方に斜め方向にずらしてなる二本の円柱状凸部を設け、下面には、他の外周面と同様のリブを形成しているのに対して、引用意匠は、上面には、正面側に一本の円柱状凸部とその後方に正面視略台形状を呈する低い段部を設け、左右両側面には、本願意匠のブロック状凸部と同様の位置にごく低い横長円柱状の凸部と、その下方に鉛直方向に並列した二つの円孔を有する凸部を設け、下面には、リブは設けずに、正面視略逆台形状を呈する低い段部を設けている点、(オ)脚部の態様について、本願意匠は、脚部全体をやや横長に形成し、底面には矩形板状の突起を設けているのに対して、引用意匠は、脚部全体をやや縦長に形成し、底面は突起のない平坦面とした点、が認められる。

2.本願意匠と引用意匠の類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価、総合して、両意匠の意匠全体としての類否を判断する。
(1)共通点の評価
基本的構成態様の共通点としてあげた共通点(A)は、両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点であり、この種物品の先行意匠にも見られる態様であるから、これをもって直ちに両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいということはできない。また、具体的構成態様としてあげた共通点(B)ないし(D)も、この種物品の機能を果たすために必要不可欠なもの、若しくは、先行意匠に照らし特に新規な特徴とはいえない又は局所的な共通点に過ぎないものであるから、いずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいとはいえず、それら共通点を総合しても、両意匠全体の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
(2)相違点の評価
これに対して、両意匠の具体的構成態様に係る各相違点は、両意匠の全周、全方向にわたるものであり、いずれも目に付き易い部位に係るものであるから、これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。特に、相違点(ア)について、本体正面左方に従動側回転軸の軸受部を覆うやや大径の円形状蓋部を設ける態様は、引用意匠の特徴の一つであり、本願意匠はそれを具備していない。また、相違点(イ)について、本願意匠が、その背面に略陸上競技トラック形状のリブと、本体外周面のリブと連続する多数の放射状リブとを配設した点は、この種物品の先行意匠に照らして本願意匠に特有の特徴といえるものであるから、本願意匠を特徴付ける大きな要素の一つとなり、この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は、非常に大きいというべきである。そして、相違点(ウ)ないし(オ)が加わり、相違点全体が相まった意匠全体の視覚的効果において、両意匠の相違点は、共通点が醸成する共通の印象を凌駕して、看者に対し、両意匠を別異なものと認識させるに十分な強い別異の印象を与えるものといえる。
(3)小括
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態においても、基本的構成態様を含め共通点は存するものの、具体的構成態様に係る相違点が看者に与える印象は共通点のそれを凌駕し、両意匠は、意匠全体としては視覚的印象を異にするというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、同条同項柱書によって本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2012-10-25 
出願番号 意願2011-10464(D2011-10464) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (K8)
最終処分 成立  
前審関与審査官 平田 哲也内藤 弘樹下村 圭子 
特許庁審判長 遠藤 行久
特許庁審判官 伊藤 宏幸
早川 治子
登録日 2012-11-22 
登録番号 意匠登録第1458316号(D1458316) 
代理人 小林 庸悟 

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