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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立成立) L1
管理番号 1265900 
判定請求番号 判定2012-600013
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2012-12-28 
種別 判定 
判定請求日 2012-05-07 
確定日 2012-11-22 
意匠に係る物品 コーン用止水栓 
事件の表示 上記当事者間の登録第1181907号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「コーン用止水栓」の意匠は,登録第1181907号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 請求の趣旨及び理由
本件判定請求人(以下,「請求人」という。)は,イ号図面に示す意匠は,登録第1181907号(以下,「本件登録意匠」ともいう。)及びこれに類似する意匠の範囲に属しない,との判定を求め,要旨,以下のとおり主張した。

1.判定請求の必要性
本件登録意匠の出願前公知意匠である特開平5-230988号の存在が明らかになったため,この意匠が本件登録意匠の登録無効理由ではないとの確認のため,イ号図面並びにその説明書に示す意匠(以下,「イ号意匠」という。)は,登録第1181907号及びこれに類似する意匠の範囲に属しない,との判定を求める。

2.本件登録意匠の説明
(a)円柱状本体部の底部外周に短いヒレ状の拡径部が突出形成され,
(b)円柱状本体部の途中2か所に同じく短いヒレ状の拡径部が突出形成され,
(c)拡径部から円柱状本体部の外周面に向けて4本の三角リブが突出形成され,
(d)円柱状本体部における拡径部より先端側の形状だけがわずかに先細り状に形成されている。

3.イ号意匠の説明
(ア)本体部の全体が底部を最大径として先端に向かうにつれて細くなる内窪みの円錐状に形成され,その先端部径は底部径の2/5と両端での外径差が大きくなっており,
(イ)本体部における中途部に長い2本のヒレ状の拡径部が突出形成され,
(ウ)本体部の底面に皿状凹部を有する。

4.本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
本件登録意匠とイ号意匠の共通点は,本体部の外周に本数は異なるが,複数のヒレ状突出部を備える点でのみ共通し,その他の具体的な形状は,上述のように全て相違した形状となっている。

5.イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない理由の説明
本件登録意匠は,その基本形状が円柱状で先端が先細りで,「ロケット」を連想しそうなデザインであるのに対し,イ号意匠は内窪みの円錐状であり,しかも,先端部径は底部径の2/5と両端での外径差が大きい極端な先細り状で,「富士山」を連想しそうなデザインである点において,その全体的に受ける印象を全く異にする。
さらに,細部においても下記のように多くの顕著な形状の相違点を有する。
(1)本件登録意匠には,4本の三角状リブを有するのに対し,イ号意匠はこれを有しない。
(2)本件登録意匠には,底部を含めて3本のヒレ状拡径部を有するのに対し,イ号意匠には本体部の中途部に2本有するのみである。
(3)本件登録意匠のヒレ状拡径部は,本体部からの突出が短いのに対し,イ号意匠のヒレ状拡径部は本体部からの突出長さが極端に長い(富士山にかかる雲を連想)。
(4)イ号意匠には,本体部の底面に皿状凹部を有するのに対し,本件登録意匠はこれを有しない。

6.むすび
したがって,イ号図面並びにその説明書に示す意匠は,登録第1181907号及びこれに類似する意匠の範囲に属しないので,請求の趣旨どおりの判定を求める。

第2 被請求人の答弁
当審は,被請求人に判定請求書を送り,期間を指定して答弁書の提出を求めたが,請求人からの応答はなかった。

第3 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠(意匠登録第1181907号の意匠)は,2002年(平成14年)9月19日に意匠登録出願され,2003年(平成15年)6月20日に意匠権の設定の登録がなされたものであり,その願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「コーン用止水栓」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.イ号意匠
イ号意匠は,被請求人が,1992年(平成4年)2月25日に特許出願し,1993年(平成5年)9月7日に公開された特許出願公開番号特開平5-230988号の公開特許公報に記載された意匠であって,発明の名称を「足場繋ぎの穴埋め方法及び穴埋め部材」とし,その形態は,当該公報に記載されたとおりとしたものである。(別紙第2参照)

3.本件登録意匠とイ号意匠の対比
本件登録意匠とイ号意匠を対比すると,本件登録意匠は,外部からコンクリート内部への水の侵入を防止するために使用するものであり,対するイ号意匠は,建築物の外装仕上げが完了した後に,外壁の穴を防水し,仕上げ処理する穴埋め部材であって,どちらも穴への防水を果たす機能が一致し,意匠に係る物品は共通する。
形態については,主として以下の共通点と相違点が認められる。
(1)共通点
基本的構成態様として,(ア)全体が略円柱状であり,(イ)使用する穴の内周に接する縁部(以下,「内接縁部」という。)を上下に3か所設けたものである点において主に共通する。

(2)相違点
具体的構成態様として,(a)本体部の形状につき,本件登録意匠が,ほぼ円柱状で,先端の約4分の1部分のみを円錐台形状に先細りにしているのに対して,イ号意匠は,周面を内窪み面とした略円錐台形状であって,先端部直径は底部直径の約5分の2である点,(b)内接縁部につき,本件登録意匠が,本体部から突出した3か所のヒレ部の縁を内接縁部としているのに対して,イ号意匠は,本体底部のすそ縁部と,本体部から突出した2か所のヒレ部の縁によって3か所の内接縁部としており,また,一番下のヒレ部となる本体底部のすそ縁部の直径を,その他の2か所のヒレ部の直径よりやや大きくしている点,(c)ヒレ部につき,本件登録意匠が,底部から等間隔にヒレ部を設けているのに対して,イ号意匠は,本体部の上下略中央位置に第1の,そして先端と第1のヒレ部の間に第2のヒレ部を設けている点,(d)ヒレ部の形状につき,本件登録意匠は,先に行くほど肉厚を薄くした断面略三角形状のヒレであるのに対し,イ号意匠は,先端のみが半円状の,同じ肉厚でやや下向きに下がった状態で突出したヒレである点,に主な相違がある。

4.類否判断
イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するか否かについて,すなわち,両意匠が類似するか否かについて,本件登録意匠の出願前に存する公知意匠等を参酌し,新規な態様や需要者の注意を最も引きやすい部分を考慮した上で,形態につき,共通点と相違点が意匠全体として両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,検討する。

共通点(ア)及び(イ)については,この種防水用栓の態様を極めて概括的に判断したにすぎないものであるから,この共通性のみをもって両意匠の類否判断を決するものとすることはできないのに対して,具体的態様に係る相違点である(a)ないし(c)により,本件登録意匠は,サイロのような本体に等間隔に3か所のヒレ部を設けた印象を与える態様であるのに対し,イ号意匠は,富士山のような本体に2か所のヒレ部を設けた印象を与えるものであって,全体に受ける印象を全く異にするものである。
よって,相違点(d)も加えて考察すると,相違点全体が,共通点が生じさせている共通感をしのぎ,見る者に両意匠が別異であるとの印象を与えていることから,両意匠の共通点及び相違点を総合的に判断すると,両意匠の意匠に係る物品が共通するも,イ号意匠は,本件登録意匠に類似するということができない。

5.結び
以上のとおりであるから,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。

よって,結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2012-11-09 
出願番号 意願2002-25521(D2002-25521) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZA (L1)
最終処分 成立  
特許庁審判長 川崎 芳孝
特許庁審判官 橘 崇生
遠藤 行久
登録日 2003-06-20 
登録番号 意匠登録第1181907号(D1181907) 
代理人 綾田 正道 

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